民族時報

民族時報 第1259号(15.2.6)


【論説】

失墜する朴槿恵政権

大統領選挙公約破棄とセウォル号惨事、青瓦台の陰の実力者に関する「鄭允会ゲート事件」疑惑など、衝撃的な大事件と南北関係の膠着状態に対する国民の怒りと失望が深まる中、一月十二日に朴槿恵大統領が新年記者会見を行った。国民の関心は南北関係改善と「疎通不足」の国政運営方式の転換、青瓦台組織改編と人事刷新に注がれた。しかし、独善的な姿勢に終始した会見は国民に失望と怒りを与えるだけだった。

 自ら「市中の風説を集めたチラシ水準」と一蹴した青瓦台「鄭允会ゲート事件」はねつ造されたものだと断定し、国政独占疑惑を否認した。金淇春・秘書室長は秘書官・門番三人衆を「本当に珍しい私心のない方々」であり交代する理由がないとして、彼らを擁護し再信任した。鄭允会氏の娘と関連して、直接、文化体育観光省課長を更迭したとされる人事介入については、「とんでもないねつ造された話」と一蹴し、野党の特検要求も拒否した。

 朴大統領の支持率が二十%台に下落した。否定評価は六十三%で最低値を記録した(韓国ギャラップ世論調査一月三十日付け)。青瓦台人事刷新拒否と庶民増税など右往左往する経済政策に対する国民の失望感が噴出したのだ。執権三年目にしてレームダックが始まった。慶南・昌原では市民が「国は滅茶苦茶なあり様だ」と訴え、朴政権退陣を叫んでデモ行進した。民心は背を向けているのだ。

朝・中・東などの保守言論さえ社説を通して酷評

東亜日報は「チラシ疑惑をひき起こした原因提供者が朴大統領自身であるにも関わらず、私たちの社会は健全ではないようだと人のせいにばかりすることは残念なこと」としながら、「一年前に比べて、支持率が二十%も下落したにも関わらず国民を恨んでは、前任大統領のように失敗の道を歩む憂慮が大きい」と批判した。

 朝鮮日報は「大統領の弟と鄭允会氏をはじめとする家臣グループが複雑に絡み合い、国民の前で泥試合をしたことを全てねつ造と規定し、このことに関しては誰にも責任を問わないという大統領の立場を、どれほど多くの国民が納得できるというのか」と嘆息した。中央日報は秘書官三人衆に「大統領が免罪符を与える形になった」としながら、国政刷新と人事改編に関する大統領の認識が、国民の希望とは大きくかい離していることが明らかになった」と酷評した。

 セヌリ党も、状況の深刻さに対する大統領の認識不足によって重苦しい雰囲気に包まれ、李在伍議員は「より大きな力を与え、門番三人衆が本当に実力者になってしまった」と怒りを露にした。

 新政治民主連合など野党は「絶望と不通の自画自賛会見」「反省と謝罪はなく大統領が人のせいにばかりしている」として、陰の実力者の国政介入事件に関して、謝罪どころか全てを事実無根で片付けたと強く批判した。

鄭允会など「十常侍」の国政独占疑惑

現政府の陰の実力者である鄭允会の国政独占疑惑は、昨年十一月二十八日付け世界日報(統一教会関連社)の記事「鄭允会の国政介入は事実」で世に知らされた。青瓦台公職紀綱秘書官室が作成した文書「青瓦台秘書室長交代説などに関連するVIP側近(鄭允会)の動向」という題名の報告書だ。

 内容の概略は、鄭氏と「青瓦台の門番三人衆(イ・ジェマン総務秘書官、チョン・ホソン、アン・ボングン第一、二附属秘書官)」をはじめとする秘書官、行政官級六人など核心グループ十人が毎月二回会って、国政全般と人事問題などを議論して主な意志決定を思いのままにしていたというものだ。 国内メディアは彼ら十人を十常侍(中国の後漢末期に専横を振るった官吏)と称している。門番権力とは、彼ら三人を経てこそ大統領に接近することができるという意味であり、強大な力を持つ実力者を指す。

 事件の実体が報道されるや、朴大統領はすぐに反応し「チラシの話」と一蹴、厳重に対応することを指示する一方、「陰の実力者による国政独占」疑惑を「青瓦台文書流出にともなう綱紀びん乱事件」にすりかえた。検察は一月五日、「鄭允会文書は虚偽」という中間捜査結果を発表し、結局、陰の実力者による国政介入疑惑は人知れず幕が引かれた。朴大統領は、「十常侍」による国政独占のための権力闘争に対する国民の怒りに目もくれず、青瓦台の人事刷新に努めるどころか彼らをかばうことに権力を使ったのだ。

 朴大統領は二十三日、青瓦台の組織改編を行ったが、門番三人衆の業務と範囲の役割が拡大し、彼らの影響力がかえって増大すると報道されている。朴大統領が民心離反の深刻さを知りながらも、彼らを排除できない理由とは果たして何だろうか。

 一方国税庁は、世界日報の鄭允会ゲート事件報道以後、統一教会関連会社に対する税務調査に入った。報復標的調査に対して、統一教会教信徒対策委員会は「世界日報が公開していない七~八個の青瓦台特級情報が公開されれば、大統領が下野しなければならない事態が発生するだろう」(ハンギョレ一月二十三日付け)と警告している。

南北関係発展の対案を提示できず

記者会見では、南北関係発展のための画期的な対北提案や新しい政策的方向性の提示もなかった。北の金正恩・第一書記は新年辞で、南側が真に対話を通じて南北関係を改善しようとする立場ならば、最高位級会談もできない理由はなく、中断された高位級接触も再開でき部門別会談も可能とする積極提案をした。これと関連して、    朴大統領は非核化進展と対話の誠実性に言及しながら、「これを解決できないのに平和統一を話すことはできない」として消極的な姿勢に終始した。

 朴大統領は昨年十二月の統一省提案に続き、一月十九日に北側に離散家族再開を再度提案した。北の祖国平和統一委員会による五・二四対北制裁措置の解除で離散家族問題を解決しようという提案(一・二三談話)に対しても、朴政権は「五・二四措置の解除を先んじて講じるつもりはない」と拒否した。

 北の国防委員会政策局が、南北関係改善と発展のために韓米合同軍事演習の中止と対北ビラ散布中断など実践的行動を主張したこと(一月二十五日)に対しても、統一省は「不当な前提条件をわが政府が聞き入れるということは、今後の真の南北関係発展のためにも望ましくない」という反応を見せた。

 朴政権は今年を「朝鮮半島の統一時代を開幕する年」にするという目標の下、統一憲章と「平和統一基盤構築法」制定推進、「光復七十周年南北共同記念委員会(仮称)」構成を北に提案する方針であり、京義線と東海線鉄道試験運行も推進するという計画を立案した。相手方が対話の場に出るための条件を拒否しておきながら、一方的な計画を立ててみても、それは絵に描いた餅にすぎない。

(金大鉉記者)


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