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社説

日本の宇宙開発 「はやぶさ」をシリーズに

 今月は宇宙から明るい話が次々と届いた。小惑星探査機「はやぶさ2」が無事、小惑星「りゅうぐう」へ向かった。金星探査機「あかつき」は周回軌道に入った。宇宙科学を今後も推し進めたい。

 「宇宙」が大きな話題になったのは、小惑星探査機はやぶさが帰還した二〇一〇年以来だ。いくつものトラブルを乗り越えながら、世界で初めて小惑星から資料を持ち帰るというミッションの成功は、技術力の高さと研究者の熱意、能力の高さを示した。

 「はやぶさ2」は今月、スイングバイ(重力ターン)に成功し、りゅうぐうに向かった。「あかつき」も主エンジンのトラブルで軌道投入に失敗したが、設計寿命を超えた機体というハンディを乗り越え、軌道に乗った。当初予定していた観測計画が実施できることを祈りたい。

 現在、稼働中の宇宙探査機はこの二機だけだ。欧州宇宙機関(ESA)と共同で水星に小型探査機を飛ばす計画はあるが、「はやぶさ」と同規模の中型機の打ち上げは、二一年度に火星の衛星からのサンプルリターンを狙った探査機までない。今後十年間でも、この一機だけになっている。

 「あかつき」の成功にいくら喝采を送っても、次の探査機の計画がなければ、今回の経験は生かされない。このままでは惑星科学の研究者も育たない。

 なぜ探査機が少ないのか。

 宇宙基本計画では、目標の第一が宇宙安全保障の確保である。基幹ロケットの優先的使用のトップに「準天頂衛星システム」を挙げている。一〇年に準天頂衛星「みちびき」を打ち上げたときは、衛星利用測位システム(GPS)の補強を目的としていたのが、「安保」に変わった。一七年度までに三機打ち上げて四機体制に。その後「みちびき」の後継機と新たな三機を追加して計七機とする。

 もともと安保が目的の情報収集衛星は、今後十年間にレーダー衛星と光学衛星、データ中継衛星を計八機も打ち上げる。

 こうした安保関連の衛星が宇宙予算を圧迫している。科学研究、平和利用よりも安保でいいのか。この機会に再考したい。

 巨額の予算が必要だから科学分野でも選択は必要だろう。

 たとえば「はやぶさ3」「はやぶさ4」とシリーズ化してはどうか。次が見えれば、技術も研究者も育つ。国際貢献にもなる。そうした戦略的な将来計画を考えるときだ。

 

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