政府などの文書管理ルールを定めた公文書管理法の見直しに向け、有識者でつくる内閣府の公文書管理委員会が検討を進めている。

 2011年に施行されたこの法は、「霞が関の透明化」に一定の役割を果たしてきた。一方、14年施行の特定秘密保護法によって、政府が秘密だと指定した情報の管理は格段に強まった。情報の保全と公開のバランスを取り戻すためにも、国民の知る権利に資する方向での見直しは不可欠だ。

 公文書管理法は、意思決定にいたる過程が検証できるように行政機関に文書作成を義務づけ、各省でバラバラだった保存や管理のルールを統一した。各省の判断では文書を廃棄できなくなり、歴史的価値のある文書は公開に向け国立公文書館に移すことを定めた。

 ただ、法の趣旨が浸透しているとはとても言えない事例が、最近も明るみに出ている。

 内閣法制局は、集団的自衛権の行使を認めた憲法9条の解釈変更までの内部協議の過程を文書に残していなかった。

 原子力規制委員会は12年の発足から3年の間、作成が義務づけられている文書リストをつくっていなかった。

 いずれも、「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」との法の目的に反している。

 一方、法制定時から指摘されていた文書管理体制の弱さも、あまり改善されていない。

 政府全体で年間200万件以上の文書が保存期間を終えるが、公文書館への移管か廃棄かの判断をしているのは内閣府と公文書館の20人ほどの職員だ。職員は少しずつ増えているが、フランスのように各省に文書管理の専門家が配置されているようなレベルにはない。

 こうした現状を受け、日本アーカイブズ学会などが公文書管理委に見直すべき点を提言している。公文書管理は国民の知る権利や記録遺産形成のためであることを明確化▽公文書館の権限強化と組織拡充▽専門職員資格制度の構築などだ。

 いずれもうなずける内容だ。一朝一夕には実現できないものもあるが、その方向への道筋を明確にすべきだ。

 公文書管理は単なる役所の内部ルールではない。政策がどのように決定され、どう実施されたかを国民が検証できるようにするための取り決めだ。

 来年3月までにまとめられる見直し案が、行政ではなく国民の利益を高める内容となるよう求めたい。