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 中国の外資系小売りで初の全国展開の認可を受けたイトーヨーカ堂。20年近く、中国事業を引っ張ってきたのが、中国総代表の三枝富博さんだ。世界が注目する中国の消費の実情や今後の店舗戦略について、話をきいた。

 ――成都のイトーヨーカドー(伊藤洋華堂)は、驚くほど活気がありますね。

 「双楠店は、日本と中国のすべてのヨーカドーの中で売り上げ1位です。年間約350億円。成都にある6店の売上高は、今年は前年より3%ぐらい伸びそうです。ただ、7月以降は少し基調が変わりました。たとえば、衣類が売れません。政府の『倹約令』や株価が下がった影響があると思います」

 ――景気減速の影響も感じますか?

 「中国の国内総生産(GDP)の実質成長率は、今年7~9月は6・9%に下がりました。日本では中国が危ないという話にばかり興味があるようですが、もう少し大きな目でみるべきです。中国のGDPはすでに日本の約2倍ある」

 ――減速とも言い切れないと?

 「生活している市民の視点でみれば、間違いなく豊かになっています。給料がどんどん下がったら減速ですけど、そうではない。最低賃金は上がっているし、人々は今日より明日が豊かになると信じている」

 ――たとえば?

 「つい最近まで、中国では添加物がたくさん入った長期保存できる牛乳が売れていました。それが、フレッシュな牛乳に置き換わっています。無添加の牛乳は、5年前は1割もなかったのが、いまや5割。有機の野菜や果物も本当によく売れます。豚肉中心から、牛肉も増えています。腹いっぱいより、おいしいものを食べたいね、と。日本と同じですよ。一度、豊かな暮らしを始めた人が後戻りすることはありません。だから、ここ数カ月の不調も、私たちの戦略が悪い部分がある。小売りは、民主主義。欲しいとなったら買っていただけるし、いらないなら買ってくれない。消費者のニーズの変化に、私たちがどう対応できるかだと思っています」

 ――一方で、北京の店は不振だとか。