アイドルの口パク事情を、芸能事務所に聞いてみた
 紅白歌合戦をはじめ、音楽特番の多い年末。

 出演アーティストたちがノドに気を使い始めている頃、「ああ、生放送の番組に出させたくない…」と浮かない顔をしているのは、人気アイドルを複数抱える大手芸能プロダクションのマネジャー。

 よくクチパク疑惑が話題になりますが、「地声で歌われるよりマシ」と、このマネジャーは言います。もちろん、歌のうまいアイドルだっているので、以下は「すべてのアイドルに当てはまるとは限らない」という前提で、実情を聞いてみました。

◆「口パクじゃない、マイクを絞ってるだけ」

「基本的に、アイドルに“声の整形”は必須です。激しくダンスしながら歌うのは難しいし、そもそも歌唱力で選ばれるわけじゃないからヘタな子もいる。アイドルはアーティストじゃないですから仕方ないですね」(芸能プロマネジャー)

 とはいえ、素人がイメージする「レコードに合わせて口をパクパクする」ような単純な話ではないそうです。

「頑張っている本人たちには申し訳ないが、息が続かないのが致命的で、息切れしている音をマイクが拾ってしまうんです。

 だから、マイクの音量は3割程度まで絞ってます。うまい子とヘタな子で、絞る割合は変えていますが。

 そして、事前にサウンドエンジニアに手を加えてもらった音声を一緒に流すわけです。つまり、あくまで完全口パクではなく、マイク音量を絞っているだけなんですよ」(芸能プロ幹部)

◆カラオケで聞く生歌がヤバイ

 よく「ライブでも口パクだった」とネットで書かれるアイドルもいますが、一番困るのは、生放送の音楽番組だと言います。

「テレビの場合は、歌の尺(長さ)が番組の進行によって決まります。だから、調整したサウンドを事前に用意できなかったりするんです。

 となると、サウンドエンジニアが当日現場に入り、必死で声を調整することになる。生放送では失敗できないというプレッシャーがあって、彼女たちが舞台を降りるまでヒヤヒヤです」(同)

 また、レコーディングでは、アイドルに限らずサウンドエンジニアが活躍するわけですが…

「アイドルの多くは、肌荒れや体型ばかりに気を取られて、ノドにはあまり気を使ってくれないんです。レコーディング前夜に『ノドの調子が悪い』というLINEが来ることも多々あり、『またか〜』と思うことも。

 そうなると、腕のいいサウンドエンジニアにレコーディング当日に声をかけて現場に入ってもらい、声を“整形”してもらう。そのスケジュールの調整が大変なんですよ」(芸能プロ現場マネジャー)

 レコードもライブも生番組も“声の整形済み”なら、生歌はどうなんでしょうか?

「打ち上げとかでカラオケに行って、本人たちがたまに自分の歌を歌うと、『やめてくれ!』って感じです(笑)」(同)。

 サウンドエンジニアの“活躍ぶり”を描いたコントを、このマネジャーが教えてくれました(カナダのコメディTVショウ Lol:-) がネットで公開したもの)。

⇒【YouTube】Sound Engineer’s Hard Work /Lol:-)公式チャンネル http://youtu.be/G2Rhh_4GZmU

◆「カメラ目線」でも一苦労

 ちなみに、音楽番組でマネジャーが苦労するのは、声のほかに「いかにカメラ目線にさせるか」だそう。

「番組進行表でカメラワークなどの資料があるんですが、見てもイメージが湧かないので、リハーサル中の映像をモニター画面越しにスマホで撮って、本人たちに見せるんです。そして『曲のこの部分では2カメ』とかタイミングを覚えさせて、カメラ目線をしやすい環境を作っています。

 番組によっては関係者に見つかると注意されることもあり、みんなこっそりとやっていますよ。本人たちがよく映るように、僕らも必死なんです」(同)

 同じグループでメンバーごとに所属事務所が違う場合、カメラ目線が多い子は、そのマネジャーががんばった成果でもあるそうです。年末の芸能プロ関係者も楽ではないですね。

<TEXT/平良種>