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 午後9時過ぎ、フリーアナウンサーの岩佐まりさん(32)は仕事を終え、母が待つデイサービス事業所への道を急いでいた。呼び鈴を押すと、男性職員に手を引かれ、母桂子さん(67)が姿を見せた。「お母ちゃん、帰ろっ」。この日は、5時間延長して預かってもらっていた。

 1人で働きながらの介護は20代後半で始まり、3年近くになる。

 大阪府内の実家で暮らしていた母に物忘れが始まったのは、まりさんが20歳のときだ。舞台女優をめざして上京していた。母は50代半ば。軽度認知障害(MCI)を経て60歳でアルツハイマー病と診断された。病院からの帰り、母娘は一緒に路上で号泣した。

 父(74)が母をみていたが限界を迎え、まりさんが神奈川県の賃貸マンションに引き取った。29歳のときだった。