性的暴力の加害者による再犯を防ぐため行われる薬物治療(いわゆる「化学的去勢」について、憲法裁判所が「合憲」との決定を下した。だが、裁判所が化学的去勢を命令する時期と、実際に執行される時期に大きな開きがある場合、異議を申し立てる条項を設けていないことについては、憲法の趣旨にそぐわないとの判断を示した。
憲法裁は23日、化学的去勢について定めた法律(性的暴力犯罪者の薬物治療に関する法律第4条第1項)に対する違憲立法審判の申し立てに対し、裁判官9人のうち6人が「合憲」、3人が「違憲」とする意見を述べ、合憲とする決定を下した。化学的去勢については「19歳以上の性犯罪者のうち、性的倒錯(正常ではない性的な行動によって快感を得る精神疾患)の状態にあり、再犯の危険性があると認められた場合、検事が薬物治療の命令を裁判所に請求できる」と定めている。
憲法裁は決定文で「化学的去勢は性的暴力犯罪の再犯を防止し、犯罪から国民を守るための措置であり、立法の目的は正当だ」と説明した。その上で「限られた期間に医師の診断と処方によって行われ、治療を中断すれば男性ホルモンの生成や作用の回復が可能だという点で、最低限度の権利侵害の要件を満たす」と付け加えた。
だが一方で「重罪によって長期間服役しなければならない性犯罪者の場合、化学的去勢の命令の時期(裁判所の判決)と、執行の時期(出所の2カ月前)の間に相当な時間差が生じることになり、化学的去勢の必要性がなくなる可能性もあるため、措置を中止できる条項がないというのは、過剰な処罰を禁止する原則に反する」として、この点については裁判官9人のうち6人が「憲法不一致」、3人が「違憲」とする意見を述べ、「憲法不一致」とする決定を下した。憲法裁は法的な混乱を避けるため、2017年12月31日を期限として法律が改正されるまで、現行法を引き続き適用することとした。憲法裁の関係者は「薬物治療の執行の時期に異議を申し立てられる法律の規定が追加され、治療の必要性がないという点が認められれば、薬物治療を受けなくなることも可能になる」と説明した。
大田地裁は2013年、未成年者にわいせつな行為をしたとして起訴され、化学的去勢を請求された被告人の事件を審理する中で、関連条項が基本権を制限しているとして、違憲立法審判を申し立てていた。