米国では自宅で家事や育児を行う男性、いわゆるイクメンのことを「SAHD(Stay-at-home Dad)」と呼んでいる。米国でも父親が育児を担当するケースは決して珍しくないが、そのような家庭はたまに近所の住民が誤解し「男が侵入して子供を誘拐した」などと警察に通報することがあるという。フェースブックを立ち上げたザッカーバーグ氏がつい先日、2カ月の育児休暇を申請したことがニュースで報じられた時は、イクメンたちも大きな励みになったことだろう。米国で最も多忙で、なおかつ大きな影響力を持つ企業経営者が、男性による育児の重要性をあらためて社会に訴えてくれたからだ。
5年前、欧州議会のリチア・ロンズーリ議員が生後6週の娘を抱いて議会にやって来た。左手で幼子を抱き、右手で採決に参加するロンズーリ議員の母親としての姿を映したショットが、当時は大きな話題になった。毎朝激しく泣く赤ん坊を振り払って職場に向かう母親たちは、彼女の勇気に大きな拍手を送った。取材要請が殺到したロンズーリ議員はメディアに「それまで議会で何度も女性の雇用拡大を訴え、努力を重ねても全く効果が出なかったため、ついには子供を連れて議会にやって来るに至った」という趣旨の内容を何度も語った。実際の行動による力は、単なる口だけの訴えよりもはるかに大きな説得力があったのだ。
今年の春に結婚し、近く父親になる日本の自民党所属の宮崎謙介・衆議院議員(34)が「国会に育児休暇を申請する」と発表し、日本で大きな話題になっている。日本の国会では議員が育児休暇を取得した前例がないのがその理由だ。女性議員の場合、会期中に出産すれば一定期間は本会議に出席しないことも認められているが、男性議員については規定そのものがないらしい。宮崎議員は「有権者の皆さんが怒るのではないかと心配しているが、男性が育児に参加しない日本の考え方を変えたかった」とコメントしている。
韓国でも育児のために休暇を取得する男性が増加している。育児休暇を申請した男性の数は2012年には1790人、13年2293人、14年3421人と増加を続けているという。育児休暇を取得すると、その期間の賃金は40%ほどに減る。このように経済的に追い込まれるだけでなく、昇進などでも不利益を受ける恐れがあることから、男性の育児休暇申請は決してたやすい決断ではない。それでも休暇を申請した男性たちからは、後悔するような声は全く聞こえてこない。父親としての役割に専念できることに加え、出産と育児によって妻の仕事でのキャリアが途絶えないようにできたのがその理由だという。
男性の育児休暇は制度面の整備よりも実行の方が難しい。職場で周りの目を気にして育児休暇を取れないような国では、どこも同じような事情を抱えている。世界的な統計学者として知られるハンス・ロスリング氏は「母親が仕事をして、父親が育児を担当することが当然と受け取られる社会にならねばならない」と指摘する。このように男女の性による伝統的な役割が崩壊すれば、少子化問題にも解決の兆しが見えてくるということだ。ここ10年間、総額100兆ウォン(約10兆円)を掛けても少子化問題を解決できなかった韓国にとって、この「イクメン」こそ一つの大きなヒントになるのかもしれない。