日帝(日本帝国主義)による植民地支配期の強制動員被害者の息子Lさんは6年前の2009年、「1965年に結ばれた韓日請求権協定で財産権を侵害された」として、韓国の憲法裁判所に提訴した。訴訟は韓日請求権協定の核となる第2条が憲法に違反するかどうか判断を求めたもので、韓日両国の注目を浴びた。
韓日請求権協定は日本が韓国に5億ドルを現金、借款の形で供与することで、両国の政府・国民間の財産、権利、利益にかかわる問題を最終的に解決するとうたっている。同協定は過去50年の韓日関係を支えてきた基本軸といっても過言ではない。このため、憲法裁が違憲判決を下せば、韓日関係そのものが脅かされるところだった。逆に合憲判断を下した場合でも、国内的に強制動員被害者の反発を生む可能性が高かった。憲法裁が2009年に起こされた今回の訴訟の結論を6年以上先送りしたのもそうした苦悩が原因だとされている。今回の訴訟は憲法裁における「最長の未決案件」と呼ばれてきた。
憲法裁は結局、「請求権条項は強制動員被害の補償金に関し、原告が起こした訴訟に適用されるべき法律条項とは見なせず、『裁判の前提』がない」という論理で訴えを棄却する決定を下し、論争を回避する道を選んだ。
憲法裁は法律が憲法に違反するかどうかを判断し、国民の基本権が侵害されていないかどうか指針を示す機関だ。しかし、今回の判断は強制動員被害者が受け取れなかった賃金(未収金)の計算方式を定めた法律の違憲性を判断すれば十分であり、請求権協定自体を議論する必要はないというのが重要部分だ。
憲法裁の決定とは別に、韓日請求権協定問題はこれまで何度も違憲審判または大法院(最高裁に相当)の判決対象となってきた。特に憲法裁は2011年8月、韓国政府が慰安婦被害者と原爆被害者の賠償問題をめぐる韓日間の紛争を解決しないことは、政府の不作為による違憲行為だ」とする決定を下している。憲法裁は当時も協定2条については判断しなかった。