【ソウル聯合ニュース】韓国は今年、中東で発生した感染症、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの流行により経済に深刻な打撃を受けた。多くの人でにぎわっていた繁華街は閑散とし、中国人をはじめとする多くの外国人観光客が韓国旅行をキャンセルした。
◇初動の不手際に批判集中
5月20日、韓国で最初のMERS感染者が確認されて以降、病院内で感染が広がった。186人が感染し、38人が死亡。感染者がゼロになるまでに190日を要した。
最初の患者はサウジアラビアへの訪問歴を告げずにソウル近郊の平沢聖母病院(京畿道平沢市)に入院し、あっという間に院内で感染が広がった。
次に感染が広がったのは、感染者の一人が訪問したサムスンソウル病院(ソウル市)だった。3日間にわたり救急室にいたこの患者を通して感染した人は、患者全体の半分近い91人に上る。患者や医療スタッフで雑然とした救急室、狭い大部屋、韓国特有の大勢での見舞いなどが、MERSを広げる一因となった。
流行の終息に全力を挙げるべき保健当局は、コントロールタワーがころころ変わり右往左往した。流行初期に患者と密接に接触した人の範囲を狭く限定しすぎたこと、患者の入院する病院名を公表しなかったことが最大の失策と批判される。
MERS流行を受け、当局は接触者の隔離などを行う疫学調査官を大幅に増やすことを決め、保健福祉部・疾病管理本部の本部長を室長級から次官級に格上げする措置を取った。
また、感染症が広がった際に民間病院の医療従事者を治療や疫学調査に動員できるようになり、感染症の治療や研究・教育を担う専門病院(または研究病院)を設立・指定する根拠も設けられた。
◇今年の成長率2%台にとどまる恐れも
MERSの恐怖が急速に広がり、飲食店や遊園地、ショッピングモールなど人が集まる場所は一気に閑散とした。休校した学校は2000校以上に達する。体の調子が悪くても感染の恐怖から医療機関を訪れない人も多かった。
MERSの流行が景気に与えた打撃は、昨年の旅客船「セウォル号」沈没事故のときよりも大きかった。社会全体がMERSの恐怖に縮み上がり、内需が大きく冷え込んだ。
韓国銀行(中央銀行)の報告書によると、MERSが猛威を振るっていた6月の小売販売とサービス業生産は大幅に減少した。
衣服やかばんなど準耐久財販売が前月比で11.6%の大幅減となったほか、家電製品などの耐久財は2.1%、化粧品などの非耐久財は0.9%、それぞれ減少した。同月のデパートの売上高は前月比12.6%、大型スーパーは14.7%、それぞれ急減した。
サービス業生産も、運輸(マイナス6.1%)、宿泊・飲食(マイナス10.2%)、芸術・スポーツ・余暇(マイナス12.6%)で大きな落ち込みを見せた。
MERSの流行により、韓国の観光産業は最大で3兆4000億ウォン(約3514億円)の損失を被ったと試算される。韓国文化観光研究院の報告書によると、6~9月に韓国を訪れた外国人観光客は前年同期に比べ153万3000人減少した。
状況の深刻さを踏まえ、政府は内需活性化に向け約11兆6000億ウォンの追加補正予算を編成した。観光産業を立て直すため、政府や大企業は「国内で休暇を過ごそう」と呼びかけた。
欧州や中国経済の減速にMERSという悪材料までが重なり、今年の韓国の経済成長率は当初予測されていた3%台ではなく2%台にとどまる可能性もある。国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)はいずれも韓国の今年の成長率を2.7%と見込んでいる。