知らねえのかよ。全くおまえは
高橋健一(以下、高橋) 最近、こいつは役者にかぶれて。「クソ町ロケット」とかいうドラマに出やがって。なんだっけ? クソ井戸先生?
今野浩喜(以下、今野) おまえ……(笑)。あと「愛を語れば変態ですか」という映画にも出させていただいてます。僕はそういう活動をしていますね。
高橋 僕は、そういう活動を知ってますね。
今野 それをけなす活動をしてるんだろ?
高橋 ライブで、相方が「クソ町ロケット」に出てるっていうと、すげえウケる。僕のかわいそさが出るんでしょうね、なんでそんなひどいこと言うのかって弁解する必要がない。あ、ほんとは「下町ロケット」っていうドラマなんですよ。原作が池井戸潤さんね。
今野 知ってるよ! みんなだいぶ知ってると思うよ。
高橋 しかも舞台が僕の住んでる町、大田区という。なんだよ、のうのうとロケして帰りやがって。僕はもう、この連載がすべてですから(笑)。そういう記念すべき1回目に、お前をバーターで呼んでやったんだから。
今野 それはありがとうございます(笑)。でも、そもそも何を連載するの?
高橋 知らねえのかよ。全くおまえは「クソ町ロケット」のことしか考えてないから。
今野 知るわけわけねえだろ!
高橋 おまえ、貝ぶつけんぞ!
今野 ロケットぶつけるぞ。
高橋 あ、負けた……。
経理係長って部下にどういう指示を出すのか
今野「下町ロケット」の反響がすごくて。ずいぶん町で声をかけられるようになった。
高橋 へえー、ぜんぜんないけどね。
今野 おまえはないだろ。
高橋 「下町の相方」とか「ロケットの相方」とか言われそうなもんだろ。
今野 ない。「ロケットの相方」って何。さっき、ご飯食べに行ったところでも「見てましたよー」って店の人が。
高橋 若い人より、今までお笑いとか見てなかった層から、声をかけられてる感じだね。
今野 だから、これが終わったときの怖さですよ。すぐ「最近、まったく見ないね」って言われそうで。
高橋 迫田滋の役が来たときはどう思ったの?
今野 まず、経理係長の役ということで。オレは経理もパソコンもわかんないなって思った。だから衣装合わせのときから「パソコンわかりません」って主張してた。
高橋 NHKの「ことばおじさんのナットク日本語塾」って番組のちょっとしたコントで今野が部長役でパソコンを操作することがあって、まあたどたどしいたどたどしい。なのに、Enterキーだけは「バーンッ!」ってすごい勢いで叩いて(笑)。
今野 Enterは強く叩くイメージがあったんだよ。
高橋 そんな部長いねえよ。
今野「下町ロケット」で大変なのは、俯瞰から大勢を撮るシーン。セリフは用意されてないけど、なにかしゃべってなくちゃいけない。でも、経理係長って部下にどういう指示を出すのかさっぱりわからない、思いつかない。困り果てて「うーん、Google、開け」とか言ってた(笑)。
高橋 あー、絶対に適当なこと言ってるんだろうな、とは思ってた。セリフを使わないってわかってるから。
今野「ちょっと、文字、大きくしろ」とか「レタリングを、ゴシック体にしろ」とか、なるべく経理に関わらないことをどんどん言ってる。
高橋 そんなの、何体でもいいよ!
今野 そしたら部下役も「これで、見やすいですかね」とか言い返して付き合ってくれる。
高橋 まあ、もともと経理って印象じゃないもんな。工場のひとをやるのかと思ってた。「下町ロケット」の世界に、今野が自然に溶け込んでるって人と、出てきた瞬間に「キングオブコメディだ」って気になって笑っちゃうって人と、反応が2つに分かれてる感じはある。
今野 人を偏見で判断するのは、性格が悪いんだね。
高橋 偏見ではないだろ。
ロケット打ち上げられると思うんだよ
今野 まーでも、出てる人が多ジャンル。
高橋 お笑いの人が多くてびっくりする。迫田は原作の「ガウディ計画編」には登場しないんでしょ。
今野 うん。だからよけい想像がつかない。「ロケット編」の原作は、話をいただいてからすぐ読んで、面白くてびっくりした。ロケットを飛ばす話って、正直ピンとこなかったのに、ぐいぐい読めて。迫田役だってわかってたから、原作を読んでる時点で「ここは使うだろうな」ってところはほぼ覚えてた。
高橋 へえー。レタリングのセリフも?
今野 そんなセリフは、ない。それじゃ池井戸さん、アホだろ。
高橋 僕は「下町ロケット」が直木賞をとったときにざーっと読んでて。なにしろ地元の大田区が舞台だっていうから気になって。
今野 ドラマはどう?
高橋 もっと、桂川精螺(佃製作所のロケ地)を俯瞰で映して、もっと大田区感を出して欲しいですね。たとえば、居酒屋とか入ったときに、「ここは東急の沿線の下にある」とかタウン情報を出してくれないと(笑)。そこがないのが惜しいドラマ。
今野「孤独のグルメ」じゃないんだから。じゃあロケットも、わざわざ種子島まで行かず、大田区で打ち上げればよかった?
高橋 そうだね。多摩川の河川敷がよかった。お盆に平和都市宣言の花火大会っていうのがあって、ジャズと花火を一緒にやる。ジョージ川口も呼んでるし、あそこだったら、ロケット打ち上げられると思うんだよ。
今野 そうかなあ。
高橋 いちばん蛇行してるとこね。
今野 打ち上げると、3キロ先でも結構風が来るって言ってたよ。
高橋 そうなの?
今野 だいじょうぶ? 大田区吹っ飛ばないかな。
高橋 吹っ飛ばないよ、大田区大きいんだから。空港が拡張されるたんびに、どんどん大きくなってくんだから。なんなら羽田空港使えばいいじゃない(笑)。もっと大田区を出しなさいよ。
地元の人はだませないよ
今野 確かに。はっきりわかるのは桂川精螺くらいだもんね。
高橋 ちょいちょいあのへんの川っぺりとか映ってるんだけどさ。江戸川も使ってるでしょう。荒川かもしれないけど、明らかに多摩川じゃない川使ってるときがある。あれは許せない。
今野 そうかなあ。みんな多摩川で撮ってると思うけどなあ。
高橋 何回かだけど、どこだかわからない川が映ってるんだよ。そこは確実に多摩川にしてほしい。
今野 詰めが甘いと。
高橋 甘い。「北の国から」でも、純が働いてるガソリンスタンドが多摩川の近くにあるんだけど、絶対、これ荒川だってシーンがまじってる。ああいうの、地元の人はだませないよ。
今野 ロケの都合で、そこのほうが近いからとかはよくあるからね。
高橋 でも、それはつくる側の都合だから。
今野 つくる側の都合でいいんじゃないの?(笑)
高橋 いやいや、住んでる側の都合で考えて欲しいんだよ。
今野 そんな都合ねえよ。
高橋 貸してやってるんだから。オレたちが血を吐く思いで払った税金でつくられたアスファルトの上で、のうのうとロケしてるわけでしょ。
今野 でも、ロケ地って、みんなそうじゃん。みんな誰かの税金のとこじゃん。
高橋 だけどオレの場合、相方が土足で区に踏み込んできて、そこで食べ散らかして、ゴミを捨ててくわけだから。
今野 ゴミはちゃんと片付けてるよ。
高橋 でも、ゴミって最終的には京浜島の清掃工場に集められていくんだから、結局大田区に捨ててるんだよ。もっと大田区民が喜ぶようにつくらないと。
第2回は12/18公開予定(全4回)
キングオブコメディ
2000年にプロダクション人力舎のお笑い養成所「スクールJCA」同期生の高橋健一と今野浩喜が結成。。2005年「第3回お笑いホープ大賞」受賞、2010年 「キングオブコント2010」優勝。サイゾーテレビでトーク番組「ニコニコキングオブコメディ」隔週配信中。
今野浩喜
1978年生まれ。TVドラマ「下町ロケット」「三人兄弟」映画「愛を語れば変態ですか」など、最近は役者としても活躍、高く評価される。西武ライオンズ・大宮アルディージャの大ファン。