露空爆、民間死者200人超「戦争犯罪の可能性」
【ワシントン和田浩明、モスクワ真野森作】ロシア軍によるシリア空爆で、民間人死者数が200人を超えたとみられることが、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の調査で明らかになった。空爆地点付近に軍事的な標的がなく、モスク(イスラム礼拝所)や医療施設が攻撃された例もあったと指摘、「戦争犯罪にあたる可能性がある」と批判した。
アムネスティによると、今年9月〜11月にシリア北西部イドリブや中部ホムスなどで行われたロシア軍によるとみられる空爆25回について調査。目撃者や生存者ら約30人から証言を得たほか、ロシア国防省の発表や空爆後の写真、動画などを専門家らと分析した。
22日発表の報告書によると、イドリブ県アリハで11月29日、市場にミサイル3発が撃ち込まれ、民間人49人が死亡した。ホムス県アルガンツでの10月15日の空爆では、地下室に避難していた子ども32人、女性11人を含む46人が死亡。事後の付近の動画を調べたが、付近に軍事的な標的は見当たらなかった。
アムネスティは一部の攻撃について「ロシア当局は民間人の被害を隠そうとした」と批判している。イドリブ県ジスル・アッシュグールで10月1日にモスクが攻撃された際、ロシア当局は損害を受けていないモスクの衛星写真を公表し、「でっち上げだ」と反論したが、アムネスティは別のモスクの写真だったと指摘している。
アムネスティはさらに、ロシア軍が国際的に禁じられているクラスター爆弾を人口密集地で使用したことを示唆する画像を入手したと指摘。「無差別攻撃の禁止に反する可能性がある」としている。
この報告書について、コナシェンコフ露国防省報道官は23日、「我々が過去に暴いてきた偽情報と同様、何の証拠もない」と主張。空爆地点に軍事目標は無いとの指摘に対しては「イスラム過激派勢力は火砲を搭載したトラックで移動している」と反論した。
シリアではアサド政権と、米欧の支援を受ける穏健な反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS)、国際テロ組織アルカイダ系のヌスラ戦線などが入り乱れて戦っている。政権を支持するロシアは、ISなど「テロリスト」を標的にしていると主張。欧州、アラブ諸国などから成る有志国連合を率いる米国は「(ロシア軍の)標的の多くは反体制派だ」と批判している。
有志国連合による昨年9月からのシリア空爆でも、地元人権団体によって多数の民間人死傷者が報告されている。