ニコンに賠償命令 東京地裁
ニコンが従軍慰安婦をテーマにした写真展を一方的に中止したのは違法だとして、韓国人写真家の安世鴻(アン・セホン)さん(44)が約1400万円の賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は25日、ニコンに110万円の支払いを命じた。谷口園恵裁判長は「一方的な中止は表現活動の機会を失わせることになり、回避できない重大な危険がある場合のみ認められる」との判断を示した。
判決によると、安さんは慰安婦がテーマの写真展をニコンに応募。ニコンは2012年5月までに、東京と大阪の「ニコンサロン」での展示を認めた。新聞に告知記事が載ると批判の電話があり、インターネット掲示板に不買運動の呼び掛けが書き込まれた。
このためニコンは役員が対応を協議。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の別企業への抗議行動の動画を見て写真展の中止を決めた。
安さんは会場使用を求める仮処分を東京地裁に申請して認められ、同年6月に東京のみ写真展が実現した。
判決はニコンの対応を「在特会の抗議や不買運動を理由にしているが、損失を被る現実的な危険性は生じていなかった」と指摘。安さんとの話し合いや警察への支援要請をせずに中止を決めた点からも、違法と判断した。
判決後に記者会見した安さんは「裁判所が表現の場を守る判断をしてくれたことに満足している」と話した。弁護団は「公の施設の使用拒否を巡る判例はあるが、私企業の施設については明確な基準がなく、表現の自由を重視した重要な判決だ」と述べた。【島田信幸】
ニコン広報・IR部の話 控訴は慎重に検討する。