【北京=大越匡洋】中国が主導する新たな国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が25日、設立に必要な法的手続きを終えて正式に発足した。中国を最大の出資国としてアジア地域の交通、電力などインフラ整備を支援する。来年1月16~18日に初めての総会・理事会を開き、本格的に開業する。加盟国を一段と拡大するため、早期の増資も視野に入れる。
資本金は1千億ドル(約12兆円)。本部は北京に置き、当面は500人規模の体制で運営する。欧州やアジアなどから57カ国が創設メンバーとして参加を表明しており、実際にこれまでフィリピンを除く56カ国が設立協定に署名した。
AIIBが正式に発足するには(1)設立協定を批准した国が10カ国(2)批准済みの国の出資比率が合計で全体の50%――の2つの条件を満たす必要があった。中国財政省は25日、批准を終えた国が中国、英国、ドイツなど17カ国に上り、出資比率の合計も全体の50%を超えたため、AIIBが正式に設立したと発表した。
楼継偉財政相は同日の声明で「国際経済の統治システムの改革の過程で道しるべとなる重大な意義がある」と自賛。さらに「世界銀行、アジア開発銀行(ADB)など既存の国際金融機関とともに、アジアのインフラ整備、経済の持続可能な成長に向けて積極的に貢献する」と強調した。
2016年1月16~18日の総会・理事会で中国の元財政次官、金立群氏の初代総裁への就任を正式に決定するほか、理事ら執行部の顔ぶれも決める。中国が中心となって運営する初めての本格的な国際金融機関が始動する。中国は議決権の26%を持ち、重要な案件で事実上の拒否権を握る。
金氏は11月、日本経済新聞社などの取材に「さらに約30カ国が加盟を希望している」としており、今後、加盟国の増加に伴う増資を検討する。すでに世銀やADBなどとの間で協調融資に向けた協議を進めており、16年春から夏にかけて第1号の融資の実現をめざす。初年度の融資規模は20億ドル程度を見込んでいる。
米国と日本は参加を見送っており、AIIBは格付け機関から最高格付けを取得することは難しいとの指摘もある。その分、債券発行による資金調達コストがかさみ、融資の際の金利が高くなる恐れがある。AIIBは借り手の発展途上国の要望に沿って融資実行にかかる時間を短くする方針だが、途上国側の返済負担が増す懸念もある。
AIIB、楼継偉