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公立小中学校への障害児通学 保護者付き添い大きな負担

(2015年12月25日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
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 障害児が公立小中学校に通う際、学校からの要請で保護者が日常的に授業に付き添っている子どもは、全国で約1890人に上ることが、文部科学省の調査で分かった。重い障害でも一般の学校に入学する例が増えたことが背景にあるが、保護者の負担は大きいため、障害者団体は「ケアを担う支援員を増やすなど、必要な措置を講じてほしい」としている。(佐橋大)

 文科省の調査は、全国の全公立小中学校約3万校(分校を除く)が対象で、このうち5%に当たる1495校で保護者が付き添っていた。

 保護者が行っているのは「たんの吸引など医療的ケア」が20%、その他が80%。その他の内訳は▽食事・トイレの介助や教室移動の補助 34%▽代筆や読み上げなど発達障害児の学習支援 22%▽パニックによる危険行動を防ぐこと 20%−などとなっている。

 ただし、発作や事故を過度に警戒するあまりに、付き添いを求めたとみられる例もある。岡山大病院てんかんセンターの吉永治美副センター長によると、てんかんの症状がある子どもの保護者に対し「発作が心配だから付き添ってほしい」と求めた例や、登校自粛を求めた例も報告されているという。

 全国の障害者団体でつくるNPO法人「DPI日本会議」事務局の崔栄繁(さいたかのり)さん(49)によると、重い障害児が一般の学校への入学を希望して認められた場合、保護者の付き添いを条件にされることが多い。保護者の負担を減らすため、障害児を介助する目的で支援員と呼ばれるパート職員を雇用する自治体もある。しかし、支援員の時給が安いことや、夏休みなどには仕事がなくなることなどから、応募がない自治体もある。

 難病の子ども支援全国ネットワークの小林信秋会長は「支援員への応募がなく保護者が付き添わなければならないケースは多い。特に、看護師資格が必要な医療的なケアが必要な子では不足が深刻だ」と指摘する。

 障害者が社会生活を送るための障壁を取り除くため、公的な機関に配慮を義務付けた障害者差別解消法は、来年度に施行される。崔さんは「国は、障害に関係なく一緒に学ぶ教育を目指すべきだ」とする。

「障害に関係なく、学べる場を」

 中部地方の30代の女性は数年前から毎日、小学校高学年の長女の通学に付き添っている。

 女性によると、長女は病気の後遺症で体に重い障害があり、自分の意思を指で示すことはできるが、食事とトイレは自分1人ではできない。小学校入学の際、女性の希望通り地元の小学校に通うことになったが、学校から「保護者が学校に来て世話してほしい」と求められたという。特別支援学級に在籍しているものの、授業は一般のクラスで受けている。

 付き添いはほぼ1日中だ。朝の集団登校では女性が長女の車いすを押して、他の子どもたちと一緒に学校へ。授業中は別室で控えているが、休み時間にトイレに連れて行き、昼には教室で給食を食べさせる。下校も母子一緒だ。

 「同級生と一緒に勉強をして、娘に積極性が出てきた」と母親は感じているが、欠かさず付き添うのは大変だという。自分の体調が悪い時は学校を休ませなければならないほか、障害のない他のきょうだいの世話をする時間が取れない。

 女性は、学校の配慮には感謝を示しつつも、「障害に関係なく安心して学べる仕組みを整えてほしい」と話す。教育委員会も女性の負担を軽減しようと、11月から支援員を募集しているが、応募がないままだ。

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