政府が来年度の一般会計予算案を決めた。総額は96・7兆円と、また過去最高を更新した。計上予定だった一部を今年度の補正予算に回しながら、なお膨張が止まらない。

 一方で、財源不足を穴埋めする新たな国債の発行は前年度から2兆円余り減らす。底堅い景気に支えられ、税収が今年度当初予算から3兆円ほど増えると見込んだからだ。それでも国債発行額は34兆円を超え、歳出全体の3分の1余りを将来世代へのつけ回しに頼る。

 巨額の財政赤字を抱えて高齢化が進むだけに、必要な予算に絞り込み、負担増に向き合うしかない。にもかかわらず、来年夏に参院選を控えて「負担増は選挙後まで封印」という政府・与党の姿勢が露骨だ。選挙こそが給付と負担のあり方を問う機会なのに、負担の話を隠せば票が集まると言わんばかりではないか。あまりに国民を見くびっている。

 予算編成では、医療の高額療養費制度が焦点になった。年齢や所得に応じて患者が支払う分(総額の1~3割)に上限を設ける制度だ。70歳以上向けの特例や優遇を見直し、一定の所得がある人は現役世代と同じ負担水準にして医療を巡る財政を改善することが検討されたが、選挙を意識する与党の反対で「来年末までに結論」となった。

 「世代」を軸に作られてきた日本の社会保障を「所得や資産」に応じた制度に改め、豊かな人には負担増や給付減を求めることが避けられない。実際、政府の改革工程表には介護保険でも負担増につながる検討項目が並ぶが、それらも「16年末までに結論」である。

 税制でも先送りが顕著だ。

 17年度から導入する消費税の軽減税率を巡り、1兆円もの税収減をどう穴埋めするのか。自民・公明両党は決められず、「16年度末までに安定的な恒久財源を確保する」とうたうにとどまった。所得税の配偶者控除の見直しに関する政府税制調査会の2年越しの議論も、当分の間お蔵入りになった。

 政府・与党だけではない。政権時に2段階の消費増税を決めた民主党では、10%への増税に反対する声が出ている。対象範囲を広げた軽減税率の導入に納得できないことが理由のようだが、増税をやめて財政再建の道筋をどう描くのか。

 年明け早々に国会が始まる。納得できる負担なら受け入れるという国民は少なくあるまい。どの政党が税・財政問題に責任を果たそうとするのか。そこに注目しよう。