その命が生きて行けるのは標高3000mの山の上
(鳴き声)
国の特別天然記念物です
冬は真っ白な羽毛で雪に包まれ夏は褐色の羽毛で岩場に紛れる
渡り鳥のように長い距離は飛べず山肌を歩く姿はどこかユーモラス
子育ても一生懸命です
その鳴き声は…
(鳴き声)
カエルみたい
(鳴き声)
そんなライチョウに危機が迫っていました
地球温暖化などによる環境の変化が氷河期の生き残りともいわれるライチョウを追い詰めているのです
そして…
私が一番恐れていたことがですね現実に目の前で起きてしまった。
なぜこんなことに…
そこで始まった日本初の本格的な…
国や研究者動物園が手を組んでニホンライチョウを絶滅の危機から救おうというのです
標高3000mの命
守れるのか?
ニホンライチョウの生息地の一つ南アルプス
その険しい山道を登るのは信州大学で25年以上にわたってライチョウを研究して来た…
絶滅の危機に瀕しているニホンライチョウ
特にここ南アルプスでは数が減り見つけるのは容易ではありません
山頂付近を探すこと4時間
(中村さん)あっあ〜あそこにいました!
(スタッフ)あっ近い…あぁ。
(中村さん)群れでいます。
今チャンスです。
(スタッフ)こんな近い所に。
ライチョウは6月にヒナが生まれてから10月頃までこうして家族単位で生活しています
ハイマツという背の低いマツの中に巣をつくり高山植物の花や木の実などを食べます
オスの目の上には肉冠と呼ばれる赤い皮膚がありますがメスにはありません
(鳴き声)
最大の特徴は…
ライチョウは外国では狩猟の対象ですが日本では古くから山岳信仰と結び付き神の鳥として大切にされて来たからです
既に絶滅してしまった日本産のトキやコウノトリの二の舞いは避けたい
中村さんはライチョウに足環をつけて個体識別をし生存率などを調べています
そんな中心配なのは…
世界のライチョウは北半球の一年中凍った原野や森林などに生息しています
この中でニホンライチョウは離れ小島に取り残されたように生きる世界最南端のライチョウです
大陸から日本にやって来たのはおよそ2万年前
氷河期が終わると寒い場所を求め高山へ逃げ延び辛うじて命をつないで来ました
生息地は北アルプスや南アルプスなど主に標高3000m級の山岳地帯5か所
…に減ったと推定されています
その理由の一つが地球温暖化
気温が上がりライチョウが好んで食べる高山植物の生える場所がなくなって来ているのです
さらに…
高山植物を食い荒らすようになったためといわれています
渡り鳥のように移動できず同じ地域にしか住めないライチョウはわずかな環境変化や伝染病によって一気に減る恐れがあるのです
2012年環境省はニホンライチョウを近い将来野生で絶滅の危険性が高い絶滅危惧B類に指定
同じ年の10月に日本初となる本格的な保護計画に乗り出しました
その柱は2つ
1つはライチョウが生息する山で保護を行う域内保全
もう1つは生息地の外動物園での人工繁殖を目指す域外保全です
域内保全の舞台は生息域最南端の南アルプス
ここ北岳は減少が最も著しいエリアの一つです
域内保全を任されたのはライチョウ研究の第一人者中村さん
一体どうやって守るのか
あれです。
それは山頂付近
標高3000mに立てられた手作りのケージ
生まれたばかりのヒナと母鳥をこのケージで保護しながら子育てを見守るといいます
その理由は…
日本のライチョウの最大の特徴はですね…。
その理由の一つはですね…。
高山に出没するようになったキツネなどにヒナが食べられるのを防ぎ悪天候から守る狙いもあります
入りますので。
(スタッフ)一緒に大丈夫ですか?
餌として与えているのは去年この山で採取した高山植物の実を保存したもの
さらに高山植物そのものも植えてヒナの食べ物が不足するのを防ぎます
そして天気が良い日には…可能な限り外に出して散歩をさせます
できるだけケージから出してやることですね。
(中村さん)高山帯での生きるすべを母親からですね教えてもらえるようにしてるわけですね。
それを見守る中村さん
自由に動き回るヒナがはぐれないよう誘導したり外敵にも目を光らせたりとひと時も息は抜けません
今回…
みんな無事だろうか
夕方には再び母鳥とヒナをケージの中に誘導
こうして長い時には一日に13時間も付き添います
中村さんは近くの山小屋に泊まり込み3週間見守りました
ここまで成長したらですねあとはあの…捕食者からも悪天候からも身を守ってですね生きて行ける確率が非常に高くなるんですね。
翌日
いよいよ山へ返す時が来ました
はい出します。
母鳥には黄色い足環
これからまだまだ大きくなるヒナには足環はつけずに放します
自然界では生後1か月以内にヒナの半数が死んでしまう中ケージ保護の6羽は全て無事
その後ろ姿に中村さんは…
(中村さん)あとは自分達でですね何とか生き延びてほしいという気持ちですね。
その1か月半後
中村さんが公表した事実は衝撃的でした
私が一番恐れていたことがですね現実に目の前で起きてしまった。
一体何が?
今年8月
中村さんが発表したのは北アルプスの標高2800m付近で撮影した写真
そこはケージ保護した南アルプスとは別の場所
ライチョウのヒナをニホンザルが襲ったのです
私が一番恐れていたことがですね現実に目の前で起きてしまった。
徐々に近づいたサルが瞬間的にヒナを捕まえて食べてしまった
以前はいなかったサルまでもが高山帯に現れるようになったのです
中村さんが最も恐れるのは…
もう一刻の猶予もありません
今回の保護計画では南アルプスで行われたケージ保護と同時進行で動物園での人工繁殖を目指す域外保全も進められました
6月
中村さんが向かったのは北アルプス
南アルプスほどライチョウが減少していないこの山で動物園で育てる卵を採取します
10日ほどかけて5〜6個の卵を産むライチョウ
今回は母鳥への影響を考慮し複数の巣から時期をずらして産んで間もない卵5個と母鳥が温め始めた卵5個を集めました
産んで間もない卵は既に東京の上野動物園に送られています
そして…
(中村さん)これで無事5卵採集できました。
あとはよろしくお願いします。
母鳥が温め始めた卵が向かった先は…
広大な里山を切り開いて造った動物園です
ここでは失われつつある里山を復活させながら人と自然とのかかわり方を伝えています
運び込んだ5つの卵はすぐに温度と湿度を一定に保ったふ化器へ
無事かえるのでしょうか
域外保全の中心メンバー山本茂行園長
ライチョウの減少には里山の自然も深くかかわっているといいます
高山のライチョウが危機になってるのは里山が危機だからだよということなんですよね。
要するに里山にあんまり人が手を付けなくなった人が撤退して行った。
その結果野生動物の餌が豊富にあって彼らの天下になっちゃったわけだよね。
でシカやイノシシがものすごい増えた。
だから里山の野生動物の管理をしっかりできれば高山にシカやイノシシは上がって行かないわけですよ。
簡単に言えば。
6月下旬
上野動物園に運ばれた卵は全てふ化に成功
オス3羽メス2羽が無事生まれました
これで繁殖にもつながる
期待が膨らみます
一方富山のファミリーパークでは5つの卵のうち4つがかえります
残りの1つは中止卵
山で採取する前に成長が止まっていました
残ったのはオス3羽とメス1羽
しかしメスは生後8日目の夕方突然元気がなくなり死んでしまいました
さらにまさかの知らせが届きます
無事に誕生した上野の5羽が…
いずれも原因は不明です
繁殖の望みは絶たれました
もうやっぱり残念だなと。
手探りの域外保全
生き残った富山のオス3羽に希望を託しより慎重に見守りました
6月末生まれたばかりの体重はわずか18gでした
生後23日ではオス特有の目の上の赤い肉冠もまだはっきりしません
それが9月には赤い肉冠もはっきりし体重は400g以上に
足元からお腹は白い冬の羽毛になり始めました
そして先月
体重は親鳥と同じほどに
全身はほぼ真っ白です
雪が降ることのない動物園のケージの中でもライチョウは羽毛を生え変わらせ冬を乗り越える準備をしていました
まぁ私は3羽残ってるというのはやっぱりすごい大きな成功だと思ってます。
だからある意味では全部うまく行ってたら何がうまく行って何がまずかったか逆に分からなくなってしまう。
10月
ライチョウの研究者中村さんが向かったのは南アルプス・北岳
3か月前あのライチョウの親子を放した山です
今も生きているのか
10月
南アルプスの北岳には厳しい冬が近づいていました
夏に放したあのライチョウの親子は無事でいるのか
あっいた!
でも目の上が赤いからオス
あの母鳥ではありません
さらに黒い足環
ヒナ達には足環はつけていません
結局この日見つけたライチョウは3羽
どれもあの親子ではありませんでした
残念ながら…。
ただ標高の低い所でですねライチョウの足跡をたくさん見つけましたからね。
恐らくあの…ケージ保護した家族もし無事だとしてもですねもう既に…。
初めての域内保全
でも人が守れるのはここまで
あとは自力で生き延びることを信じるしかありません
一方人工ふ化に成功した域外保全にも将来的にはこんな課題が
…っていうそういったちょっと先の長い話になるかと思います。
実は動物園で飼育したライチョウは野生へ返すと死ぬ恐れが
自然界にある毒性の高い植物を食べることができないからです
それを克服する研究は既に始まっています
先月研究者が採取していたのはライチョウのふん
野生のライチョウは高山植物の毒性を分解できる特殊な腸内細菌を持ちヒナは親のふんを食べてその菌を受け継ぐといいます
そこで
かつて全国にいた…
残り23羽になって保護に力を入れましたが野生絶滅しました
日本の象徴といわれたトキも30羽ほどになって本格的な保護を始めましたが手遅れでした
絶滅した日本のトキとコウノトリが我々に残した教訓というのはですねホントに数が減ってもうギリギリの段階になってね保護に手を付けても手遅れだということですね。
残りおよそ1700羽
それはライチョウからの警告
標高3000mの命は終わらせない
あっいた!いたいた!
本州唯一のナベヅルの越冬地山口県の八代盆地
子供達はツルから多くを学び成長して行きます
ツルの里の四季を見つめました
2015/12/21(月) 01:55〜02:25
読売テレビ1
NNNドキュメント「標高3000mの命 ライチョウからの警告」[字]
特別天然記念物「ライチョウ」が絶滅の危機に瀕している。8月にはサルがヒナを食べる衝撃的な姿も確認された。“保護と増殖”の両輪でライチョウを守る人々の情熱に迫る。
詳細情報
番組内容
国の特別天然記念物「ライチョウ」が絶滅の危機に瀕している。温暖化でこれまでいなかったシカなどの野生動物が高山に増えているためだ。8月にはサルがヒナを食べる衝撃的な写真も公開され専門家を驚かせた。南アルプスではふ化直後のひなを悪天候や天敵から守る取り組みが始まり、東京と富山の動物園は採取した卵を人工ふ化させて繁殖させる技術の確立を急いでいる。“保護と増殖”の両輪でライチョウを守る関係者の情熱に迫る。
出演者
【ナレーター】
永田亮子
制作
山梨放送・北日本放送(共同制作)
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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