イノベーターが掲げる第一の目標が、満たされていない顧客ニーズを特定することだとすれば、「ロンドン・ペニー・パーセル・デリバリー・アンド・オートマチック・アドバタイジング・カンパニー」(以下ペニー・パーセル)は時代の123年先を行っていた。
本紙(フィナンシャル・タイムズ)の熱烈な記事によれば、1892年のクリスマス直前に立ち上げられたこの新会社は「大都市ロンドンの道路に斬新な構造のトライシクルキャリアー(三輪型輸送車両)1000台を配置し、全区域に小包の受け取り用オフィスを開設する」ことを目指していた。
ロンドン中心部のチャリング・クロスから5マイル圏内では、三輪車に乗った配達人が比較的軽い小包を1ペニーで配達する。「夜に荷物を持ち帰ることを期待されているシティー(ロンドン金融街)勤めの疲れた男性と、買い物中に不格好な荷物を抱え込まなければならない女性たちにとって、完璧な天恵になるはずのイノベーションだ」という。側面がガラス張りになっている三輪車の荷台は、一定間隔で変わる「巡回広告」が表示される仕組みだ。
移動式倉庫から「マイクロウエアハウス」、より機動性の高い配達車両に至るまで、ペニー・パーセルのビジネスモデルの各要素は、アマゾン・ドット・コム、ウォルマート・ストアーズ、ウーバー・テクノロジーズや無数のスタートアップ企業が猛烈に取り組んでいる今に脈々と通じている。顧客に至るまでの最後の1マイルを征服することを目指し、空が暗くなるまでドローン(小型無人機)を飛ばし、四輪や三輪、二輪、そして一輪の小包配送車で大都市の道路を渋滞させようとしているものだ。
だが、タイムトラベルをするベンチャーキャピタリストはまだ、そのようなサービスのビクトリア時代の原型に大金をつぎ込む前にためらうだろう。なぜなら、安さと速さ、適時性、正確性を同時にかなえるオンデマンドの小包配達のニーズがまだ満たされていないのには妥当な理由があるからだ。
■「加速している幻想」を抱くのは誤り
英エコノミスト誌は最近、次第に高まるビジネスの変化のペースに関する多くの考えに誤りがあることを暴いた。データの流れのスピードと量が「加速しているという幻想」を生み出すと同誌は書いた。この幻想がどこよりも影響力を持つところがある。インターネット上で即座に満足を得られるという約束が、そう、トラフィック(交通)の現実とまみえるオンライン小売りの世界だ。ロンドン中心部では、自動車がまだ馬車と同じスピードで動いているのだ。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のティム・ラセター氏によると、最後の1マイルを巡る競争に勝つためには、小売企業はスピード、多様性、利便性、コストの間で難しい妥協をしなければならない。
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