(あさ)あっいてた。
(忠嗣)あさ姉!久太郎!久太郎って呼ばんといてぇな。
忠嗣や。
もうえらい仕事も任されてるんやで。
ふ〜ん。
(うめ)えらいご立派になられて…。
お父はんお母はんに気付かれへんかった?大丈夫や。
それにお母はんは今今井の分家の七回忌がある言うて下総の市川まで手伝いに行ったはります。
お母はん元気にしてはるの?元気や元気。
近いうちに大阪までお姉ちゃんのお子の顔見に行かなていつも言うたはるで。
そらうれしいなぁ。
お父はんは?まあお父はんは心配せんかて元気やろけど。
あさ姉。
お父はんらの話もええけどアメリカの話も聞いてぇな。
アメリカはえらいとこやったで!その話が一番聞きたい!アメリカのお方てみんな背ぇが6尺5寸あるてほんま?それよりもおあさ様ほんまにええんだすか?せっかく東京まで来てるのに親御様にお会いにならへんて。
そら会いたいけど…うちが千代を旦那様やお母様に任して東京に勉強に来てるやなんて聞いたらお父はんどない怒りはるか…。
せやなぁ。
そらえらい怒らはるやろな。
そやろ。
そやさかい…ん?今久太郎が言うた?はっ!お父はん…!・「朝の空を見上げて」・「今日という一日が」・「笑顔でいられるように」・「そっとお願いした」・「時には雨も降って」・「涙も溢れるけど」・「思い通りにならない日は」・「明日頑張ろう」・「ずっと見てる夢は」・「私がもう一人いて」・「やりたいこと好きなように」・「自由にできる夢」・「人生は紙飛行機」・「願い乗せて飛んで行くよ」・「風の中を力の限り」・「さあ心のままに」
(忠興)忠嗣の様子が何やおかしい思て仕事のついでに後追うてみたらまさかお前がおるとはなぁ。
お久しぶりだす。
お久しぶりやあれへん!何で言わへんねや!?お父はん怒りはりますやろ?ほら怒ってる…。
そら怒るやろ!嫁いだ娘がこっちに来るいうたら孫連れて土産持って親に顔見せに来るいうのがあるべき姿やないか。
それがお前親には知らせへん千代は連れてきぃひん勉強だけしに来ましたて!お土産やったらありますさかい!これな堀江のあみだ池で買うたあわおこし。
へえ〜こらええな!お母はんに何て渡そう。
土産なんてどうでもええんや!すんまへん。
せやけどお父はん近頃はうちが育ってきた頃とは違ておなごも学問した方がええいう風潮になってきてるみたいだす。
はぁ?福沢諭吉先生の書きはった「学問のすゝめ」いうご本はお読みになりはりましたか?「天は人の上に人を造らず」いう言葉も感じ入りましたんやけどうちがもっとびっくりぽんしたのは3年前に刊行された第8編だす。
「そもそも世に生まれたる者は男も人なり女も人なり」いうこのひと言だす。
(福沢)うんうん。
おなごも男と同じ人だす。
この世は男と女両方によって作られるべきものなんだす。
そもそも男と女の違いは腕っぷしの強さ弱さだけだす。
そやのに女が女やいうだけで男の言う事は何でも聞かなあかんいうのは理不尽だす。
これからはおなごかて勉強して男の方と意見交わし合ういうのはあっておかしない事やて思います。
そのとおり!ザッツライト。
うん…ご無礼。
ご無礼ご無礼。
ご無礼。
うんいや〜…。
まさしく男女は体のつくり以外は平等一様にして男も女も熱いお茶を飲めば熱いしねおこしを食べれば甘くておいしいな。
男が特にね…遊びたいなと思うようにおなごもね時には羽を伸ばして大いに遊びたいと思う。
また男が大いに学んで世のために役に立ちたいと願うならば女もまた大いに学問をして世のためになりたいと思う。
これは必定。
男女とは全く同じものです。
ところが現実はいかがかな?女は熱くても男が「その茶はぬるい」と言えば「ああそうですか」と我慢し例えば男が「遊びも仕事のうちだ」と言えば「そういうもんですか」と家で家事をしながらじ〜っと我慢をしておる。
日本の婦人は「生まれては親嫁いでは夫老いては子に従え」とそう教えられこれに従うております。
しかし我ら日本男児果たしてそのような事を強いられてそれに従えますか?従えますか?従えますか!?従えますか?無理です。
うん…。
はれ?あなた確か新橋の…?いやいや…いかなる身分の人間も自由と独立を妨げられてはなりません。
それが私の考えです。
婦人に対しても同じです。
そやけどおなごがそのように生きるいうのは実際やってみますと大層難しい事のように思われます。
理解ある親や夫に支えられていますのにそれでも難しいのは何でなんだすやろか?やはりその夫や家から自由に生きるためには婦人も経済の自立を図るべきです。
しっかりとした財産を持ち世間に対して己の責任を重とう持たねばなりません。
責任?うん。
独立自尊。
大いに学びしっかり働いて…しっかり稼ぐ。
ああそうだ!あなたはいつかおなごの社長になりなさい。
へ?社長?失礼ながらあなたもしや福沢先生…。
いやご無礼ご無礼!愉快でした。
これ一枚だけ。
懐かしいんでな。
あ〜ご無礼ご無礼。
ご無礼!いや〜愉快でした。
はぁ行ってしまいはった。
うん…。
日本にもやっと新しいおなごが出てきたか。
これから7年後に福沢諭吉は新しい時代の女性の在り方を提案する「日本婦人論」を刊行します。
福沢の書物はこの先も長きにわたってあさの心を支える事になるのです
はぁ?大久保様に会うたやて!?シ〜!ないしょにしてな。
大久保様大変なお仕事の合間縫うて時々五代様に会いに来てはるそうなんだす。
感激しましたわ。
えらい大きい温かい手ぇのお方でなぁ。
ほんま偉ぶるとこのない優しいお方で。
へえ…!なんちゅう事や…。
大体お前炭坑はどないしたんや?へぇ。
炭坑はやってみて先のある仕事やいうのはよう分かりましたさかいどないかして復興させるつもりだす。
長い目ぇで見たら今が辛抱の時やて思てます。
今井みたいな銀行への道は遠なってしまいましたけど…。
いや銀行経営もなかなか難しい。
まだ日本に遊んでるお金を銀行に預けてそのお金を銀行が必要としている人に貸すっていう考えが根づいてないねや。
そうだすか…。
そやけどきっともうじきだす。
五代様とこの町歩いてよう分かりました。
この国の文明は今まさに花開こうとしてますのや。
今井のお金を金に変える人たちが出てくるのもきっともうそない遠い話やあらしまへん。
なるほど。
お互い辛抱の時だすなぁ。
はぁ?何を生意気な!おあさ様。
すんまへん。
認めざるをえんようやなぁ。
あさと話してると何やおなごと話してるようには思えへん。
いや男や女やいうような事やのうてあいつはもう一人の商売人なんやなぁ。
回想あさは男として育ててみたらどないや?はぁ?あさは実は男やったという事にして今井の家督をあさに継がせるんや。
負けたわ…お父はん。
(大久保)よかとか?これはおはんがイギリスに行っていた時に買ってきたというとっておきの酒じゃっどが。
(友厚)はい。
これを共に空けるのは大久保さんしかいないと前から決めておりもした。
甘党のおまんさぁの口には合いませんか?うんにゃ…。
ああ…。
ああ…。
おはんも今はおいがこそくな政治家になったと思っているか?はぁ?何をおっしゃる。
大久保さんは日本の未来を一番よく考えてるお方じゃ!大久保さんに弱気になられたら…。
いいやおいはこれから変わっど!今まで外国やら藩閥やらいろんなものに干渉されて何も自由にできなかった。
じゃっどんこれからじゃ!これからは大いにやってやっど!じゃっど!その意気でごわんど。
それでこそおいが昔から知ってる大久保さんじゃ!
(笑い声)明治が始まって10年。
おいは常々新しい時代が出来上がるにはあと20年かかると思ってる。
20年…。
という事はトータルで30年か。
じゃ。
今までの10年は事を起こし落ち着かせるまでの始まりの時期。
そしてこの先10年は政治を整え民の産業を活発にする建設の時期。
五代。
おはんにはますます気張ってもらわねばならん。
おはんもです。
うん。
おいもあと10年は気張ろう。
そしてその先の10年でようやく新しい日本が出来上がる。
そうか。
そのころには日本はどげん国になってるんでしょうなぁ。
外国に負けない強い国じゃ。
かといって力でねじ伏せる訳ではない。
本当に強いものはそんな事はしないものじゃ。
戦は破壊するだけのもの。
もうこりごりじゃ。
じゃな。
あっ。
チェリーか?大久保さん一つだけ忘れておいもす。
おまんさぁは産業農業文化教育。
いろいろ細かい事まで日本の未来を考えておられるが女性を育てる道それを作るのは忘れているようでございもす。
お…。
そいは見落としていたな。
もしかしたらその道を作る事の中にこの国を戦いなくして強くする方法が隠されているのかもしれんのう。
ファースト・ペンギンの出番じゃ!ハハハ。
おはんのおなご好きも悪い事ばかりじゃないなぁ。
はぁ?何をおっしゃる。
さあ飲みに行きもんそ!もっと日本の話をしもんそ!おう!
(笑い声)ん!ああ…。
ああ…。
そしていよいよあさたちが大阪に帰る日となりました
(三坂)また昨日もお泊まりになったんですか?うん…ちょっと飲み過ぎてしもた。
そろそろ行かな。
あささんの汽車を見送る時分や。
そのあとは渋沢様との会合です。
お忘れないよう。
分かってる分かってる。
今日はあまり天気がようないみたいやなぁ。
(ドアが開く音)五代様!大変です!号外号外!号外号外!号外号外!号外号外!暗殺て…。
明治11年5月14日の事でした
生字幕放送でお伝えします2015/12/24(木) 08:00〜08:15
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 あさが来た(76)「東京物語」[解][字][デ]
あさ(波瑠)が東京の牛鍋屋で、弟の忠嗣と父の忠興(升毅)とあって話をしていた。すると突然、福沢諭吉(武田鉄矢)が割って入り語りだし…。
詳細情報
番組内容
東京を訪れているあさ(波瑠)は、弟の忠嗣と牛鍋屋で待ち合わせていた。そこで父の忠興(升毅)ともばったり出会い、あさは久々に家族との会話を弾ませる。あさが女性の社会進出について語っていると、そこに割って入って来たのは、福沢諭吉(武田鉄矢)であった。福沢は、女性の社会進出について熱く語りかけて…。そして、あさが東京を去る日、五代(ディーン・フジオカ)があさを見送りに行こうとすると…。
出演者
【出演】波瑠,升毅,ディーン・フジオカ,友近,柏原収史,武田鉄矢,【語り】杉浦圭子
原作・脚本
【作】大森美香
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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