(ドアの開く音)
(鳥居勘三郎)
15年前京都市内に住む小学4年生の少女が学校帰りに何者かに誘拐された
犯人は少女の家族に身代金1千万円を要求し警察に通報すれば娘の命はないと脅した
少女の父親は娘の身の安全のために警察には連絡せず犯人の指示どおりに身代金を支払った
翌日少女は路上で解放され歩いているところを警察官に保護された
その後警察は全力で犯人を追ったが手掛かりがつかめないまま事件は迷宮入りとなり5年前ついに時効を迎えた
そして…
マナー講座裁縫教室料理教室…。
(七尾洋子)花嫁修業のためにどれか1つは強制的に通わせるってパパってば何考えてんだか。
行ってみれば?花嫁になるならないは別にして女としての品位がグーンと上がるんじゃないの?なるほどね!女磨きか。
ああそう考えると楽しそうな気も…。
(おたま)ほほほ…。
しょせんは付け焼き刃。
やっぱ甘いか〜。
そうですとも。
女の気品は長年の修業によって培われるもの。
おたまをご覧ください。
長年かけて修業しても行き着くところはおたまさんか…。
何ですその言い草!ちょっとちょっと…。
ねえ。
2人で行ってくれば?「コミュニケーション講座厄介なあの人との付き合い方」。
(会沢桂子)石段上に複数のゲソ痕がありました。
ガイシャは何者かともみ合って転落したようですね。
(兵藤兵吾)殺しの可能性が出てきたな…。
(吉川新平)あっこれ何ですかね?ガイシャの足元に落ちてたんですけどね。
(桂子)キャンディー?
(茅野太一)藤本光雄58歳。
頚椎骨折により死亡しています。
(高岡俊介)妻とは15年前に離婚子供はすでに独立し現在は一人暮らしです。
(星野康夫)所持品からは財布が見つかり中身も残っていました。
物盗りの線は薄いと思われます。
(村井信治)となると怨恨か通り魔か…。
現在交友関係を中心に捜査を進めてます。
ところで現場に1つ妙な点がありまして。
(村井)何だね?
(兵藤)ガイシャ死ぬ直前までこれを握っていたようです。
(村井)何だこれは。
アメかね?
(兵藤)ええ。
マルボシ製菓から出ているレモンビートという商品でした。
レモンビート?
(兵藤)ガイシャの足元にありました。
レモンビートの発売は1990年。
現在全国のコンビニやスーパーで売られています。
レモンビートレモンビートレモンビート…。
どうしてキャンディーなんかが気になるんです?あった。
「小田みずほちゃん誘拐事件」。
15年前ミヤコ電機の社長小田晃一さんの一人娘みずほちゃんが誘拐されて1千万が要求されるという事件があった。
でそのヤマとキャンディーにどんな関係が?事件後みずほちゃんが警察に話してくれた。
誘拐されて怖がってたみずほちゃんにホシはキャンディーを与えたそうだ。
保護されたみずほちゃんのポケットにもキャンディーの包み紙が入ってた。
もしかしてそのキャンディーっていうのが…。
レモンビート。
ああ…。
同じキャンディーが今回のヤマにもかかわってると。
う〜ん…でもキャンディーだけで2つのヤマを結びつけるってちょっと強引じゃありません?習い事楽器やってみる?楽器?『レジェンド』
(みずほ)上達しましたねぇ。
(紺野照彦)いやぁ本番でうまく弾けるかな…。
大丈夫。
自信持ってください。
はい。
(みずほ)お疲れさまでした。
あっじゃあ紺野さん明日のレッスンまでに30回復習してきてください。
ああ〜厳しいなぁ先生は。
(みずほ)発表会までビシビシいきますからね。
はい!
(みずほ)はい。
じゃあありがとうございました。
(拍手)熱心な先生。
(みずほ)あっ鳥居さん!やだびっくりした!久しぶり。
5年ぶり?そうですね。
あの事件の時効以来ですから…。
こちらは?部下の七尾です。
何だお嫁さんもらったのかと思っちゃった。
残念ながらそうはうまくいかないよ。
レモンビートが…?はい。
殺された男性のそばに落ちていたんです。
ごめんね何か嫌な記憶を蒸し返して。
念のために確認したいんだ。
最近何か変わったことって起きてない?いえ特に変わったことは…。
ならよかった。
むかつくことならあったんですけど。
えっ?1年付き合ってた彼氏に別れたいって言われちゃった。
他に好きな人ができたんだって。
浮気が本気になっちゃったんですよ。
いやひど〜い!でしょ〜?次はもっといい男見つけてやるんだから。
竹原さん。
はい。
3時半からの生徒さんお見えです。
すぐ行きます。
はい。
仕事楽しそうだね。
はい。
生徒さん達の成長を見るのがうれしくて。
5年前はバイトだったんですけど今じゃ熱血教師ですから。
もちろんソリストになる夢あきらめてませんよ。
君ならいつかきっとなれる。
私もそう思う!それじゃあレッスンがあるので失礼します。
んっ…?変だな…今竹原さんって呼んでましたよね。
竹原さん。
はい。
彼女の名字は小田じゃ…?事件のせい。
ミヤコ電機の小田社長はワンマンで知られ強引なリストラ容赦ない下請けの切り捨てで随分反感を買ってたらしい。
だから15年前の誘拐事件の時も単なる金銭目的じゃなくて…。
社長に対する個人的な恨み?そういう見方も結構あった。
だが事件後警察が会社の内部事情を調べたところいろんな事実が次々と明るみに出た。
何です?粉飾決算。
過労死のもみ消し。
労働基準法違反。
外国人労働者を違法に雇用してた証拠も出てきた。
ひどい会社だったんですね。
だがそういう社長に面と向かって反対できる者はいなかった。
で会社の内部事情が公表されるとマスコミは一斉に社長に対する攻撃を始めた。
でしょうね。
まあその誘拐事件そのものも自業自得じゃないかという声も出た。
そういうふうにして世間の信用をなくしてミヤコ電機は倒産。
小田氏は家族を残して自殺した。
彼の妻も度重なる心労によって病に伏し1年後に亡くなったそうだ。
両親を失ったみずほさんはその後親戚の養子となり名字が竹原と変わった。
まあ事件に家族を奪われたようなもんだね。
そうだったんだ…。
だけど彼女そんな過去があるようには見えませんよね。
明るかったし。
いやいやあの明るさはつらい思いの裏返しかもしれないよ。
5年前時効成立を伝えに行った時も彼女は笑ってた。
悔しいなぁって言いながらつぶやくように笑ってた。
おみやさんお待たせ。
ご注文の品です。
はい。
サンキュー。
ありがとう。
気にしないで。
愛する男に尽くすのが私の喜びなの。
音楽でも聴くんですか?違いまーす。
15年前のホシの電話。
ねえ聞こえた?今聞こえた?今から聞くの。
ああ…。
(少年の声)「明日…京都駅から…3時ちょうどに…天橋立行きのバスに乗って…南丹パーキングエリアで…ゴミ箱に…お金を入れる…」「目印は…赤いリボンです」以上です。
これが連続して3回。
これ小田社長が自分で録音したんですか?彼の自宅の電話でね。
彼はホシの指示どおり3時ちょうど京都駅発の長距離バスに乗った。
途中南丹パーキングエリアで15分の休憩時間があってそこのゴミ箱に目印の赤いリボンが結んであった。
現金をそのゴミ箱に入れバスに戻ったと。
でバスが出発した後ホシが現金を回収か…。
(少年の声)「明日…京都駅から…3時ちょうどに…」これ子供の声ですよね。
この子供の声については当時いろんな説があって一番多かったのがホシの子供じゃないかって。
う〜ん…でもいまいちピンとこないなぁ。
このヤマと今回の殺し本当に関係あるんですかね?あらやだ殺しのほうならもう解決しちゃいそうですよ。
(鳥居・洋子)えっ?
(桂子)さっき若い男が任意で引っ張られてきてた。
(鳥居・洋子)嘘!?
(岡辺正孝)見間違いじゃありませんか?
(茅野)あのね社員の方がね皆さん証言してるんです。
キョウレンタクシーの制服を着た男が藤本光雄さんに会いに来たってことを。
あなた達がトラブってる姿も見られてるんですよ。
(藤本光雄)俺は何も知らんって!待てよ!しらばっくれるつもりかよ!?知らないって!被害者とあなたって一体どんな関係だったんです?行きつけの居酒屋で何度か顔を合わせて…。
何となく仕事の愚痴とか聞いてもらうようになって…。
この間金貸したんですよ。
金?いくら?3万。
すぐに必要だって言うからつい…。
じゃああれだ。
あなたが職場を訪ねて来たのは…。
「金を返してもらうためか」「なのにしらばっくれるから俺もムッとして…」「だけど殺しちゃいませんよ」
(兵藤)岡辺正孝タクシーの運転手です。
彼だな。
ホシ?違うよ。
みずほさんの別れた恋人。
どうしてわかるんです?ペンダントおそろいじゃない。
ええっ!?岡辺正孝さん。
鳥居っていいます。
ちょっとお話いいですか?もう全部話しましたよ。
ああ…竹原みずほさん知ってますよね?じゃああの岡辺正孝って男は15年前の誘拐事件のガイシャとも今回の殺しのガイシャとも接点を持っていた…。
2つのヤマを結ぶのはレモンビートだけじゃなかったわけだ。
岡辺正孝洗ってみるか。
洗ってみるって何をです?タクシー。
洋子明日タクシーに乗ってよ。
はあ?
(起動音)ええと京都駅まで。
なぜわざわざ私を指名したんです?あっ…昨日のおわびが言いたくて。
変な質問したりして本当にごめんなさい。
岡辺正孝君について。
君の別れた恋人って彼だよね?正孝が何かしたんですか?いやまさか。
ただある事件の被害者と知り合いで警察で話聞かれてる。
1つ確認したいんだけども君の誘拐事件のこと彼に話した?話したことはあります。
彼はどんな反応をしてた?そりゃ普通に驚いてましたよ。
でも今は後悔してます。
話さなきゃよかったって。
どうして?次に会った時だもん。
別れたいって言われたの。
トラウマがあって面倒くさい女とか思われたんじゃないかな?もう1つ。
誘拐犯にキャンディーをもらった話はした?そこまでは…。
(紺野)こんにちは。
こんにちは。
あっ…ちょっと早過ぎたかな?30回練習してきました?50回しましたよ。
あと1週間だからね頑張らなきゃ。
じゃあ先に行って待っててください。
ええ。
失礼します。
今の人もう5年も通ってるんですよ。
本当にギターに夢中みたいで。
1週間…発表会か何かあるの?そうなんです。
私司会するんです。
もう緊張しちゃって…。
1週間ってことは10月27日…。
君の誘拐事件の日だよね。
記憶を塗り替えられるかもしれません。
記憶を塗り替える?今までは10月27日が来る度にあの誘拐事件を思い出してた。
でも来年からはきっと発表会のことを思い出します。
それじゃあ。
レモンビート…。
京都駅から丹後方面にですか?ええ。
特急列車より安くて鈍行より早い行き方ありませんかね?ああ…バスなんかどうです?天橋立行きのバス。
ああなるほどね〜。
(少年の声)「京都駅から天橋立行きのバス」「京都駅から天橋立行きのバス」これが15年前誘拐事件の電話に使われた子供の声です。
で…。
(正孝の声)「京都駅から天橋立行きのバス」「京都駅から天橋立行きのバス」こっちが洋子ちゃんが録音した岡辺正孝の声。
同じ言葉を口に出させるの結構大変でしたよ。
ありがとう。
で結果は?う〜ん…変声期を挟んでるし周波数帯には当然変化があるんだけど…微妙なアクセントに一致が見られた。
じゃあこの2つの声は…。
同一人物の可能性はあると思います。
(正孝)僕の声を勝手に調べたんですか?申し訳ない。
15年前の真実話してくれませんか?あなたはあの誘拐事件にかかわっていたんじゃありませんか?彼女の過去を知った途端彼女から離れていった…。
それが理由なんじゃないんですか?格闘戦士カード…。
はい?昔小学生の間で大ブームだった…知りませんか?ええ…。
聞いたことはあります。
洋子。
ポケモンカードみたいなもの。
ああ…。
あの日は友達と公園でサッカーをする約束をしていました。
先に着いて待っていたら知らない男が近づいてきたんです。
ゴールドドラゴン…。
格闘戦士カードの中でも最強の1枚でした。
男は僕に頼みを聞いてくれたらカードをあげると言いました。
紙に書かれた文章を読み上げるたったそれだけのことだった。
それで君は言われたとおりその文章を読み上げた。
断る理由なんかどこにもありません。
「昨日京都駅から天橋立行きのバスに乗って丹後のおばあちゃんの家に行きました」。
必要な単語をつなぎ合わせてまったく別のメッセージを作成した。
数日してあの誘拐事件がニュースで流れて…。
(少年の声)「京都駅から…3時ちょうどに…天橋立行きのバスに乗って…南丹パーキングエリアで…ゴミ箱に…お金を入れる…」「目印は…赤いリボン」あれ…。
お前の声に似てたな。
ホンマやな。
(母)正孝にんじん残したらあかんえ。
「繰り返します。
誘拐されていた小田みずほちゃんが無事保護されました」
(父)あっ無事保護されたみたいや。
(母)よかったなぁ。
どうして周りの大人に話さなかったんです?怖かったからですよ!真実を話したら一体どうなるのか…。
警察がやって来て自分は牢屋に入れられるんじゃないか…。
考えれば考えるほど怖かった。
15年苦しんだでしょう。
人に言えない秘密抱えて…。
事件が時効を迎えた時は心底ホッとしましたよ。
ああやっと解放される…そう思いました。
だけどあなたは出会ってしまったんですね。
小田…いえ竹原みずほさんに。
去年の秋教室の前で彼女をタクシーに乗せました。
あいつ車に楽譜を置き忘れて後で届けに行ったらお礼にって食事に誘ってくれて…。
それから自然に付き合いが始まりました。
いずれは結婚したいそう思っていましたよ。
別れていったのは彼女の過去を知ったから?
(正孝)考えもしませんでしたよ。
まさか彼女があの時誘拐された少女だったなんて…。
名字が変わっていて少しも気づかなかった。
その時あなたは初めて知ったんですね。
あの誘拐事件の後みずほさんの家庭がどうなったのか。
お母さん…。
もう一緒にはいられないと思いました。
僕はみずほから家族を奪った事件の加害者の1人なんだ。
違う。
君加害者なんかじゃない。
君も事件に利用された被害者の1人だよ。
そんなふうには思いたくない!利用されたなんて…。
自分が犯罪の道具にされたなんてそんなふうには思いたくないんです。
じゃあみずほさんに話してあげてください。
あなたが彼女の前を去った本当の理由を。
だって彼女は今も…。
みずほは強い女です。
明るくて前向きで自分にはもったいない女です。
自分のことなんかすぐに忘れてもっといい男を見つけますよ。
そのペンダント…!みずほさんまだしっかり身につけてる。
君のことをきっと理解してくれる。
15年間君が苦しんだっていうことを。
おみやさん探しましょう!ほら手伝って。
いやいやいやいや探すっていったって…。
ほら早く!どこだろう?もう…いいや!おっとっとっと…!『レジェンド』結局見つかりませんでしたねペンダント…。
これ頼まれてたものです。
ああサンキュー。
何です?ガイシャの経歴。
ちょっと確認したくて。
あっおみやさんまずいです!まずいですよ!ほら洋子やっぱり。
「平成4年ミヤコ電機工業退社」。
ミヤコ電機?ということはガイシャは過去に…。
ガイシャがどうしたって?独り言…。
あっそう。
何してるのかね?あっお持ちします。
いいよ。
あっ。
当時警察は小田社長に恨みを持つ人物をリストアップした。
過労死した従業員の遺族。
切り捨てられた下請け。
そして辞めさせられた社員…。
これは?当時人員整理の対象となった従業員の名簿。
ガイシャの藤本光雄はミヤコ電機をリストラされてたんですか?ガイシャの藤本光雄の勤務先を訪ねた岡辺正孝はこんなことを言っていた。
あれは借金の返済の交渉に行ったんじゃなくて15年前の真実の追及に行ったんじゃないのかな?おみやさんもしかして…。
タクシーの運転手は毎日違う客を乗せる。
だから彼は誘拐犯と再会した可能性がないとは言えない。
15年前の誘拐犯が藤本光雄だったって言うんですか?そう考えると岡辺正孝の行動借金うんぬんかんぬんの作り話も全て説明がつく。
う〜ん…私は釈然としないなぁ。
だって子供の頃に一度会っただけの相手でしょ?よっぽどの特徴がない限り顔なんか忘れてると思うけど。
特徴か…。
ああどこだ…。
もう…。
あっ!これ…。
違うじゃん…。
この人藤本さんっていうんですけど彼と一緒に来たことありますよね?いやぁいつも1人で飲んではりますさかいね。
岡辺さん。
あなた藤本さんとこの店に何回か来たっておっしゃいましたよね?お店の人に訊いたら誰も藤本さんのことを覚えてないんですよ。
不思議ですよね。
またあんたかよ。
いい加減にしてくださいよ。
あなた遭遇したんじゃないんですか?15年前自分を犯罪に巻き込んだあの男に。
藤本さんのところに行ったのは借金の話じゃなくて15年前の真実を追及に行った。
違います?言ってる意味がわかりませんね。
この意味わかります?レモンビート。
何ですか?これ。
わあ〜!あっすいませんすいません。
よかった会えて。
探したんですよ。
はいこれ。
見つかりました。
いりませんよ。
もう捨てたんだよ。
おかみさんお勘定。
やっぱり岡辺正孝がホシなんですかね…。
あの夜彼は藤本光雄を呼び出しキャンディーを突きつけて15年前の犯行を認めさせようとした。
そこでもみ合いになって…。
わからない。
んっ?1つわからないことがある。
犯行当時マスコミにこのレモンビートのことは公表しなかったんだよね。
じゃあみずほさんに聞いたのかも。
いやみずほさんもキャンディーのことまで彼に話してないって言った。
それに僕が岡辺正孝にこのレモンビートを見せた時彼は表情ひとつ変えなかった。
妙だな…。
嫌な予感がする…。
仮にだよ。
仮に岡辺正孝が誘拐犯と再会してみずほさんにその人物のことを話してたとしたらどうなる?みずほさんに?あっ…!そうしたらまったく別な展開が考えられる。
つまりみずほさんがホシでもおかしくない…。
ものすごい気になることがある。
あなたは以前正孝さんから大事なことを聞きませんでしたか?例えば15年前の誘拐事件に関する何かです。
まさか。
だって彼は事件と何も関係ないじゃありませんか。
みずほさんレモンビート…。
このレモンビート受付の人に聞いたんだけど君が買ってくるんだって?好きなんです。
昔から。
何か変だなぁ彼女。
何か隠してるような…。
そういうことか…。
んっ?ギターの発表会?紺野照彦って誰です?
(みずほ)じゃあ紺野さん明日のレッスンまでに30回復習してきてください。
ああ〜厳しいなぁ先生は。
その人がどうかしたんですか?ミヤコ電機のリストラ対象者の名簿…。
あの名簿に紺野照彦の名前もあった。
彼女彼についてこうも言ってる。
今の人もう5年も通ってるんですよ。
つまり紺野照彦さんは5年前から彼女のレッスンを受け始めた。
もしかしたら…。
ちょっとおみやさん?おみやさん!『レジェンド』あなたは…。
鴨川東署の鳥居っていいます。
確か先日音楽教室で…。
ええ。
5年前からあなたあの教室に通ってらっしゃるとか。
5年前の秋…小田みずほちゃんの誘拐事件の時効が成立したちょうどその頃から。
(ため息)もう隠せませんね…。
こうして手先を動かしていると昔を思い出しますよ。
ずっとミヤコ電機の技術畑一筋だったと。
ええ。
この傷は若い頃素材の耐熱実験でヤケドした時のものです。
あの頃は寝るのも忘れて研究に没頭していました。
一技術者ながらミヤコ電機を支えているという誇りがありました。
尽くしてこられたんですね会社に。
あの頃は夢にも思いませんでしたよ。
長年勤めた会社にあんなに簡単に切り捨てられるとは…。
仕事を失った私は自暴自棄になり酒に溺れて体を壊し妻子に愛想を尽かされました。
恨みましたよ小田社長を。
大規模なリストラは彼の独断でしたからね。
やがて小田社長に対する復讐を決意する。
同じ恨みを持つ人物とともに。
小田みずほちゃん誘拐事件の犯人は2人あなたと藤本光雄。
行け!早よ行け!2人で共謀して小田社長に復讐した。
復讐…。
確かに目的は金と復讐でした。
ですがあの事件が起こした波紋は我らの予想を超えたものだった。
ミヤコ電機は倒産に追い込まれ…。
あなた達が誘拐した少女は相次いで両親を失った。
何度も…何度も自首しようと思いました。
しかし結局私にはできなかった。
勇気がなかったんです。
時効になれば気持ちも落ち着くと思いました。
しかし逆でした。
永遠に罰せられないというのは余計苦しいものです。
救われたいために時効成立後自首する犯人もいます。
あなたも救われたかったんですよ。
だからみずほちゃんに近づいた。
彼女が立派に成人してるのを確認したくて。
(紺野の声)そのとおりです。
私は彼女の明るさに触れる度に自分の罪がいくばくか軽くなるように感じました。
このまま彼女を見守り彼女の人生を応援したいと思いました。
それが身勝手な願いとはわかっていながら…。
あなたね忘れてる。
あの誘拐事件で心に傷を受けた子供がもう1人いるのを。
やっぱり2人再会してたんですね。
本当はみずほと別れたくなんかなかった。
真実を話そうと思って何度も音楽教室の前まで行った。
だけど会う勇気が出なかった。
そんな時こいつに出会ったんだ。
あっちょうどよかった。
タクシーで帰ります。
はい。
気をつけて!ええ。
すいませんいいですか?はい。
気づいたのはその手の傷のせいだ。
(正孝)1680円になりますね。
はい。
悪いね細かいのがなくて。
ジャン!頼みがあるんだけどな…。
「天橋立行きのバスに乗って丹後のおばあちゃんの家に行きました」。
まさか…嘘だろ…。
えっ?3時ちょうど天橋立行きのバス…。
南丹パーキングエリア…目印は赤いリボン…。
釣りはいい。
おい!
(正孝の声)次の日会いに行って問い詰めた。
全部認めさせた。
(正孝)あの時の犯人はあんた1人か?君はこの人から藤本光雄のことを聞き出した。
彼にも15年前の真実を認めさせようとした。
なのにあいつは犯行を認めなくて…。
口論の本当の理由はそれだったんですね。
ええ。
いやしかしあの夜法明寺の石段の上にいたのは君じゃない。
紺野さんあなたですよね?ヒントはレモンビート。
このレモンビートのことを知ってるの3人しかいません。
1人は誘拐された小田みずほさん。
あとの2人は犯人です。
藤本光雄さんの遺体のそばにこのレモンビートが落ちてました。
これ持って行ったのはあなたですよね?じゃあ何のために持って行ったのか?これを持って警察に出頭するため…。
違いますか?私そう信じています。
全て話して楽になってください紺野さん。
私はこの歳まで運命というものを信じていませんでした。
ですが彼に出会ったのは運命としか思えなかった…。
(紺野の声)何かが私に知らせてくれたに違いありません。
あの事件がまだ終わっていないという事実を。
このキャンディーについては当時報道されていない。
俺が犯人だと示す証拠になるはずだ。
おい本気なんか?あの事件はまだ終わっちゃいないんだ。
俺の手で終わらせないと。
まさかマスコミに顔さらすつもりやないやろな?
(紺野)離せ。
おい冗談やないで!俺はどうなるん?会社に知れたらおしまいやないか!
(紺野)離せ!やめとけ!
(藤本)おい…うわっ!
(紺野の声)過去の罪を償おうとして別の罪を重ねてしまった…。
皮肉なものです。
でも…どうして自首しなかったんですか?逃げ続ける苦しさを十分に知ってたはずのあなたが…。
発表会。
えっ?10月27日の発表会。
誘拐事件から15年後10月27日の発表会。
そこでみずほさんと二人三脚で練習した曲弾きたかったんじゃありませんか?彼女の記憶を塗り替えるために。
『レジェンド』。
それができれば勇気が出せる気がしました。
今度こそ自分の罪と向き合う勇気が…。
出しましょう勇気。
今ならまだきっと間に合います。
(紺野)先生…。
遅刻ですよ紺野さん。
もうギターは弾けません。
えっ?ずっと黙っていましたが…15年前私は…私は…!知ってましたよ。
やっぱりそうなんだ…。
おみやさんどういうこと?待ってたんだよ彼女は。
15年前もそうやって謝ってましたよね紺野さん。
先生…。
その傷跡よく覚えてました。
ありがとう。
ごめんよ…。
こんな目に遭わせてごめんよ…。
(紺野)食べなさい。
気づいてたんですか初めから…。
教室のロビーにレモンビートを置いたのも…発表会をわざわざ事件の日にしたのも私に気づいていると知らせるためだったんですね?いつか正直に話してくれるそう信じてました。
先生…。
さて…じゃあレッスン始めましょうか。
先生…。
今日はいい音を出すコツを教えてあげます。
大事な人に聴かせるつもりで弾くんです。
先生はいつも誰に聴かせるつもりで…?亡くなった両親と…。
それからこれをくれた人です。
大丈夫。
彼女君の過去を知っても大丈夫。
『レジェンド』話さないほうがよかったかな。
えっ?いやね今ねフッと思ったんだけどさ愛してる人には隠し続ける過去っていうのがさあってもいいんじゃないかと思ってさ。
あーんダメダメ!愛する2人の間に隠し事なんて論外!いいじゃない。
隠すことなんか何にもないから。
いや失敬な!私にだってね過去の1つや2つあるんです!ちょっとおみやさん聞いてるの!?ちょっと待ちなさい!2015/12/24(木) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]
【第4話】15年前、一人の少女が誘拐された。そのとき少女が誘拐犯からもらったキャンディが、時を経て一組の男女にもたらした運命の巡り合わせとは!?
詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林 泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條 俊、菅井きんほか
【ゲスト】前田愛、中原丈雄、細山田隆人
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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