日韓協定 違憲性判断せず 韓国憲法裁、訴え却下 外交的配慮か
【ソウル植田祐一】韓国憲法裁判所は23日、1965年に締結された日韓請求権協定が国民の財産権を保障する韓国憲法に違反するかどうかについて、「審判の対象にならない」として憲法判断を示さず、訴えを却下した。
違憲判断が出れば国交正常化の根拠が崩れることになり、日韓関係に重大な影響が及ぶとみられていた。却下の判断は外交的配慮のほか、国家間の協定を白紙にする司法判断で韓国が国際的な信用を失うことを回避した可能性もある。
日本に動員された元軍属の遺族が2009年に訴えていた。韓国政府が元徴用工らの未払い賃金などを支給する際、裁判所に提訴しないことを条件としていることなどを「財産権の侵害で違憲」と主張するとともに、日本政府や企業への個人請求権を認めない同協定についても違憲判断を求めていた。
憲法裁は決定文で、韓国政府による未払い賃金などの支給は損害賠償や補償ではなく、人道的措置の支援金だと指摘。支給根拠となる法律は財産権侵害に当たらず合憲とした上で、協定については、今回の訴えとは無関係として憲法判断を示さなかった。
協定の解釈をめぐっては、韓国で憲法裁と並ぶ最高司法機関の最高裁が、植民地支配下で動員された元徴用工らへの損害賠償を「協定の対象外」とみなす判断を示している。憲法裁の却下はこれと矛盾しないため、両国間の請求権は「完全かつ最終的に解決された」とする日本政府との解釈の違いが続くことになる。
=2015/12/24付 西日本新聞朝刊=