「きょうの健康」です。
今日も昨日に続きまして「しっかり治そうアトピー性皮膚炎」です。
昨日はスキンケアについてお伝えしたんですけれども今日は2日目です。
疑問に答えて下さる方ご紹介します。
東京逓信病院副院長の江藤隆史さんです。
江藤さんは皮膚科で診察するかたわら診療するかたわらアトピー性皮膚炎の患者向けの勉強会を1年に50回1週間に1回15年間も続けていらっしゃいます。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
アトピー性皮膚炎を改善して症状をコントロールしていくにはここの図にありますように昨日お話しした皮膚のバリア機能を強化するスキンケアこれとても重要です。
それからアレルギーですからダニやほこりなどのアレルゲンそういう悪化因子に対する対策としての除去。
そして3つ目が炎症やかゆみといった症状を抑えていく薬物療法薬。
この3つが3本の柱となって非常に重要なものといわれています。
今日は薬なんですけれどもまずどういうものがあるんでしょうか。
皮膚の炎症を鎮めるには一般的にステロイド外用薬つまり塗り薬が使われます。
また免疫を抑える働きのあるタクロリムス外用薬も使われます。
そして強いかゆみがアトピーにはありますからそのかゆみに対しては抗ヒスタミン薬とか抗アレルギー薬と呼ばれるのみ薬が使われます。
タクロリムス外用薬にはかゆみを抑える効果もあります。
よく処方されるのはステロイドの外用薬ですね。
そうですね。
一番よく使われるし我々が一番頼りにしてるのはステロイド外用薬です。
ただステロイド外用薬には誤解が多くて絶対に使いたくないという患者さんや誤った使い方をしている患者さんが少なくありません。
そういう方も含めましてどういう疑問が多いんでしょうか。
お願い致します。
はいこちらをご覧下さい。
そういう疑問があります。
どう思われますか?桜井さんは。
確かに皮膚が硬くなったり黒くなると聞いた事はありますね話には。
多くの患者さんはこれを思ってるし実際にお医者さんの中でもこう思ってる方もいるんですね。
ステロイドの薬理作用から考えてこのような副作用というのはステロイドの薬理作用としては考えられないという事になります。
まずありえないですね。
ステロイドを長期間使い続けていますとむしろ肌は白く薄くなる事はありますが絶対に厚く黒くなるという事はないはずなんです。
反対ですよね。
どうして黒くなる人がいるんでしょう?そういう人っていうのはステロイドを使ってるんですけどもそのステロイドの量や強さが不十分で効果が十分に発揮されていないという事が考えられます。
そのため炎症が完全に治まらずに炭火のような弱いけど見えない強い炎症がずっと残っているので長い時間をかけて皮膚が厚ぼったく黒くなっていってしまうんですね。
それではそのステロイドの副作用は主にどういうものがあるんですか?本当の副作用を理解していく事が重要だと思いますけど先ほど説明した皮膚が薄くなるというのが一番に挙げられます。
それ以外には血管に作用して毛細血管が拡張したり血管の壁が弱くなってきて皮下出血を起こす。
あざですね。
あざができたり。
それからステロイドにはホルモンに似た作用がありますのでにきびを出したり毛深くなるといった副作用も出る場合があります。
こうした副作用に関しては特に顔面に出やすいので顔の治療を行う時には特に慎重に薬を使う事になってます。
タクロリムス外用薬が登場してからは顔の治療もかなり行いやすくなったのはこういう副作用がタクロリムスにはないという事で我々よく利用しています。
なるほど。
ステロイドについてはまだほかの疑問はあるんですね。
教えて頂けますか?患者さんはいろんな疑問というか誤解を持っていますけども例えばこれですね。
ステロイドの成分が体に蓄積するのではという事でありますけれどもご安心下さい。
結論から言いますとステロイド外用薬は皮膚から体の中に吸収されてもすみやかに分解されて体の外に出ていってしまいます。
薬の成分が蓄積するという事は決してありませんからご安心下さい。
でもどうしてそんな心配するんでしょうか?それはいろいろだと思いますけれどもやはり長年アトピー性皮膚炎に苦しんでいる患者さんや家族は民間療法などに頼る方も少なくないんですね。
ところがステロイドを完全にやめて民間療法などに切り替えるとアトピーが悪化して肌がボロボロになっていきます。
炎症を抑えるステロイドを全く使っていない訳ですから当たり前なんですけれどもでも「肌がボロボロになるのは長年蓄積したステロイドの毒素が出てる証拠。
出きってしまえば肌はきれいになります」と言われちゃうと患者さんはそれを信じてしまってという現象があるみたいです。
毒素が出るという事はありえないという事ですね?そのとおりです。
薬をやめて肌がボロボロになるのは毒素が残っているせいではなくて薬による適切な治療を行っていないからだという事をしっかりご理解頂ければと思います。
自己判断で薬をやめないで頂きたいと思います。
ステロイドは怖がらずに使っていいという事になりますね。
はいそうです。
でもステロイドを使っているという患者さんからはこんな声も聞かれるんですね。
ここに出ているように…こんなような質問です。
こうした声が聞かれるという事は処方された薬をうまく使えていないという事の表れだと思っています。
なぜ薬が何種類も処方されるのかなぜ大量に処方されるのかその理由を理解すれば上手に薬を使えるようになり症状を改善する事ができます。
ではまず使ってもよくならないそしていつも余っちゃう。
この声に答えて下さい。
例を出してみましょう。
こちらはですね私がある大人のアトピーの患者さんにちゃんと薬を塗ったかどうかチェックするために空になった容器を全部持ってきて下さいと言って持ってきたものが全部で1か月分になります。
特別重症という訳ではないんですけども中等症の患者さんで毎日頭と顔そして体の半分ぐらいに塗る合計がこのぐらいなんですね。
量も多いですけれども種類もいろいろありますね。
そうですね。
ローションこれが頭に塗るもの7本ですね。
それで顔の方はこのタクロリムスを塗っています。
これは結構少なくていいんですが体は結構多くて17本170g。
2本色の違うのがありますけどもこれはやや強めの薬でこれは足首用に出しておりまして更に保湿薬が200gですから全体で370g。
こんな薬の処方を1か月分出してます。
全部同じステロイドではいけないんですか?そうですね体の部位によってこの図のように吸収が違うんですね。
これは角層の厚さが違うためなんですけれどもこのように数字が出ています。
腕の内側を1とした吸収量にしますとほっぺたなど顔の皮膚では13倍と結構吸収される。
逆に先ほどちょっと強い薬を出しましたけれども足首なんかですと0.4倍ですから体の半分ぐらいにしか吸収されないのでやや強めの薬が必要になります。
従って仮に顔と体で同じぐらいの炎症が起きていても顔には体よりも弱い薬を使ってあげないといけないという事になります。
皮膚は本当に考えてみると一続きなんですけれどもこれを見ますとあれなんですねいろんな種類を使い分けなければいけないと。
ですから例えばここで塗っているものを顔に塗ったりそういう事は絶対にしちゃいけないという事なんですね。
そういう事で副作用が出てしまう事もありますので是非ドクターの言う事を聞いてしっかり塗って頂きたいと思います。
ステロイドの効き目には強さによって5種類あります。
5段階でこれを医師は患者さんの症状の程度や年齢体のどの部位に湿疹ができているかを総合的に考えて薬を選んで処方しています。
そのため少し面倒かもしれませんけれどもきちんと使い分けて頂きたいと思います。
種類は分かったんですけれどもそれにしてもなかなか使い切れないかなと思うんですが。
皆さんそう思うんですよね。
こんなに出てこんなに使い切れますかと。
じゃあ塗り方がどうかという事になりますけど桜井さん塗り薬を塗る時どういうふうに塗ってます?割と少し取って薄くのばすぐらいでしょうか。
よくやる皆さんの塗り方で。
ほんのちょっとですねちょっと取ってこれでも十分。
これをよくゴシゴシゴシゴシこういう形で。
そんな感じです。
塗って頂くような形。
こういうふうに。
これでも十分薬塗れたような感じですけれどもこれでは不十分なんですね。
我々が指導する塗り方というのはもう少し量が多くてそれを評価するのにティッシュペーパーを使って判定してますけどティッシュペーパーを載せても落ちてしまう。
塗れてるんですけどやっぱりべとつきが足りないんですね。
フィンガー・ティップ・ユニットという指先に出した薬。
これを人さし指の第1関節に十分な量長さ出してそれを手のひら2枚分に塗って頂く。
これがフィンガー・ティップ・ユニットといって結構ベタベタになる。
でも今ここでは小さい範囲ですからその量をどのぐらいかお見せしましょう。
先ほどの量よりやや多く塗ります。
そしてこういう形でちょっとベトベトなんですけれどもあんまりゴシゴシせずにのばして塗って頂きます。
あまりゴシゴシせずのばして塗って頂く。
この形になります。
こういう状態。
キラキラちょっと光ってますね。
塗ってるのがよく分かります。
この量が先ほどのティッシュペーパーのやり方でやってみますとこうやりますとくっついてるんですね。
あ〜落ちません。
それだけやっぱりしっかり塗らなければ駄目という事なんですけどでも何となく少しよくすり込めば中に浸透するんじゃないかと思うんですがいかがでしょう?薬はこすればこするほど染み込むという事でそういう塗り方をする薬もあるんですけどアトピーで使う保湿薬とかステロイドはこれを見て下さい。
アトピーの患者さんの皮膚の症状というのは決して平らじゃないんですね。
このように凸凹していますからすり込んでしまうと谷底に全部薬が行ってそこに押し込められまして一番炎症の強い出っ張った部分がむき出しになってしっかりと薬が行き届かないという事になります。
しっかり行き届かせるためには上から乗せるようにそ〜っとのばしてあげる。
これが湿疹全体をちゃんと治療するポイントだといえます。
今度はもう一つの疑問でいつまで使えばいいかと。
これも非常に気になりますよね。
これは多分見てる皆さんもそういうふうに思ってる方もたくさんいると思いますけどステロイドは正しく使っていけばやめていく事も可能です。
けれど誤った使い方をしているとやめられないばかりか症状を悪化させてしまう事もあるんですね。
こちらはちょっとしたモデルを出してみましたけど皮膚の炎症の強さを縦軸にして上にいくほど症状が悪化して下にいくとよくなるという事で肌がきれいになる事を示しています。
十分な量のステロイドをこの期間塗ってます。
そうすると大体1週間程度で炎症が落ち着いてきます。
ほとんど炎症が落ち着いてよくなったように見えていてこの患者さんはこの辺で薬をやめようと。
やっぱりステロイド長く塗りたくない。
やめてしまいます。
でも肌の下にはまだ炎症が少し残ってるんですね。
この炎症が残ってると中止している間にまたジワジワジワジワ燃えてきてボーボー燃えてしまうという事になります。
すなわち再発してしまうんですね。
そこでしょうがなくてまたステロイドを使う。
そうするとまたよくなってここでまたやめる。
それを繰り返し繰り返していくとだんだんもっと強いステロイド使わなきゃいけないような状態に入りますし中止している期間も短くなったりして結果的にはステロイドを使う期間が延びてしまうし量も増えてしまう。
そういう形になってしまいます。
そうしますと再発しないためにはどうしたらいいか。
肌がきれいになったあとも薬を使っていく事をお勧めします。
先ほどと同じ出だしでステロイド毎日しっかり使って悪い状態からよくなってきます。
かなりよくなってやめたくなる時に薬をやめるんではなくて回数を減らす。
具体的には2日に1回ぐらいで引っ張ってもうちょっといいなと思ったら3日に1回ぐらい。
本当によくなったら週に1回。
重症の方ですとそれがもう少し長く続くかもしれませんがそして悪化した場合にはまた毎日ステロイドを塗る。
ちょっとした悪化を見逃さずに強弱を変えて頂いてずっと使って頂くという形にしていけばステロイドの使用量もそんなに多くなくいい状態を長く続けられる事になります。
いつかやめられますか?重症な方では結構このやり方をうまく長く使っていかなきゃいけないんですけども中等症から軽症の方でこのやり方でいくとスキンケアだけでいい状態を保つ事が可能になります。
2日間伺って改善のためにいろいろできる事があるんだというふうに思いましたけれども。
アトピーの患者さんというのは一回は脱ステロイドに挑戦しようと思うんですけれども今エビデンスのある治療というのはステロイドとタクロリムスを使った薬物療法とスキンケア。
この薬とスキンケアの重要性をしっかり理解して治療をして頂ければきれいな肌で快適な生活ができると思います。
2日間にわたりまして「しっかり治そうアトピー性皮膚炎」という事でお伝え致しました。
どうもありがとうございました。
それでは今日はこの辺で失礼致します。
2015/12/22(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 しっかり治そう アトピー性皮膚炎「ステロイドの疑問解決」[解][字]
部位によって効き目の異なるステロイドを使い分ける、薬はたっぷり塗る、良くなったからと言って急にやめない、薬をやめたあともスキンケアを続けるなど実践情報を伝える。
詳細情報
番組内容
最新の標準治療を伝えるシリーズアンコール2回目は多くの患者さんが疑問を持っていると言われるステロイドの塗り薬の使い方について。部位によって効き目の強さが異なるステロイドを上手に使い分けること、薬はたっぷり塗ること、良くなったからと言って急にやめてしまわないこと、薬をやめたあともスキンケアは毎日続けることなど、実践的な情報を詳しくお伝えする。
出演者
【講師】東京逓信病院副院長…江藤隆史,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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