(車のクラクション)
(亀山薫)あ!あ?あいやいやいやいや…。
え?
(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)ああっ…ああっ!
(アナウンサー)「今朝神奈川県の平塚海岸で女性の遺体が発見されました。
発見されたのは20代から30代の女性で死後1週間ほど経過しているとみられ身元は判明していません。
神奈川県警捜査本部は…」
(杉下右京)いやな事件が続きますねぇ。
そうっすね。
右京さん。
なんですか?いやなんでもないっす。
そうですか。
あの…気にならないっすかね?はい?俺朝から何回も右京さんに何か言おうとしてはやめてますよね。
6回目ですね。
気になるでしょ?しかし君は言うか言うまいか迷ったあげく言わないほうを選択しています。
僕はその選択を尊重しているつもりなんですが。
はぁ…。
じゃあ言います。
俺…見ちゃったんですよね昨夜。
昨夜?右京さんが女性とホテルから…。
そうですか。
見たんですか。
いや半分は嬉しいんですよ。
この人も血の通った普通の男だった。
そういう人間くさい部分を垣間見る事ができて嬉しい思いもあるんです。
だけど俺には見て見ぬふりっていうのはできないんですよ。
俺たち警察官だしやっぱり金銭でもってそういう女性をっていうのは…ねぇ。
(携帯電話)失礼。
どうぞ。
(携帯電話)もしもし。
君ですか。
昨夜はどうも。
僕も楽しかったですよ。
今夜もですか?かまいませんよ。
わかりました。
では後ほど。
言ってるそばからもう…。
右京さん悪い事は言いません。
深入りしないうちにそういう女性とは…。
亀山君この際ですから君にもちゃんと彼女の事を紹介しておきたいのですが…。
深入りしちゃってる…。
(伊丹憲一)なんで神奈川の事件で合同捜査なんだよ?
(三浦信輔)しょうがねぇだろ。
海はつながってんだからなぁ。
(芹沢慶二)忙しくなりますね。
よーしやるぞー!ほぉ前向きだねお前は。
ちょ…ちょちょちょ…。
待ちました?あぁこちらが…。
亀山薫さんですね。
お噂はかねがね。
あどうも。
お昼のカレーライス美味しかったですか?え?なんで?あついてた!想像どおりの方でらっしゃる。
1枚よろしいかしら?え?なんで?
(カメラのシャッター音)2人並んで。
(カメラのシャッター音)早く自己紹介なさい。
申し遅れました。
私杉下花です。
花さん。
ん?杉下…?
(花・右京)姪です。
(宮部たまき)おかしい。
誰だってそう思いますって。
ホテルのレストランで食事をしお小遣いをあげただけですよ。
お噂どおりそそっかしい方なんですね。
いやまさか姪がいるなんて思わないじゃないっすか。
ただでさえ私生活見えない人なんだから。
実を言うとねこのお店の名前も花ちゃんから頂いたんですよ。
そういう事もちっとも言ってくんないからなぁ。
俺はてっきり右京さんは天涯孤独だと思ってましたよ。
念のため申し上げておくと便宜上姪と言っていますが正確にはもう少し複雑で…。
え?おじ様のひいおじい様の兄の長女の養子の次男の長女が私です。
ん?ん…?花さん何度も言うようですがそれは違います。
僕のひいおじい様の弟の長女の養子の次男の長女があなたなんですよ。
間違ってるのおじ様です。
ひいおじい様の兄です。
ほらそこが違うんですよ。
はいはいそこまで。
この論争が始まると結論が出ないんですよ。
どう違うのかも全然わかんないっすけど…。
とにかくものすごく遠い親戚だと。
おじ様は私の家庭教師をしてくださってたんです。
勉強だけではなくあらゆる知識と教養を教えて頂きました。
じゃあ花さんもやっぱり東大っすか?いえ。
私は東大ではないです。
あぁそりゃあね誰でも東大に入れるわけじゃないっすもんね。
ハーバードです。
ハーバード。
ハッハハハ…ふーん。
でも結局学歴は棒に振っちゃったみたいなものですけど。
と言うと?向こうで芸術に目覚めて今はニューヨーク在住。
世界を股にかけるフォトグラファー。
カメラマン。
ううん。
カメラマンではなくフォトグラファー。
なんか違うんすか?一応芸術写真を撮ってるつもりですので。
はぁ。
あっ…。
どうぞ。
差し上げます。
え?『TOKYOOMOKAGE』。
あっ「HanaSugishita」。
あぁ。
あいいなぁ。
俺こういう写真好きですよ。
私の5年前の処女作です。
素敵でしょ。
それニューヨークですいぶんと話題になったんですよ。
そりゃすごい。
思えばそれが間違いの始まりでしたねぇ。
え?プロのフォトグラファーに転向し大学院までやめてしまいました。
まだおっしゃってるんですか?私の写真を最初に褒めてくださったのおじ様ですよ。
あくまで趣味のレベルでですよ。
プロになれとまでは言ってません。
そもそも君は芸術で身を立てるという事を甘く見ている節がありますからねぇ。
今からでも大学院に戻った方がいいと思いますよ。
ご心配なく。
おじ様にはご迷惑かけませんから。
お母様もさぞ心配なさってる事でしょう。
俺は断然花ちゃんを応援するな。
素晴らしい写真集だもんね。
ありがとうございます。
で今度はどんな写真を?これの第2弾。
5年後の東京のおもかげを撮りに。
素敵。
東京の風景は日々変貌し続けてますからね。
そうなんです。
たまに来日するとことさら感じます。
できる限り写真に残しておきたくて。
ふーん…。
うーん。
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)はぁ〜気持ちよかった。
すいません金田さん無理言ってしまって。
(金田昭一郎)何こっちだって久しぶりに船出して気持ちよかったよ。
じゃああの…5年前と同じアングルでお願いします。
おう。
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)
(花)引退されて…。
(金田)もう3年になる。
若い衆に全部譲った。
息子さんは?「親父の後を継ぐんだ」なんて言ってたのに…。
それが親不孝な息子でよ。
継がなかったんですか?そうなのよ。
男手一つで苦労して育てたのによ…。
まあしょうがねぇや。
なんだか丸くなりましたね。
5年前はもっと威勢がよかったのに。
まだまだ老け込む歳じゃありませんよ。
いや老兵は消えゆくのみよ。
ハハハ…。
あっ…。
(金田)またゴミ出し守らねぇつもりだな。
この辺もどんどん変わってくるよ。
マンションだのテラスハウスだの…。
ろくに挨拶もしねえ連中ばっかり増えちゃって…。
下町の人情なんてどこへやらだ。
まそれも時代の流れだといえばそれまでだけどな。
ん?どうしたんだい?
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)すいません。
特命係へ伺いたいのですが。
特命係ですか?どのようなご用件でしょう。
殺人事件に関する事でお話が。
あぁ…少々お待ちください。
あぁいい。
失礼。
殺人事件がどうかしましたか?あいえ。
特命係に。
なぜ特命係を知ってるんです?殺人は我々が担当しておりますので。
私警視庁捜査一課伊丹憲一。
私は捜査一課の…。
お前はいい。
さあどうぞこちらへ。
話を聞かせてください。
どうぞ。
お名前は?
(三浦)杉下花?
(伊丹)あぁ。
変人警部殿の親戚か。
なんか言ってる事もよくわかんなくって。
花壇がどうでだからどうたらこうたらってちんぷんかんぷんだよ。
まるで杉下警部と話してるみたいでしたよ。
いやなDNAだな。
ラチあかねぇから特命に置いてきた。
あぁよかったです。
あの伊丹さんという方ではラチがあかなくって。
でしょう。
あいつは勢いだけの奴だから。
で事件の情報というのはなんですか?先日平塚海岸で女性の腐乱死体が発見された件です。
死後1週間いまだに女性の身元も犯人もわかっていない。
そうですよね。
それが何か?わかったんです。
はい?何が?被害者の身元と…犯人。
(花)あそこです。
殺されたのはここの妻。
そして殺したのは夫です。
花さん声が大きいですよ。
何知ってる家なの?いえ全く。
じゃなんでよ?1つ目はこのクリスマスローズです。
ねっ気になりますでしょ?確かに気になりますね。
ねえ亀山さんも。
あぁクリスマスローズという名前なのに色が地味。
そういう事ではなく!え?このクリスマスローズは特にデリケートな花ですからそれ相応の手をかけてやる必要があります。
毎日丹念に水をやらないときれいには咲きません。
ところが現在土は乾き花は枯れ始めてます。
おそらく1週間ほど水をやっていないのでしょうね。
つまりこの花壇の持ち主に1週間前何かがあったという事です。
なるほどねぇ〜。
観察は初歩ですよ初歩。
すいません。
それで私午前中に伺ってみました。
(チャイム)
(二ノ宮純平)はい。
こんにちは。
なんですか?ちょちょちょ…。
(チャイム)花ちゃん花ちゃんあのね…。
すいません…。
なんですか?すみませんね。
またあなたですか。
写真ならお断りしたはずですけど。
あのこの素敵な花壇を作られた奥様を是非撮らせて頂きたくて。
いつ頃お帰りになるか…。
わかりませんよ!当分帰らないって言ったでしょ!あぁ…奥様はどちらに行かれてるんでしたっけ?茨城の実家です。
体壊したんで…そう言ったじゃないですか!そうでした。
失礼します!イテテテ…。
イタタ…すいませんでした。
亀山さん今度はちゃんと観察しましたか?ああえーっと意外におでこが広い。
もうウォールポケット見なかったんですか?ウォールポケット?茨城の実家です。
実家から奥様に宛てたハガキがありましたねぇ。
消印は一昨日。
つまり奥様は茨城の実家にはいない。
彼は嘘をついているんです。
あぁ…あの瞬間に消印まで見たんっすか。
おじ様この方いつもこんな感じなんですか?役に立つ事もあるんですよ。
にわかには信じがたいですね。
悪ぅございましたね!で花さんこれだけの理由ではないでしょ?もちろんです。
では元屋形船のお頭現町内会長の金田さんのお話を伺いに行きましょう。
ねっおじ様。
おかしいのはそっちだろっての!このダブル右京!!
(金田)もう毎晩ギャーギャーギャーギャー大喧嘩よ。
夜中なんかな俺ん家まで聞こえんだから。
相当夫婦仲が悪かったと。
(金田)悪いなんてもんじゃねぇよ。
亭主の方は気の小さそうな奴なんだけどね。
女房の口の悪さったらねぇよ。
でちょうど1週間前の夜ね。
そう。
24日の夜。
ひときわ大きいやつやってね。
ガラスかなんかが割れる音がして…。
で翌日から女房の姿をぱったり見ねぇ。
普段気の小さい男ほど逆上すると恐ろしい凶行に走るものです。
(二ノ宮加代子)ふざけんじゃないわよ!何考えてんのよ!?なんだよー!何よ?叩く事ないだろ!何すんのよ!バカじゃないの!?
(花の声)1週間前の夜妻加代子にののしられ夫純平はついに理性を失い妻を殺害してしまった。
そして遺体を海に遺棄した。
総合的に推理すればそういう結論になります。
ま確かに可能性はあるけどね。
いやそうに違いねぇよ。
どうしたんすか?急に。
俺の責任だ。
え?俺が現役の頃はこの町内でそんな事は許さなかった。
俺たち年寄りが若いもんに遠慮して口出ししなくなったからこんな事件が起きたんだ。
確かに地域社会のコミュニティーをしっかりさせる事が犯罪を未然に防ぐ最善の方法ですからねぇ。
だろ?俺は決めたんだ。
もう一度腕っ節鍛えなおしてよ若い連中に怖がられる頑固親父になるってよ。
おっそのいきですよ!老け込む歳じゃねぇや。
あの…あくまでまだ何も決まったわけじゃないんで。
金田さん事実がはっきりするまでこの事はくれぐれもご内密に。
わかってる。
わかってる。
ありがとうございました。
おやすみ。
あの…明日にでも家宅捜索をするべきです。
犯行の証拠が見つかるでしょう。
家宅捜索はもうちょっと調べてからじゃないとね右京さん。
花さん君は自分のした事がわかっていないようですね。
はい?これは現実の殺人事件です。
探偵ごっこが許されるものではありません。
どういう意味ですか?私は事件の解決に協力してさしあげようと…推理をお話したまでです。
推理。
君の言い分は推理とも言えない子供じみた妄想です。
ずいぶん無礼なおっしゃり方ですね。
無礼なのは君ですよ。
幼稚な妄想で探偵を気取り人を殺人者に仕立て上げる。
のみならずその幼稚な妄想を金田さんにまで吹き込んでいる。
彼が町内の誰かにこの事を話したらどうなりますか。
2人とも落ち着きましょうか。
しかし彼が妻を殺害した可能性は否定できません。
いいですか?夫婦喧嘩のあげく妻は自らの意志で家を出た。
夫は体裁のために嘘をついている。
妻は実家ではなくホテルや友人宅にいる。
そう考えるのが現実的でしょう。
おじ様らしくありませんね。
そうだとしたら花壇にこっそり水をやりに来そうなものじゃありませんか。
夫と鉢合わせするのを嫌っているんじゃありませんか?夫の勤務時間を知り尽くしてる妻に鉢合わせする危険性があると思いますか?あると思いますよ。
平日である今日休んでいた夫です。
勤務日が不規則なのでしょう。
置いてあった道具から察すると植木屋さんでしょうね。
道具?気がつかなかったのですか?観察は初歩ですよ。
まだ何か?私はフォトグラファーです。
それがなんです?世界中の人たちをファインダー越しで見つめてきました。
人間を見る目はおじ様よりも優れていると自負しております。
(ため息)反論する価値もありませんね。
早くシャワーを浴びてその幼稚な妄想を流し去っておしまいなさい。
おやすみなさい。
行きましょう。
ああはい。
あぁあ…ねっねっ…。
ちょっと言いすぎたんじゃないっすか?あれぐらい言わないとききません。
事件の捜査に首を突っ込むのは子供の頃に卒業したと思っていたのですが背ばかり大きくなって…。
困ったものです。
困ったなぁ…。
おはようございます。
あおはようございます。
あの右京さんほんとに調べなくていいんですかね?いやもちろん突飛な話だと俺も思いますよ。
でも彼女がなんか妙な説得力があるんですよね。
誰かさん譲りの…。
行きますよ。
どこへ?二ノ宮家です。
え?亀山君誤解しないように。
彼女の言っている事は根も葉もない妄想だという事を証明するために調べるんですよ。
はいはい。
まあ金田さんの事もありますしね。
そのとおり。
また彼女の事ですから放っておくと無謀な行動をとりかねないですからねぇ。
無謀な行動?あれ!?右京さんちょ…。
(純平)さっきから言ってるじゃないかよ!あの女がな勝手に上がり込んで俺の部屋を…。
(花)自分で歩きますから。
(純平)この女がさぁ…。
痛いもう…。
花ちゃん…花ちゃん!もう!痛いなぁ!あ〜あ。
手遅れだったみたいっすね。
フフッ…玄関のドアが開いていたので…。
相手がいない間に上がり込んじゃったわけね。
あきれてものが言えませんね。
不法侵入とは…。
おまけに警官に抵抗までしたんだって?納得いくまで調べないと気がすまないのが私の悪い癖なもので。
ああ直した方がいいですねぇ。
でなんか見つかったの?犯行の証拠は。
いいえ。
まあそうだろうね。
2〜3日ここで頭を冷やすといいでしょう。
あおじ様あの…これ。
証明写真?妻の写真です。
被害者の写真と照合してみてください。
窃盗罪も加わりますよ。
メッ!
(米沢守)これが遺体の写真です。
すみませんね。
いつもご無理言って。
今回はたやすい方でした。
縛ってありますね。
ええ。
おそらくそのロープの先に何か重りを縛りつけて沈めたんでしょうね。
それが何かの拍子に切れた。
ええ。
海流も調べてみましたが確かに東京湾から平塚海岸にたどり着く可能性はありますね。
しかし気になりますねこの縛り方。
ええ。
特徴的な結び方です。
素人技じゃない。
あれじゃないっすか?漁師とか船乗りがやる結び方。
碇結びとかもやい結びが有名ですね。
これ。
これがもやい結びですね。
違いますね。
でも何種類もあるんでしょ?結び方は。
いやこれは船乗りの結び方ではないと思いますよ。
植木職人さんの結び方でしょうかねぇ?あ右京さん。
さっきの写真…。
ん?似てますね。
加代子が!?ええ。
歯の治療のあとが一致しまして。
そんな嘘だろう?でおつらいとは思いますが奥様のご遺体かどうか確認をして頂きたいんですが…。
(純平)そんな…。
先輩三浦さん。
ちょっと…。
ちょっと失礼します。
(伊丹)すいません。
(三浦)どうした?お前はなんだよ!?これ同じロープじゃないっすかね?ご主人このロープは…。
これはご主人のですか?
(純平)そうだよ仕事で使うやつだよ。
このあと署の方で話を聞かせてもらえませんか?え?どうぞ。
なんで!?いいからちょっと乗って…。
離せよ!今度は犯人扱いかよ!?離してくれー!おい!!
(金田)待てよこの野郎!
(純平)離せー!離せ!!
(争う声)
(伊丹)もうもうもう…大丈夫ですから。
もういいですよ。
もう大丈夫ですよ。
ありがとうございました。
(三浦)なんで逃げるのよほんとに。
えどうしたの?おかしいじゃない。
ななんでこんなとこまで…。
(三浦)警部殿。
(伊丹)すごいねぇ。
偶然偶然?とおりがかり?どうしました?2日前に平塚海岸でうちあげられた身元不明の女性のご主人です。
余計な事を言うな!
(三浦)ご主人ちょっと警察行って話聞きたいだけだから。
ね。
落ち着いて落ち着いて。
なんでだよ?なんで加代子が死んでるんだよ。
そりゃあお前が殺したからだろうが。
あんな奴でも俺は好きだった!ロープはお前のもんだろう。
お前のロープと死体を縛ったロープが一致したんだよ。
俺の給料がまた下がったんで喧嘩になって…俺いたたまれなくて…家を出て車を走らせたんです。
でも行くあてなんかどこにもなくて高速を葛西で降りて車ん中で一晩過ごしました。
ぶざけた事言ってんじゃねぇよ!ちょっと待て。
葛西で遺体投げ捨てたら1週間で平塚海岸に流れつくわな。
ちょっと待ってください!次の日帰って来たらもうあいついなかった!「俺に愛想つかして出て行ったんだと思ってた」「本当です!」ちょっと苦しいっすかね。
(2人)乾杯〜!いらっしゃい。
釈放されましたか。
よかったね。
(たまき・花の笑い声)何か?ごめんなさい。
今花ちゃんと祝杯をあげてたんです。
祝杯?杉下右京に勝利した祝杯です。
あららら…。
悪趣味ですね。
子供じみた妄想なんておっしゃったんですから当然ですよ。
まだ事件は解決したわけじゃありませんよ。
まだそんな事おっしゃってるんですか。
本人は犯行を否定しているんですから当然です。
往生際悪いですね。
そうですよ。
素直にお認めになったら?弟子は師匠を越えるものですよ。
なるほどね。
師をいっこうに越えない弟子だって大勢います。
なるほど。
俺は弟子じゃないっすからね。
君の事とは言ってませんよ。
花ちゃんたまきさん俺も遅ればせながら花ちゃんの勝利に乾杯したい!あじゃあどうぞ。
(3人)乾杯〜!まあ今回はね花ちゃんの方が右京さんより人間を見る目があったっちゅう事なんじゃないっすかねぇ。
よろしければ私の写真を見て勉強してください。
先ほどプリントしたものです。
じゃあたまきさんご馳走様でした。
あらもう?ええ。
あお幾らですか?構いませんよ。
ご馳走様です。
色々お世話になった金田さんにご挨拶をしに…。
ごきげんよう。
(亀山・たまき)ごきげんよう。
あもう1つだけ。
これこの際なので紙に書き出しておきました。
はい?これでおじ様がどこを勘違いされているかおわかりになるでしょう。
では。
(たまき)気をつけて。
(花)はーい。
なんですか?杉下家の家系図みたいです。
えー右京さん…。
彼女はどうしてああも人の神経を逆なでするような言い方をするのでしょうねぇ。
言葉遣いというのをもう少し考えなければいけません。
そうは思いませんか?亀山君。
思いますよ。
すごく思います。
ほぼ毎日思ってます。
意味わかります?たまきさんわかりますよね?はい?僕だけお酒ありません。
お酒ちょうだい。
はい。
あぁ…すまないね。
いいえ。
今回の殊勲賞なんですから。
町内会長として当然の事をしたまでよ。
しかし悪い事はできねぇもんだ。
海の底に沈めてもちゃんとお天道様の下に出てきちまうんだから。
(花)そうですね。
東京湾の底には色んなものが落ちてるからきっと鉄材のようなものにこすれて…。
それだ。
ロープが切れて鉄アレイだけ残して遺体だけ流れていっちまったんだ。
悪い事はできねぇなぁ。
今なんて?ん?悪い事はできねぇなぁって。
その前です。
今鉄アレイ…。
え?今鉄アレイって…。
ん?ふーん。
いい写真ですよ右京さん。
亀山君。
はい。
どうしたの?だって…おかしいじゃないですか。
重りに何を使ったかなんて犯人以外…。
そうじゃないかなって思っただけだよ。
事件は解決したんだ。
いいじゃないか。
どこにかけるの?
(花)離して!落ち着こうよ!落ち着こうよ!!離して!落ち着こうよ!落ち着けよ!!どうして?どうしてなんですか?あの女が悪いんだよ。
回覧板は回さねぇ。
ゴミ出しは守らねぇ!ここらの者はみんな迷惑してたんだよ!
(金田の声)あの日もそうだよ!俺は町内会長だからよこの際ビシッと言ってやろうと思ってな。
ところがあの女自分はやってないってしらばっくれやがった。
おまけにプライバシーの侵害だのなんのって…。
あげくの果てに…。
(金田)あんたねこの町の住人なら町のルールってもんが…!
(加代子)あぁもうウザイ!ウザイ?大体ね隣近所の人間ジロジロ観察してんじゃないわよ!干してある下着なんか見てんじゃないの?何!?こっちだってね住みたくて住んでるわけじゃないわよ!こんなしみったれた町!!川に汚い船なんか浮かべちゃってほんといや!せっかくお洒落な花壇作っても全然意味ない。
帰ってよ。
帰ってよ!帰ってよ!!いってぇなこの野郎!
(加代子)何すんの!?
(花の声)それで殺したの?
(金田の声)船を出して東京湾に沈めた。
そんなくだらない理由で?くだらない?くだらないって?あの写真撮ってくれたあんたならわかるだろう!昔はよかったよ。
ところが最近はあんな夫婦のように…ああいう連中がこの町を変えちまったんだよ。
俺は町のためにやったんだよ!それをくだらないって言うのか?くだらないわよ!町がなんだって言うんですか?変わってしまったのはあなたの心なんじゃありませんか!?やめろ!何やってんだあんた!花ちゃんまで殺す気か!?あんたらに俺の気持ちはわからねぇよ!おじ様…亀山さん。
少しは懲りましたか。
どうしてここに?昨日こちらにお邪魔した際少し気にはなっていたんですが。
鉄アレイ。
普通は2つで1セットですからねぇ。
この写真のこの結び目。
遺体のロープの結び目と一緒でしたよ。
僕がわからない点は2つ。
これも気にはなっていたんですが一緒に写ってらっしゃるのは息子さんですね。
5年前まではもやい結びをしていたあなたがなぜこの時は植木職人の結び方をしたのか。
そしてそもそもなぜ船乗りであるあなたが植木職人の結び方を知っていたのか。
そんな事どうだっていいじゃないか!俺の気持ちはわからないとおっしゃった意味がそのあたりにあるのではないかと思うのですが。
あいつだよ。
息子に教わったんだよ。
あの野郎もやい結び下手でよそんなんじゃ後とらせねぇぞって言ったら親父こんな結び方もあるんだぜって…。
植木屋でアルバイトした時に覚えたらしい。
そんなんじゃ船はつなげねぇよってバカにしてたんだけど…3年前にあいつがいなくなってなんとなく覚えちまった。
息子さんは?二十歳で癌だってよ。
親父あとは俺に任せてとっとと引退しろよ。
この町は俺が盛り上げてやるからって言ってやがったのによ…。
俺より先に逝っちまいやがった。
親不孝な野郎だよ。
俺は許さねえんだ。
息子が愛したこの町をバカにしたり傷つけたりする奴を絶対に許さねぇ!けど悪い事はできねぇもんだよ。
普段やらねえのによりによって肝心な時に植木結びが出ちまうなんてよ…。
バカだなぁ…。
息子さんだよ。
息子さんが言ったんだよ。
親父悪い事したんだからちゃんと謝れよってな!たけし…。
すまない…すまない。
すいませんでした…。
(金田)ごめんなさい!ごめんなさい。
ごめんなさい…!
(金田)ごめんなさい…ごめんなさい。
はい。
亀山さん。
役に立つのか疑わしいなんて言ってしまってごめんなさい。
いいのいいの。
俺慣れてっから。
ほんと色々ありがとうございました。
礼を言うのはこっちだって。
花ちゃんのおかげでさ今回の事件が早期解決したのは事実なんだからね。
いいえ。
まだまだ私の人間を見る目は未熟だったようです。
ちょっとフォトグラファーとして自信なくしました。
では改めて忠告します。
写真は趣味にとどめ大学院に戻ってはいかがですか?せっかくですが出世コースを棒に振るのは師匠譲りなもので…!
(笑い)もっともっと精進してこの次日本に来る時にはおじ様がとやかく言うべくもない一流のフォトグラファーになっておりますのでそのつもりで。
そうですか。
せいぜい頑張ってください。
はい。
応援してるよ。
ありがとうございました。
おう…。
おじ様。
お母様によろしく。
はい。
では。
気をつけて。
よいしょ…。
あっ。
ん?もう1つだけ。
これ間違ってるところ赤ペンで訂正しておきました。
これで君がどこを勘違いしているのかおわかりになるでしょう。
家系図っすか。
じゃあ俺もついでだから1つだけ。
はい?最初に会った日俺がお昼に食べたのはカレーライスじゃなくてカレーうどんでした。
バーイ!また来いよー!頑張れよー!行っちゃいましたねぇ。
ええ。
寂しいんじゃないっすか?ほっとしてますよ。
そうだこの写真…あっこの辺に貼っておきましょう。
ね。
飾るほどの写真じゃありませんよ。
願わくば1日も早く芸術の道を諦めてくれるといいのですが…。
(角田六郎)おい暇か?おっなんだその写真は。
どう思います?いい写真でしょ?ん?へへ…俺写真はうるさいよ。
こりゃイマイチだな。
はい?イマイチ。
構図がありきたりだしね素人丸出し。
イマイチだな。
本気でおっしゃってます?うん。
イマイチだよ。
イマイチじゃありませんよ。
奇をてらわないシンプルな構図こそ実は最も難しいんです。
一見何気なく撮っているように見えますがこれは実にバランスよく被写体を切り取ってあり…。
…とまあ好意的な見方もできなくはありませんが感じ方というのは人それぞれですからね。
2015/12/22(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒season4[再][字]
「天才の系譜」
詳細情報
◇番組内容
“警視庁一の変人”だが天才的頭脳で鋭い推理をみせる杉下右京(水谷豊)と“おひとよしな熱血刑事”亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑む!
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、原沙知絵、川原和久、大谷亮介、山中たかシ(崇史)、六角精児、山西惇 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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