おみやさん6 2015.12.22


(志村美智子)あっ!ああーっ!!
(衝突音)
(鳥居勘三郎)
12年前1枚の帯がかけられた遺体が発見された
捜査の結果被害者が勤務する帯店の社長が容疑者として浮かんだ
だが社長は被害者の死亡推定時刻に祇園でなじみの芸妓と立ち話をしていたと主張
芸妓の証言でアリバイは成立し事件は迷宮入りして12年が過ぎた
そして…
(物音)
(杉田浩司)ああ…!おたまさんおはようございます。
(おたま)おはようございます。
おたまさんすごいニュースだよ。
夏子さん西陣のつづれ織りコンクール大賞!
(おたま)ええ。
ほら今やってますよ。
ほら。
(掛井夏子)「これからも頑張っていきたいと思っています」
(リポーター)「ですが伝統を重んじる世界だけに大賞を受賞するというのは並大抵の…」あっこの作品去年の個展の時におたまさん激賞したやつだよね。
すばらしいわねぇ。
まあ…それに比べてこの人ったら。
ああ昨日酔っ払って帰ってきてそのまま寝ちゃったんですよ。
自分の家へ帰せばいいじゃないですか。
いやいや自分の家よりここが居心地がいいって言うんですもん。
まったくもう…。
起きなさい!
(七尾洋子)あっおたまさん。
おっ!ご飯できた〜?まあ…いきなりご飯ですか。
失礼な!おいしそう。
さすがおたまさん!おふくろの味って感じ?嫌ですよ。
あなたにねおふくろだなんて言われちゃ…。
またまた。
うれしそうな顔しちゃって。
ああ…坊ちゃまこの人何とかしてください!すいません。

(警官)ご苦労さまです。
(吉川新平)あっ兵藤さん。
歳なんだから無理しないでくださいね。
(兵藤兵吾)余計なこと言うな!はあはあ…死亡推定時刻は?
(茅野太一)鑑識さんの話ですと昨夜の午後10時前後だそうです。
そんな時間に何でこんなところに?
(星野康夫)誰かと待ち合わせしていたんですかね?
(会沢桂子)あらっ。
(兵藤)何だい?
(桂子)何かの繊維ですねぇ。
色が銀色。
(兵藤)銀色?はい。
帯か何かかもしれませんね。
あっ兵藤さんこれちょっと見てください。
手の甲の傷です。
(兵藤)おっ何だい?これは。
(吉川)ガイシャ氏名杉田帯店社長杉田浩司。
杉田浩司…?
(吉川)死亡推定時刻は昨夜の午後10時前後。
金品は奪われてませんでした。
ええ…総合して考えますと…。
(村井信治)怨恨の可能性が大きいな。
(兵藤)午後10時という時間にあの寺にいたということは誰かと待ち合わせをしていた可能性が高いでしょう。
交友関係の聞き込みそれから…。
杉田杉田…。
聞き覚えがあるんですか?もう13年…いや12年前のヤマなんだけど…。
あった。
「杉田帯店女性社員転落死事件」。
うん。
12年前杉田帯店の女性社員が転落死した。
事故死他殺の両面で捜査は進められたんだがその途中で社長の杉田に容疑がかけられた。
ところがアリバイを証明する人がいて逮捕には至らなかったと。
じゃあ12年前の重要参考人が昨夜殺害されたんだ。
そう。
あっ!えっ…遺体に帯がかけられてたの?ということはホシは親しい知人か近親者の可能性が大きいってこと?うん。
おみやさんこれちょっと見てくれる?これ被害者の手の甲なんだけど。
引っかき傷?それがねぇただの引っかき傷じゃなくて拡大するとこんな細かい櫛状になってるの。
櫛状…。
ホントだ。
櫛か何かで引っかかれたのかしらね。
いや…これやっぱり爪じゃないの?爪!?こんなギザギザの?うん。
西陣の本つづれの職人さんの爪ってこういうふうにギザギザになってるらしいよ。
本つづれの職人さん…。
(村井)会沢君。
はい!こんなホコリ臭いところで道草を食う前に報告はまずこっちだよ!はい〜。
ホコリ臭い?
(村井)んっ?ははは…!自分のことだと思ったのか?鳥居。
そこのお宮入りの資料のことですよ。
この部屋はあれもこれもホコリ臭くてかなわないね!あれもこれもって…課長!それって私のことですか?はあ…そりゃあ確かに私は二十歳をちょーっと過ぎて何年かは経ってます。
(桂子・鳥居)ちょっと…?これって完全なるセクハラです!上に報告します。
どうもすいませんね。
まあすぐカッカするからね。
ははは…!課長報告しまーす。
おみやさん何でそこで…。
洋子洋子洋子…。
海見に行こう。
あっ海!?カニ食べに。
はっ!?丹後まで来て…まだまだカニのシーズンじゃないですよ?カニじゃなくて爪を見に来たんだよ。
爪?志村誠三の爪。
志村誠三って殺害された美智子さんの夫の?そう。
志村誠三は西陣の本つづれの職人をやってたんだけども奥さんが亡くなって半年後この丹後に戻って父親の工場継いでる。
ふ〜ん…あっ!ねえおみやさん12年前の事件の時重要参考人になった杉田浩司っておみやさんの印象ではクロに近かったんじゃないんですか?だとしたら12年後の今杉田を殺すことで夫が妻の復讐を遂げたかもって…。
志村誠三の爪はギザギザになってるんですね?当時はね。
(機織り機の音)こんにちは。
こんにちは!鴨川東署の鳥居です。
鳥居の部下の七尾洋子です。
突然お邪魔してすいません。
実は…。
(志村誠三)杉田社長のことでしたらあれ以来まったくお付き合いはありません。
ああ…昨夜はどうされてましたか?ここでずっと仕事をしてました。
証人はいませんが。
あっ。
月とうさぎの柄ですね。
12年前もこの月とうさぎの柄織ってらっしゃいましたよね?この柄はベストセラーですからね。
おっ手織りはもうやめちゃったんですか?ここにはそんな注文もありませんし。
でも爪はまだギザギザなんですね。
これはもう癖になってまして。
このほうが便利なこともありますので。
ああそうですか。
あっ夏子さん西陣のつづれコンクール大賞を獲りましたね。
おめでとうございます。
ええ。
頑張ってるみたいですね。
お知り合いなんですか?掛井夏子さんと。
知ってるの?うん。
今話題の人だから。
夏子さんって志村さんのお嬢さん。
お嬢さん!?昔の話です。
もう親子の縁は切られてますから。
親子の縁を…?
(河原冬美)こんにちは。
祇園の花蝶さん?鴨川東署の鳥居です。
あっ…。
ねえおみやさんあの花蝶さんって…?本名河原冬美。
12年前志村美智子さん殺害事件の時容疑者となった杉田社長のアリバイを証明した芸妓さん。
ふ〜ん。
でもあの2人一目で訳ありって感じですよね。
12年前花蝶さんと杉田社長の関係については調べたけども花蝶さんと志村さんの関係については気がつかなかったな。
2人が親しかったとなると当時のヤマも違ってくるんじゃないんですか?当時杉田社長と志村美智子さんの間に不倫関係があるっていう…そういう聞き込みがあった。
不倫!?鳥居さん杉田社長のことで…?ああ。
そう…。
(吉川)掛井夏子?
(杉田真由美)へえ。
西陣の本つづれの職人さんですけど。
(茅野)あの西陣のつづれ織りコンクールで大賞を獲った話題の女性ですよね?へえ。
うちのとこあの人の個展のスポンサーになってるんですけど主人が突然印刷会社に電話して…。
(杉田)だから掛井夏子の個展のポスターからうちの名前を消してくれって言ってるんだ。
どうして?消せばいいんだよ!頼むよ!
(真由美)あんさんどないしはったん?何でもない!
(高岡俊介)杉田帯店の社長さんお座敷にはどういうお客さんと一緒でした?
(君香)知りまへん。
ほな失礼します。
君香さんあなた昨日の夜9時から12時頃の間どこで何してました?うちどすか?それうちが疑われてるいうことですか?杉田社長が誰と一緒によくお座敷に上がるかお話しいただけたら君香さんの疑いは晴れるんですけどねぇ。
(高岡)西陣織職人の掛井夏子です。
(兵藤)杉田社長と一緒によく祇園のお茶屋に上がっていたようです。
(星野)帯屋の社長と織物職人か…。
(村井)特別な関係かもしれんな。
ただ掛井夏子と杉田社長は個展のスポンサーの件でもめてますよ。
痴話げんかかもしれんぞ。
掛井夏子のアリバイは?調べてきます。
吉川ちゃん。
よし。
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)吉川ちゃんあの爪。
ええ。
桂子さんが言ってたギザギザの爪ですね。
ありがとうございました。
(夏子)ありがとうございました。
個展楽しみにしてます。
(夏子)はい。
お仕事中お邪魔しました。
(夏子)いいえ。
はい?あっすいません。
鴨川東署の者ですが。
杉田社長のことで少しだけお話伺えませんか?
(夏子)あっはい…。
あっどうぞこちらに。
ああこんにちは。
あっ!鳥居さん?大賞おめでとうございます。
(夏子)ありがとうございます。
お親しいわけですか?うちのおたまさんが夏子さんの帯のファンで。
事件の捜査?ええ。
あの…掛井さんが杉田社長と親しかったようなので。
杉田社長と夏子さん…ホントですか?はい。
5年くらい前に私の作品を持ち込んで見ていただいてからお世話になってたんです。
ああそうなんだ。
(茅野)昨夜の9時から12時までどちらにいらっしゃいましたか?
(夏子)ずっとここで仕事をしてました。
その時間どなたかここに来たりとかあるいは電話で誰かとしゃべったりとかは…?いえ。
ずっと1人でした。
個展のポスターの件なんですが突然杉田帯店が協賛から外れたそうですがどういう事情だったんですか?それがよくわからないんです。
突然電話があって協賛から降りると言われただけで。
(吉川)そうですか。
つづれ織りってあれですか?すいませんちょっといいですか。
はい。
えっとこの…ギザギザの爪。
やっぱり大事なんですか?あっはい…そうですねこの感触で織るのが一番なので。
今丹後へ行ってお父さんに会ってきました。
丹後へ?まさか父が杉田社長を殺したんですか?いえいえそういうことじゃないんですが。
あっ…そうですか。
それくらいする人なら少しは認めてあげるのに。
ああ…花蝶さんご存じですか?その人が何か?志村さんの工場にいらしたんです。
(ため息)あのお2人が知り合いだっていうの夏子さんご存じでした?関係ありませんから。
その傷どうしたんですか?えっ?あっこれ仕事中にちょっと…。
(茅野)母親の復讐で杉田が殺されたって線も…。
あるかもしれませんよね。
(一同)うん。
おみやさんどう思います?まだわからないよ。
署長?んっ?
(七尾清一郎)おうみんなここで何やってるの?はいあの…仕事…仕事です仕事。
(桂子)頑張らないと。
失礼します!
(七尾)何?何?パパ。
いや何ってさぁ…おみやさん一応資料課だよね。
はい資料課です。
どうせまた課長が捜査に口出すなとか署長に言ってくれとかそういうことを言ってるんでしょう?そんなこと言ってないよ!資料課だって警察官でしょ?何で事件解決しちゃいけないのよ!いや…。
(咳払い)わかりました。
まあそこそこにします。
はい。
1000万?
(小池仁美)西陣の手織りで着物作ったりしたらそのくらいするのもありますえ。
はあ〜。
手織りだとさ1日に2センチぐらいしか織れないらしいよ。
(福島重夫)私のような古い人間にはそういう着物を買わはるお人がいるっていうことのほうが恐ろしいですなぁ。
ははは…。
(福島雅人)自分には一生縁のない話ですねぇ。
そやな。
そやね。
あっでも志村さんの丹後の工場はそんな感じじゃなかったですよね。
ホント町工場って感じで。
あの機械1台で1日に織れるのが帯2本半。
その帯1本の納入値段4000円。
4000円!?うん。
織れば織るほど借金がかさむって言ってたよ。
(ため息)織物の世界も格差社会ってことやね。
うん。
でも志村さんの工場は頑張ったんだから倒産しなかったんですね。
いやいやいや。
倒産寸前だったんだよ。
美智子さんが死んで1か月後…。
おい志村金できたんかい?おお?できんのやったらぶっ壊すぞこれ!待ってください。
金は用意してあります。
志村は500万支払って窮地を脱していた。
500万!?志村さんはそのお金どこで手に入れたんですか?友人に借りたけど名前を明かすと相手に迷惑がかかるからの一点張り。
ふ〜ん。
何か怪しい。
洋子祇園に行ってさ芸妓時代の花蝶さんと志村さんに関係があったかどうか調べてくれる?わかりました。

(音楽)花蝶さんと織物職人の志村さんなんですが覚えてらっしゃいますか?
(喜代福)あああの2人どすか?よう知ってます。
ああ。
志村さんはお座敷にはよくいらしてたんですか?どうどしたやろなぁ…。
でもよく知ってるっておっしゃいましたよね?うちそんなこと言いましたやろか?いや私見ちゃったんですよ。
志村さんと花蝶さんが腕を組んで仲良く歩いてるのを。
(喜代福)そりゃああの2人は幼なじみどすさかいなぁ。
恋愛関係やのうても仲ようしはるやろなぁ。
幼なじみ…?へえ。
子供の頃生死を共にした仲や言うておりましたし。
生死を共にした?遭難…。
「志村誠三君中学1年生と河原冬美さん掛井美智子さん小学5年生の幼なじみ3人は」…。
掛井美智子?美智子って志村さんの奥さんですよね?奥さんも冬美さんの幼なじみだったんです。
幼なじみ…。
「3人は大江山へ登山をしていたが突然天候が変わって吹雪になり遭難した」。
「3人は体を寄せ合って寒さをしのぎ歌を歌ったり励まし合いながら吹雪が終わるのを待った」。

(志村・冬美・美智子)「はねる」生死を共にした仲か…。
生死を共にした幼なじみだったんですね。
どうして12年前美智子さん殺害の時にこのことをお話しにならなかったんですか?そんなことを話しても冬美が疑われるだけですからね。
疑われる?では美智子さんと一緒になってもずっと冬美さんと…。
それは違います。
私は高校卒業と同時にこの丹後を出て西陣織の工場に就職しました。
その時に美智子が突然私の前にやって来て一緒になったんです。
それで冬美さんは?彼女は中学を卒業してこの丹後を出ましたがそれからどこに行ったのかわからなかった。
それから5年ほどして私は西陣に小さな本つづれの工場を持ちました。
その頃の取引先の社長が祇園のお茶屋さんに連れて行ってくれたんです。
そこに現れたのが…。
花蝶さん。

(歌と三味線)それでお付き合いが始まった。
奥さんの美智子さんはもう当時杉田帯店で働いてたんですか?私の稼ぎだけでは工場はやっていけませんでしたから。
だったら杉田社長と奥さんの噂は耳に入ってたんじゃないんですか?でも鳥居さん美智子を殺したのは私でも冬美でもありません。
私達3人の間には生死を共にしたこと以上に強い結び付きがあるんです。
どうしてあの時話してくれなかったんですか?それを話しても美智子は帰ってきませんから。
志村さんのところへはよく行かれるんですか?週に1度か2度です。
当時美智子さんお2人の関係ご存じだったんですか?私が美智子を殺したとでもおっしゃりたいんですか?美智子は子供の時からの親友です。
あの冬山で生死を共にした親友です。
あなたと志村さんを拝見して親友のご主人との付き合いだけっていうふうには見えなかったものですから。
いけないと思ってても好きになってしまうことってあるんじゃないですか?越えてはいけない一線を越えてしまうことってありませんか?だらしない女だって言われようと好きな人の胸に飛び込んでしまうことってありませんか?美智子があんなことになってなかったら私は美智子から志村さんを奪ってたかもしれません。
でもあんなことになってしまったから私は一生志村さんと一緒にならない覚悟をしたんです。
それに私と美智子と志村さんはどんなことがあろうと力を合わせて生き抜こうと誓い合った仲なんです。
一緒にあの月を見た時にそう誓い合ったんです。
月?
(冬美の声)遭難して3人で励まし合って寒さの中で頑張って急に吹雪が晴れた時夜空にぽっかりときれいな月が浮かんだんです。

(冬美)うさぎ。
(美智子)本当…うさぎだ。
本当に月にうさぎが…。
(志村)あのうさぎは神様に連れて行かれたんだ。
(冬美)これからさどんなことがあっても私達3人は…。
どんなつらい時があってももうダメだと思った時も3人で一緒に見たあの月とうさぎを思い出そう。
そうすれば何だって乗り切れる。
絶対に負けないで生きていこうねって…。
そう誓い合ったんです。
月とうさぎ…。
だから鳥居さん私も志村さんも美智子を殺したりなんてしません。
…となると犯人は杉田社長ということになる。
けど杉田社長のアリバイあなたが証言したんですよね?どうだった?わかりました。
花蝶さん芸妓時代に1年間休んでました。
1年間…ということは?体調を崩して実家に帰っていたそうです。
なるほど。
お察しのとおり花街で芸妓が1年休むってことは…。
子供を産んだってことですね。
そう。
兵藤さん!おう。
どうした?掛井夏子が事件の日杉田と言い争ってるのを見たという目撃者が出ました。
杉田さんとは何を言い争っていたんですか?夏子さん正直に話したほうがいい。
はい…。
あの日杉田社長は急に私を抱きしめて昔君と同じ香りのする女性を好きになった。
よかったらこれからずっと面倒を見るからって言ってきたんです。
その時わかったんです。
母はこんな人と愛し合うはずがないって。
それで私…。
私の元の名前ご存じですか?志村夏子です。
志村…。
志村美智子の娘です。
何だと?あなたが母を殺したんですね。
バカを言うな!俺にはアリバイがある。
そんなのどうにでもなる!12年もの間母を殺してのうのうと生きてきたなんて絶対に許さない!!
(夏子)西陣の世界どころかどこにもいられなくしてやる!!お前!誰のお陰でそんな大きくなってると思ってるんだ!!誰のお陰で個展なんて開けるようになったと思ってるんだ!
(杉田)ああっ!いいか夏子余計なことをしたら俺だって黙ってない。
覚えておけ。
それで杉田はどう出てきたんですか?私の個展のスポンサーから降りてその夜呼び出しを受けました。
行ったんですか?はい…でもそうしたら…。
もう殺されていた。
月とうさぎ…。
やっぱりここだったんですね。
あの写真…セーラー服の少女の写真あれ夏子さんですよね?越えてはいけない一線を越えてしまうこともある。
人間って弱いですからね。
それに愛情なんかが絡んできたらもうこれ理屈じゃない。
この後重いものを背負い込むことがわかっててもその一歩を始めてしまう。
そういうことってありますよね。
鳥居さん…おっしゃるとおり夏子は私が産んだ子です。
私が志村さんの子を産んだと知った美智子は私の実家に来たんです。
この子は私の子よ。
志村の子でしょ?志村の妻である私の子よ。
私が母親よ。
あなたにこの子を育てる権利はないわ。
(夏子の泣き声)この子は私が育てていく。
あなたには絶対渡さない!
(夏子の泣き声)志村さんの妻だっていう美智子の意地を見せられてそれで夏子を美智子に渡しました。
でも自分で産んだ子なのに…。
美智子は夏子を立派に育て上げた。
そして自分は決して子供を産まなかった。
夏子のために。
全てが夏子さん中心に回ってる。
だから12年前あなた杉田社長のアリバイを偽証して500万を手に入れてその500万を志村さんに渡した。
経営困難の志村さんと工場と夏子さんを守るために。
12年前のあの晩杉田社長から電話があったんです。
美智子を殺してしまった。
すぐ来てほしいって…。
どうして殺すことになったっておっしゃってました?美智子は杉田社長に500万円の借金をお願いしたらそれの見返りにって…。
(杉田)ただで500万円もの金を貸すと思ってるのか?
(美智子)そんなつもりはありません。
ちょっと…何するんですか!やめてください!やめて…やめてください!!あっ…!あっ!ああーっ!!
(冬美)美智子は何度も杉田社長に誘われていたみたいでしたけどそういう関係ではないと言ってました。
それで私すぐに駆けつけたんです。
社長…!美智子…!どうして…!?なあ…なあ!頼むこれで偽証してくれ。
何言ってるんですか!?そんなことできるわけ…。
志村が…!志村がこれで助かるだろ。

(冬美の声)どうしたらいいのか悩んで苦しみました。
美智子はどっちを喜んでくれるかって…。

(志村・冬美・美智子の声)「うさぎうさぎ」「なに見てはねる十五夜お月さま見て…」
(冬美の声)そしてあの月を見た時私は杉田の申し出を受けることにしたんです。
志村さんと夏子ちゃんのためにって。
きっと美智子もそうするに違いないと思って…。
私が一生背負っていけばいいんだってそう覚悟したんです。
私がアリバイを証言することで志村さんは工場を続けられるし夏子ちゃんも…。
志村さんそのことは?ええ…美智子の初七日の日の夜…。
(志村の声)あの時冬美の必死の顔を見て全てを察しました。
冬美が私と夏子と美智子のために決断してくれたことを…。
一生背負っていこうと覚悟してくれたことを私も一緒に背負わせてもらおうと思いました。
悔しかったです…!美智子を殺した杉田を警察に突き出してやりたい…!でもそれより志村さんや夏子ちゃんを大事にしたかった。
嘘!言い逃れよそんなの!自分がこの人と一緒になりたいからお母さん見殺しにしたんでしょ!夏子!夏子さん1つだけ言えることがある。
志村さんも冬美さんも決してあなたを裏切らない。
どうして?夏子さん月とうさぎの民話って知ってますか?旅のお坊さんのためにうさぎは自分から火の中に身を投じて私を食べてくださいと言った。
その献身というか自己犠牲に神様はいたく感動してそのうさぎを助け出しお月様に連れて行ったんです。
36年前の吹雪の中で志村さん美智子さん冬美さんこの3人は子供心にあのうさぎのようにどんなことがあってもお互い命を懸けて助け合おうねって約束したんです。
お母さんは月のうさぎ…。
そうでしたね?志村さん。
そうですよね?どうして杉田さん殺したんです?あの晩杉田が店にやって来たんです。
お前夏子にしゃべったのか!?何のこと?とぼけるな!!いいか?何があっても黙ってろよ。
お前も美智子の事件の共犯なんだからな!あの女黙らせてやる…!
(冬美の声)それで心配になって杉田を追ったんです。
ああ…!
(冬美)申し訳ありませんでした。
夏子さん冬美さんあなたのためならできることは何でもしたでしょう。
なぜならあなたは冬美さんの子供でもあるんです。
冬美さんの…?あなたは志村さん美智子さん冬美さん3人の子供でもあるんです。
3人の子…。
えっじゃあ…!そう。
夏子さんお願い。
志村さんのことをもう一度お父さんって呼んであげて。
志村さん杉田のこと殺してやりたいと思って…。
でもそんなことしたらあなたに迷惑をかけることになるからってずっと耐えてきたの。
お願い。
夏子さんあなたの作った西陣織の作品の中に月とうさぎモチーフにしたのありましたよね?志村さんが作ったものと同じ柄だ。
あれが私の原点ですから。
今私が西陣織を続けているのはやっぱり父の背中を見て育ったからなんです。
夏は汗だくで冬は凍ったように冷たい手で機械を動かし続けていた父を…。
それ志村さんの帯のはぎれで作ったものですよね?ええ。
このうさぎと月が少しズレちゃってるところが私大好きなの。
私も何となくボヤけてしまってる月が機械織りなのに父の手作りの感じがして。
よかった。
夏子さんと一緒で。
夏子…。
すまなかった。
鳥居さん…。
兵さん。
冬美さんしばらく夏子さんに会えないかもしれない。
1度だけ…。
ああ…ありがとう夏子。
でもどうして美智子さん夏子さんを引き取って育てようなんて思ったのかしら?いくら幼なじみだからって…。
妻としての意地じゃないの?最愛の人は渡さないっていう。
すごい。
それがわかったから冬美さんも美智子さんに夏子さんを渡したんじゃないの?ダメだ。
そんなのついていけない。
洋子。
洋子も大人になったらわかってくるんじゃないの?えっ?ちょっとおみやさんそれって私がガキだって言ってるの!?ちょっとおみやさん!?
(アコーディオン)
おしゃべりあるき目です
2015/12/22(火) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]

【FILE.3】12年前、着物が掛けられた女性の遺体が発見された!容疑者の男のアリバイを証明したのは芸妓・花蝶(野村真美)。その着物に象られた月とうさぎの意味とは!?

詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林 泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條 俊、相本久美子、菅井きん、谷啓ほか
【ゲスト】野村真美、黒川芽以、春田純一

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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