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『ジョブズの伝記はクソ野郎を正当化する』Netflixドキュメンタリー「プリント・ザ・レジェンド」が面白かった

映画 ガジェット

Netflixで観られるドキュメンタリー「プリント・ザ・レジェンド」
これがなかなか面白かったので感想を少し。
もしNetflixに加入中なら一度観るのをオススメ。
特に意識の高いひとに。



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メイカーズムーブメントと意識の高いひと

wired.jp

3Dプリントの世界がドキュメンタリー映画になったとは信じがたい。この業界では古参にあたる、ブリー・ペティス氏が開設したMakerBot社でも、登場してわずか5年なのだ。
冒頭でティーザー動画を紹介した『Print the Legend』は、過去数年間の3Dプリント世界における「マッキントッシュ的瞬間」(Macintosh moment)を追っている。

SXSWで上映され審査員特別賞を受賞したと言う今作。
個人向けの卓上3Dプリンターという発明。
そして立ち上げたメーカーボット社のブリー氏は一躍時の人になる。
いわゆるメイカーズムーブメント。

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
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しかし大手が参入、新興ライバル会社もキックスターターなどを利用し次々登場。
ブルーオーシャンを徐々に赤く染めていく。
そんな中「3Dプリンターによる銃の製造」を始める人物が登場する。
Defense Distributedのコーディ・ウィルソン。
ここから3Dプリンターによる銃の作成という「自由」と倫理の問題が浮上する。
www.nikkei.com

過当競争は激しくなり、大手が新興企業を権利侵害で訴えることもある。
もちろんスラップ訴訟的な側面が強い。

メーカーボット社は成功しどんどん規模を拡大していく。
ブリー氏は、カリスマに祭り上げられ、徐々に経営者へと変貌。
そして握った権力で思うがまま、かつての仲間の首を切っていく。
オープンソースだったはずのメーカーボットは撤回しクローズドソースに路線変更。
ライバルだった大手企業に会社を売却。

自分勝手に権力を振りかざすブリー氏を指し

「ブリーも御多分に洩れずスティーブジョブズの伝記を読んだんです。あれはテクノロジー業界で働く人間にとって迷惑な本でしょう。ジョブズと同じ大勢のクズ野郎にお墨付きをお与えてしまったんです」

などと言われてしまう始末。

成長と未熟


24 Hour Party People - Blue Monday

日本でもアメリカでもそうだが、急激に大きくなる新興会社は経営陣の経験と規模が伴わない。
だから規模拡大のスピードと経営陣の経験や人格の成熟が追い付かず差が生まれる。
理想で飯は食えないし、現実に尻尾を振れば石を投げられる。

「24アワー・パーティピープル」という映画がある。
英国マンチェスタームーブメントを題材にした映画。
ラジオパーソナリティのトニー・ウィルソンは、レコードレーベルを立ち上げレコードを売りだし、巨大なクラブ”ハシエンダ”を経営したが、膨らみ続けるムーブメントと拡大する規模の大きさに経営が追い付かず儲かるどころか赤字での自転車操業。
レコードの製作費はミュージシャンのドラッグに消え、ハシエンダも閉鎖に追い込まれ、レーベルも売り払うことになる。

「24アワー・パーティピープル」を観てると芸術家や理想主義者はインディーズでやる分にはいいが、会社経営に向いてないし、だからこそ失敗するのがよくわかる。

メイカーズだってハシエンダと変わらない。
意識が高くドラッグには走らないが、理想で飯は食えない。
WIRED辺りのガジェット系メディアが持ち上げ過ぎなのも一役を担ってる。

3Dプリンター発、メイカーズ狂騒曲。
「ジョブズの本がクズ野郎を正当化する」ひと言を観るだけでも価値はある。
かなりオススメ。

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