俺の名は悟(さとる)。甘いもの好きの男だ。毎日、チョコレートを食べないと落ち着かないほどの甘党だ!
マキちゃん「悟、いるか~?」
悟「マキちゃん、どうしたの?まだ、晩御飯の時間じゃないよ?休みの日だからって早めの晩御飯にするの?」
マキちゃん「違う、マックスコーヒー持ってきた!」
悟「何それ?マキちゃん、俺がコーヒー苦手なの忘れたの?」
マキちゃん「おいおい、このマキ様を見くびっちゃあ困るなぁ~。」
悟「様?」
マキちゃん「甘党の甘ったれの悟でも飲めるコーヒーなんだよ!」
悟「でも、コーヒーでしょ?」
マキちゃん「まあ、騙されたと思って飲んでみぃ!」
俺はこのどう見てもコーヒーらしくない、ドリンクタイプのカロリーメイトみたいな缶を開け、一口飲んでみた。
悟「あまーい、ルパン三世の声を山田康雄版と栗田貫一版で聞き分けられないぐらいあまいよー!」
マキちゃん「いや、それは甘くないだろ!それにそのネタ古い!寒い!」
悟「そう?それにしても、それ初めて見たんだけどどこで買ったの?」
マキちゃん「ああ、これ?ネットで買った。」
悟「ネット?なんで?」
マキちゃん「テレビでノスケユウキ (id:nosukethinking)さんが俺の人生はこの一本で変わったと言ってた。」
悟「ノスケ?誰それ?」
マキちゃん「えー!知らないの?マジで!リスピーランドの人だよ!」
悟「クリスピーランド?」
マキちゃん「ち・が・う!リスピーランド!白くて、かわいい、リスピーと会える夢の国だよ!」
悟「ごめん。知らない。何それ?」
マキちゃん「ふぅ~。」
溜息をついてあきれ顔を見せるマキちゃん。やれやれのポーズが少しむかつく!
マキちゃん「もう、マキちゃんがっかりだよー!絶望した!マキちゃん絶望した!」
マキちゃんはテーブルの上のスマホを取って何かしだした。
マキちゃん「これ!これがリスピー!」
マキちゃんのスマホの画面には白い四角いゆるキャラが映っていた。
悟「これなんだ。へぇ~。初めて見た。」
マキちゃん「1年前から急に流行って、東京にリスピーグッズが買えるショップができたんだよ!そこがリスピーランド!ネット通販でもグッズは買えるけど、リスピーと会えるのは、リスピーランドだけなの!ああ、もう~、どうするの?思い出したら、リスピーランド行きたくなったじゃない!」
悟「それにしても、これなんなの?」
マキちゃん「だ~か~ら~、リスピー!白くて、四角くて、かわいい、リスピー!」
悟「リスピーね…。」
なんだ、この温度差は?そもそもリスピーランドにいるという本物?というリスピーは着ぐるみだろ?中はどうせ大学生のバイトとかが入っているんだろ?どこがいいんだ?
マキちゃん「もう、いい!」
バタン!
俺の部屋を出ていくマキちゃん。
やばい、怒らせてしまった。どうしよう。どうすればいい?
カチャ、バタン!
おっ、マキちゃんが戻ってきた!良かった。
マキちゃん「これがリスピー!」
マキちゃんの差し出した手元には『リスピーの全てが分かる。リスピー公式ファンブック』があった。
でっ、俺にどうしろと?
マキちゃん「これ見て!」
マキちゃんは見開きページをめくって俺に見せつける。
マキちゃん「リスピーが人気になったのは、バリエーションが豊富なところなの!」
俺は見開きページにたくさん描かれているリスピーを見る。ただ、どれも違いが微妙だ。一体、何種類あるんだ?
悟「ねぇ、マキちゃん。リスピーって何種類あるの?」
マキちゃん「え~っとね。最近、増えたのも含めて確か150種類?」
悟「150種類!初代ポケモンとほとんど同じ数じゃん!」
マキちゃん「そうなの?」
悟「でも、これどこが違うの?みんな同じように見えるけど?」
驚きの表情を見せるマキちゃん。いやいや、そんなに驚くこと?大げさじゃない?
マキちゃん「分からないの!この微妙な違いに!」
やっぱり微妙な違いなんだね。
マキちゃん「例えば、このリスピー正月シリーズ。かがみもちリスピー、みたらしリスピー、あんこリスピー、きなこ漬けリスピー。かがみもちリスピーはみかんが頭にのっているでしょ?みたらしは口から茶色いよだれをたらしているの。あんこは尻尾の下に黒い丸がちょこんと落ちているでしょ?きなこ漬けはきなこに埋もれてリスピーの顔しか見えないの!超おもしろい!何度見てもウケる!」
正月シリーズっていっているけど、これ、おもち扱いになっているよね?かがみもちリスピーとか、みかんがのっているだけで、からだはそのままで全くかがみもちになっていない。みたらしはなんかよだれ出しているだけだし、あんこリスピーが落としているのは、間違いなくうんこだよね?きなこ漬けの『漬け』ってなんだよ!きなこはかけるもんであって漬けるもんじゃないだろう?埋もれて見えないって意味わからんよ!なんで、女の子って、こういう意味の分からんものが好きなんだ?理解できん。
悟「うん。ウケるね。かわいいね。」
マキちゃん「でしょ?それでね、こっちのリスピーは…」
マキちゃんのリスピー話は長くなりそうだ。
幸いなことに、俺の手元にはマックスコーヒーがある。これから始まる長い夜も、リスピー情報を頭に叩き込むのに必要な脳への栄養もこれで補えそうだ。
ありがとうマックスコーヒー!お前がいなければこの長い夜を乗り切ることは不可能だっただろう。