「ボ〜ッと街を眺めればどうでもいいものがよく見える」。
その独創的な短歌で今注目を浴びている歌人の斉藤斎藤さんです。
見た光景をありのまま歌にする独特の世界観。
短歌番組では司会も困惑するこんな短歌を披露。
この歌では斉藤さん何を言いたかったんですか?何を言いたかったのか自分でもよく分からなくなっちゃいましてね。
読者に丸投げしてしまおうという…。
意表をつく歌が多いですねやっぱり斉藤斎藤作品は。
あっよろしく…よろしくお願い致します。
斉藤斎藤と申します。
ハハハハハッ。
とりあえず笑っておくっていう…。
作品の世界さながらにひょうひょうとしている斉藤さん。
でも短歌の話になると…。
人に伝えるための文に整理して書きなさいっていうのが大抵の事あのジャンルでの文章で言われる事なんですけど。
短歌っていうのはそんな事とはむしろ正反対で目の前に起こった事が「お!」って…。
だから「一寸先は闇」じゃないですけど一寸先に何が起こるか分からないんだから…今回小学校6年なんですか?6年。
そんくらいになると大体何かこう…え〜っと空気を読む…別に私の顔色はうかがわんでもええぞと。
ではどんな授業?最終的には短歌を一首作ってもらおうかなと思ってるんですけど。
短歌っていうのは私はこう思ったんだよね。
別に人に言うほどの事じゃないですけどねみたいな。
そういうところがむしろ短歌になるんですよ。
最初の打ち合わせから数日後。
斉藤さんから授業内容について提案がありました。
「わたしの名場面」っていうのをみんなに考えてもらって。
自分がそこにいた時間で感じたものとかはそのまま書く。
自分が見た世界をそのまま切り取り歌にする。
人生の一コマをさりげなく描写そこに余韻を残します。
むしろ海の思い出が…海に行った時の具体的なものとか…本番まであと4日。
授業案を練りますが…。
どうなんだろうな…。
ねえ?ついてきてくれんですかね?ハハハハハッ。
不安が募ります。
はあ〜もう早く来ないですかね当日が。
当日が来ちゃいましたよ。
斉藤さんの母校は江戸川区立小岩小学校。
さあ授業の始まりです。
ざ〜す。
(一同)おはようございま〜す!はい。
改めましておはようございます。
(一同)おはようございま〜す!えっとですねいきなりですけどあっ紙持ってくるの忘れた。
今私がドアを開けてからこれストップウォッチ押すまで35秒32ありました。
ちょっと200字の用紙を。
目安3分ぐらい。
実はこれ見て感じた事を自分の言葉で表現する斉藤流短歌のウォーミングアップ。
子どもたちには突然の難題です。
ちょっと発表してもらおうかね。
「撮影直前緊張するなあとみんなでしゃべっていた。
コツンコツンと鳴る足音。
コツンコツンと音が止まった。
ガ〜ッとドアが開き男の人が入ってきた。
僕はおはようございますと声が出た。
この瞬間僕の緊張は一気にほぐれた。
さあ1時間目が始まるぞ」。
やるね。
ハハッ。
まずさ今のよかったところはその緊張したっていう入る前の自分の気持ちから書けてたとこだよねまず。
え〜っとおはようございますって言って。
子どもたちがここまで書けるとは思っていなかった斉藤さん。
実はあるものを準備していました。
テレビモニターです。
(テレビ)「おはようございま〜す!」。
先ほどの場面をもう一度映像で見て目にした世界をより具体的に捉えてもらおうというねらいでしたが…。
はあ〜。
フフフフッ。
ハハハハッハハハハッ。
いやハニヅカさんの1回目の作文「私が見たもの」。
「私が斉藤斎藤さんが教室に入った時に見たものは…」。
すばらしい。
1回目がすばらしかった!むしろこれが短歌なんですけどね。
率直に言うと1回目の方がいい子も多い。
2回目の作文は客観的な表現が多く個性が失われていました。
逆に何かこういうのを書かなきゃっていうのが強く出たんでしょうね。
あんまり言わない方がいいのかな。
何かやっぱりちょっとすごいあれですね…。
こう言われたとおりにやんなきゃっていうふうに思うんでしょうね。
予想外の展開に子どもたちが型にはまらないよう軌道修正します。
作文書くのってみんなは割と得意な方?それとも嫌い?あれ〜?字とかいっぱい書くからちょっと疲れちゃう。
ハハハハッ疲れちゃうの?長くて?考えたりするのに自分の意見を書いたりするのが難しいから。
あっ言いづらいんだ。
分かった分かった。
どうやら自分の言葉で書く事が苦手なようです。
思いが何かうまく言葉にならないっていうかぴったりする言葉が見つからないみたいな感じなのかな?ぴったりする言葉が見つからないみたいなのはむしろ何か大事にしてほしい訳。
こういう時はこういうふうに言うものだみたいな決まり文句というか。
でも何かその決まり文句が自分にはぴったりこないんだよねって思ったらそこで何かもうちょっと別の言葉ないかなあっていう。
こんな言葉使っちゃったらいけないんじゃないかとかこんな事言うと怒られるんじゃないかみたいなのがあるかもしんないけどえ〜っとそこは少なくともこの授業では気にしないで。
そう話す裏には斉藤さん自身の苦い経験があるからです。
自分も多分…小学校2年ぐらいの時に詩を書きなさいっていう授業があった訳。
「自由に書いていいんだよ」みたいな事を言う訳ですよ。
自由に書いた訳。
「学校」ってタイトル書いて…もうその時思ってた事をそのまま書いて出したら翌日保護者呼び出しですよ。
それ以来先生の顔色をうかがいながら作文を書くようになった斉藤さん。
国立の名門中学を経て早稲田大学へ進学しましたが書く事が好きにはなれませんでした。
転機を迎えたのは29歳の時。
アルバイトを転々とする生活を送っていたある日図書館で偶然手にした本の短歌に引き付けられました。
やっぱり当たり前のものが異様に見えてくるっていうか。
運転する人みんな前向いてんなっつってじ〜っと見てる訳じゃないですか。
何かすてきだなあと思って。
ハハハッ。
短歌っていうのは別に…もしあなたが生きていてある瞬間に何かを思ったと。
何か景色を見て何かを感じたという時にその感じた事はほかのどの誰にもほかの世の中の誰がいいと思わなくてもあなたが何かを感じたんだったら…あなたがそう思ったっていう事自体に価値があるんだよと。
いよいよ短歌作りのスタートです。
はい。
「わたしの名場面」って事でやりたいと思います。
自分がこれだなって思うのをその書きたいっていうか一番印象に残ったのを選んでほしい訳。
まずは学校内を歩いて6年間で印象に残った出来事を思い出していきます。
4時間目の途中の時に給食の匂いがするじゃん。
その匂いを嗅いでると今日の給食何かなって考えられるじゃん。
それ書くよ。
図書室や図工室名場面は決まったのかな?百合アルチ君が選んだ場所は教材室?教材室には2年生と3年生の時いつもケンカばっかりで……でその時に落ち着く。
ここで気持ちを落ち着かせていた自分を歌にするようです。
校舎の外にも子どもたちの姿はありました。
悠太君は迷ってるようだけど…。
校庭での出来事に決めたようです。
こちらはのぼり棒。
こうやってやってたら落ちた。
また落ちる。
やだ〜!落ちたくない!のぼり棒から落ちた事が一番印象に残っているようですね。
亀!みんな自分なりの名場面が見つかったかな?斉藤さん短歌の素材となる言葉を子どもたちから引き出します。
どんな場面?去年の学芸会で幕が閉まってる状態の時にその村人役の中でセリフが一番最初でその時の何回も…いいね。
いい場面だね。
悠歌さんは幕が上がる前のドキドキを歌にしました。
練習してんの?セリフっていうか頭の中で。
練習してたセリフって何て言うの?りんごまつりなんだ。
ハハハハッ。
それそのまま使ってもいいかもね。
ハハハハハッ!その時の気持ちを際立たせるためセリフを入れる事に。
続いては校庭で名場面を見つけた悠太君。
どういう場面ですか?出来事は久しぶりに体育の時間があってその時間にラグビーをした。
ラグビーはいはい。
僕はその試合になって1トライをした。
敵を次々にかわし独走でトライをあげた場面を歌にしました。
でも斉藤さん「はやりのラグビー」という言葉が気になります。
校庭ではやりのラグビーって言うとそれは悠太本人じゃなくても何かこう例えばテレビの中継でアナウンサーがラグビーをやってる人じゃなくて…でも何かあそこから回り込んできて走ってきてボールをポトンと置いたんだよなってやった〜っていう感じになってっていうのがそん時にその映像とかその校庭の感じ。
自分の目で見た手応えとかっていうのが加わるとその歌を読んだ人がね自分も何かトライした気持ちになってナイストライっていうのがその気持ちよく響くと思う訳。
悠太君自身の目線で書き直す事を提案しました。
続いては和心さん。
どんな場面ですか?1年生の教室に行ったら所構わず1年生がタックルしてくる。
ハハハハッタックルしてくるの?へえ〜はいはいはい。
ですごい懐いてくる。
うんうん。
自分が6年生に対してと1年生に対しての態度が違うのかなあと思って。
自分がサボテンみたいな感じでちょっとピリピリしてるトゲトゲしてる感じで自分が。
そんな感じでいるんですけど1年生がすごく懐いてくるからやっぱ甘いのかなあって。
ハハハッ。
誰とでも仲よくなりたいけど少し人と距離も置きたいという和心さん。
もっとトゲを出していくべきか悩んでいるようです。
最近はちょっとトゲをちょっとずつ出そうかなと思ってるんですけどでも出し過ぎると友達が離れていっちゃうかなと思って今ぐらいのちょっと優しいぐらいの態度でいるんですけど…そうだよね難しいよね。
友達が…少し距離を置いて静かに懐いてくれるとうれしいなっていうのは何かその言葉はなるほどなあっていうか何かスッとしみるものがあるな。
ねっ?斉藤さんまずは今の自分にぴったりくる言葉を探すよう宿題を出しました。
はいおはようございます。
(一同)おはようございま〜す!今日歌を短歌を一首仕上げてもらいます。
面談を踏まえて名場面の風景やその時の気持ちを書いてきた子どもたち。
その言葉を基に短歌を作ります。
出来た人から斉藤さんに見てもらいます。
川の向こうか騒ぐ中の2つなんですけどどっちがいいですかね?あ〜川の向こう渋いね。
う〜ん満足度どうだい?うんいいと思う。
いいと思うよ。
バッチリ。
誰のためでもなく自分が納得する言葉を発見してほしい。
重視したのは子どもたちの満足度。
寧麻さんは運動会で全校生徒に向かって成績発表をした場面を歌にしました。
100%満点で?90ぐらい。
90ぐらい?90%の10%は何だった?「成績発表」か「成績を発表します」と宣言した自分の言葉にするか迷っています。
多くてもよければこれにしたい?うんいいんじゃない?字を余らせるっていう事はやっぱりどうしても…本当にこう言ったっていうセリフとかあるいは景色を見てあまりにもすごいこうさその景色が印象に残り過ぎててこの見えたもの全部言いたいとかそういう時には余らせる訳。
…で字が余ってる事でこれ本当に言いたかったんだなとかいう事がその読んでる人に伝わるみたいなのもある訳。
「成績を発表します」ってドキドキしながら言ったんだしさそれがこの字余りで何かそのドキドキ感みたいなの伝わるし余らしちゃっていいんじゃないかな?はい。
ねえ?はい!続いては人との距離感について悩んでいた和心さん。
その気持ちをデリカシーという言葉で表す事にしました。
ハハハッ悩み中?一番ましなのをこっち側に書いてきた。
「デリカシー大切なもの守るため君と私の選択肢だよ」。
和心さんまだ最後の言葉に迷っています。
何でさ最初に「選択肢」っていう言葉が出たんだと思う?自分の人生とかに…。
かけはしの方がしっくりくる?きてる?はっきりとどっちも何か微妙にしっくりこない。
あ〜。
もしその言葉としてはかけはしの方がしっくりくるけど選択肢って言いたい気持ちがあるんだよなっていう場合は…わりと短歌での事な訳。
直すなら…和心さん最後まで自分にしっくりくる言葉を探します。
教室では短歌はもう完成間近。
「わたしの名場面」書けたかな?「わたしの名場面」っていう事で…だからこの小岩小学校がちょっとした臨時の美術館。
清書したら名場面の場所に貼りに行きます。
教室や図工室。
じゃあ俺ここ。
俺こっち。
校庭の朝礼台にのぼり棒。
みんな貼り終わったら準備完了。
展覧会スタートします。
(一同)イエ〜イ!誰?どこ賢也?賢也?賢也いた!続いては教材室。
「イライラする時はいちメートルの定規を見れば体と気分がおちつく」。
あっあの端が黒いやつか。
あっ太い方がいいよね。
体育館では学芸会の名場面。
セリフを暗唱していた悠歌さんの歌。
そして和心さんの歌は教室に。
デリカシーって自分の守るものじゃない?簡単すぎて分かんないよ。
なごちゃんなんかおっきいね何かおっきい。
これいい歌だと思いますよね。
私と相手に両方選択肢がある。
選ぶ権利があるし。
言葉で捉える事で実際かけはしになる選択肢だなって思うっていう事で人との距離の作り方っていうのも自分で作れるようになってくる訳じゃないですか。
校庭にはラグビーでトライをした場面を切り取った悠太君の歌。
「校庭で独走ダッシュ1トライ目線の先にはのぼり棒」。
お〜いいじゃん。
いいじゃんいいじゃん。
それぞれの場面に子どもたちの目から見た世界が広がっていました。
「のぼり棒調子にのると絶対にいたいめみるぞじごうじとくだ」。
「じごうじとくだ」。
ハハハハッ。
楽しかった?短歌。
楽しんでくれてたらうれしいです。
皆さんはこれから自分の考えが周りの人に全然分かってもらえないなあとか自分の気持ちがほかの人に全然伝わらないなみたいな事もあるかもしれません。
そういう時にこの2日間の事をちょっとできれば思い出してもらえるとうれしいです。
私が一番言いたかったのはこの歌だとこの書き方だと…他人と違うかもしれない自分だけの考えを大事にしてあげるっていう事だからです。
あなただけはあなたの味方でいてほしいっていうのが私の一番…まっいつかねしんどくなった時のために伝えたかった事です。
はい。
これで私の授業を終わります。
どうもありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
いやだから想像以上によかったな。
歌もよかったし…。
歌よかった歌がよかった。
内容が自由だって思ったし楽しかったです。
気持ちとか目線とか自分に思った事が今回は書けたと思います。
結構いいものが出来たと思います。
どの言葉当てはめてもこれが一番しっくりくる。
(取材者)自分の気持ちが?はい。
2015/12/21(月) 12:25〜12:54
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜「歌人 斉藤斎藤」[解][字][再]
今回の先輩は、型破りな短歌で注目の歌人、斉藤斎藤さん。授業は「私の名場面」をテーマに、子ども達が学校で強く印象に残った出来事を、自分なりの表現で短歌にしていく。
詳細情報
番組内容
今回の先輩は、型破りな短歌で注目を浴びている歌人、斉藤斎藤さん。斉藤さんの短歌の根底にあるのは、他人に伝えるための言葉ではなく、自分の見たものや感じたことを、リアルな自分なりの言葉で表現するというもの。今回の授業では、「私の名場面」をテーマに、子どもたちが学校生活で強く印象に残った出来事を、自分なりの表現で短歌にしていく。
出演者
【出演】歌人…斉藤斎藤,【語り】奥貫薫
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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