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TPP試算 GDP14兆円押し上げる効果
12月24日 18時20分

政府は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への署名を前に、経済効果の試算を取りまとめました。貿易や投資の拡大で、GDP=国内総生産をおよそ14兆円押し上げる効果があるとする一方、農林水産物の生産額は最大で2100億円、減少するとしています。
TPP=環太平洋パートナーシップ協定交渉の大筋合意を受け、政府は早ければ来年2月にも署名を行い、来年の通常国会での承認を目指す方針で、これを前にTPPの経済効果の試算を取りまとめ、24日、総理大臣官邸で開かれた経済財政諮問会議に報告しました。

それによりますと、協定の発効によって関税の削減や投資のルールが明確化されることで貿易や投資が拡大し、さらに日本経済の生産性が向上するとしています。その結果、労働者の実質賃金が上昇するほか、海外からの投資が増えて、新たにおよそ80万人の雇用が生まれ、GDP=国内総生産をおよそ14兆円、率にして2.6%押し上げる効果があるとしています。

一方、農業への影響について、関税の削減や撤廃で輸入量が増え、価格が下がることから、国内で生産額が大きい牛肉、豚肉、乳製品など33品目の生産額の合計が、現在のおよそ6兆8000億円より、1300億円から2100億円程度減少するとしています。

ただ、農家の赤字を補填(ほてん)するなどの国内対策を行うことを通じて、生産量は維持されるとしています。このうち、主食用コメについては、アメリカなどに対して新たな輸入枠を設けるものの、同じ量の国産のコメを政府が備蓄用として買い入れるため、生産額、生産量ともに影響は出ないとしています。
報告のあと、安倍総理大臣は「TPPについては、極めて大きな経済効果を持つという試算が示された。TPP政策大綱に沿った施策を展開し、真に強い経済を実現させる。わが国を貿易、投資のグローバル・ハブ=国際的な拠点とするための政策については、甘利大臣を中心にさらに具体化していただきたい」と述べました。
TPPの経済効果について、政府はTPP交渉に参加する前のおととし3月にも試算を行っていて、この際は、GDPの押し上げ効果は3.2兆円で、農林水産物の生産額は3兆円減少するとしていて、今回の試算とは大きく異なります。これについて政府は、前回は、農林水産物などの関税がすべて撤廃され、国内対策を一切行わないという想定で試算を行ったためだとしています。

専門家「妥当な数字」「意図的で恣意的」

国際経済学が専門の早稲田大学大学院の浦田秀次郎教授は「試算は妥当な数字だと思う。重要なのは、TPPで日本経済の成長メカニズムが再活性化することだ。貿易や投資が拡大すれば生産性や賃金が上がって雇用も増え、日本経済の再興につながっていく。農業に対する負の影響もそれほど大きくはないのではないか」と指摘しました。そのうえで、浦田教授は「企業がTPPを活用して自由貿易を行い、投資を拡大しなければ、試算で示された数字は実現しない。政府は企業に情報を積極的に流すことが重要で、農業についてはTPP政策大綱に盛り込まれた政策が実施されることが重要だ」と述べました。

一方、農業経済学が専門の東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「私の試算では、GDP=国内総生産はほとんど増えないし、農林水産物では1兆円を超える被害が出て、自動車分野もむしろマイナスの影響があるという結果になる」と述べました。そのうえで鈴木教授は「今回の政府の試算は非常に過大に評価されていると思う。『TPPはバラ色で、農業の被害も少ないから、少し国内対策をやれば済むんだ』という議論を展開するための、意図的で恣意(しい)的な数字だと言わざるをえない。政府は、まず農林水産物の実質的な被害額をきちんと示し、何をするべきか議論すべきだ」と指摘しました。

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