—— 高橋さんの初めての著書『リーダー論』を読みまして、高橋さんがメンバーとのコミュニケーションの仕方などについていろいろと試行錯誤をしながらリーダーとしての考え方を育んできたたことがわかりました。ところで、AKBの中でリーダーとして活躍していた高橋さんが影響を受けた方といえばどなたでしょう?
高橋みなみ(以下、高橋) 最初は、あゆ姉(折井あゆみ)※です。自分の憧れのお姉さんがリーダー的なポジションにいたということが、自分のこのポジションのスタートラインなのかな、と思います。
あとは、こういう立場になってから大勢の前でしゃべる機会が多くなったので、本当にスティーブ・ジョブズさんが大好きになりました。もう、すっごく好きです!
※ 折井あゆみ:AKB48一期生。2007年1月卒業。
—— スティーブ・ジョブズ! 高橋さんは選抜総選挙でのスピーチがいつも素晴らしいのですが、『リーダー論』にも高橋さんがスピーチの極意を伝える章があって、そこでもジョブズのプレゼンをご覧になっていると書かれていましたね。
高橋 はい! インターネットで見られるものは全部見ました。
—— おお、ガチですね(笑)。
高橋 はい(笑)。すごく惹きつけられますし、本当に天才だと思います。スタンフォード大学で行った有名なスピーチがあって、すっごく長いし、英語なのに、なんでこんなに聞きたくなるんだろう、って思うんですよね。間のとり方しかり、言葉の使い方しかり、すごく参考になります。これを生で聞いた人がうらやましい!(笑)
—— 高橋さんの神スピーチの裏にジョブズあり! というわけですね。
高橋 そう言われると申し訳ないんですけど(笑)。
高橋 自信を見せるところですね。やっぱりジョブズさんにはすべての動きに無駄がないように見せる自信があると思うんです。そういうところを見て私もしゃべっているときは、基本、ぜんぜん言葉に迷ってませんよ、って顔をしようとしています。
でも、頭の中では次の文字をガーッと出しているんです。
—— えっと、次の言葉の字幕を、頭の中で出しているんですか?
高橋 はい。次の言葉をここ(目の斜め上45度あたり)に出しています。言葉を間違えたときは、一度消してからもう一度出すので、実は少し「……」という“間”があるんですけど、その間を超越する自信、間さえも魅せてしまう自信を持つことを心掛けています。
—— 間さえも魅せる自信!
高橋 ナントカナントカ……(少し間をおいて)、ナントカナントカ。この間です!
—— うわっ、僕は絶対できないです! 人前に出たら、怖くてずーっとなんかしゃべってますから。
高橋 なにか難しいことや意味のある言葉を言った後って、頭の中でその言葉を繰り返しているじゃないですか。相手に考えてもらう時間も必要だと思うんです。この待つ間こそ、人を惹きつけるんです。
それを100%駆使しているのがジョブズさんのスピーチだったので、「すごい!」と思いました。
—— ジョブズからは、他にはどんなことを?
高橋 言葉だけじゃなくて、目と動きがすべてを語っているところがすごいですね。まるで自分に語りかけられているみたいです。これも根本はやっぱり自信だと思います。
—— スピーチの章ではありませんが、高橋さんも本の中で「圧倒的な積み重ねが自分を信じる根拠になる」と書かれています。自信を生み出すには、練習するしかないんですね。ジョブズも、ものすごくスピーチの練習をしたそうです。
高橋 はい、練習しかないんですよ! そこはジョブズさんの真似をしている部分かもしれませんね。あと、私の根本にある少年漫画のコマ割からも学んでます。
—— 漫画のコマ割りですか?
高橋 大切なことを言うときは「太文字になる言葉」をイメージしているんです。漫画でも大きなコマで太文字になるセリフってありますよね。あとはそれを言う前のコマ割りをイメージします。
たくさんの観衆がいて、仲間のエールがあって、少しの間があってから、「海賊王に、俺はなる!」ってドーンと言う。
—— なるほど、わかりやすいですね。
高橋 その間が人の想像をかき立てて、人を惹きつけるものだと思うんです。
AKBに入ってきたメンバーは「落ちこぼれ」ばかりでした
—— この本の冒頭で「私のような凡人が認められるには、頑張るしかない」「自分に自信がないからこそ、努力しているんです」と書いてあったのがとても印象に残っています。
高橋 AKB48に入ってきたメンバーは、基本、落ちこぼればかりだったんです。特に一期生は最初から入りたくて入ってきた子はほとんどいないんです。声優、モデル、女優、歌手……みんなそれぞれオーディションに落ちて、受かったのがAKB48だったんです。
—— 高橋さんも歌手志望だったわけですからね。
高橋 はい。でも、一人で叶わなかったことを、みんなで叶えに行くんだ、落ちこぼれから這い上がってやるんだ、っていう気持ちだけはすごくありました。落ちこぼれが集まったからといって一流になれるわけではないんです。でも、何かをやりとげたとき、誰かがほめてくれたり、認めてくれたりすることって、すごく幸せですし、凡人でよかったとも思います。凡人だからがんばろうとも思いました。
デコボコでグチャグチャで、でもがんばるんだよ、ってところだけが自分たちの取り柄なんで、AKB48にはこれからもがんばって泥臭く生きるグループであってほしいですし、私もこれからのソロ活動で活かしていきたいと思います。
—— 来年3月には、AKBとしての活動に一つの区切りをつけて、今度はソロ歌手として活動していくわけですけど、この10年を振り返ってみて、もう少しアイドルを楽しんでおけばよかった、という気持ちはありますか?
高橋 はい。やっぱりキャプテンという仕事や、総監督という名前に葛藤した時期がすごく長かったんです。ライブ中、みんなが楽しそうにしているときでも私は締めの言葉を考てしまったり、ライブを楽しめなかった時期がすごくあったんですよね。
—— 高橋さんにしかできない役目があったわけですからね。
高橋 ライブ中、7ヶ所くらいMCがあったら、私が全部出ている時もあったんです。歌ってダンスして、すごく楽しそうにライブを終わっている子もいる中で、私はセリフ間違えた……って。なんでみんなと違うことで落ち込まなきゃいけないんだろう、なんてつらい気持ちを抱えていたこともありました。
でも、卒業を発表するちょっと前から、人に任せるということも覚えてきたんです。
—— 本の最後のほうには、「このグループの未来を、みんなに任せて託すこと。それが、総監督としての私の最後の仕事」とありました。
高橋 はい。ですから、卒業発表してからこの1年は、すごく楽しくAKB48をやらせていただきました。ラストスパート、卒業公演までがんばりますので、応援よろしくお願いします!
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構成:大山くまお ヘアメイク:天野優紀 撮影:加藤浩