- 2014年02月14日 09:01
STAP細胞の研究論文内の不自然な画像データ
小保方晴子さんらが発表したSTAP細胞に関する研究論文において、データに不自然な点があるという指摘が国内外のネット上でなされている。
"Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency": PubPeer
指摘されている論文はNature誌に発表された以下の二報。
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency: Nature
Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency: Nature
これだけのセンセーショナルな発見なために、論文を見る目も厳しくなっているのだろう。これらの論文中に電気泳動像や細胞の写真データが加工された可能性が指摘されている。
本ブログでは、STAP細胞と小保方さんについての記事をいくつか書いてきた。今回は、これらの指摘内容を検証した。実際に論文の図の当該箇所をPhotoshopでレベル補正をし、オリジナル画像との比較をしてみた。
以下の図はSTAP細胞がT細胞から作られたことを示す、DNAバンドパターンの画像。
Obokata et al. 2014a, Nature,図1i (左: オリジナル 右: 補正済み)
よく見ると真ん中のリンパ球のレーンだけ、バックグラウンドが濃くなっている。ここのレーンだけ別の画像から挿入されている可能性が、もしかしたらあるかもしれない。通常、同じ実験の別の試行により得られた画像を同時に示す場合は、別々に分けて画像が並べられる。
細胞を撮影した画像にも、不自然な四角形のかたまりが散見される。明るさにグラデーションが無く、あるところから急に真っ黒になっているように見える。
Obokata et al. 2014a, Nature, 図1b (左: オリジナル 右: 補正済み)
Obokata et al. 2014a, Nature, 図5d (左: オリジナル 右: 補正済み)
Obokata et al. 2014b, Nature, 図2f (左: オリジナル 右: 補正済み)
何となくだが、細胞の画像を新たに付け加えたのではなく、バックグラウンドのノイズを消しているようにも見える。【追記2014.2.14.】id:tsukitanukiさんより「jpg.などの拡張子で処理をするとこのように見えることもあるかもしれない」とのコメントをいただいた。さらに、片瀬久美子さんから「縮小している図の場合は「ブロックノイズ」という現象があるので、背景が塗りつぶされている様に見える」とのご指摘。お二人の意見を総合すると、これは画像加工によるものではない可能性も高い。
この他にも、別々の実験において撮影されたとされるマウスの胎盤の一部が形態的に酷似しているという指摘もある。ただ、これらのデータが捏造さられたものであるという証拠はない。ただし、何らかの画像処理などを施している可能性は残るので、これらのデータについて小保方さんやハーバード大のチャールズ・バカンティさんらによる説明が必要になるだろう。
今回のSTAP細胞に関する研究成果については、そのあまりの意外性の大きさから、当初Nature誌から受け入れられなかった。そして、Nature誌の編集部と専門家である審査員の厳しい審査を経て、研究論文が掲載された経緯がある。私はこのような経緯から、本研究論文のデータはかなり堅いものだろうと判断していた。それでも、このような指摘が出てくるほどに、研究論文の審査システムが盤石でないことが、今回浮き彫りとなった。
いずれにしても、他者による本研究の追試が行われ、研究結果の再現性がとれるかどうかが待たれる。
ところで、今回の論文ではないが、小保方さんが第一著者として2011年に発表した論文内に、DNAバンドパターンが酷似しているふたつのデータが示されている。一報の画像データを反転して並べたのが以下の図である。
Obokata et al. 2011, Tissue Enginnering: Part A, 図3
これは偶然にして酷似しすぎているように見える。なお、こちらの論文の責任著者は小保方さんではなく、バカンティさんのみだ。
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