不足懸念が広がる 化血研不正で出荷自粛
血液製剤やワクチン大手の一般財団法人「化学及血清療法研究所」(熊本市)の不正製造を巡り、化血研のシェアが高い九州各地で出荷自粛によるワクチン不足への懸念が広がっている。既に北九州市内では、市医師会が把握できた医療機関のほぼ半数でB型肝炎と4種混合のワクチンが不足か入荷ゼロの状態。販売大手によると、B型肝炎と日本脳炎のワクチンが来年1月にも在庫切れの恐れがあるといい、各県は不安を募らせている。【大場伸也】
「ワクチンが入荷せず、B型肝炎や日本脳炎の接種の予約は11月中旬ごろから断っている」。北九州市八幡東区の小児科は窮状を明かす。
市医師会によると22日現在、ワクチンごとの入荷状況を把握できた市内の約90〜130医療機関のうち、B型肝炎と4種混合はほぼ半数、日本脳炎では4分の1程度でワクチンが「不足」または「入荷ゼロ」となっている。「ワクチンを接種できる病院を探している」との問い合わせが相次ぎ、入荷待ちが続く病院もある。また、「化血研のワクチンは接種したくない」と言う人もいるという。
化血研のワクチンは、日本脳炎▽B型肝炎▽インフルエンザ▽4種混合(百日ぜき、ジフテリア、破傷風、ポリオ)−−などで全国的にシェアが高い。インフルエンザと4種混合は出荷自粛が解除されたが、B型肝炎と日本脳炎は現在も自粛中で入手しにくい。
中でも九州は化血研製ワクチンのシェアが高く、例えば地元の熊本県では昨年度、日本脳炎ワクチンの約7割を同社製が占め、全国平均の約2倍。化血研によると、九州ではかつて販売会社を通さず卸業者に直接販売していた経緯もあるためシェアが高いといい、出荷自粛の影響を受けやすいようだ。
長崎県医師会にも複数の郡市医師会から「B型肝炎、日本脳炎などのワクチンが足りない」と相談が寄せられている。大分県は医師会などに不要不急の接種を控えるよう要請した。福岡県は卸業団体などに在庫が少なくなったら連絡するよう求めている。
厚生労働省はワクチンが不足した場合、県内の地域間もしくは県同士で融通する方針を示しており、「一部で足りない地域は出るが、当面、全国的な供給不足は生じない見込み」としている。だが、B型肝炎と日本脳炎のワクチン出荷がいつ再開されるか分からず、大分県の担当者は「B型肝炎は母子感染防止など緊急性を要するケースもある。このまま出荷自粛が続けばどうなるのかという不安はある」と話す。
日本脳炎ワクチンは4歳までに3回、9歳で1回、原則公費で接種。B型肝炎は任意だが、標準で0歳児への接種(3回)を自治体に義務づけることが検討されている。