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特別インタビュー 〜専門家に訊く、ちょっとためになる話〜

ポジショニングのポイント

身体を保持するポジショニング、動きを支持するポジショニングとは、どのようなものでしょうか。前ページでお話を伺った理学療法士・伊藤亮子さんに、ポジショニングの目的と導入のポイントについて教えていただきました。
基本となる骨盤を正しい位置に整えるための方法はじめ、ベッド上での寝返りを打ちやすくするためのポジショニンング、車いす上での座位の姿勢を保つためのポジショニングなど、具体的なケースごとにご紹介します。

ポジショニングのポイント ベッド編
ポジショニングを行う前に、骨盤の傾きから確認しましょう。

自分で身体を動かせない方は、身体がゆがんだ姿勢になっていると、そのゆがんだままの姿勢で過ごされることになります。身体がゆがんだままポジショニングをしてしまうと、変形を助長してしまうことになりかねません。ポジショニングを行う前は、必ず骨盤がニュートラルな位置にあるか確認したうえで行いましょう。

骨盤がニュートラルな位置になった状態です。

骨盤が右に傾いています。それに伴って、足の位置もゆがんだ状態に位置づけられています。

骨盤の前後の傾きを確認するために、すべりやすいグローブを着用して、臀部の下に挿入し、過度な圧がかかっていないかをみます。

腰骨(上前腸骨棘)に手を当てながら、できるだけ左右のねじれや傾きがない状態にします。

足の拘縮/変形

仰臥位で過ごす時間が長くなると足の拘縮が見られることがあります。このような拘縮を防ぐためには、早期にポジショニングやリハビリを開始することが大切ですが、すでに拘縮がみられはじめている場合もそれ以上の拘縮がすすまないように、ポジショニングを導入しましょう。尖足は、車椅子座位や歩行の妨げになります。

拘縮した足は、内側または外側に倒れていきます。その結果、骨盤のゆがみや背骨のねじれに影響します。

1つのピローを両ひざの下だけに入れてしまうと、一部分しか支えられていないため、動きがとりづらく、踵の圧力も軽減されていません。

太ももは骨を外側から、膝下は骨を内側からピローで支えます。足の過度な外転・内転を防ぎ、足を転がす動きも確保します。

足の骨全体を広く受けている為、踵への圧も以前より軽減されています。

腕の拘縮/変形

足と同様、腕も長期の臥床により拘縮がすすむことがあります。ご自身の胸郭に手を置き、次第に拘縮が強くなると、手の先が胸に押し付けられることもあります。

腕の位置と重さにより、胸郭が傾きます。

隙間にピローを入れて広げようとすると、更に緊張が高まることがあります。

二の腕の部分から手の先にかけて、広くうけるようにします。上腕骨をピローで支えます。

寝返りの補助

筋力の弱い方は、寝がえりをうちたい意識があっても、支えがないと寝返りがうてないことがあります。寝返りをうてず、同じ姿勢を保ち続けることが、さまざまな二次障害へつながります。重心を片側に移動させることにより、寝返りをうちやすい環境をつくっていきます。

左右対象の重さがかかっていますが、寝返りはうちにくい状態です。

ピローを後頭部から肩、腰にかけて挿入し、足は「足の拘縮」と同様に骨に沿わせます。このとき、首に挿入すると首の動きが制限されますので注意が必要です。また、肩や腰にしっかり挿入しないと、不快感が強くからだがねじれた状態となります。

ピローによる支えと重心の傾きにより、ご自分でサイドレールなども使いながら寝返りがしやすくなります。

ポジショニングのポイント 車椅子・座位編

車椅子における座位姿勢は、車椅子による影響が大きく、ポジショニングを行う前提として、車椅子と体のフィッティングを確認することが重要となります。今回は車椅子のフィッティングについては省略いたしますが、その方の身体に合った車椅子を選定しましょう。
車椅子や座位でのポジショニングを行う前も、ベッド上と同様に骨盤から確認します。座位では、特に骨盤の後傾がみられやすく、この姿勢によって前すべりをすることがあります。

骨盤が後傾すると、尾骨の褥瘡、背柱の円背や緊張の原因になります。

1.腰骨(上前腸骨棘)と背部の腰骨(上後腸骨棘)に手を当て、骨盤をニュートラルな位置にします。
後傾している状態では、前後の高さがあっていません。

3.前後が同じ高さになるよう、補正します。

3.骨盤がニュートラルな位置になった状態です。

片麻痺がある方

片麻痺がある方は、麻痺側に体が傾くことが多く、腕の重さと重力によってさらに身体の傾きが助長されます。麻痺側をサポートすることにより、体の中心を保つ姿勢を維持します。

麻痺側をサポートすることにより、体の傾きを補正します。

麻痺により体の中心のバランスが崩れ、さらに腕の重みで体の傾きが助長されます。

前傾姿勢の方

円背の方や上体を保てない方は、身体が前方に倒れる姿勢になります。また、車椅子クッションの導入によってアームレストの高さが低くなり、安定感が得られない場合も前傾姿勢になりやすくなります。車椅子クッションを導入する場合は、導入した状態で患者様のフィッティングを行いますが、調整が困難な場合は、ピローで腕を支えることで、上体を起こしやすくします。

ピローで腕の重みを支え、上体を起こしやすくします。

円背の方や筋力が弱い方は前傾姿勢になりやすく、腕の重みと重力によってさらに上体が倒れていきます。

ポジショニングを行う際の注意

ピローによるポジショニングを行う際に、ピローが原因と思われる痛みや発赤が発生した場合は、素材の再検討や、場合によっては使用を中止してください。
ピローによるポジショニングを行う際に、ピローが原因と思われる痛みや発赤が発生した場合は、素材の再検討や、場合によっては使用を中止してください。

ご本人の状態は、ひとそれぞれであり、変化することもあります。
同じポジショニングをしても、ご本人の反応と変化は様々です。ご本人の状態や環境をよく観察しながら、個々の対応を考えましょう。

ご本人の状態を確認してポジショニングを行いましょう。
ご本人の基礎疾患によっては、推奨されているポジション、あるいは禁忌のポジションがあります。そのような方にポジショニングを行う際は、専門家にご相談ください。

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