「パンクを気にせず自転車を乗り回したい」。自転車製造卸の武田産業(千葉県柏市)はこの要求に応えるべく、パンクしないと銘打つタイヤを装着した自転車を販売する。高ポリマー分子素材を使い、耐摩耗性や耐水性が高いのが特長。空気を入れるチューブ式タイヤ自転車が大勢を占める中、市場開拓に挑む。
同社は自転車の製造から組み立てまで手掛けるが、パンクしないタイヤは韓国タンナス社(金海市)製を使っている。国内でタンナス社製タイヤを装着した自転車は武田産業のみで、「チャクル」ブランドで全国のホームセンターや専門店で販売している。
パンクしないタイヤの素材は従来、ゲルやウレタンが使用されていたが、重量が増し、ウレタンは水に弱い面があった。タンナス社の素材である高分子ポリマーは耐摩耗性や耐水性に優れているほか、軽さも追求したという。
武田産業によると、タンナス社製のタイヤの寿命目安は、9000キロの走行、3年間程度。その間、基本的にメンテナンスは必要なく、タイヤトレッドの溝がなくなった時に交換すればいいという。タイヤの重さも2本合計で1310グラムと他社に比べ半分以下に抑えている。
規格もクリアしている。例えば5000キロ走行後、タイヤの変形が5ミリ以内で合格とされるところを、チャクルでは1ミリにとどめたという。
その上で、武田産業は走行時の振動を抑えるなど「軽くて乗り心地がいい」をモットーにした自転車を企画開発した。衝撃に対するクッション性は通常の空気入り自転車の80%まで高めている。
武田英世社長は「長距離の通学にも適している」と力を込める。一般的なチューブタイヤ装着の自転車はパンクするリスクが常にある。パンクしないことが消費者にとってストレス緩和につながるという。通常の自転車より1万円高い価格設定も「トータルで考えればお得感がある」とする。ほかにもレンタサイクルやリヤカー、工場内での移動で使う自転車にも重宝されているという。
同社は現在、天津と寧波の工場で自転車を組み立てている。2017年には中国企業と合弁でベトナムでの生産も始め、生産コストを従来より2~3割抑える考えだ。
同社によると、国内の自転車生産台数と輸入台数の合計は11年に計1055万台だったが、13年には同889万台に減っている。15年には同800万台とさらに減るとみており、市場縮小は否めない。
武田社長によると、パンクしないタイヤのシェアはまだ1%にすぎない。「開拓余地は十分で、将来市場の2割をパンクしないタイヤにする」と意気込む。
■パンクしない電動アシスト自転車も投入
チャクルブランドで2016年春に電動アシスト付き自転車を発売する。パンクせずに、電動なので走行は楽になる。価格は10万円前後となる見込みで決して安くはない。
販売に結びつけるには乗り心地が重要となる。一般的な空気入り自転車のようなクッション性や軽さを出せるような開発が欠かせない。市場での存在感を高めることができるのか、手腕が試される。
《武田産業profile》 1949年設立。自転車やパーツの製造卸・販売を手掛ける。2014年11月期の売上高は42億円。