塩原賢、竹内誠人
2015年12月24日05時03分
ネット通販大手のアマゾンが、刊行から一定期間を過ぎた一部の本の値引き販売を始めた。本は再販売価格維持制度に基づく定価販売が普通だが、出版社から“要望”のあった本の値引き販売は認められている。ただ、参加するのは1社のみ。出版界の慣行を揺さぶる「黒船」への警戒感は根強い。
参加するのは筑摩書房。「フローベール全集」など8タイトルで、当面は来年1月中旬ごろまで定価の2割を値引きする。アマゾンの値引き販売は6月に続いて2回目だが、5社の計約110タイトルだった前回から大幅に減った。しかも筑摩は約100の一般書店でも同様の取り組みをすでに始めており、今回はアマゾンが筑摩の取り組みに乗った形で、アマゾン単独の値引き販売に参加する出版社は今のところゼロだ。
「今回は参加できない」
前回参加した出版社の社長は11月にアマゾンから誘いを受け、そう漏らした。前回の販売初日、大手書店から「どういうことか説明に来て欲しい」と電話がかかってきた。書店役員らが居並ぶ部屋で、経緯説明と謝罪を求められ、他の一般書店からも本が続々と返本されてきた。「まさかここまでたたかれるとは思わなかった」
一般書店側の強烈な締め付けが出版社の参加を阻んだ形だが、アマゾンが出版社への攻勢を緩める気配はない。
10月、東京・目黒のアマゾンジャパン本社ビルに、大手・中堅出版社の社長と営業担当者らが集められ、2週にわたって計約40社が“懇談会”に参加した。
「出版がこれほど低落した原因は?」「アマゾンに期待することは?」
アマゾン側から立て続けに質問され、参加した社長らは、渡されたスケッチブックに「コンテンツの魅力を増すのを怠った」「アマゾンに長く本を置いてもらいたい」などと書き込んで見せた。
残り:957文字/全文:1696文字
おすすめコンテンツ