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数学について

アクチュアリーの資格を取るには、大阪大学理学部数学科への進学が最善かどうか教えてください。

私は高校2年生ですが、大阪大学理学部数学科を第一志望として下書きを提出したところ、理由が不十分だと指摘されました。
その理由の内容は「数学が好きで、将来就きたいアクチュアリーになるためには数学科で勉強することが必要だと思ったから」です。
これでは大阪大学を志望する理由にならない、大阪大学でなければならない理由がないと学校から言われました。

いろいろと調べましたが、ずばり、志望理由となる大阪大学の魅力を教えていただきたいです。
加えて、アクチュアリーになるために数学科を志望することは最善どうか知りたいです。

アメリカなどで人気No.1 の資格といわれている「アクチュアリー」は簡単に言えば、保険商品の不確実性の分析や評価を行う専門家です。
とても重要な人材でありながら、日本にはまだ1200人程度です。

資格取得に必要な5科目合格までには、平均7、8年かかってしまうほどの難関資格です。
「アクチュアリー」になるためには、確率・統計をベースに生命保険、損害保険、年金数理などを学ぶ必要があります。
普通の数学と応用数学の両方勉強しないといけないことが資格の合格難度を高めています。
ですからアクチュアリーになるには数学科に進学することがとても有利だと思います。

大阪大学理学部数学科では、ほとんどの科目が「普通の数学」の科目で、アクチュアリー関係では唯一つ「保険数学」があるだけです。
アクチュアリー志望であっても、学部の四年間は通常の学生と同じように数学の力を養成して頂くことになります。
大学院に進学すれば、アクチュアリー関係の科目が10科目以上あってとても充実しています(その多くが実務経験のある講師による授業です)。つまり、大阪大学でアクチュアリー教育を受けようとするならば、まずは、学部でしっかり普通の数学の力をつけてから、大学院に進学して実務に関することを勉強して下さい、ということです。
そういうわけで、アクチュアリー志望であれば数学科に進学するのは良い選択であると思われます。

最後に大阪大学を志望する理由についてですが、そもそもあなたがなぜ大阪大学を仮の志望校としたのかも分からないわけで、なんともこちらからは判断しにくいことです。進路指導の先生ともう一度相談してください。
大学およびその周辺の雰囲気を知りたいということであれば、一度見学に来るという手もあります。例えば学園祭などの大学のイベントであるとかオープンキャンパスなどもあります。
こういった行事の詳細についてはウェブページなどですぐに情報を得ることができます。

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10/3=3.3333…なのに3.3333…×=9.9999…となるのはなぜですか?

私は数学科の卒業生なのですが現在アルバイトで塾講師をやっております。
そこで中学生から次のような質問をされました。

「10/3=3.3333…なのに3.3333…×=9.9999…となるのはなぜか?」

自分は極限の概念で理解しているのでうまく答えられませんでした。
(中学生なので極限はわからないと思いまして)一応、2/4と1/2が(表記が違うが)同じものを表しているように10と0.9999…も同じものを表していると言いましたがあまりいい説明だったとは思いません。
なにか中学生にもわかるようないい説明方法はないでしょうか?
いい案がありましたらお教え下さい。

数を「10/3=3.3333…」のように無限小数で表すというのは、結局のところ無限級数あるいは極限の概念を用いているわけですから、中学生にちゃんとした説明するのは困難だとは思います。
それに、数の実体と数の表記の区別というのはなかなか説明が難しいものです。
このあたりを考慮して、いくつか案を挙げましょう。

「10 と 9.999… が同じものを表している」ということを説明するには、
例えば
「x=9.999... とおくと、
10x=99.999... ですから
10x=99.999... と x=9.999... の両辺をそれぞれ引くと
10x-x=9 。
9x=9 の両辺を9で割って
x=10 。」
という無限小数をうまく消すという方法があります。

また、「10-9.999... を考えてみよう!」
というのも良いかもしれません。
「10-9.9=0.1, 10-9.99=0.01, 10-9.999=0.001,... 」
という計算を見ていけば
10-9.999... =0
がわかり(これは級数の収束の定義に戻って考えているにすぎないのですが)、
10=9.999...
を納得できるかもしれません。

以上が主な案です。それで納得がいかないようであれば、「3.3333…」というような無限小数による表記がいったいどのような意味であるかということを逆に聞いてみたりして無限を取り扱うのは難しいということをわかってもらい、それは高校以降でするのだということを伝えるなり、それに関する何らかの本を紹介するなりするしかないように思います。

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理学部数学科からでは中学校の数学教師になるのは大変でしょうか?

僕は高校2年生で将来中学校の数学の教師になろうと考えています。
教員養成学部以外での免許の取得が難しくなったそうですが、理学部の数学科からでは教師になるのは大変になるのでしょうか?
いろいろ進路の事で真面目に悩んでいるのでよろしくお願いします。

大阪大学理学部の数学科に入学したとして、卒業時に中学校一種免許(数学)を取得する事ができます。
ただし、数学科に配当されている一般教養科目・専門教育科目の他に、「教職に関する科目」と呼ばれる科目を、理学部数学科の卒業要件単位とは別に31単位取得する必要があります。その中に出身の中学校や高校で実施する「教育実習」も含まれます。(学部4年次に実施)

また、中学教諭免許を取得する際は、社会福祉施設や養護学校での「介護等の体験」が必要になります。(学部3年次に実施)

大阪大学理学部では、数学科、物理学科、化学科、生物学科の4学科がありますが、数学科以外の学科に入学し、「中学校一種(数学)」の免許を取得する事は不可能ではありませんが、カリキュラム的に難しいです。

大阪大学理学部数学科の学生さんは、少なくとも1/3位の人は卒業までに教員免許をとるようです。
ですから、教員免許をとるのがそんなに大変だと言うわけではありません。

また大阪大学では、数学について言えば教員養成大学よりはるかに視野の広いバランスのとれた教育を行っているという自負があります。
ティーチング=スタッフも研究の最前線で活躍している人が殆どで充実しています。

これからは、公立高校でも中学から6年一貫教育の学校が増えることが予想されます。
他方、私学で教師になる人も多いので教員免許をとられる場合は、大阪大学在学中に、中学、高校両方の教員免許をとられることを薦めています。(大阪大学では多くの学生が頑張って両方とるようにしています。)

大問題、高校で教員として採用してくれるかどうかということで少子化の現在、教員のニーズについてはかなり狭き門となっているようです。

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私が独自に導出した式が既に知られているか教えてください。

数学科を志望している高校2年の学生です。
高校の数学授業内容とは全く関係ありませんが、個人的に EulerGamma 定数を調べています。
定義式 γ=limn→∞{Σk=1→n{1/k} - log(n)} で表される以外に無限級数を用いた表現方法等、知られていましたら教えてください。
具体的には、私が独自に導出した式
 γ=Σn=1→∞{Σk=2→∞{(-1)k*(1/(knk))}}
という式が既に知られているかどうかを教えてください。

ご質問にあった公式は、たとえば http://mathworld.wolfram.com/Euler-MascheroniConstant.html の(14)式にあります。
ちなみに、この「MathWorld」のサイトはオンライン数学辞典として便利なものです。

EulerGamma 定数に収束する級数は数値計算に便利なものがありません。
最近の本には、あまり説明されていないようです。ご質問にあった公式を改良した公式として
Cn= 1+ 1/2 + ... + 1/n - log(n+1/2)
について
γ = Cn -2 Σp:n+1→∞Σk:1→∞1/(2k+1)*1/(2p)2k+1
という公式が数値計算に使われていたようです。この公式を導くヒントを示しておきます:
γ= Cn - (Cn - Cn+1) - (Cn+1 - Cn+2) -...
また、EulerGamma 定数の積分表示式が、「数学公式III」(岩波全書)13ページにいくつか紹介されています。
被積分函数を適当に級数展開することにより、さまざまな形の級数表示を得ることができるでしょう。

ガンマ函数の入門書として、現在発売されている本:
 ・「ガンマ関数入門」(日本評論社)
 ・E.アルティン/著、上野健爾/訳・解説

数値解析に詳しい本(入手困難と思います):
 ・「ガンマ函数の理論と応用」柴垣和三雄, 岩波書店(1952)

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本当のseparatrixは振動解ではないでしょうか?

古典物理学に,剛体の回転を表現するオイラーの方程式があります。
この解は、剛体ボディ固定座標系の角速度の関数として、ヤコビの楕円関数を用いて表現されます。
自分で恒等変換で解いてみると(正確には後述の文献の解法を辿ると)、

(角速度の微分)^2=(角速度)^2の関数 (1)
という途中過程に辿り付きます。

勿論、参考文献のように(1)の両辺の平方根を取り
(角速度の微分)=+(角速度)の関数 (2)

とすれば、ヤコビの楕円関数として解けます。しかし、(2)では符号の+を既知としなくてはならず、また符号切り替えは一般には恒等変換にならないと思います。そしてこの疑問は以下へ続きます。

(2)の解のヤコビの楕円関数のうち、母数が1の場合はオイラーの方程式の特異解であり、separatrix(セパラトリクス)と呼ばれています。
一般解が周期解であるのに対してseparatrixは収束解です。
物理現象で言うと、一般解はニューテーション運動なのに対し、separatrixはシングルスピンです。
しかし一般解もそうなのですが、(2)で恒等変換を行っていないので本当のseparatrixは振動解なのではないかと考えています。
これは(1)が何やら円錐曲線めいた微分方程式であること(実際には違うが)も疑問の一因です。
また(これは線形微分方程式のみ?)一般解+特異解がseparatrixの真の解なのではないかというのも疑問の一因です(この場合はやはり振動解?)。

以上自分では難しくて解けないのですが、趣旨としてはseparatrixは振動解なのではないか?ということです。
計算機でオイラーの方程式解の微分方程式を解いて確認しようとしましたが、double精度で行っても解は振動してしまいますがこれが有限語調誤差によるものなのか,理論誤差によるものなのかが判別がつきませんでした。

ちょっと答えにくい質問なので、分かりやすくするために結論を先に書きます。
(a)separatrix の上の点から出発する解は separatrix の終端する不動点に収束する解です。
separatrix の上にのっている解と振動解を繋いで解をつくるようなことは不可能です。

(b)通常の数値計算によって separatrix の解を出そうとすると、振動する解がでて来てしまうのは自然なことです。
これは誤差のある計算をすれば当然そうなります。

(a) について
少し一般の場合で説明します。以下 x は N 次元空間の点と思って下さい。
常微分方程式 x'=f(x) に不変量 E(x) があるときに、関係 E(x)=const を使って変数を減らす操作をするときにはいつでもこのような問題が生じえます。
これはつまり、超曲面 E(x) が複数の成分からなっているためにおこります。
このような場合考える解がどの成分にのっているかを気をつけなくてはなりません。
この点についての巷の解説書の記述は確かに適切とは言えないものが多いのです。適切な解説書を挙げられないのが残念です。

さて平方根の符合の選び方ですが、私が一番論理的単純な納得のしかたと思うのは、このような計算全てを単に解を見つけるための発見法だとみなし、真剣にとらないやり方です。取り敢えず解を探して、その解がどうなっているかは解の一意性定理を使った議論に任せるというやり方です。

これだけではなんなので、質問の方程式の separatrix の上の解についての説明を試みます。
今の場合、状態の空間を
1. 不動点と separatrix たちでなる部分
2. これら以外の部分(振動解によって満たされている)
の二個に分けることができます。それぞれはことなる保存量を持つのでそれぞれの中の点から出発する解は時間が進んで別の部分にうつることはできません。さらに 1. を不動点と separatrix に分けると、これらの間もうつりあうことは出来ません(この部分は常微分方程式の解の一意性を使った議論が必要です。ここをちゃんと書いていない本が多い)。
不動点を取り除いてしまえばseparatrix 同士は連結ではありませんから連続な解は互いにうつりあうことができません。
separatrix の終端近くでは、解は時間とともに終端にある不動点に近付くことしかできません。
従って、ある separatrix の上の点から出発する解を考えるときには別の separatrix を考える必要がないので、その separatrix がのっている方の平方根の符合を選んで変えないことが正当化されます。

周期解の場合はどうしても平方根の符合を両方考える必要があるのでもっと説明が面倒になりますが、考え方は同じです。 (図を描かずに説明するのが難しいのですが例えば上で挙げた戸田の本には図が描いてありますので見て下さい。)

(b)について
平面の上に絵を書いて、方程式を短い時間解いては少し誤差を入れるという操作を繰り返すとどうなるかを想像すれば、なぜ振動してしまうか分かると思います。
これの原因は separatix が終端している不動点が不安定な不動点であるためで、不安定な不動点の近くでは数値計算によってでてきた解の定性的な挙動は信用できません。

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数学というのは既に研究され尽くした学問だと思うのですが。

僕は高校1年生で、高校の数学にとても魅力を感じ楽しく取り組んでいます。
ですからそれを発展させた数学を学べる数学科に行こうと思っています。
しかし数学というのは既に研究され尽くした学問だと最近感じるようになってきました。
そう考えると意欲がそがれる気分になってしまいます。まだ数学には未開の分野はあるのでしょうか?

今から100年近く前に、ポアンカレが次のような講演をしています。
「かつて数学の未来は不幸であるとの予言があった。
これらの予言者は全ての問題は解けてしまって、未来は落ち穂を拾うことしか許されていない、と言った。
しかし、これらの悲観論者はいつも退却せねばならなかった。
今日は、こういう悲観論者はいないと私は信ずる。」

悲観的な見通しをする人は100年以上前から何人もいて、そのたびに否定されてきています。
100年前の悲観論者が20世紀の数学の発展を見れば、自らの不明を恥じ入るでしょう。
しかし、こうした過去がありながら、数学で、あるいはもっと広く文明において「もうやることはないのではないか」といった問いかけが繰り返されています。
「研究し尽くされたのではないか?」という質問には、直接答えることができません。
この質問の答えは、各人の心の中にあり、各人がどのような知的な努力を行うかにかかっています。
数学の研究において知識の集積は必ずしも重要ではなく、創造的な人間の頭から生れるアイデアが重要になります。
それは過去の未解決問題を解くだけでなく、数学をより単純化しまた新しい研究の方向を照らし出すものです。
これによって、たえず数学の研究には長年蓄積された知識の資産がなくとも若くしてすぐれた成果をあげることが可能なのです。
また、数学の研究においては「知られた問題を解くこと」以上に「新たな問題を見出すこと」のほうが重要な意味を持つことが多いのです。
そして有名な未解決問題が解かれると、そこから新たな問題が生まれ新たな分野の発展を促すことも多いのです。
独創的な精神を人類が失う時代があれば、その時が数学の終わる時でしょう。「人間精神の名誉のために」(ヤコビの言葉)、若者が自由な思考を行う限り、数学の研究が尽きることは決してありません。
そして、数学者ほど知的な活動において完全な自由を持っている人間は少ないのです。
「もうやることはないのではないか?」という悲観論を抱く者に対しては、「あなたは自由な精神を本当の意味で持っているのか」という問いで答えたいと思います。
繰り返しますが、自由な精神が人間の名誉をかけてたゆまず思索する限り、いつまでも数学は前に進んで行くでしょう。

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πおよびeを10進展開したとき2つの各数で、奇数と偶数は同じ確率(50%)で現れますか?

πおよびeを10進展開したとき2つの各数で、奇数と偶数は同じ確率(50%)で現れますか?

問題をもう少し一般化して、「円周率などの定数を十進表示したときに、0~9 がランダムに表れるか」という問題は未解決問題です。

現在のところ
・e や π の小数表示はランダムだと思われている。
・実際に計算機で小数表示をさせると、ほぼランダムに表れる
・ある「正しいと思われる仮定」のもとに π の小数表示はランダムであることが証明された(Bailey-Crandall、2001年)。
仮定自体は証明されていない。

もちろん、十進表示以外の進数表示でも同様で、たとえば二進表示
 π=11. 001 001 000 011 111 101...
もランダムであることが、Bailey-Crandall の「仮定」のもとで示されています。

また小数表示の一般論として
・ほとんど全ての実数は、十進表示すると数字がランダムに表れる
・数字がランダムに表れない無理数は知られている
・数字がランダムで表れることが証明された無理数も知られている
ことがわかっています。

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√2が、実数直線上では確かな位置として書き表すことは出来ないと思うのですが。

整数でない平方根というのは有理数でないことは証明できると思います。
また、現代数学では無理数を有理数の極限として数を定義しているとも聞きました。
これを踏まえて私なりに考えたところ、例えば√2が、実数直線上では、(有理数の極限として定義されている以上)確かな位置として書き表すことは出来ないと思うのです。
しかし、幾何学的には三平方の定理などによって√2の存在や長さが確かにあると簡単に納得することも出来ます。
これに何か矛盾を感じてしまいます。
√2のような整数でない平方根をどのように捉えればよいですか?

(1)ある長さの線分が与えられたときに、定規とコンパスを使ってその sqrt(2) 倍の長さの線分を作図するのは容易です。
従って sqrt(2) という数は「定規とコンパスを使って」定義することが出来ます。

ある数の「確かな位置」というのはどういうことかということを考えてみましょう。
すると、結局のところ問題なのは「何によって」確かなのかということになります。有理数は整数の割算として定義することが出来ます。同じように整数の平方根は例えば定規とコンパスによる作図によって定義できます。
整数の割算を納得している人にとっては有理数の存在は安心して信じることができるでしょう。
同じように初等幾何の作図を当然のことと思っている人には、整数の平方根は確かに存在しています。
しかし例えば四則演算すらも十分に理解していない人は、 10の100 乗のような巨大な数が確かに存在していると信じることはできないのではないでしょうか。

つまり、ある数の実在性はどのような操作を使うことにするのかということに依存します。
整数から出発して四則演算しか使ってはいけないのであれば sqrt(2) は存在しないことになります。

(2)「現代数学では無理数を有理数の極限として数を定義していると...」の部分についてですが、若干誤解しているようです。
sqrt(2) を定義しろと言われれば
「x*x=2 をみたす正の数 x を sqrt(2)と定義する」

と言うのが一番普通でしょう。ここには何も極限は入ってきません。
整数 p,q があるときに、有理数 p/q の定義が
「p=qx をみたす x を p/q と定義する」
であるのと同じようなものです。普通、極限を使って定義するのは、個別の数ではなくて「実数の全体」です。(個別の数で、極限によって定義するものもあります。)
このあたりの実数全体の構成については、微分積分の教科書で数学的に厳密なものの実数論の部分か、あるいはデデキント「数について」岩波文庫を見て下さい。

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数学モデルや定式化の仕方を教えてください。

二つのものをランダムににひとつずつ選択する数学モデルが知りたいです。
例えば電車などの場合、グリーン車と普通車の車両の席があります。それによって値段も差があると思います。
その二つのクラスで自分が座りたい席をランダムに人が一つずつ選択し料金を払うモデルはどんな感じになるか教えていただきたいです。
(定式化や数学モデル)ただ、個人の選好条件(性別とか)は考慮しないでください。

是非物理学科の統計力学の講義を履修してみてください。

ご質問の問題に対応するものは、まさに統計力学で扱われる主題です。「二準位系」「格子気体」等の話題はよいヒントを与えてくれると思います。

さらに『一緒に旅行する友人とは同じクラスで隣の席がよい』などといった近くに座る人との仲の良さなどを考慮したりする場合は、「相互作用のある系」「強磁性体」「Isingモデル」等といった話題が参考になるでしょう。
「席のクラス」が 3以上の場合は、「三準位系」や「ポッツモデル」など、また、クラスの数が無限の場合(変な話ですけど)は「調和振動子」といった話題が参考になるのではないでしょうか。

統計力学は、原子や分子などの物質に対してだけでなく、最近では生物学、情報工学などに対しても適用されてきています。
ご質問された問題の具体的なモデル化については、やりようによって、単純な二準位系になったり、現在統計力学でも解が得られていないような系になったり、またこれまでどんな研究者も扱ったことがないような新しいモデルになったりする可能性があります。
おもしろいモデルを考えて、是非大阪大学物理学専攻に来て研究してください。

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高等学校で習った数学をみると、まだわかっていないことなどないような気もしますが、いかがでしょうか。

高等学校で習った数学をみると、まだわかっていないことなどないような気もしますが、いかがでしょうか。

それは数学の論理の高度な完全さがそういう印象を与えるからでしょう。実際にはやらねばならないことが山積しています。自然現象の多くは“非線形な”現象ですが、それらは微分方程式の解を求めて記述されます。厳密な解でなくとも、それを近似する解をコンピュー ターを用いて求めたりします。これなどは数学を工学に応用するにあたってやらねばならぬことでしょう。

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大学の数学と高等学校の数学ではずいぶんと違うように聞きましたが本当でしょうか。

大学の数学と高等学校の数学ではずいぶんと違うように聞きましたが本当でしょうか。

ものごとを抽象化する度合いは高まるでしょうが、高等学校の数学から大学の数学に自然に入ってゆけます。高等学校で数学に対して抱いた興味と勉強しようという気持ちをもちつづけて下さい。

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高等学校の数学を勉強して数学を面白いと思うようになりました。数学者になりたいという確固たる意思はありませんが、数学科に入学するには動機不十分でしょうか。

高等学校の数学を勉強して数学を面白いと思うようになりました。数学者になりたいという確固たる意思はありませんが、数学科に入学するには動機不十分でしょうか。

数学は自由な学問です。数学を面白いと思う人ならば、まず数学を勉強してみてはどうでしょう。今、あらゆる分野において、数学的要素を身につけた人材が求められています。

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数学科における女子学生の比率はどうでしょうか。また女性数学者の活躍はいかがでしょうか。

数学科における女子学生の比率はどうでしょうか。また女性数学者の活躍はいかがでしょうか。

大阪大学数学科定員47名のうち5~10名が女子学生です。まじめな学習態度で立派な成績を挙げています。世界的にみて女性数学者の数は今世紀に入って増えていますが、日本では欧米に比べてまだまだ少ないと思います。

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数学は社会に役立つ学問でしょうか。

数学は社会に役立つ学問でしょうか。

もちろんです。1 0進法や2進法のない世界が考えられるでしょうか。数学は有用な公式や理論を他分野の研究者に提供するだけでなく、新しい概念を導入して、物の見方を変えていくこともできるのです。最近の例では、カオス理論やフラクタル次元の理論があります。社会が数学を必要とする度合いはますます大きくなってきています。

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数学は紙と鉛筆があればできる学問と聞いていますが、それは本当でしょうか。

数学は紙と鉛筆があればできる学問と聞いていますが、それは本当でしょうか。

多分、それは数学が人間の頭の中でしか生みだし得ないことを例えていったことで、その意味では本当といえます。ただ、実際には、優れた研究者と討論することや文献を読むことなどが、自分のアイデアを育てたり、新しい知識を吸収したりする上で欠かせません。また、考える問題によっては、コンピューターを用いた実験が必要になることもあります。

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数学でも実験をするのですか。そういえば、大阪大学数学科には「 実験数学」という講義があると聞きましたが、どのような内容なのですか。

数学でも実験をするのですか。そういえば、大阪大学数学科には「 実験数学」という講義があると聞きましたが、どのような内容なのですか。

数学の研究は、いくつかの具体的な例について実際に計算を行い、その結果を深く観察することからスタートすることが多いのです。研究のこのような段階を「 実験数学」と名づけました。実験数学の授業内容ですが、低学年の間は、教員の指導の下で、コンピューターなどを用いた様々な数学実験を行います。これにより、他の授業で得た数学の知識が生きた形で身についていきます。こうして高学年になるにつれて徐々に自主的な実験へと進みます。

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阪大の数学科が開催している高校生のための公開講座「 現代数学への冒険」 を受講し、とても興味深く 思ったのですが、この講座に関連した参考書はないのですか。

阪大の数学科が開催している高校生のための公開講座「 現代数学への冒険」 を受講し、とても興味深く 思ったのですが、この講座に関連した参考書はないのですか。

阪大数学科の教員が分担執筆している「 現代数学序説」( 大阪大学出版会)には、現代数学のさまざまな話題が解説されています。この教科書の多くの章は、公開講座での講演原稿をもとにして書かれていますので、高校生にも十分読めると思いますよ。

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物理学について

あらゆるものもの表面が電子で覆われている状態では、ものにふれることができないのでは?

原子は原子核の周りを電子が回っているとなると、人間の手のひら(あらゆるものも)は表面が電子で覆われている状態になるということになるのですか?
もし、そうだとすればなぜ握手ができるのですか?
ほんとうなら、斥けあって手と手を握ることができないのじゃないのでしょうか?
もっというと、あらゆるものと触れることができないのじゃないのでしょうか?教えてください。

ご質問は素朴な内容でありながら、非常に深い意味が含まれています。
どうして握手ができるのかを理解するためには、いくつかのことを考えなくてはなりません。

[中性の原子同士の間には、電気的な力は発生しません]
学部にもよりますが、大学では電磁気学を勉強することと思います。
その中にガウスの法則が出てきます。原子に含まれる電子のように、球形に分布した電荷は外部から見ると球の中心に全ての電荷が集まったのに等しい電場が発生します。
中性の原子では、電子と同じ数の陽子が原子核に含まれていますから電子の発生する電場と原子核の発生する電場は完全に打ち消しあいます。
その結果、中性原子の外側では電場は消えてしまいます。
したがって、中性の原子同士の間には力はほとんど発生しません(量子力学的な揺らぎによって非常に弱い引力は発生しますが)。
ですから、手と手の間には、接触するまで力は発生しません。
ただし、原子の内側では、原子核からの電場が強く働いていますので、原子の内側にいる電子は原子核に強く引きつけられています。

イオンではどうでしょうか。たとえば、ナトリウムの陽イオンでは、電子の数が陽子の数よりひとつ少なくなっています。
その結果、イオンの外から見るとプラス1価の電荷が原子核の位置にあるような電場が発生します。
陰イオンでは、逆にマイナスの電荷が原子核の位置あるような電場が発生します。
ですから、NaCl結晶では隣接するナトリウムのプラスイオンと塩素のマイナスイオンの間に比較的強い引力が発生します。
しかしブラスとマイナスの電荷は同数ありますので、もっと遠くからみるとそれらの電場は互いに打ち消しあいます。
ですからNaCl結晶では表面の近くだけで電場が発生し、遠くでは電場はほとんど発生しません。
実際、食卓塩の粉末は互いにくっつくことはありません。ただし、湿気があると水分が仲立ちになってくっつける作用がありますので、湿気るとベトベトしてきます。手の皮膚を構成する原子も中性のものだけではなく、プラスやマイナスのものもありますがNaClと同様に全体としては中性ですので、遠くでは打ち消しあって力は発生しません。

これでご質問の答えになっていると思いますが、実は以下に示すように握手できることにはもっと深い意味があります。

[粒子には同じ場所・状態にいられるボーズ粒子といられないフェルミ粒子があります]
基本的な粒子(素粒子)には大きく分けて二種類あります。
ひとつはボーズ粒子と呼ばれるもので、同じ場所に同じ状態でいることができます。例えば光子です。
もうひとつはフェルミ粒子です。この粒子は同じ場所に同じ状態でいることはできません。例えば電子や陽子などです。
この性質によって、非常に大きな違いが発生します。

真空中で二つのレーザー光線をぶつけたら何が起こるでしょうか?何も起こらないで、通り抜けてしまいます。
これは、光子はボーズ粒子だからです。したがって、光で光を曲げたりすることはできません。
スターウォーズのライトセーバーは、実はこの原理に反します(だから面白い)。
ところが、フェルミ粒子である電子は同じ場所に同じ状態でいることはできませんから、もし無理矢理に二つの原子を押しつけあうと非常に大きな斥力が発生します。
それは、片方の原子に含まれる電子は、もう片方の原子の電子のいるところに進入できないからです。
たとえば二つのヘリウム原子を互いに近づけると、それぞれのヘリウム原子に含まれる2個の電子同士は互いに退けあいます。
無理に近づけると原子は壊れてしまいます。
手の皮膚の表面を構成している原子も同様に、互いに接すると退けあいますから握手できることになります。
もし、電子や陽子や中性子がボーズ粒子でできていたら握手できずにすり抜けてしまうかもしれません。
同様に我々は地上に立っていられないことになり、地球の中心まで落ち込んでしまいます。

さらに、これらのことは電子が結晶中を自由に動けるのかどうかに深く関係してきます。
たとえば、銅もNaClも共にたくさんの電子を含んでいます。
しかし、銅では電子が自由に運動して金属になり、NaClでは動けずに絶縁体になります。
これらはフェルミ粒子である電子のなせる性質です。

[電子を共有すると強い結合が生まれます]
今度は、二つの水素原子を近づけてみます。水素原子は原子核(陽子1個)と電子1個でできています。
実は電子にはスピンというものがあります。これは電子の自転と考えることができます。
そのとき、右回りの自転と左回りの自転という二つの選択肢があります。そのために水素原子において陽子の周りを回る電子の状態には、右回りと左回りの自転をした二つの電子が入ることができます。三つ目はだめです。
そのために二つの水素原子を近づけると、互いの電子は一緒の状態をとり水素分子として安定な結合状態ができあがります。
同様に、酸素や窒素原子同士も結合してそれぞれ酸素分子や窒素分子が安定になります。
これらの結合では、互いに電子を共有しますから共有結合と呼ばれます。
これは非常に強い結合で、我々が手にする堅い物体の多くは共有結合でできあがっています。
それ以外にも金属結合や水素結合などいくつかの結合が知られています。
我々の手の皮膚を構成する原子は、このような結合によって結ばれ形が保たれています。

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なぜ夜景や星はキラキラ点滅してるように見えるのですか?

なぜ夜景や星はキラキラ点滅してるように見えるのですか?

光は、屈折率が等しい物質中を進むときはどこまでも直進します。しかし、屈折率が場所によって変化すると、進む方向が曲げられます。
大気の屈折率は圧力や温度や湿度によって変化しますので、もし屈折率が不均一で、しかも時間的に変化すると、光の進む方向も時間的に変化します。

一方、星は非常に遠くにあるので、点光源と見なすことができます。そのため、上空の大気の屈折率が少しゆらぐだけで、目に入る光の強さが変化して、またたいて見えるようになります。これを一般にシンチレーションと言います。
フランス民謡でイギリス人の作品ががもとになって作られた「きらきら星 (Twincle, LittleStar)」はそのことを表現した歌ですね。
なお、変光星といって明るさが実際に変化する星もあります。その原因はいろいろですが、例えばパルサーと呼ばれるものは中性子星が自転しているために明るさが周期的に変化します。
夜景でも街灯の光が私たちの目に届くときに同じような現象が起こります。

それではどうして大気の密度が時間的に変化するのかについて考えてみましょう。
上空に行くと大気の密度が下がってきます。 しかしそれだけは時間的な変化ではありませんので、ゆらぎにはなりません。
一方、温度差や密度差のある大気が触れあうと、上昇気流や下降気流が入り乱れ密度と温度が違う空気のかたまり(気団)ができては消えます。
それらのうちで、星のまたたきに影響が大きいのは上空 11 km 付近にできる10 - 20センチメートル程度の気団です。
密度が高い気団や低い気団が凸レンズや凹レンズのような働きをします。
星のように 非常に小さな点のように見える光は、この気団のゆらぎの影響をより大きく受けますので地上では星からの光が集まって強くなるところと広がって弱くなるところができます。これがきらきら点滅して見える原因です。
一方、金星などの惑星では、像が大きいのでたくさんの点光源の集まりと見なすことができます。
それぞれの点光源のゆらぎが重なり合って平均化されますので、金星全体の明るさの変化はあまり気になりません。
このゆらぎは、気候にもよっても変化します。大気が安定しているときは、ゆらぎが小さくなりますので、またたきは弱くなります。

また地平線に近い角度にある星を見るときは、長い距離の大気を通過しますので真上にある星と比べてまたたきが大きくなります。
同じような現象は夜景を見ているときも起こります。風が吹いたり、ビルなどの熱気による上昇気流が発生すると、空気の密度が時間的に変化して、きらきらして見えます。

ちなみに天文台で鮮明な写真を撮るときには、建物や地表から発生する熱による大気の乱れが影響します。
そのため、天文台は山頂に設置して地表の影響を少なくします。また、寒くてもストーブを使わないようにします。
市街地に近い山では、街灯やネオンサインがじゃまになりますので、人里離れた山の上が良いことになります。

ところで、ハッブル宇宙望遠鏡は高度600キロメートルの真空中にありますので、大気の影響をまったく受けません。
そのため、非常に鮮明な天体写真を撮ることができます。インターネットでその画像が公開されていますのでご覧下さい。

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光の屈折は何故おこる?音波の反射が何故おこる?

光波が屈折率の低い物質中から高い物質へぶつかり反射する場合何故位相のずれがおこるのでしょう?
そもそも光の屈折は何故おこるのでしょう?

そしてもうひとつ。
気柱における定常波の発生について、開口端で何故音波の反射がおこるのでしょう?
開口端補正なるものがでるのも何故でしょう?

色々なことを質問されていますので、ふたつに分けてお答えします。

[光の反射と屈折について]
光の反射や屈折を考える前に、光が物質中を進む状態を微視的な視点で説明してみます。
光の波(電磁波)がどうしてどこまでも前へ前へと伝わるのかを考えると、結構不思議なことが起こっています。
電場の時間的な変化は磁場を発生し、磁場の時間的な変化は電場を発生します。
電磁波はこのような電場と磁場が互いに対になった状態で振動しながらどこまでも伝わって行くので、我々は何十億光年の彼方の星を見ることができるわけです。
一方、光が大気中を進む場合を考えてみて下さい。大気には、窒素や酸素や水蒸気などの分子がたくさん分布しています。
これらの分子に光の振動電場が作用すると、分子に含まれる電子の分布が偏心し(分極)、それが時間的に振動します。
電子は電荷を持っていますから、その周りに電場が発生します。したがって分極が振動すると、その周りに発生する電場も時間的に変化します。
この振動する電場によって新しい電磁波(光)が様々な方向に広がって行きます。つまり光は分子によって散乱されます。
しかし後で示すようにたくさんの分子から散乱された光は、互いに干渉して、強めあったり弱めあったりします。
なお、このとき分子から発生する電磁波の振動数は最初に入射した光と全く同じですが、位相は遅れるのが一般的です(通常は入射光と逆の位相です)。

このように大気中の分子は光を散乱していますが、はるか遠くにある山を私たちは見ることができます。
どうしてでしょうか。大気の分子は、光の波長(数千オングストローム)のサイズの中にたくさん分布しています。
ひとつひとつの分子が同じように光を散乱すると、その間の干渉を考えなくてはなりません。
結論から先に言うと、散乱された波は散乱されなかった光と一緒になり、前方に全く同じ波を発生します。このようにして、どこまでもどこまでも直進します。たとえとして、東名高速道路を東京から名古屋まで何台もの車でドライブすることを考えてみて下さい。そのときルールを決めておきます。
ひとつのルールは、スピードは時速100kmと決めておきます。もうひとつのルールはどこか1箇所だけサービスエリアで30分休んでも良いことにしておきますが、その場所はどこでも良いことにしておきます。その結果、どの車も別々のサービスエリアで休憩したにもかかわらず同じ時刻に名古屋に着きます。
1回も休まなかった車は30分早くつきます。これが波だったらどうなるでしょうか? 干渉を考えなくてはいけません。
つまり途中で散乱された波は位相が遅れて届きますが、どれも同じだけ位相が遅れて到達します。この波と散乱されなかった波とが一緒になって、新しい波が合成されます。これを繰り返しながら、波は位相が少しずつ遅れながら前へ前へと進んで行きます。この位相の遅れの効果を屈折率という概念でうまく表現することができます。
波の位相の等しいところが進む速度(位相速度)が遅くなると、波の山と山(あるいは谷と谷)の間の距離が近づくので、波長が短くなります。
そこで、真空中の波長と媒質中の波長の比を屈折率として与え波の状態を考えて行くわけです。

それでは、後ろに散乱された波はどうなるのでしょうか?
再び、高速道路の例で説明すると、東京を出発した車はどこのインターチェンジでも良いから今度は東京にUターンするようにします。
すると、遠くのインターチェンジでUターンした車と近くのインターチェンジでUターンした車とは、帰ってくる時刻がバラバラです。これを波で考えて下さい。
色々な位相の波が届くと、互いに打ち消しあって消えてしまいます。つまり一様な媒質中では後ろに波は発生しません。

次に、空気の場合に戻って霧がかかっている場合を考えてみましょう。
空気中の水蒸気が凝集して水滴になった場合は、最初の均一な分布からずれています。
その場合は、散乱された光は後ろにも発生します。高速道路の例で言えば、どこかで事故があって通行止めになり、みんなそこでUターンしてくると同じ時刻に東京へもどります。
これを波で考えると、強めあうことになりますから、後ろに波が発生することになります。
ガラスの表面で光が反射するのはそのためです。元々は散乱光ですので、位相も180度ずれています。

次に、屈折について考えてみましょう。
海岸に打ち寄せる波は、いつも海岸に平行です。しかし、遠洋では波の進む方向は海岸に平行ではありません。
これは、海岸に近づくにつれて海底が上昇して浅くなってくると、水の波の速度が遅くなります。
そのため、遠洋では海岸に対して斜めに進んでいる波であっても、先に海岸に近づいた波の山は速度が遅くなり、その間に、海岸から遠くにある波は速く海岸に近づいてきます。
その結果、波面は海岸に平行に近づきます。つまり、波の進む方向が変化します。
光がガラスに斜めに入射した場合も同様に、進む方向(屈折角)がガラス面に垂直な方向に変化します。

このようなガラスにあたった光が反射したり屈折したりする現象は、電磁気学という学問でより一般的に理解することができます。
電磁気学では、正の孤立した電荷があるとそこから電場(あるいは電気力線)が必ずわき出すというガウスの法則というのが知られています。
負の孤立した電荷では逆に吸い込まれます。一方、物質に電場がかかると原子や分子を構成するプラスとマイナスの電荷の中心が互いに逆向きにずれて、分極が発生します。
この分極によって電場が発生しますが、その向きはかけた電場と逆の方向です。
例えば、コンデンサーの間に物質(誘電体)を挿入した場合を考えてみて下さい。
分極によって、物質中の電場は、誘電率が大きい物質ほど小さくなります。

ガラスに垂直に光が入射した場合も同様に、ガラスの外の電場よりもガラスのすぐ内側の電場の方が小さくなります。
しかし、どこにも孤立した電荷はありませんのでこのままでは電場が不連続になってしまいます。
ガラスの表面には分極は発生しますが、孤立した電荷は発生しませんのでガウスの法則に反することになります。
しかし、ガラスの表面では入射光の電場と逆向きの電場が分極によって発生します。その位相は入射光と180度ずれています(つまり入射光と反対の向き)。これが反射光になります。したがって、ガラスの外側で入射光と反射光の電場を足しあわせるとガラスのすぐ内側の電場と同じ大きさになります。
このようにして、ガラスの内側と外側で電場が同じ(連続)にすることができます。
光は電磁波ですので磁場についても同様に考えなくてはなりません。
その結果、ガラスの屈折率を n とすると真空中に置かれたガラスに垂直に入射する光に対する反射光の電場の比 r は

  r = (1 - n)/(1 + n)

であたえられ、屈折率が1より大きい物質に光が入射するときは、負の値になっています。
反射率(入射光と反射光の光の強さの比)はその絶対値の二乗で与えられます。
また電磁気学の基本法則であるマックスウェル方程式から、電磁波が媒質中を伝わって行く方程式(波動方程式)を導くことができます。
すると真空中の光の速度cに対する媒質中の光の進む速度v(正確には位相速度)の値、v/c、は比誘電率の平方根の逆数に等しいことが導かれます。
この値は屈折率の逆数に等しいので、屈折率は比誘電率の平方根とは一致することになります。

[開口端での音波の反射]
気柱を伝わる音波が開口端に近づくと、光の反射と同様に、音波も反射します。
つまり、気柱のパイプが突然とぎれたり、太さが変わって環境が変わると波の性質として、やはり反射が起こります。

パイプなどの閉じ込められた空間を音波が伝わるときには、パイプの壁が波に対して与える条件を考えなくてはなりません。
例えば、パイプの壁の内側では壁に垂直な方向の空気振動は起こりませんので、振幅がゼロにならなくてはなりません(ただし、圧力はゼロにはなりません)。一方、壁に平行な方向の運動はほぼ自由です。
まったく同じ太さのパイプが続いている場合は、ガラス中を光が前にだけ進むのと同じ原理で、壁で押し返された波はパイプの前方にだけ進みます。
一方、後ろに散乱された波は干渉して消えてしまいます。
しかし、パイプの太さが太くなったり細くなったりすると、後方に波が発生(反射)することになります。
もしパイプが完全に閉じている場合は、そこでの空気振動はゼロになり完全反射します。
しかし、パイプが開放状態の場合も部分的に反射します。これは壁で閉じ込められている圧力が開口端から先では開放されて、その付近での音波の散乱がなくなります。
その結果、開口端の手前で散乱された音波が干渉し後ろ側では完全に消えなくなるからです。
しかしパイプの中心部分は壁と距離がありますので、パイプの端と反射が起こる場所との位置関係は太さの程度の範囲ではっきりしません。
つまりパイプの壁がとぎれたところだけで反射波がでるというのは変です。その分を若干補正して考えた方が良いことがわかると思います。
また同じ太さのパイプでは波長が短くなると、開口端では次第に反射が起こりにくくなることも想像できます。
たとえば大きく開けられた窓に向かって放たれた音は、そのまま外に出て行きます。

木管楽器の場合は、開口端や途中の穴の位置で波の反射がおこります。
その結果、マウスピースに装着されたリードの振動と特定の振動数で共鳴するわけです。ふさぐ穴の位置を変えれば共鳴振動数も変化するわけです。
もし高い音域で楽器を演奏したい場合は、開口端での反射が高い音域でも起こるようにするために、パイプの内径を細くする必要があります。
また高音域だけでなく低音域でも楽器を演奏したい場合は、朝顔型の開口端にして広い音域で反射が起こるようにする必要があります。
ホルンやトランペットなどの金管楽器でも同様です。これには、やわらかな音にする効果もあります。

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空はなぜ青いんですか? 海はなぜ青いんですか? 緑色の池はなぜそんな色なんですか?

空はなぜ青いんですか? 海はなぜ青いんですか? 緑色の池はなぜそんな色なんですか?

空が青いのと海が青いのとは原因が違います。
その説明の前に、白い光は色々な波長の光が混ざってできていることを思い出して下さい。
カラーテレビの3原色として赤と緑と青がありますが、基本的にはその3種類の色の光の組み合わせを考えてみます。
そのうち、たとえば赤の光がなくなって青と緑の光だけだと青緑色(水色)になります。
あるいは、緑の光がなくなって赤と青だけだとピンク色になります。
青がなくなって赤と緑だけだと黄色になります。波長は青、緑、赤の順番で長くなります。

まず、空が青いのは以下の理由です。
大気中には通常小さな微粒子が浮遊しています。その微粒子によって光が散乱されますが、そのとき波長の短い光がより強く散乱されて向きが変えられます。
したがって太陽からの光のうち、波長の短い青い光が散乱されてそれが私たちの目に入ってきます。
これが空が青い理由です。
一方、赤い光は波長が長いので散乱されにくく遠くまで届きます。
夕日が赤いのは大気中を長い距離にわたって太陽光が進んできたときに青い光は散乱されて徐々に弱くなり、赤い光は散乱されにくく私たちの目に届くからです。

しかし、海(水)の色が青いのは、別の理由です。
実は最近、水の分子が赤い光を吸収することがわかってきました。
コップに入れた水では分かりませんが、数メートルの距離を進むと赤い光が吸収されて弱くなり、次第に水色になってきます。
そのため、きれいな浅い海やプールでは底に届いた光は水色になっています。
その光がもう一度吸収されて私たちの目に届きますので、より水色に見えます。
青や緑の光も少し吸収するので深い海底にはどんな光も届きませんが、数メートルから数十メートルの範囲では太陽からの白色の光は徐々に水色の光になってゆきます。
つまり水の中を進む光は次第に青くなってゆきますが、夕焼けのように赤くなることはありません。
以上の話は、正確に言うと普通の水(H2O)の場合だけです。同じ水でも重水(D2O)の場合は赤い光を吸収しませんので色は付きません。

実際の海や池では、他にも考えなくてはならないことがあります。
ひとつは、プランクトンや汚れです。もしプランクトンが緑色をしていると赤だけでなく青の光も吸収されて弱くなり、残った緑の光が私たちの目に届きますので海は緑色に見えます。
しかし、赤いプランクトンがたくさん繁殖すると赤くなることも起こります。汚れた海に赤潮が発生した状態はそのような場合です。
もうひとつは、海に差し込む光は、太陽からの光だけでなく青空のひかりも届きますので、その散乱光は青になります。
したがって、一般的には水が赤い光を吸収するして青くなる効果と、浮遊しているプランクトンなどが光を吸収する効果と、青空の光が水に入ってくる効果を同時に考えなくてはなりません。
そういう場合は、正確に色の考察をするのは難しいところがあります。
例えば、曇った日の海の色は灰色に近いかも知れませんね。
しかし太陽光がさんさんと降り注ぐ珊瑚礁の海岸の澄んだ海の青さは、最初に説明したように水が赤い光を吸収する効果が最も大きくきいていると思います。

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微積分など数学があまり好きではなかったら理学部は向かないですか?

微積分など数学があまり好きではなかったら理学部は向かないですか?

「理学部」といっても、4つの学科(数学科、物理学科、化学科、生物学科)から成っており、それぞれの学科での数学の使われ方や重要性は大きく異なっています。
貴君の希望する物理学科だけに話を絞りましょう。 物理学では理論的研究をするにしても、実験結果の解析をするにしても、数学の知識無しでは非常に困ります。しかし、数学は「研究目的」や「研究対象」ではなく、あくまでも物理学の研究のための「手段」「言語」です。
この点を誤解しないようにしてください。 さらに、物理学で使われる数学にも、非常に多くのものがあります。「微積分」を含む「解析学」は、そのほんの一例にしか過ぎません。「幾何学」も使われますし、「統計学」や「離散数学」も必要になることがあります。
大切なことは、物理学をやるのには「数学が好きかどうか」が問題なのではなく、「物理学が好きかどうか」が本質的に重要です。
極論すれば、物理学が好きならその手段として不可欠な数学がたとえ嫌いだとしても、(嫌いな数学をマスターしながら)研究は進むでしょう。]

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理学部独特のおもしろさっていうのはどういったものですか?

僕は今高校3年生で、ただ宇宙が好きで小学校のときに初めて本気になれた勉強が宇宙のことで、宇宙関係の勉強をしたくて大阪大学理学部物理学科志望しました。
大学で実際には地道に微積分などの計算を巧みに利用して物質などを研究してるのですか?
僕は物理は好きですが高校レベルの物理だし、大学に入ったらどうなるかっていうのは見当がつきません。
だから物理をつかう工学部や基礎工学部にも興味があったのでそのオープンキャンパスにもいきました。
理学部独特のおもしろさっていうのはどういったものですか?

大切なのは、地道な勉強や研究を続けていても、「僕はただ宇宙が好きで…、宇宙関係の勉強をしたい」という《初心》や《興味》を、恒に心に抱いておくことです。これが、科学(理科)の発展の原動力になります。

実際の研究では「微積分などの計算を《巧みに》利用」しているわけではありません。
試行錯誤しながら、ある時は「巧みに」、ある時は「失敗」しながら、研究は進みます。

理学部独特のおもしろさは、
●科学的成果がもたらす利益を顧慮する ことなしに、純粋に科学や自然の美しさに惹かれ科学的発見を夢見て勉強・研究を進めることができる。
●一見自明に見える事項に対しても、「なぜ?」という疑問を抱いてその根源を探ろうとする意欲・願望をもっとも直接的に充足できる。

と言えましょう。
自分の興味に従って《徹底的に》理解しようとする努力が、諸手を挙げて奨励されるのは理学部・理学研究科のみだと思います。

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将来に選択肢が残るような進路を教えてください。

僕はこの五年間ほどから宇宙論に強く興味を持っており当然ずっと理学部志望でいました。
しかし、実利がほとんど期待できないこの分野では研究をして生計を立てていけるのは、才能の面でも金銭の面でも限られた一握りの人だけで現実はそれほど甘くはないんだと徐々に気づきました。
それに就職を目指したところで、宇宙論にそれほど潰しが利くとは思えません。

それに矛盾した話かもしれないですが、僕には漠然と、「自分で、企業などにとっての実利となるなんらかの『財』的なモノを生み出したい」、「社会にできるだけ直接的に影響し、社会に必要とされていたい」といった憧れのようなものがあります。この希望は自分の興味のある分野の性質と相対することのように自分でも感じるのです。

「ポスドクまで行ったあげく、30歳で挫折してフリーター完成」のような事態は何としてでも避けたいし、周りの人たちの進めもあって工学部への転向を考えています。
しかし工学部という学部は、特定分野の就職に強い反面、大学に入る時点である程度自分の将来専攻すべき分野を決めておくことが求められると僕は聞いています。
あと一年でそれを決めるには、僕には時間と情報が少なすぎます。
苦しんでおりますが一年以内に最初の決定をしなければなりません。
なるべく将来に選択肢が残るような進路を教えていただけるようお願いします。

真剣に将来のことを考えておられる様子、大変感心致しました。
また色々とやりたいことを持っておられることは、将来それがどのような形でご自分に関わってくるのかによらず宝物です。
大切になさって下さい。

工学部や工学研究科等では企業などで応用に役立つ知識を学ぶことができます。
もし、具体的に希望するものがはっきりしているようでしたら、それを選択するのも良いと思います。
しかし、それで人生が決まると考えるのは、早すぎます。世の中には色々な仕事があります。また一生同じ仕事をしてゆくとは限りません。
ひとつの専門に限定されない広い知識も必要です。そのためには、常に研鑽を積むことを怠らないようにすることが大切です。

一方、理学部や理学研究科では基礎的な学問の研究を行っています。
物理系では、物理現象の基本を理解し解明してゆきます。
実験したり、計算したり、新しい理論を考案したりする中で、それまでわからなかったものが見えてきます。
その成果を世界中に発信します。仮に企業等に就職することを考えた場合でも、それらは十分に生かされます。
実際、大阪大学理学部物理学科およびその上にある大学院(物理学専攻と宇宙地球科学専攻)には沢山の求人が来ます。
卒業生は、工学部や工学研究科出身の人たちと共に活躍しています。
強いて言えば、工学系出身の人はその技術的な可能性を経験の中から突き詰めて技術開発や生産を行うのに対して、理学系出身の人は基本から理解して原理に基づく新しい技術の開発や生産を目指そうとします。実際はその両方が必要です。
また最近の傾向としては、特許関係の求人が増えています。高校教諭になる方もおられます。博士課程(後期課程)に進んだ場合でも、能力が認められれば企業に就職するひとも少なくなくあまり狭く考える必要はないと思います。物理学専攻のホームページには、卒業後の進路が掲載されていますのでご覧下さい。

もし研究に強い関心があり、しかもその能力があれば大学等のアカデミックな職につくことは十分可能です。
理学系の研究は必ずしも直接世の中の役に立つことを目指して研究しているわけではありませんが、その研究成果は人類の英知を育む知識の一端を担っています。
宇宙がどうやってできたのか、とか素粒子の根元を解明することは確かに我々の日常生活に直接変化はありません。
しかしそれを知ることによって、人類はより豊かな世界観をもつことができます。

なお、ポスドクという身分は、研究者が独り立ちするための期間と理解して下さい。
研究職に就くと、自分で研究テーマを提案し推進します。ポスドクなどの経験を経ることによって、新しい研究領域を開拓してゆく能力と次の世代を育ててゆく能力が更に身に付きます。
大学の教官は、研究の進展だけでなく若い人たちの教育にもやりがいを感じています。
若い人たちが研究を通じて能力を身につけて企業などに就職し活躍することは、教官が直接生産には関わりませんが社会的に非常に有意義なことだと思います。
もちろん、物理学には宇宙論に限らず色々な学問があります。興味があったら是非入学を志して下さい。
たとえば、固体結晶が示す性質や機能の探求はそれ自体に尽くせない興味があるだけでなく、その基本原理は応用のための指針としても重要です。
また理学部では物理以外にも様々な基礎学問を研究している研究室があります。宇宙論でなければ工学部という発想はあてはまらないと思います。

ところで、何かひとつの仕事を成し遂げられる能力を持ったひとは他の仕事でもその能力は発揮できるものです。
現時点では、将来の選択肢について情報が十分ではないかも知れませんが、逆に「今、何かを選択したら将来が決まり、安泰」と期待するのも安易な考え方だと思いませんか。
大切なことは何事にも真剣に向かっていることです。
いつかチャンスがやってきたときにそれをものにします。いつも成長していること、それが大切です。
ちなみに「未熟」とは熟す過程にあることを意味します。それには上限はありません。年をとっても上を目指す「未熟者」でいたいものです。
ご健闘を祈ります。

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地球はホントは洋ナシ形なんですか?

今小5の子の家庭教師をしています。
そこで私が『地球はまん丸じゃなくて、ホントは洋ナシ形なんだよ?』と昔どこかのテレビ番組で言っていたことを教えたら、当たり前ですが『なんでぇ?』ときかれました。
その場でがんばって考えてみたものの、それらしい答えが出ませんでした。なんで、洋ナシ形なんですか?あと本当に洋ナシ形なんですか?

1) まず地球の大きさとは何でしょうか?
固体の径?(エベレスト山やマリアナ海溝があるけど?)海水面?(波の高さや潮汐はどうするの?)大気圏の広がり?(どこまで薄くなったらいいんだ)...ということで何らかの処置をしなければなりません。

固体地球では 全地球的理想的平均海水面(時間平均、陸地に於いても水路を掘ったものとして考える)をジオイド(イドは アンドロイド(ヒトに似たもの)のイドと同じで「地球に似たもの」が原意)とよびます。これは等ポテンシャル面になっているわけですが、ある程度凹凸があります。
たとえば大きな質量の山の上があったらジオイド面は少し上の方にずれます。
これだと一律に扱えないのでうまくジオイド面をカバーできるような回転楕円体をかぶせて地球の標準とするのです。
いまはGRS80とよばれるものが標準楕円体でそれを使って測地の座標系はITRF84と呼ばれます。(注意すべき事は楕円体はいろいろあって、天文学で使うIAU楕円体をはじめいっぱいあります。今述べたのは測地の標準ということでGPS(米軍発祥)でつかうWGS84との一致もとれています。

2) しかしその標準楕円体ですが、まず「球である」というべきです。扁平率は(赤道半径極半径)/赤道半径 ですが、1/298.257226 ? 0.00335281 となってそこいらのパチンコ玉よりもずっと球に近い存在です。ですから子供に地球=洋なし型と教えることに私個人は反対です。
最近の円周率=3.14か約3かの議論ではありませんが、真の球面とこの楕円体面の表面の高さの差は大きいところで10-20km位です。(赤道半径=6378.137km、極半径=6356.752km)。
山や海溝があると言ってもコンパスで書く円の線の太さにもなりません。

3) しかしなぜ 地球は洋なし型とも言われるのでしょうか?
標準楕円体面とジオイド面の差を計算してみるとジオイド面の方が北極で約16m高く、北半球中緯度で7mほど低く、南半球中緯度で7mほど高く、南極で約16m-27m低い(数値は大まかです)、極端に描けば頭トンガリ出っ尻の形になります(古在さんという有名な学者の業績です)。お気づきのおとり、2)で挙げた真球ー楕円体との差よりもずーっと小さい差になっていますから、もし正しい縮尺で書いたら洋なし型とはわからないでしょう。

4) なぜそうまでして細かい議論が必要かというと、長さではあまり効果がでないことも質量になると体積=長さの3乗で効いてくるわけで重力測定のときに重要であるからです。
重力測定から地下の密度分布や地球内部の物質の運動を議論することもあります。
長さについても正確な地球の地図の作製に欠かせないからです。正しく進んできたつもりなのに古い地図だと人間にとってはちょっと大きい誤差が生まれてしまうからです。
人工衛星からレーダ、レーザーなどで高さを測ることはできますが、人工衛星の軌道が地球のローカルな重力場の影響を受けているので正しく見積もらないといけません。

5) 地球の形については古代ギリシアの昔から計算されてきました。
赤道半径と極半径のどちらが長いかの論争も大航海時代ありました。
ニュートンも回転流体を考えて、遠心力の働く赤道部分が出っ張るモデルを考えて扁平率=1/230を出しています。

6) ではなぜ 回転の遠心力だけで説明できない変な形をしているのでしょうか?
(ここでは個々の山や谷は無視できるので大きなスケールの話です)まずジオイド面は理想的平均海水面という話をしました。
従って陸地では水路を掘ってその時の静水面ということになります。したがって陸地の高さ自身は)(わずかなものですが)反映されてません。(陸地分の重力は換算されています)
上方に重いものがあるとそれによってジオイド面は上に引っ張り上げられます。(半径5kmの山を仮定すると5m位)。

では北半球は陸地が多いのでジオイドは上に引っ張り上げられているのでは? と考えると実際は下がっているのでおかしなことになります。
これは地球の歴史性に由来することで、昔北米大陸などには氷河期に厚い氷の固まりがのっていました。この重みのために大陸は、 重油を積んだタンカーのようにマントルに沈降していて、氷が無くなった今、少しずつ時間をかけて浮き上がっているところだと考えられています。(浮き沈みのつりあいのことをアイソスタシーとよぶ)。
極は遠心力の働かないことと南極ではプラス氷の重みの影響が考えられます。
南半球は海水面が多く、海水は遠心力に短時間に応答してバランスするはずで 上述の影響はほとんどありません。
このほか、過去の地球の自転速度の違いの影響なども考えている人もいます。

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球(半径15mm)が空気(常温・1気圧)中を速度v〔m/s〕で運動するときの空気抵抗の近似式を調べています。v が 0~1 の範囲で良く近似できる式を教えて下さい。(高校2年生)

球(半径15mm)が空気(常温・1気圧)中を速度v〔m/s〕で運動するときの空気抵抗の近似式を調べています。
v が 0~1 の範囲で良く近似できる式を教えて下さい。(高校2年生)

結論としては、v が 1 m/s ぐらいでは、近似的に速度の二乗に比例して空気抵抗が発生します。
v が 0.1 m/s 以下では、近似的に速度に比例して空気抵抗が発生すると予想されます。

本当は、この問題の答えで一番良いのは自分で工夫して実測する事です。
高校生の物理の知識があれば可能ですし、色々と思わぬ発見もあるはずです。
ただどうしてそうなるのかについては、色々と難しい事も知らなくてはなりません。
たとえば、流体力学です。実際はもっと色々な事がおこりますが、ここでお答えする内容はもっとも単純にまとめたものです。
結論よりもどうしてそうなるのかということに関心を持ってください。

速度 v が 1 m/s ぐらいのときは球の後方に渦が発生して、近似的に速度vの二乗v2に比例して空気抵抗が発生します。
このとき、空気抵抗係数という数値[CD]がよく使われますが、球の表面の形状にも依存します。
球では 0.3 程度の値です。空気抵抗による力は F = -Cv2で与えられます。
ここで、C = [CD]*r*A で、r は空気の密度で1.205kg/m2、Aは断面積で半径 0.015m では 7 x 10-4 m2 です。
なお、空気の密度は自分で測定しても良いのですが、丸善からでている理科年表が役立ちます。
すると、空気抵抗は 2.6 x 10-4 v2 [N] です。
これを測定する方法は、空気抵抗と重力がバランスを取って一定の速度で落下するときの値を測定する方法です。

そこでご質問に近いサイズのピンポン玉の場合を例にとってみますと、半径 19 mm で質量は 2.5 g (最近ルールが変わったかもしれません)ですから、空気抵抗と重力がバランスを取る速さは 7.6 m/s になります。
ちなみに、同じ大きさの球形の氷を落下させると計算上、時速約100 km/s という猛烈な速度になります。
つまり、この大きさのヒョウ(氷の塊)が降って、もし人間を直撃すると大変な事になるのがわかります。
ご質問の速度はこれらの値よりも小さい領域ですので、実験で確かめるためにはピンポン玉ではなく、もっと軽い発泡スチロールでできた球を使う必要があると予想されます。

一方、vが 0.1 m/s 以下では様子が異なります。
空気抵抗は速度に比例し、F = -Bv で与えられます。
速度の二乗に比例する空気抵抗があるときと比較するためには、流体力学で用いるレイノルズ数という概念が役に立ちます。
速度に比例する項と二乗に比例する項を同時に含む形式を考えた場合は、F = -Bv - Cv2 とします。
B の値は知られていませんので、発泡スチロール球の落下速度で実測してみてください。

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Is glass, in liquid form, a conductor of electricity?

Is glass, in liquid form, a conductor of electricity?

"Glass" is a term used to specify, in the widest sense, a thermodynamically non-equilibrium state where any disorder is frozen in. The most familiar example of glass is amorphous (or vitreous) solid as often seen as window-glass. The term "glass" is used for this type of glass in the narrowest sense. This type of glass is usually prepared by quenching liquid (resulting in "glassy liquid"), and consequently, has essentially the same structural features. This is why the window glass is often said to be a kind of liquid. Other types of glass also exist. Glassy liquid-crystal is formed by quenching liquid crystals, where orientational order of molecular arrangement exist while translational one does not. Some glassy crystals are formed by quenching orientationally disordered (but positionally ordered) crystals. Spin glass is also glass where disordered spin arrangement is frozen-in, in contrast to previous examples having frozen-in structural disorder.

According to the above interpretation, the term "glass" is not directly correlated with conducting property of matter: Some glasses are conducting whereas others are not. Amorphous metal is electronic conductor. Most amorphous (inorganic) salt will be insulating because ions are effectively immobile in this frozen-in state, though molten salt is surely conducting (electrolyte or ionic conductor). There are however some examples of amorphous salts showing ion conduction. In such cases, small ion(s) run(s) through free volume formed upon glassification (most glass has larger volume than crystalline states). For non-electrolyte and nonmetallic melt, there is no reason to suspect that their quenched glasses are conducting. If your question intended to ask whether is the "melted" glass (in the narrowest sense) conducting, the answer is "no". The glass is mixture of oxides (main component is SiO2), which are insulating.

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数学モデルや定式化の仕方を教えてください。

二つのものをランダムににひとつずつ選択する数学モデルが知りたいです。
例えば電車などの場合、グリーン車と普通車の車両の席があります。それによって値段も差があると思います。
その二つのクラスで自分が座りたい席をランダムに人が一つずつ選択し料金を払うモデルはどんな感じになるか教えていただきたいです。
(定式化や数学モデル)ただ、個人の選好条件(性別とか)は考慮しないでください。

是非物理学科の統計力学の講義を履修してみてください。

ご質問の問題に対応するものは、まさに統計力学で扱われる主題です。「二準位系」「格子気体」等の話題はよいヒントを与えてくれると思います。

さらに『一緒に旅行する友人とは同じクラスで隣の席がよい』などといった近くに座る人との仲の良さなどを考慮したりする場合は、「相互作用のある系」「強磁性体」「Isingモデル」等といった話題が参考になるでしょう。
「席のクラス」が 3以上の場合は、「三準位系」や「ポッツモデル」など、また、クラスの数が無限の場合(変な話ですけど)は「調和振動子」といった話題が参考になるのではないでしょうか。

統計力学は、原子や分子などの物質に対してだけでなく、最近では生物学、情報工学などに対しても適用されてきています。
ご質問された問題の具体的なモデル化については、やりようによって、単純な二準位系になったり、現在統計力学でも解が得られていないような系になったり、またこれまでどんな研究者も扱ったことがないような新しいモデルになったりする可能性があります。
おもしろいモデルを考えて、是非大阪大学物理学専攻に来て研究してください。

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化学学科に物理の知識は必要ですか?

私は化学学科で、環境問題(特に地球温暖化)について学びたいと思っています。
私の学校では、2年進級時に物理・生物の選択を行うのですが、私は生物を選択しました。
けれど大学の授業では物理もカリキュラムに入っているようで、中学までの物理の知識しかない私にはついていくのが難しいでしょうか?(高校2年生)

大学で化学を学ぶには物理の基礎的な知識は必ず必要になります。
それゆえ、高校で物理を履修しておく方が望ましいのは言うまでもありません。
しかし現状では、化学科入学者の1/3程度の学生は生物を選択してきています。
そのため大学の物理の授業について行けず、落ちこぼれる学生がかなり出る問題が生じました。
その対策として、物理未履修者を対象とした授業を最近開講しました。
最終的なゴ ールは同じですので、学習する意欲さえあればきっと大丈夫です。
環境問題に化学からアプローチしたいというあなたの考えは非常に結構だと思います。頑張って下さい。

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運動エネルギーも万有引力のエネルギーも飛び飛びのエネルギーですか?

物理II の第三編(原子)の質問です。
教科書にはエネルギーはhνという飛び飛びの値しかとらないとかいてありました。
これはエネルギーというもの自体が飛び飛びの値しかとらないって言うことなんでしょうか?
それとも、化学のモルみたいに、一束といった感じにしてあるだけなのでしょうか。
もしエネルギーそれ自体が飛び飛びの値しかとらないというのなら、運動エネルギーも万有引力のエネルギーもみんな飛び飛びのエネルギーしかとらなくなってそれはつまり質量や距離や速さや時間まで飛び飛びの値しかとらなくなるんじゃないかと思いました。
本当のところはどうなっているんでしょうか。(高校3年生)

これは量子論と呼ばれるものです。 古典論ではエネルギーはもちろん連続的な値をとります。
ところが、量子論では場合によりけりで、狭いところに閉じこめられた系では許され(したがって、観測にかかる)エネルギーの値はとびとびになります。
たとえば水素原子の中の電子は、とびとびのエネルギーをとります。
これは実際でてくる光の振動数を観測して確かめられます。

ミクロの世界はおもしろいです。しかし座標は連続的です。
ものを見るというのは、目の中にとびこんできた光を「つかまえる」ことで、この光、じつは、つぶつぶ(粒子)で、何コ 目に入ってきたか勘定できます。
真っ暗のところでかすかな光を見た、というとき、何コの「光子」が飛び込んできたか。物理を勉強するとこれも計算できますのでおもしろいですよ。

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曲がった状態の金属線の蓄えられるエネルギーは曲率半径にとどのような関係にあるのですか?

現在、高校で物理部に所属し、金属線の曲がりに関する独自理論を展開しています。
その理論の根幹となる部分について、どうしても、紙とペンでは解決できない部分があり、質問いたします。
題材は、ごく一般的な金属線です。(ピアノ線と考えていただいて差し支えありません。)
自然な状態が直線状態である金属線を想定します。
そのような金属線を曲げるのには当然エネルギーが必要になりますから、曲がった状態の金属線はエネルギーを持っていると考えることができます。
また、同じ金属線でも、たくさん曲げる方がたくさんエネルギーを要しますから、曲率半径によっても、蓄えられるエネルギーは違ってくるはずです。

ここで、質問します。
円弧の形に曲げられたある特定の金属線において、
蓄えられるエネルギーは曲率半径に対してどのような関係にあるのですか?(曲率半径が十分大きいときにおいて成り立つ近似式でも構いません。)(高校2年生)

ご質問の内容は、材料力学の基本的なことです。
考え方を示しますと、金属線に限らずワイヤーを曲げるとその内側は縮み、外側は伸びまず。
簡単のためにワイヤーの断面が長方形で厚さ2d幅2wの板状とします。これを曲げて円弧にしたとします。
曲げがそれほどきつくないときは弾性変形が可能です。
全体の長さが変化しないと仮定し、曲げた状態で板の中心を通る半径 r の円を考え、円から外側 r + x のところでは x に比例して伸びますので、体積は (r + x)/r 倍になります。
したがって、最も外側では (r + d)/r 倍に増加し、逆に最も内側では (r - d)/r 倍に体積が減少します。
蓄えられた力学的エネルギーは体積変化の二乗に比例します。
円の中心から r + x のところでは、圧縮率(注)を K として、単位体積当たりの力学的エネルギーは

(1/2K)(x/r)2

となります。厚さが 2d で幅が 2w ですから、x について -d から +d まで積分すると、板の単位長さ当たりの力学的エネルギーは

2w(d3)/(3Kr2)

つまり、曲げていないときは r は無限大ですから、力学的エネルギーは蓄えられていません。
曲げると曲率半径の二乗に反比例して、単位長さ当たりの力学的エネルギーは増えてゆきます。
他の係数としては、圧縮率に反比例し厚さの3乗に比例します。幅に比例するのは当然です。これでご質問の答になっているでしょうか?

ここで面白いことに気が付きます。板を 90 度回転して幅と厚さを入れ替えてみます。つまり、2d <=> 2w とすると、

2d(w3)/(3Kr2)

となります。d これは良く経験することですね。また、この応用として、H鋼というのがあります。
断面がHの形をしていて、同じ質量の棒状の材料を使った場合と比較して非常に曲げに強い構造になっていて、ビルの構造材などに広く用いられています。
また、中空のパイプも同様に中空でないものよりも同じ材料で強い構造を作ることが出来ます。

なお、実際には大きく曲げることによって内側が変形して膨らんだり外側がへこんだりすることがあるかもしれません。
また、厚さも多少変化するかもしれません。もし弾性変形を超えて塑性変形を起こす場合は、もとに戻りませんので複雑です。
また、たとえば針金をはじいてピーンと音をたてるような高速変形の場合では断熱変化となり、曲げと共に温度変化も起きるためゆっくり曲げた等温変化のときとは一般に係数が異なります。

より一般的なことは、材料力学と書かれた本をご覧下さい。

(注)圧縮率
体積 V の物体に圧力 dp をかけて dV だけ体積が変化したとき、圧縮率 K は

K dp = -dV/V

で与えられます。K が大きい物質は、同じ圧力を加えたときに変化する体積が大きい(やわらかい)ということです。
一方、体積弾性率Bは圧縮率Kの逆数で与えられます。具体的な数値は、例えば丸善から出ている理科年表を参照して下さい。

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金属線のねじれによって蓄えられるエネルギーについて

弾性材料の歪曲によって蓄えられるエネルギーについて解答をくださり、ありがとうございます。
たいへん参考になります。

話を総合しますと、推論の仮定は
 1.弾性材料の中心線の長さは変化しない。
 2.蓄えられるエネルギーは体積変化の2乗に比例する。
の2点ですね。

この2点、線状の材料に蓄えられる弾性エネルギーを考察するときの汎用性が非常に高く感じられます。

また、弾性エネルギーが曲率半径の2乗に反比例するということですが、これは、曲率の2乗に比例すると換言できますね。

ところで、付け加えて質問ですが点によって曲率が異なる線状の弾性材料に蓄えられるエネルギーを考察したければ、点におけるエネルギー率(←私の造語です)(次元は[エネルギー/距離])を考えて単純に積分すれば良いのですよね?

また、金属線のねじれによって蓄えられるエネルギーも、仮定1,2を転用して考えればいいのでしょうか?(1の仮定は、「中間半径の面の面積が変化しない」と書き換えるのが妥当な気がしますが・・・、近似度的にはどちらも同程度ですね。)

ご指摘の2点
1. 弾性材料の中心線の長さは変化しない。
2. 蓄えられるエネルギーは体積変化の2乗に比例する。
は仮定と言うよりも近似です。変位が大きいとずれが大きくなります。

1.は直観的にある程度、成り立つと理解できます。
2.は体積変化dVと圧力pにおいて、エネルギー変化が dE=-pdV で与えられることから近似的に導かれます。
そのとき、圧縮率Kについて Kdp=-dV/Vとなることを利用し体積変化の二次の項まで求めると、前回与えた式が得られます。
一般に、変位に比例する力が発生する場合は力学的エネルギーは変位の二乗に比例します。

お考えのように変形した材料の場所ごとのエネルギーが与えられていれば、全体にわたってそれを積分すれば全エネルギーが得られます。
しかし変形した状態をどうやって作るのかについては、別に考えなくてはなりません。
つまり線の形状を与えてから計算するのは比較的簡単ですが、どうやって線を変形させるのかについては結構難しい計算をしなくてはなりません。

これらは私の専門ではありませんので、あまり詳しいことは分かりませんが、線の両端を固定し途中の側面に力を加える場合や、線の片方を固定し他端を引っ張る、曲げるなどの力を加える場合、同様に線の片方を固定して他端をねじる場合があります。
最後のねじる場合は、固体に特徴的な力学です。
具体例としてはスプリングバネです。ねじれ角の二乗に比例してエネルギーが変化しますが、実はフックの法則としてバネ全体の力学としては、高校の教科書で自明なこととして扱われています。
しかし実はその正体は、ねじれの力学だったわけです。

詳しいことについては、是非、材料力学や弾性体力学の本を読まれることをお勧めします。
建築や車両や機械などにおける力学は大変重要な分野だと思います。
さらに時間的変化まで考えると、変位が波として伝わってゆく弾性波の問題に発展します。

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力の伝播の第1波は電磁波あるいは電気力ですか?

現在、力の伝播の実態は何か?について知りたいと考えています。
具体的には、固体を伝播する弾性波、応力波などを想定しています。
一般的に力とは、原子?(分子?)の配置の歪み?が伝播することを弾性波としている?ようです。
しかし私は本当は、力の伝播の第1波は電磁波あるいは電気力のようなものであり、これは非常に高速(光速?)で固体中を伝播し、続いて第2波として第1波の電磁波あるいは電気力による原子の位置歪みが起こり、これが弾性波なのではと考えています。
すなわち位置歪には時定数があるため、電磁波あるいは電気力の後に弾性波が遅れて来るものと考えています。この考え方は正しいですか?
正しい場合には、特に前記の第1波が何なのかと言うことに関して興味がありますので教えて下さい。
また、前記メカニズムを対象とする分野を勉強したいのですが分野を教えて下さい。弾性体学?固体物理学ですか? (技術者)

一般に種類の異なる波が互いに相互作用を持ち、しかも振動数と波長が接近しているときには二つの波が結合した連成波という状態が良い近似になります。
お尋ねの場合は、電磁波と弾性波(固体の分極波)が互いに相互作用を持って伝播する場合で、ポラリトンと呼ばれます。
電磁波はマクスウェルの方程式(古典電磁気学)で明らかなように、電場の時間変化が磁場の発生に磁場の時間変化が電場の発生につながり、それ自身が波として伝わってゆきます。
一方、たとえば電磁波の電場と相互作用するものとして、プラスとマイナスのイオンが互いに逆向きに運動する弾性波が考えられます。
この場合、電磁波の電場によって分極が引き起こされますので、電磁波と分極波の一緒になった連成波として上記のポラリトンと呼ばれる状態が実現します。
一方、弾性波自身も波として空間を伝播する性質があります。
そこで電磁波によるエネルギーの伝播を誘電分散と呼び、それと結合している弾性波自身の伝達を空間分散と呼び、両者を区別して考えます。

一般に電磁波による伝搬速度は速く、弾性波による伝播速度は遅いのが通常ですのでご指摘の応答速度についての説明はおおむね当たっています。
しかし、電磁波と弾性波を別々に考えるのは正しくありません。
つまりポラリトンというひとつの波として伝わります。連成波の状態では、電磁波と弾性波の波長は互いに等しくなっています。エネルギーは互いに接近しています。十分低温で、他の波との散乱が起こらない場合は、このようなポラリトンが最も良い描像です。
しかし温度が高くなると、波の散乱が頻繁に起こり、かならずしも良い描像にはなりません。

上記の場合は、電磁波の振動数と弾性波の振動数が接近している場合に該当しますが、互いに離れているときはポラリトンの概念はそれほど意識する必要はありません。
具体的には弾性波の分極は重い原子核の運動ですので、そのエネルギーは遠赤外線領域で可視光線の光の電場の振動には追随できません。
この場合、可視光線のような振動数に追随できるのは、原子を構成する電子雲の分極(変形)によるものです。
電子は軽いため、電場が作用すると、瞬時に分極します。その効果は、たとえば屈折率が真空の値の1よりも大きいという形で現れます。
もう少し広い見方から言い換えると、電磁波と結合するのは弾性波だけでなく電子雲の分極についても同時に起こるということになります。
これらの詳細については、電磁気学の媒質中の電磁波(マクスウェル方程式)の項をご覧下さい。
また光と物質との相互作用は、光物性の分野が該当しますので、関連する書籍をご一読されることをお勧めします。
たとえば、櫛田孝司著「光物性物理学」朝倉書店、1991年、があります。

さて、弾性波には分極を持つ光学モードと持たない音響モードがあります。
電磁波と結合するのは光学モードです。似たような組み合わせは、電磁波と励起子(電子系の励起状態の一種)が結合した励起子ポラリトン、プラズモンと光学フォノンが結合した状態、電子の波とフォノンが結合したポーラロンなど多種多様です。
これらは固体物理学の根幹をなす概念です。固体中だけで存在できるフォノンなどは素励起(準粒子)と呼ばれ、それらを他の粒子と組み合わせた連成波も新しい素励起として重要な役割を担っています。

原子間に力を及ぼす相互作用としては電場(磁性体では磁場も可能)を介したものがありますが、これは長距離力です。
もう一つは電子の波動関数が関係するものです。そのひとつとして、隣接する原子の波動関数が互いにパウリの排他律によって退けあうことによる斥力があります。
最も端的な例は、希ガス原子間の斥力です(非常に弱い引力もありますが)。
希ガス原子の電子配置では占有されている電子軌道が完全に詰まっていて、それらの原子が互いに接近すると電子は互いの軌道に入ることができません。
もしこのようなパウリの排他律による斥力がなければ、我々は地上に立っていられないことでしょう。
また化学結合による力もあります。共有結合はその代表的な例で、原子間の距離と結合角が決まりそれからはずれると復元力が働きます。
これらは固体物理学や物性化学の本をご覧になると詳しく述べられています。

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弾性波の運動量はどのように与えられるのですか?

光を粒子として考えることで電磁波の運動量が与えられる事は解るのですが、それでは弾性波の運動量はどのように与えられるのでしょうか?
弾性波のミクロなメカニズムが格子振動?であり、格子振動を量子化したフォノン?を考慮することにより、電子の運動量と同じようにフォノン?の運動量を与えることと等価なのでしょうか?

また弾性波の屈折は、光波の屈折と同じ法則で起こるとして考えて良いのでしょうか?
考えてよいとすると、光波での屈折率と弾性波の屈折率とは異なるのでしょうか?

またレーザートラップ技術では光波を屈折した場合には運動量保存則により、光波の運動量変化分の逆符号が屈折因子(例えばレンズ)に印加されますが、弾性波の場合にも運動量保存が成立して、弾性波の運動量変化分の逆符号が媒質に印加されるのでしょうか? (技術者)

答を先に述べますと、結晶中の運動量は結晶運動量と呼ばれ、素粒子が持つ運動量とは異なります。
結晶中では、擬似的に運動量が保存しますが、素粒子の運動量の保存則とは原理が違います。
一方、素粒子としての運動量は全系で見ると保存しますので孤立原子ではその効果が無視できない場合があり、それがレーザートラップ技術などに利用されます。
少し長くなりますが、以下に説明します。

結晶は並進対称性がありますので、結晶中を伝播する波は相互作用がなければ長い距離を進み続けます。
そのため波長が明確にきまり、その逆数に2πをかけた波数ベクトルが定義できます。
プランクの定数を2πで割ったもの(/h)に波数ベクトルをかけたものが波の運動量です(つまり、プランクの定数を波長で割ったものが運動量になります)。
結晶では波が別の波と相互作用して向きやエネルギーを変えるとき、その前後では全系のエネルギーが保存するだけでなく逆格子ベクトルに相当する不定項を含む形で運動量の保存則も成立します。
これは素粒子における運動量保存則と一見似ていますが、原理は異なります。
もっとも簡単な逆格子ベクトルは、格子定数の逆数に2πをかけたもので定義されたくさんの組み合わせがあります。
j番目の逆格子ベクトルをGjとして、波数ベクトル保存則(/hを掛ければ運動量についての式になる)を式で書くと、以下のようになります。
まず、波1と波2の波数ベクトルをそれぞれk1、k2とし、それが互いに相互作用した後に、k1'とk2'に変化(散乱)したとします。
その際、

k1 + k2 = k1' + k2' + Gj

となります。
Gjは0の場合も可能ですが、0でないときこれをウンクラップUmklapp過程と呼びます。
波であれば、弾性波(フォノン)でも電子の波でも結晶中での状況は同じです。
一方、アモルファス固体では原子レベルでの並進対称性がありませんので、運動量を明確には定義できません。
ただし長波長の波に対しては、連続体近似が使えるので保存する傾向にあります。
例えばガラス中でも可視光や長波長の音波は波として定義できます。

波長が長い場合(波数ベクトルが小さい場合)は、Umklapp過程はあまり起こりませんので、もう少し単純にしてわかりやすい例を示してみます。
外部から結晶に光が入射した場合を考えてみます。
そのとき入射する前の光の運動量と、入射後の光の運動量との間には部分的な保存則が成立します。
具体的には、入射面に垂直な方向については並進対称性がないために保存則が破れますが、入射面に平行な方向については波数ベクトルの保存則が成立します。
その結果、面に斜めに入射した波の向きが変わり、それが屈折や反射という現象に相当します。
これをより明快に表現する方法としては、波の位相速度を用いると便利です。
つまり媒質ごとの位相速度の違いによって波は屈折します。
古典電磁気学は、光の位相速度の違いを屈折率の違いという形でうまく表現しています。
弾性波でも同様に、媒質1での位相速度と媒質2の位相速度の違いを指定すれば、同様に弾性波の屈折を定義できます。
海の波も海底が浅くなると位相速度がおそくなり屈折し、結局、海岸に打ち寄せるときはほぼ海岸線に並行になります。
ただし、反射と屈折の比率や反射の位相などについては境界条件が必要です。
光については電場や磁場の連続条件で境界条件を与えられますが、フォノンの場合についてはミクロな力学が境界条件の設定に必要になるでしょう。

一方、波長が長い場合で入射面に垂直方向成分が保存しなかったときの全系の運動量(素粒子としての運動量)は、結晶全体が受け持つことになります。
つまり、素粒子としての運動量保存則は全系では成り立っています。
ただし結晶の質量は十分に大きいので、結晶が受け持つ運動量は無視してもかまいません。
しかし真空中に浮いている原子ひとつが光子を受けとる(吸収する)場合や放出する(発光する)は、無視できない大きさになります。
ある領域から外部に向かって出てゆこうとする原子は、ドップラー効果によって静止している場合の共鳴エネルギーよりも低いエネルギーのレーザー光を共鳴的に吸収し、それを四方八方に放出します。
そのため原子にわずかながら圧力をかけることができます。
この原理がレーザートラップとして利用されるわけです。

しかし光の波長が結晶の格子定数と同程度になると(つまりX線の場合)、入射面に平行な成分でも運動量の保存則は成立しません。
これは、X線のブラッグ反射でよく知られているように、回折が起こるからです。回折格子もその良い例で、直進する光とは別に、ある決まった角度に回折光が発生します。
このときは、波の運動量は保存していませんが、逆格子ベクトルだけ波数ベクトルが変化することに対応します。
言い換えますと、ブラッグ反射は、入射X線の波数ベクトルが逆格子ベクトルの分だけ向きを変えることに相当します。式で書くと以下のようになります。

k1 = k1' + Gj

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太陽からの光で見えているものは本当は素早く点滅してるのですか?

テレビを見ていてふと思ったんですが、なぜ、テレビの前で手とかを早く動かすと飛び飛び(点滅してるみたい)に見えるのですか?
あと、テレビは1秒間に数十回点滅してるけど、人間が反応できるのよりも早いので、連続に見えているのですよね。
じゃあ、普段僕たちが見ているもの(電気以外のもの)つまり、太陽からの光で見えているものは連続して見えているのですがこれは、本当はすばやく点滅してるのですか?
もし、点滅してるとするとどれくらいの早さでしてるのですか?教えてください。(大学1年)

テレビでは525本の走査線を1画面として1秒間に30回描いています。
しかしブラウン管方式ではちらつきが感じられるので、奇数番目の走査線と偶数番目の走査線を交互に描いてちらつきを軽減しています。
つまり1秒間に合計で60画面を描いています。
高校の物理の教科書にもあるように、ブラウン管方式のテレビでは電子ビームを細く絞って蛍光面にぶつけて光らせていますので、瞬間瞬間に光っているのは電子ビームの当たっている一点だけです。
それが高速で画面上を動いています。画面全体が一度に光っているわけではありません。
光っている点が1画面を描き終えて次の画面を描くまでの間、ブラウン管は光っていません。
そのためにブラウン管の前で手を速く動かすと、一瞬一瞬のシルエットが次々と見えて指が何本もあるように見えます。
たとえば、ブラウン管テレビの画面を写真で撮るとシャッターが開いている間の部分的な画像しか写りません。
ブラウン管ではこのような不連続な光り方をしていますが、人間の目には残像効果があって次の画面が写るまで残像が目に残っていますから、ちらつきを感じるということはありません。
一方、最近普及してきたプラズマテレビや液晶テレビでは全面で同時に光っているため、手を速く動かしてもご質問にあるような点滅は見えません。

1秒間に30コマの画面が変化しながら次々と現れているにもかかわらず、人間にとっては物体がなめらかに動いているように見えることも残像効果と関係あります。
もともと、人間の網膜では動く物体をそれほど鮮明な画像としてはとらえていないので、テレビの不連続な画面でもそれほど気にならないのでしょう。
一方、映画館で上映するフィルム映画では1秒間に24コマの画像が次々と入れ替わります。
この映画をテレビで見るときは、毎秒24コマを毎秒30コマに水増ししていますが、気がつきませんね。
また西部劇で幌馬車の車輪がまるで逆回転しているように写ることがありますが、一瞬一瞬のタイミングのずれがそのような錯覚を起こさせます。
テレビの他にも不連続で光っているものはたくさんあります。蛍光灯では交流の電流が交互に流れるたびに光りますから50Hz地区では毎秒100回光っています。
夜景を双眼鏡で見るときに、双眼鏡をぐるぐると動かすと街灯やネオンサインの点滅が見えて大変きれいです。
最近はインバーター方式の蛍光灯が普及してきましたが、この場合は非常に高い周波数で点滅しているので、ちらつきを感じることはありません。

これらの人工的な光とは異なって、太陽の表面やろうそくの炎(明るく光っているのは赤熱されたススです)では連続的に光っていますので点滅はなく、どんな瞬間をとっても光っています。
つまり熱せられた物体では、その温度でほぼ決まるスペクトルの光(可視光線だけでなく、赤外線や紫外線もあります)が連続的に出ています。
その他にも蛍の光や夜光塗料の燐光、稲妻、レーザーや発光ダイオードの光などいろいろな光があります。
また人間の目(網膜)で光をどのように感じるのか、色はどうして感じるのか、画像をどのように認識しているのかなどなど考えるといろいろなことがあります。

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生物科学専攻と化学専攻のどちらがいいですか?

私は大学で、食品の栄養素など天然高分子の研究をしたいと考えています。
今年、大阪大学の理学部を受けようと考えていますが、生物科学専攻と化学専攻のどちらの学科がいいのでしょうか。
もし化学科だとしたら、化学科では物理が重要と聞きますが受験で生物を選択した私でもついていけるのでしょうか。(高校生)

現在、化学と生物学の境界はかなりぼやけてきており化学者と生物学者の両方が同じ分野を研究することも多くなってきています。
研究したいと考えている食品の栄養素や天然高分子は、まさにそのような境界領域の分野だと思います。
あえて違いを挙げるならば、栄養素や天然高分子そのものの性質や化学変化について調べるのが化学、栄養素や天然高分子によって人体がどのように応答するかを調べるのが生物だと言えるかも知れません。
ただし栄養素や天然高分子が人体に与える影響を追求していくと、それらの化学的性質をよく理解しておくことが必要でそれには化学の知識が不可欠になります。
化学を習得するには、物理の素養も必要ですが、現在化学科に入学してくる学生さんの約1/3は、高校のときに物理を選択していません。
入学後は物理の講義もとる必要がありますが、高校で物理を選択していない学生さん向けの物理の授業を開講していますので、そこで高校で習っていなかった分を補うことができるようなカリキュラムになっています。

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走っている自転車でバランスをとるのが簡単なのはなぜですか?

なぜ自転車は止まっているとバランスを取ることが難しいのに、こいでいる間はなぜ簡単にバランスをとることができるのでしょうか??
自転車をこぐとタイヤに角運動量が発生することから、それは角運動量の保存と関係している気もするのですが明確な答えを出すことができません。(予備校生)

直線運動しているものにはそのまま運動を続け、運動の状態が変化するのをいやがる性質があります。いわゆる慣性の法則です。
交通標語の「車はすぐには止れない。」というコピーがそのことを言いあてています。
止めるためには、ブレーキをかけ大きな力が必要になります。
回転運動の場合にも同じことがいえます。回転している自転車の車輪は、回転の状態が変化するのをいやがる性質があります。
ただし回転運動は少し複雑で、(1)回転の早さと共に、(2)回転の軸の方向が変化するのもいやがります。
ここでは後者が重要です。そして回転の早さが早いほど、回転の軸の方向を変化させるには大きな力がいるようになります。
つまり自転車の車輪の回転が遅いと少しの力でも車輪の回転の方向が変りフラフラするが、早いと(手荒いことさえしなければ)車輪の回転の方向は変わりにくく、まっすぐに進む性質が出てきます。
質問に出てくる角運動量という言葉を使えば、以下のように言う事もできます。
(1)早く回っている車輪ほど、車軸方向の大きな角運動量を持ちます。 (2)車軸方向(ひいては自転車の進行方向)を変えるには、車輪の持つその大きな角運動量の方向を変化させる必要があり、大きな力のモーメントが必要となります。 (3)普通に走行している自転車にそのような力のモーメントは加わらないので、車輪の持つ角運動量は方向を変えず自転車もまっすぐに進もうとします。 (4)反対に、ゆっくり走行している自転車では車輪の角運動量が小さく、外からの少しの力でその方向が変化するためフラフラすることになります。

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流体力学が学べる学部を教えてください。

流体力学について興味があり、数値シュミレーションによる研究や実験などもしたいと思っているのですが理学部物理学科でもそれは可能でしょうか?
また流体力学を学べそうな学部を探したところ、

・理学部物理学科
・工学部応用理工学科(機会工学科目)
・基礎工学部システム科学科(機械工学コース)
・基礎工学部情報科学科(数理科学コース)

などがあり、あまり区別がつかなくて迷っているのですが、もしよろしければアドバイスをいただけないでしょうか。(予備校生)

数十年前までは、流体力学は物理学の基礎的な学問テーマの一つでした。
当時は非常に活発に研究されていて、有名な教科書(「ラム流体力学」とか「ランダウ・リフ シッツ流体力学」など)も出版されています。
しかし、最近はその応用面が中心となっているようです。ですので、日本の大学の理学部物理学科で流体力学だけを純粋に研究している研究室はほとんどありません。
大阪大学理学部も同様で、流体力学を研究している先生はいらっしゃいません。
この意味では、工学部系の方が流体力学に接することが容易だと思います。
ただし、非平衡統計力学の基礎分野での難問として、「乱流」の問題が残されています。
非平衡統計物理学の観点から乱流等を研究されるのなら、大阪大学理学部物理学科でも対応できる研究室はあります。

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The thermodynamics law states that entropy or disorder/randomness increases with time. But in the very early stage , the Universe is made up of random particles, which later on clump together to form stars, planets, etc, i.e some order is present.
Is it not a violation of the said principle?

For the thermodynamics law

The thermodynamics law states that entropy or disorder/randomness increases with time. But in the very early stage , the Universe is made up of random particles, which later on clump together to form stars, planets, etc, i.e some order is present.
Is it not a violation of the said principle?

The system is determined not only by the entropy S but others, such as internal energy U, temperature T, etc. Choose a suitable thermodynamic characteristic functions, such as Helmholtz's free energy F = U - ST. At very high temperatures, the increase in S dominates the system. At rather lower temperatures, however, ordered states with smaller U can be realized. By the way, we eat foods grown by the sunlight. Our human body decreases in S, but the sun increases in S furthermore. Totally, the system increases in S.

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Why does the lamp appear brighter when seen thru a glass casing than seeing the naked flame?

Why does the lamp appear brighter when seen thru a glass casing than seeing the naked flame?

A visible light radiates from naked flame for different directions. If lights which are reflected or refracted by rear and/or side glasses, come into your eyes, you may feel much brighter than that from simply naked flame illusively, because of many flame images. The total light power, however, does not increase. You may find many light spots in the diamond jewel with a high quality cutting or in a chandelier with many glass prisms. If a glass casing has a reflector on the top and/or at the bottom, the radiation is anisotropic. A light mainly radiates in the horizontal directions. You need to think the difference between the brightness and the illuminance. For example, the fluorescence light tube has rather low brightness but high illuminace. An electric lamp with transparent glass has the high brightness, but the illuminance is not so high. A laser pointer generates a bright spot on the screen, but the light power is only a few mW. It is much smaller than the light power of an ordinary lamp.

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A cement compound CaO.Al2O3. 10H2O gives certain peaks when using the powder diffraction method. The compound now increases its water of cystallization to become CaO.Al2O3.11H2O. Will the diffraction pattern obtained be basically the same as the former, with only a slight difference which corresponds to a slight increase in the d-spacing? Or will the diffraction pattern be an entirely different pattern?

A cement compound CaO.Al2O3. 10H2O gives certain peaks when using the powder diffraction method. The compound now increases its water of cystallization to become CaO.Al2O3.11H2O. Will the diffraction pattern obtained be basically the same as the former, with only a slight difference which corresponds to a slight increase in the d-spacing? Or will the diffraction pattern be an entirely different pattern?

Generally, a chemical formula is insufficient to identify the chemical. For example, C is used for diamond and graphite, and even for buckminsterfullerene (C60), all of which are allotropes of carbon. Their diffraction patterns are, needless to say, entirely different. We must identify the crystal form or phase to discuss the structure and physical properties. There are however some crystalline compounds of which the composition continuously changes. They are called non stoichiometric compounds or berthollides after a French chemist C.L. Berthollet. Many proteins require some water molecules to be involved in crystal, and the content of water can vary depending on the external condition. For non-stoichiometric compounds, the diffraction pattern remains essentially the same in some composition range. As for materials you consider, we find the information only for CaO.Al2O3.10H2O, which was reported by Carlson in J. Res. Natl. Bur. Stand. (U.S.), 59, 107, 1957. You should consult some database by yourself at libraries of your convenience for further search as our search may be incomplete. If you made the experiments on CaO.Al2O3.11H2O, the following should be remembered: The similar powder diffraction pattern to CaO.Al2O3.10H2O is definitely insufficient to claim that CaO.Al2O3.11H2O is non-stoichiometric. The sample showing the composition CaO.Al2O3.11H2O may be mixture.

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理学部に行く目的ってなんですか?

就職者53名(民間就職50名、公務員3名)

これが理学部の修士課程終了した人の就職実績ですが、はっきりいってかなり悪いと思います。
確かに大学というのは就職するための予備校ではなく、勉強をするというところですから就職だけにこだわって考えるのはよくないことかもしれません。
しかし就職活動という言葉が存在しますし、大学を出たら自分で働いてお金を稼がなければならないので 、必然的に就職ということは重要視されるのは当たり前だと思います。
理学部の場合、中学高校の教師になる人が結構いますがそれは大学で勉強したことは全然いかされないでしょう。
生かすとしたらならどこかの企業の研究所に入るか、博士まで行って教授になって大学で研究するかのどちらかだと思います。

ただ企業の研究所に入って研究させてもらえるのも大学の教授になれるのも一握りの人です。また、
企業の研究所にも研究する範囲があるので素粒子などはまったく企業から相手にされません。
ポスドクもアカポスもものすごい倍率で落ちる人がかなりの人のはずです。ましてやノーベル賞なんて夢のまた夢です。
理学部物理学科に行って素粒子の研究職につくのがこんなに実現不可能に近いとは思ってませんでした。
理学部に行く目的がわからなくなりました。就職も他の学部に比べてきつい。研究者にもなるのが難しい。しかも素粒子なんかは教授以外に道が無い。
理学部に行く目的ってなんですか?教えてください。(高校生)

就職が「良い」「悪い」という場合に、様々な基準があると思われます。
どのような基準に照らして「悪い」とおっしゃられているのか不明ですが、一般的見地からは、本研究科の就職実績は全国的水準をはるかに上回っているものと考えられます。
しかし、「良い就職とは何か」といった問題は、1元的な価値基準で定まるものではないので就職実績だけから判断するのは大きな誤りです。
人生は長く高校時代に考えることとは全く別のことに興味を見いだし、大学・大学院で専攻を変えたり就職時さらには就職後にも職種を変えることはごくごく一般的です。
もしかすると貴君は10年後には素粒子物理学とは全く異なる分野の仕事をされているかも知れません。
しかし、もしも素粒子物理学研究よりも、よりあなたの適性に沿う専門領域があるとしたらそれを見いだしてもらうこと、それこそが大学・大学院教育の主目的なのです。

個人的経験に照らしても周囲の人々の話を総合しても、高校時代に考えることは極めて限定された知識のもとでの狭い狭い将来像でしかないことが多いです。
私も高校時代は物理学には素粒子理論と宇宙論しかないと思っていましたが、それは全くの誤りでした。物理学はもっともっと巨大な学問です。
物理学に興味をお持ちなら、是非大阪大学理学部物理学科に入学して、その広大な研究の地平を見渡す冒険に参加してみてください。
細かい個々の専門分野のおもしろさは講義やゼミを通じてお教えします。研究者の道を選ぶかどうか、企業に就職するか大学で研究するかどうかなどは、そのような冒険をしていく中で意志が固まっていくことでしょう。
そして大阪大学は、そのような適切な進路指導を行うことができる体制が整えられています。
大学院から別の研究科、場合によっては別の大学の大学院に進学することも推奨されています。
あらゆる専門領域のトップレベルの研究者・教授の「品揃え」により、適切な進路指導が可能であることが、総合研究大学院大学たる大阪大学の強みです。

高校生の段階から、いろいろな情報を集め、分析し、ここにも投稿されるというあなたの行動力には本当に感心させられます。
是非とも大阪大学に来て欲しいと思います。しかし、あまり高校生の段階から、その時の状況・情報だけから判断して将来について狭く考えることをしないでください。
ダイナミックに進路を切り開いていくこと、それがこれからの若い人々に期待される人生像ですし、それが可能になったのは日本でも本当に最近のことです。
それは新たに獲得された権利なのです。是非存分に行使していって頂きたいと思います。

このような多様な価値観が渦巻く社会の中で、理学部とその出身者が果たすことのできる役割とは何かを考えてみますと物事を根本的・抽象的・大局的な観点から系統的に捉えることにより問題の解決を行う、ということが挙げられると思われます。
具体的な理学の知識が直接問題の解決につながることはもちろんのこと、それ以上により広い範囲の理学を越えたあらゆる分野において、理学的な発想・視点が重要な役割を果たす場合が少なくないのです。
理学部出身で現在理学に直接関わる職種についていない人でも、そのような方々のお話でよく聞くのは「理学部出身でよかった」ということです。

前の教育審議会の主要メンバーである某小説家は、「私の人生において方程式など何の役にも立たなかった。方程式など知らなくても生きてこれた」といった趣旨の発言をされていましたが、これは教育に関わる公人の発言としては全く見識に欠けるものと言わざるを得ません。
むしろ常に世界のどこかで続いている戦争・紛争、もしくは、カルト宗教や、インチキ商法などの跳梁跋扈を見てもわかるように、政府、市民の合理的な判断力が大幅に低下している昨今にあっては理学的な発想を持つことは、今後人類が合理的に振る舞うための最後の砦と言っても過言ではないでしょう。

「方程式が人生に役に立たない」という発言は、物事を根本的につきつめて考えるという姿勢に対する、有史以来の「人間が陥りやすい安易なイデオロギー」からの攻撃を象徴しています。
ガリレオの宗教裁判の話はご存知かと思いますが、理学はずっとずっとそのような闘いを勝ち抜いてきました。
その強さが、その発想・思想・方法の正当性を雄弁に物語っています。もしも貴君が小中高校の夏休みの自由研究などを通じて、「何かに興味を持って、調べて、新しいことを発見する」ことにすでに喜びを見いだした経験があり「研究っておもしろそうだなぁ」と思っておられるならば、研究者として最も大切な適性の大半をすでに持っていることになります。
最近の風潮では、すぐにビジネスに結びつく近視眼的な応用研究のみがもてはやされて理学部に対する不当な風当たりも強いのですが、理学に興味をもたれた貴君のような貴重な同志には是非この長い長い研究の歴史に新たなものを付け加えていく活動に参入して欲しいと願っています。

最後に、上記の小説家の発言に対しては、同じ小説家である村上春樹氏の「ノルウェイの森」の中の一節を引用して答えとしたいと思います。
おそらく村上氏は理学の専門教育を受けたことはないかと思われますが、理学的視点・発想の重要性を直感的に理解されているのだと思います。

「ねぇワタナベ君、英語の仮定法現在と仮定法過去の違いをきちんと説明できる?」 と突然僕に質問した。
「できると思うよ」
と僕は言った。
「ちょっと訊きたいんだけれど、そういうのが日常生活の中で何かの役に立ってる?」
「日常生活の中で何かの役に立つということはあまりないね」
と僕は言った。
「でも具体的に何かの役に立つというよりは、 そういうのは物事をより系統的に捉えるための訓練になるんだと僕は思ってるけれど」

貴君の今後のご健闘とご発展をお祈りします。

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電子が波動性を利用し原子間をどのように動いているのか教えてください。

波であっても、原子に跳ね返される気がして仕方がありません。
それと光子の波動性を利用して原子間を動くことはできないのですか。(大学2年生)

ご質問は、固体物理学の基本に関するものです。
電子が結晶中を移動して行く場合には、波動性だけでなく散乱された波の干渉効果も同時に考える必要があります。
完全結晶が絶対零度にあるとき、結晶中を進む電子はほとんど散乱されません。
これは、電子の波(平面波を考えて下さい)が、ひとつひとつの原子にさしかかったときに散乱されないからではありません。
散乱されても、同じ波を再生する状態が結晶中の波になっているからです。波長の違いによってふたつの状況に分けて説明します。

電子の波は原子によって散乱されますが、散乱波はそのまま考えると四方八方に進みます。
しかし平面波に対してはどの原子から散乱されても、前方においては全て同じ位相で到着します。
その結果、散乱されなかった波と各原子から散乱された波が合成されて新しい波となります。
一方、後方や横方向に散乱された波は色々な距離の原子からの波が合成されますので、干渉して消えてしまいます。
その際、前方で合成される波の進む速度は、真空中を進む場合とは速度とは異なります。
そこで、この違いを見かけの質量(有効質量)という概念で近似します。
光の場合では屈折率という概念が登場しますが、原子によって光が散乱された効果をあらわすという観点からは共通性があります。
以上は、波長が長い場合の話です。

電子の波長が短くなると、結晶中では散乱された波が干渉しても消えない条件があります。
X線が結晶に入射してブラッグ条件(2dsinθ=nλ、n=1、2、3、・・・)で反射される現象を思い出して下さい。
ある格子面に対して波長λの平面波(X線でも電子でもよい)が入射すると、面間隔dと入射角θで決められる角度に反射(散乱と考えても良い)されます。
もし逆格子のことをご存じでしたら、反射は、平面波の波数ベクトルが逆格子ベクトルの分だけ変化するという形で表現されます。
1次元系では格子定数の逆数に2πを掛けたものが逆格子ベクトルです。また、反射された波と同じ平面波が、逆に、元の平面波に反射される(逆過程)ことも起こります(面の裏側から入射した場合を考えてみてください)。
もし一種類の平面波で表される波に対するブラッグ条件による反射を考えると、電子は時々刻々と別の波に変化して行くことになりますので、これでは結晶の固有状態(定常状態)ではないと言うことになります。
X線の場合は反射された波は結晶の外に出て行きますが、結晶中を運動する電子の場合は反射された波も結晶中の電子の波でなければなりません。
つまり反射されても同じものになっていなくては定常状態にはなりません。

そこで、結晶中の電子の波として複数の平面波を線形結合で合成したものを考えてみます。
もしその中のある平面波が反射されて別の平面波に変わったとしても、もし反射された波とと同じ成分が最初から含まれていれば、それが反射された波は最初の波と同じ波に戻ります。
このようにして、反射しても全く成分が変化しない波を結晶中で考えることができます。このような合成された電子状態は、結晶中をどこまでも散乱されずに進むことができます。
この波のエネルギー(振動数)と波長の逆数に2πを掛けたもの(波数ベクトル)の関係を与えたものが、「エネルギーバンド」というもので、固体物理学において最も重要な概念のひとつです。

もし有限の温度になると、原子は熱的に運動しますので上記のブラッグ条件とは違う散乱が発生し、エネルギーも違ってしまう場合があります。
また不純物や格子欠陥があると、やはり電子はブラッグ条件とは別の方向に散乱されます。これが電気抵抗の重要な原因となります。
なお、実は電子間には斥力が働きますので、その効果(電子相関)が無視できない場合があります。
その場合は、エネルギーバンドの考え方のままでは説明できない現象が起こります。
電子相関は、現在、固体物理学で非常に重要な現象で尽きせぬ興味が注がれています。

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地球の環境を守るため、エネルギーを太陽エネルギーにするという研究を行っていますか?

地球の環境を守るため、エネルギーを太陽エネルギーにするという研究を行っていますか?

「地球の環境を守るため」という崇高な使命感をお持ちのこと、大変感心致します。
一口に「エネルギーを太陽エネルギーにする」と言っても、そのために必要な基 礎研究や応用研究、およびその実用化には実にたくさんのことが関係していますので、やらなくてはならないこともたくさんあります。
また「地球の環境を守るため」には「エネルギーを太陽エネルギーにする」ことだけでなく、それを実際に利用 する技術や既にあるシステムの省エネルギー技術も大切です。
一方、世の中の動きも見なくてはなりません。
発展途上国では、生活レベルの改善に伴って急速にエネルギー消費が増えています。
それがいずれ先進国並みになると、地球環境の悪化は益々大問題となります。
全てのエネルギー源を太陽に求めることはできませんので、いずれなんらかの形でエネルギー消費の少ない社会構造や生活スタイルに変えて行かなくてはなりません。
これらは人類にとっての大問題ですので、若い方の参加を得て解決して行かなくてはなりません。
もちろん「地球の環境」はエネルギー問題だけではありませんので、後生に恥じない地球環境対策を総合的に進めて行かなくてはなりません。

ところで、大学では生産は行っていませんが、太陽エネルギーの利用のための基本 原理とその応用技術を研究している研究室が多数あります。
大阪大学の基礎工学研究科では、太陽エネルギーを利用した水素エネルギー資源の製造技術の基礎研究を行っています。
また工学研究科では、色素増感による太陽電池の高効率化の研究を行っています。
また産業技術研究所では、高効率のシリコン系太陽電池の研究を行っています。
理学研究科・生物科学専攻では、バイオ関係として光合成反応の分子機構の研究を行っています。

理学部や理学研究科では、応用を直接目指す研究は多くありませんので、太陽エネルギーを利用する技術に直接役立つ知識とは限りません。
しかし、それらの研究や開発に従事する際の基礎知識としては、物理、化学、生物などた くさんの学科で身につけることができます。
将来、企業や研究所などでそれらの機器 を開発したり製造したりするためには、どれも知っておく必要があります。
強いて言えば、シリコン系や化合物半導体系の太陽電池は物理系、有機系の太陽電池は化学系、バイオ技術を利用する際には生物系、燃料電池は化学系と物理系の知識が役立つと思います。

その他に、風力発電や地熱発電もあります。
関係する技術として、燃料電池があります。燃料電池をいかに低コストで製造するのか、また水素あるいはその代用となる燃料の供給方法などの研究開発は、現在世界中で進められています。

しかし核燃料の製造・精製や核廃棄物の処理には様々な資源を消費しますので、最終的に環境への負荷がどのようになるのか色々と意見が分かれるところです。
原子力発電は簡単に停止できませんので、基本的には一日中休み無 く運転します。
しかし昼と夜とでは電力消費が大きく変化するため、現状では必要に応じて調整がしやすい火力発電がある割合で必須です。
そのため夜間は主に原子力を利用し、昼間は調整がしやすい火力発電も運転し、最大電力供給量をカバーしています(一瞬でもカバーできなくなると、どこかの発電所が過負荷になりダウンすると、それが連鎖して大停電になる恐れがあります)。
電力はそのままでは貯蔵できませんので、太陽エネルギーによる電力もこれらの電力供給システムの中に組み込んで行かなくてはなりません。

このように色々なことがありますが、ご質問の内容は化石燃料を使うことによる炭酸ガス排出問題に対処するという趣旨が中心かと思われますので、以下に太陽エネルギーの利用法と電力の利用技術ついて説明します。
将来どのようなことにかかわって行くのかについて参考にしてください。
ただし始めにも述べましたが、太陽エネルギーを利用する技術だけでは環境問題の根本的な解決にはなりません。

[太陽エネルギーの利用法]
水力発電
 欠点:ダム建設による環境負荷がある。
    生態系への影響や海岸浸食の問題がある。
    ダムの寿命が短い。
    建設と維持にコストがかかる。

風力発電
 利点:比較的出力が高い。
    規模を大きくすれば、発電コストは高くない。
 欠点:風速により出力が変動する。
    騒音問題や景観の問題がある。

太陽電池
 利点:離れた所でも発電できる。
 欠点:天候と時刻により出力が変動する。
    コストが火力発電等より高い。
    (20年で償却した場合で、家庭用電力の2倍)
    広い面積と晴天が必要(出力が低い)。

バイオマス発電(光化学変換)
 利点:多くの廃材(森林や農作物の廃材)が利用できる。
    アルコールは、発電以外にも使える。
 欠点:広い土地と新しいシステムが必要。

この他に潮汐流を利用した潮汐発電もあります。

以下の「日本太陽エネルギー学会」のホームページもご覧下さい。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jses/

[電力の利用技術]
電力貯蔵
 自然のエネルギーを利用する方法の多くはその出力が一定しません。
電力は入れ物に溜めておくことができません。
そこで、使わないときに貯蔵し使うときに放 出するために巨大な蓄電池を利用する技術が有効です。
いま、太陽電池で売電できるのは、電力会社の電力供給システムが安定して稼働しているからです。
太陽電池は夜は発電しませんので、その際には蓄電池から電力を供給するか、電力会社からもらわなくてはなりません。
真夏の日中の暑い盛りには、電力供給が追いつかないことが心配されていますので、そのときは太陽電池は大活躍します。
これとは全く別の観点として、深夜電力で氷をつくっておいて、暑い日中にそれを空調に使うという方法があります。
ダムでは夜間電力で水をダムに汲み上げておいて、日中それを使うという方法があります。

電力変換技術
 私たちは送電時は交流を使いますので、太陽エネルギーで発電した電力を効率よくその形に変換するインバーターが必要です。

送電・発電技術
 長距離送電技術には様々な工夫が必要です。超高圧送電や超伝導材を利用した送電や発電があります。

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炎は何でできているのでしょうか?

<物質は何と何でできている>など、この世に存在しているものは<どういう原子でできている>まで分かっているのに、炎はなんだろう?と思いました。
しかしどの資料をみても、炎については温度によって色がちがうということなどしか書かれていません。よろしくお願いします。

炎は、マイケル・ファラデーという19世紀の大科学者が毎年クリスマスに子供たちに向けて行われた科学講演会でも取り上げたテーマなのです。
講演の様子は、翻訳されて本になっているので是非読んでみてください。「ロウソクの科学※」という本です。
タイムマシンがあったらあなたを講演の行われた1860年に連れて行ってあげたいくらいです(本当はファラデーが行った講演会のようなことを僕ら科学者・教師が日本でもするべきなんですが)。
ファラデーは、その講演の中で日本のろうそくを紹介しているんですよ。当時の日本のろうそくは芯に工夫がしてあって、すすが出にくかったのだそうです。
19世紀にも高性能なMade in Japanがあったとはおもしろいですね!

またファラデーは、ベンゼンという石油工業にはなくてはならない物質を初めて発見したほか、電気や磁石についての大発見をしています。
この発見は、現在でも、理という理科の一分野の大変重要な基礎になっていて、テレビ、ケータイ、電子レンジその他あらゆる電化製品はその発見がなければ存在しなかったといってもよいほど大切なものです。
おそらく高校の物理で習うと思います。当時ノーベル賞があったら、3、4回受賞していてもおかしくないほどの偉い科学者ですね。

でもファラデーは14才で製本屋に奉公に出されたために、独学で科学を学んだという人なのです。すごいと思いませんか。
たとえ学校に行かなくても、どんな状況でも勉強はできるし、研究はできるんですよね。
それはあなたが炎が不思議だと思ったのと同じように、何かが不思議だなぁ、そのからくりがわかったらおもしろいなぁ、という気持ちを持ち続けることができさえすればできることなんだということを教えてくれます。

※この本(原題 Chemical History of A Candle)は,三石巌さんの訳が,角川文庫(ISBN: 4043127014)から出ています。
また絶版になっているようですが、矢島祐利さんの訳が岩波文庫(青909-1)から、吉田光邦さんの訳が講談社文庫(ふ 23-1)からも出ています。
図書館か書店で探してみるとよいでしょう。なお,山形浩生さんの訳を以下のURLで読む事ができます(ただし,実験装置の挿絵は載っていません)。「あとがき」が出色です。
http://www.genpaku.org/candle01/candlej0.html
上記サイト「プロジェクト杉田玄白」は、著作権の切れた洋書などの翻訳を無料で公開しています。「ロウソクの科学」以外にも、優れた古典的作品が多数収録されています。

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発光スペクトルと輝線について

先日”物理化学”の授業で、「シュテルン・ゲルラッハの実験」を習いました。
それによると“Ag(銀)は磁界を通ると、2本の輝線になり、それはスピンの持っている磁気量子数によるものである。
つまり、Agの不対電子は1個なので、スピン多重度が2になる”ということらしいのです。

Cdは不対電子がないので、不均一磁場を通っても2本に分かれることがないのは分かります。
まず、発光スペクトルというのは輝線と同じことでしょうか?
教科書にはNaは589.0と589.6nmに2本の発光スペクトルを示すと書いてありました。
Na原子は不対電子が1つなので2本の発光スペクトルを示すのですか?

それと、教科書にはH原子のスペクトルは一本の発光スペクトルである、とも書いてありました。H原子の不対電子は一つなのになぜ1本なのでしょうか?
NaとHでスペクトル数が異なるのはなぜなのでしょうか?
物理化学の先生は「系列がどう」とかおっしゃっていたような気がするのですが、説明がよくわかりませんでした。
どうぞよろしくお願いします。

複数のことを質問されていますので、それぞれ分けて説明します。
詳しくは、原子物理学や原子スペクトルを扱った本を読んでください。

たとえば大きな磁石のN極付近を考えてください。
その極に近づくほど強い磁場が発生しています。そこに、別の小さな磁石を置きます。
そのとき小さな磁石のS極を大きな磁石のN極に面するようにして近づけると引力が働き、N極側を面するように近づけると斥力が働きます。
さて中性の銀原子は、基底状態ではスピン角運動量1/2を持っています(小さな磁石と考えてください)。
このスピン角運動量は銀原子の最も外側を運動している電子(5s電子と言います)によるものです。
このとき量子力学的効果によってアップスピンとダウンスピンのふたつの状態ができています。
これを磁場中に置くとゼーマン効果によってエネルギー的にも異なる状態になります。
このアップスピンとダウンスピン状態では磁石の向きが違いますから、シュテルン・ゲルラッハの実験のように場所によって強度が変化している磁場中に置くと、上述のように磁場から受ける力の向きが違います。
そのためアップスピンとダウンスピンの状態のビームの向きが互いに異なり、銀原子が到着する位置がずれることになります。
ナトリウムの中性原子も銀原子と同じように基底状態ではスピン1/2を持っています(最も外側を運動している電子は3s電子と言います)。
シュテルン・ゲルラッハの実験を行えば、ナトリウムの中性原子のビームもふたつに別れます。

一方、発光の場合は励起状態を考えなくてはなりません。
原子の励起状態はたくさんありますが、それがエネルギーの低い状態に遷移するときに光を出します。
原子の状態の中には、原子核に対して回転運動をしている電子(量子力学では軌道角運動量を持つ電子ということになります)があります。
つまりスピン角運動量1/2だけでなく、軌道角運動量をもっている状態があります。スピン角運動量を電子の自転にたとえると、軌道角運動量は原子核の周りを回る公転運動にあたります。
このとき公転運動の回転の向きに対して、アップスピンとダウンスピンの二通りの自転状態が考えられます。
実は、その状態のエネルギーがわずかに違います(これは磁場が無くても分裂しています)。
この分裂を引き起こす相互作用は、スピン軌道相互作用と言います。これは電子の原子核に近い側と遠い側で原子核から受ける引力が違うために、 自転運動の違いがエネルギーにも影響するためです。
具体的には、ナトリウム原子の励起状態のひとつとして、スピン角運動量1/2と軌道角運動量1をもった3p状態というのがあります(ただし、正確には、全ての電子を含めて指定しなくてはならないので、ここで言う電子ひとつの状態で原子状態を指定するのは、厳密ではありません。ここでは便宜的に利用しています)。

その結果、スピン角運動量1/2と軌道角運動量1 をもった場合では、自転と公転の向きが同じ状態として全角運動量が3/2、逆向きの状態として全角運動量が1/2があり、エネルギー的に分裂します。
もし磁場があると、全角運動量が3/2の状態はさらに4つ、全角運動量が1/2の状態はふたつに分裂します。
磁場がない状態で考えると、ナトリウム原子の3p励起状態から3s基底状態に遷移するときに、589.0と589.6 nm の二種類の波長の光を出します。
これはナトリウムD線といって、オレンジ色をしています。トンネルの中でよく使われるナトリウム灯の色です。
要するに、ナトリウムD線の分裂はスピン軌道相互作用で分裂した全角運動量が3/2と1/2の状態が基底状態へ遷移するときの発光です。

ご質問の答としては、シュテルン・ゲルラッハの実験でビームがふたつに分かれるのは、基底状態の原子におけるアップスピンとダウンスピン状態の違いです。
一方、ナトリウムD線の分裂は磁場は関係なくて、励起状態におけるスピン軌道相互作用によるもので分裂の原因は別々です。
ただし、量子力学での角運動量の考え方を基礎にしているという意味では共通性があります。

さて、スピン軌道相互作用の大きさは重い原子ほど大きくなり、分裂エネルギーも大きくなります。
それは、原子核の引力が大きい原子(つまり陽子の数が多い重い原子)ほど、電子の原子核に近い側と遠い側とで、原子核からの引力の差が大きくなり、自転と公転の相互作用が大きくなるためです。
たとえば、ナトリウム原子と相似形の電子配置をしている中性のアルカリ金属原子(Li, Na, K, Rb, Cs)は、順にスピン軌道相互作用が大きくなり、ナトリウムD線と相似の分裂(p状態の分裂)はこの順で大きくなります。
ここで比較している発光の遷移は、Li, Na, K, Rb, Cs 順に 2p→ 2s, 3p→3s , 4p→4s , 5p→5s , 6p→6sです。
最も軽い水素原子では、2p状態の分裂 は非常に小さくなります(ただしゼロではありません)。
水素原子では、1s, 2s, 2p, 3s, 3p, 3d, ・・・という量子準位があります。観測する遷移としては2p→1s が可能です。
しかし、1pというのはありませんので、1p→1s とうのはありません。2p状態の分裂が小さいために、普通の分光装置では見ることができないためにスペクトルが1本になっているとしているわけですが、十分な分解能の装置では、分裂しているのがわかります。
ちなみに水素原子での2p状態の分裂はナトリウム原子の3p状態の分裂の約50分の1程度で、10万分の4 eV です。
重い原子のCsの6p状態では分裂は100 分の6.8 eV です。中性の銀原子の 5p 状態では 100分の 11.4 eV です。

また原子核はスピンを持っていますので、それと電子との相互作用によって更に分裂します。より精密な測定をするとそれも見えてきます。
たとえば、ナトリウム原子の原子核スピンは3/2ですの、4つの状態が含まれています。
これと上記の3s電子との相互作用を考えると、アップスピンとダウンスピンの状態はそれぞれ4本づつに分裂します。
これは超微細相互作用と言います。

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同じ強さの磁石を二つくっつけると、一つのときより強くなりますか?

同じ強さの磁石を二つくっつけると、一つのときより強くなりますか?

まず、磁石の強さというのは、いったい何のことを言えばよいのかを考えてみましょう。
磁石にはいろいろな形がありますので、ここではN極とS極が対になっている棒磁石[N=S]を考えて説明します。
N極どうしやS極どうしはくっつきませんが、N極とS極はくっつきます。
磁石の強さを調べるために、鉄棒を近づけてみます。すると、N極とS極の近くでは強くくっつきますが、NとSのあいだのところではくっつきません。
これはN極から磁力線(じりょくせん)が出ていて、S極に集まって吸いこまれていると考えると良いでしょう。
このとき、N極とS極の近くには磁場(じば)が集中します。
磁場は目に見えないけれど、鉄棒はそれを感じて磁石になるからです。
磁場の向きを矢印で示すと下のようになります。

      → 
   →     → 
  ↑        ↓
   ←[N=S]←  [(N)鉄棒(S)]
  ↓       ↑
   →     → 
      →

次は、棒磁石をふたつくっつけてみます。棒磁石のくっつけかたはいろいろありますね。ひとつは、直列です。つまり同じ向きでくっつけると

[N=S][N=S]

このとき、磁場の様子を書いてみましょう。

      →        →
   →     →  →     →
  ↑       ↓↑       ↓
   ←[N=S]←  ←[N=S]← 
  ↓       ↑↓       ↑
   →     →  →     →
      →        →

この図で、矢印が↑↓になっているところは互いに反対向きの磁場がいっしょになっていますから、磁石を近づけると消えてしまいます。
そのまわりでもほとんど消えてしまいます。
つまり、磁石を近づけると次のようになります。

         →
      →     →
   →           →
  ↑             ↓
  ←[N=S]←[N=S]← 
  ↓             ↑
   →           →
      →     →
         →

ふたつの棒磁石のあいだでは、磁力線はN極から出てすぐにS極に吸いこまれます。
そのために磁場は外側はでてこなくなります。
三つや四つの磁石を次々とくっつけてもおなじです。

          →   →
      →           →
   →                 → 
  ↑                   ↓
   ←[N=S]←[N=S]←[N=S]← 
  ↓                   ↑
   →                 → 
      →           →
          →   →

つまり、磁石をいくつ繋げても両方の端っこの磁場の強さは変わりません。
鉄の棒を近づけるとしらべることができます。
だからといっていくつ磁石をくっつけても強さがかわらないと考えるのは正しくありません。
よく見て下さい、磁場が遠くまで広がります。

もっとも大きな磁石は地球です。地球上の多くの場所では磁場が南北に向いています。羅針盤(らしんばん)はそのことを利用して、磁石の針がいつも南北を示すことを使っています。
太陽から飛んでくる電気をもった粒子は、この地球の磁場で大きく曲げられて北極と南極に到着し、オーロラの光を発生します。

こんどは、磁石を並列にしてみます。

      →    
   →     → 
  ↑       ↓
   ←[N=S]←
  ↓       ↑
   →     → 
      →
      ←    
   ←     ← 
  ↓       ↑
   →[S=N]→
  ↑       ↓
   ←     ← 
      ←

磁石をもっと近づけて、さっきと同じように考えると

      →    
   →     → 
  ↑   ←   ↓
   ←[N=S]←
  ↓       ↑
   →[S=N]→
  ↑   →   ↓
   ←     ← 
      ←

となりますが、もっと近づけると

  ↓←[N=S]←↑
  ↓→[S=N]→↑

となります。磁石が打ち消し合って、N極とS極のすぐ近くのせまいところだけ磁場が残ります。
ひとつひとつの磁石は変わっていませんが、磁場がせまいところだけでまわりに広がっていません。
ですから、遠くで磁石の磁場を感じることができなくなります。
これを磁石が弱くなったと思うこともできますがひとつひとつの磁石は弱くなっていません。

鉄はとても小さな磁石が色々な方向を向いて集まっています。
お互いに打ち消し合って外には磁場がでてきません。ですから、鉄と鉄はくっつきません。
しかし強い磁石に鉄を近づけると、鉄の中の小さな磁石は同じ向きに揃います。つまり、鉄も磁石になります。
鉄が棒磁石にくっつくのはそのためです。もし、とてもつよい磁場の中に鉄を置くと、鉄の中の小さな磁石が磁場の方向にそろったまま、元にどらなくなります。
すると鉄は自分で磁石になってしまいます。磁石はそのようにして作ります。
このように、最初は磁石になっていなかったものを磁石にすることを着磁(ちゃくじ)と言います。
普通の鉄は、あまり強い磁石にはなりません。

最近、世界でもっとも強い磁石「ネオマックス」が日本で発明されました。モーターやコンピュータなどで使われています。兵庫県西播磨のSPring-8(スプリングエイト)では、ネオマックスの磁場で電子を波のように次々と曲げて、さらに強い光を発生させるのに使っています。

このような説明もおもしろいけれど、もっともっと大切でおもしろいことがあります。
それは棒磁石と鉄棒をかりてきて、自分で実験をしてみることです。何か発見したら、教えてください。
鉄棒は釘でも大丈夫です。

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雨粒は質量が大きいほど終端速度が速くなるのは何でですか?

空気抵抗があるんなら質量が大きいほうが抵抗も大きくなるような気がします。
インターネットで色々調べてみたんですが難しい式が書いてあってよく分からないです。よろしくお願いします。

ご存じのように、真空中では空気抵抗がないので物体の落下速度は重力加速度の割合でどこまでも増加します。
ここで座標を上向きを正とすると、重力加速度は下向きですから負の値 -g を与えることにします。
すると、重力は質量 m と重力加速度 -g の積 -mg で与えられます。一方、質量 m と加速度a の積はその物体に働く力に等しくなりますから、

  ma = -mg

となります(運動の第二法則)。このとき、両辺に m がありますか ら、a = -g になって、加速度は質量 m に依存しないわけです。
その結果、物体の落下速度 v は時間 t に比例してどこまでも加速していきます。
式で書く と v = -gt となります。

しかし、大気中では空気抵抗(粘性抵抗)k を受けます。その力は上向き(重力と反対方向)ですから、正の値 k とします。すると、力の関係は

  ma = -mg + k

となります。ここで k は落下する物体の形や大きさや速度が決まれば物体の質量には依存しません。
それは物体が空気と接するのは物体の表面だけですので、同じ速度で落下する場合は物体の内部に隠されていることには関係しません。
つまり外形が等しければ質量によらず空気抵抗も等しくなります(しかし、次に述べるように速度に依存します)。
空気抵抗 k は静止した物体には働きませんから速度の関数です。もし物体の速度 v が低くて k が v に比例すると近似できる場合は k = nv と書くことができます。
ここでn は落下する物体の形や大きさや空気の粘性で決まる係数です。n が大きいほど空気抵抗が大きいことになります。
すると、力の式は

  ma = -gm + nv

となります。速度 v が一定になる終端速度では速度が一定になり、これ以上加速しませんから a = 0 です。
これを代入すると、v = gm/n となって、 質量の大きい物体ほど早く落下します。 逆に言うと、質量が大きい方が落下速度が速いので大きな空気抵抗を受けて、それが大きな重力とバランスを取るわけです。このことから、重い物体ほど速く落ちるという経験則を導きますが、それは空気抵抗があるためです。ガリレオは、空気抵抗が無視できる場合においては落下速度は質量によらないこと、つまり「慣性の法則」を導きました。そのときに多くの実験事実に基づいて結論を導いていることに注目しなくてはなりません。ケプラーの天体観測も同様です。ニュートンは数学を用いてこれらの事実を力学の体系として完成しました。

さて、物体の速度がゆっくりのときは、空気抵抗は速度に比例しますが、それはかなりゆっくりとした速度です。たとえ ば、シャボン玉が落下する場合や、霧雨ていどの小さい雨粒については成立します。しかし、少し早くなると速度の二乗に比例します。ピンポン球や野球のボールや普通の大きさの雨粒が落下すると きは、空気抵抗は速度の二乗に比例します。式で示すと、

  ma = -gm + bv^2

となります。ここで b は速度の二乗に比例する抵抗で、

  b = CD*r*A

ここで、A は物体の断面積、r は空気の密度、CD は物体の形で決まる数値で、球形では 0.3 程度の値になります。終端速度は v^2 = gm/b です。ピンポン玉程度の大きさの氷だと時速 100 km 程度の速度になりますので、この大きさのヒョウが体に当たると大ケガをします。もし、全ての速度を一緒に考えたい場合は、

  ma = -gm + nv + bv^2

とすればよいでしょう。もっと早くなると乱流が発生したりします。

また 「球(半径15mm)が空気(常温・1気圧)中を速度v〔m/s〕で運動するときの空気抵抗の近似式を調べています。」の質問もご覧下さい。

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大阪大学には理学部のほか、基礎工学部、工学部があり、良く似た名前の学科がありますが、どこがいったい違うのでしょうか。また、物理も化学も、原子や分子を扱っていますが、学科の境界はどこにあるのでしょうか。

大阪大学には理学部のほか、基礎工学部、工学部があり、良く似た名前の学科がありますが、どこがいったい違うのでしょうか。また、物理も化学も、原子や分子を扱っていますが、学科の境界はどこにあるのでしょうか。

おっしゃるように、ほとんど同じように見える研究が基礎工学部、工学部などでも行われています。理学部では個々の研究がどのように応用されていくかということより、その奥底に潜む真理を追求することに主眼をおいています。一見、自明に思える事柄に対しても、「 なぜだろう」と疑問を抱いてその根源を探ろうとします。そういう意味でもっとも基本的な研究を行っているところと言って良いでしょう。同じ理学部内でも他の学科との共通点も多いのですが、物理学科では個々の事柄よりも現象の普遍的性質に興味を持つ方が多く研究しています。そして、一見全く違ったように見える事柄や現象に潜むより根本的な原理を統一的に理解しようと努力しています。学科の境界についてはそれほど明快ではありません。むしろ、これからはいろいろな学科や学部が協力しあって、その境界領域( 学際領域)を埋めていくことが重要であると思っています。

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わたしは物理に向いているでしょうか。物理学科に進みたいのですが、高校時代に何を勉強すればよいのでしょうか。

わたしは物理に向いているでしょうか。物理学科に進みたいのですが、高校時代に何を勉強すればよいのでしょうか。

もし、あなたが夕日を見てきれいだなあと思うと同時に、どうしてあんなに赤くなるんだろうと不思議に思うなら、もうあなたは物理学者になる素質を充分にもっています。高校時代には、たとえほかの人が当たり前じゃないかといっても、自分自身がわからないこと、不思議に思ったことを徹底的に調べてみることが大切です。こうしたところから新しい発見が生まれてきます。

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物理学は現代の社会のどこに役立っているのでしょうか。また、物理学がめざしているものは何でしょうか。

物理学は現代の社会のどこに役立っているのでしょうか。また、物理学がめざしているものは何でしょうか。

ジャンボ機を例にあげてみても、飛行機が飛ぶためには、飛ぶ原理を扱う流体物理学、機体の材料に関係した材料物性物理学、目的地に正しく到達するための運動方程式、コンピューターの基板のシリコンの性質を理解する半導体物理学などなど物理学は随所に活躍しています。今日では物理学が明らかにしてきた法則、原理の利用なくしては生活できないと言っても過言ではありません。しかし、私たちはあまりにも多くのことを無反省に開発し物を浪費してきました。これからは自然と人間の調和を考えた学問にしていかなければならないのではないでしょうか。

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宇宙人や地球外生物の研究が出来ますか。

宇宙人や地球外生物の研究が出来ますか。

私たちはまだ自由に他天体にいくことができませんので、天体の観測か、地上で手に入る隕石などの地球外物質を精密に調べることから手をつけはじめています。隕石の研究から、火星にかつて微生物がいた証拠が見つかったという報告もありました。宇宙地球科学には隕石を研究しているグループ、地球の過去の環境、年代測定をしているグループ、人工衛星搭載測定器を開発しているグループなどがあり地球外生命体に焦点を当てた研究もすることができます。文明が進んで、恒星の出力程度のエネルギーを消費するダイソン文明という段階に到達すると、恒星の光のエネルギーを利用してゴミとして赤外線を放出するでしょう。私たちがこの星を遠くから観察すると、赤外線星として観測するのではないでしょうか。

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大学院には、物理学科から接続する専攻として、「物理学専攻」と「宇宙地球科学専攻」の2つの専攻があるようですが。

大学院には、物理学科から接続する専攻として、「物理学専攻」と「宇宙地球科学専攻」の2つの専攻があるようですが。

大学院で、物理学科から接続する専攻は、物理学専攻と宇宙地球 科学専攻に分かれます。ただし大部分の入試では共通の入試が行 われ、双方の専攻にまたがって研究グループを志願することも可能 です。

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卒業研究を行う研究グループはどのように決められるのでしょうか。

卒業研究を行う研究グループはどのように決められるのでしょうか。

皆さんが3年生の終わりになると卒業研究としてどのような研究 を行うか選択することになります。本格的に研究を行う大学院はさ らに入学試験を受けることになり、再び研究グループを選択するこ とになるため、4年生で行う研究と大学院で行う研究とは一致する 必要はありません。選ぶときには、研究グループの先生方による説 明会と実際に研究室を回って、先生方の詳しい説明を聞いたり、研 究室にある実験装置をみたり、また、そこで実験している先輩方に 様子をきいたりして最終的に自分の進む研究グループを決めること になります。

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将来宇宙開発関連の仕事につきたいのですが。

将来宇宙開発関連の仕事につきたいのですが。

日本でも大型ロケットが完成し、月や小惑星の探査に成功しました (かぐや、はやぶさ)。これからは、日本だけではなく世界各国が協力 して宇宙開発をしていく時代になるでしょう。宇宙観測機器の開発 には地上とは異なり、高真空、強い宇宙放射線、大きな温度変化な どの極端条件が要求されていて、物理学がその力を大いに発揮し ています。今後も日本、ヨーロッパ、米国で月探査機、火星探査機、 木星探査機、小惑星探査機などの計画が目白押しに計画されていま す。これらの新しい計画にはみなさんの若い柔軟な頭脳を特に必要 としています。

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化学について

将来、化粧品会社で研究・開発に携わるにはどのような学科を選べばよいですか?

将来、化粧品会社で研究・開発に携わるにはどのような学科を選べばよいですか?
また、そのような会社に就職している実績はありますか。

化粧品会社で研究・開発というと、かなり広い分野が当てはまります。 材料・分析関係は化学でしょうし、安全性関係は医学・薬学・生物学がメインとなります。 化粧品はイメージで売るところも大きいので色やデザインなどの美術的センスも必要ですし、理系のみで研究開発が行なわれるわけではありません。 とはいえ、人員は化学系の学科の卒業した人が最も多いでしょうから、まずはここかと思います。 当大学の理学部ですと化学科が相当します。

阪大の化学科卒業生が就職している会社はすぐ浮かぶような有名なところでも資生堂、カネボウ、メナード、ノエビア、花王などがあります。 また、生物科学専攻でも、毎年数名が修士修了後に化粧品会社の研究・開発職に就職しています。

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握手はできない?

原子は原子核の周りを電子が回っているとなると、人間の手のひら(あらゆるものも)は表面が電子で覆われている状態になるということになるのですか?
もし、そうだとすればなぜ握手ができるのですか?
ほんとうなら、斥けあって手と手を握ることができないのじゃないのでしょうか?
もっというと、あらゆるものと触れることができないのじゃないのでしょうか?教えてください。

ご質問は素朴な内容でありながら、非常に深い意味が含まれています。
どうして握手ができるのかを理解するためには、いくつかのことを考えなくてはなりません。

[中性の原子同士の間には、電気的な力は発生しません]
学部にもよりますが、大学では電磁気学を勉強することと思います。
その中にガウスの法則が出てきます。原子に含まれる電子のように、球形に分布した電荷は外部から見ると球の中心に全ての電荷が集まったのに等しい電場が発生します。
中性の原子では、電子と同じ数の陽子が原子核に含まれていますから電子の発生する電場と原子核の発生する電場は完全に打ち消しあいます。
その結果、中性原子の外側では電場は消えてしまいます。
したがって、中性の原子同士の間には力はほとんど発生しません(量子力学的な揺らぎによって非常に弱い引力は発生しますが)。
ですから、手と手の間には、接触するまで力は発生しません。
ただし、原子の内側では、原子核からの電場が強く働いていますので、原子の内側にいる電子は原子核に強く引きつけられています。

イオンではどうでしょうか。たとえば、ナトリウムの陽イオンでは、電子の数が陽子の数よりひとつ少なくなっています。
その結果、イオンの外から見るとプラス1価の電荷が原子核の位置にあるような電場が発生します。
陰イオンでは、逆にマイナスの電荷が原子核の位置あるような電場が発生します。
ですから、NaCl結晶では隣接するナトリウムのプラスイオンと塩素のマイナスイオンの間に比較的強い引力が発生します。
しかしブラスとマイナスの電荷は同数ありますので、もっと遠くからみるとそれらの電場は互いに打ち消しあいます。
ですからNaCl結晶では表面の近くだけで電場が発生し、遠くでは電場はほとんど発生しません。
実際、食卓塩の粉末は互いにくっつくことはありません。ただし、湿気があると水分が仲立ちになってくっつける作用がありますので、湿気るとベトベトしてきます。手の皮膚を構成する原子も中性のものだけではなく、プラスやマイナスのものもありますがNaClと同様に全体としては中性ですので、遠くでは打ち消しあって力は発生しません。

これでご質問の答えになっていると思いますが、実は以下に示すように握手できることにはもっと深い意味があります。

[粒子には同じ場所・状態にいられるボーズ粒子といられないフェルミ粒子があります]
基本的な粒子(素粒子)には大きく分けて二種類あります。
ひとつはボーズ粒子と呼ばれるもので、同じ場所に同じ状態でいることができます。例えば光子です。
もうひとつはフェルミ粒子です。この粒子は同じ場所に同じ状態でいることはできません。例えば電子や陽子などです。
この性質によって、非常に大きな違いが発生します。

真空中で二つのレーザー光線をぶつけたら何が起こるでしょうか?何も起こらないで、通り抜けてしまいます。
これは、光子はボーズ粒子だからです。したがって、光で光を曲げたりすることはできません。
スターウォーズのライトセーバーは、実はこの原理に反します(だから面白い)。
ところが、フェルミ粒子である電子は同じ場所に同じ状態でいることはできませんから、もし無理矢理に二つの原子を押しつけあうと非常に大きな斥力が発生します。
それは、片方の原子に含まれる電子は、もう片方の原子の電子のいるところに進入できないからです。
たとえば二つのヘリウム原子を互いに近づけると、それぞれのヘリウム原子に含まれる2個の電子同士は互いに退けあいます。
無理に近づけると原子は壊れてしまいます。
手の皮膚の表面を構成している原子も同様に、互いに接すると退けあいますから握手できることになります。
もし、電子や陽子や中性子がボーズ粒子でできていたら握手できずにすり抜けてしまうかもしれません。
同様に我々は地上に立っていられないことになり、地球の中心まで落ち込んでしまいます。

さらに、これらのことは電子が結晶中を自由に動けるのかどうかに深く関係してきます。
たとえば、銅もNaClも共にたくさんの電子を含んでいます。
しかし、銅では電子が自由に運動して金属になり、NaClでは動けずに絶縁体になります。
これらはフェルミ粒子である電子のなせる性質です。

[電子を共有すると強い結合が生まれます]
今度は、二つの水素原子を近づけてみます。水素原子は原子核(陽子1個)と電子1個でできています。
実は電子にはスピンというものがあります。これは電子の自転と考えることができます。
そのとき、右回りの自転と左回りの自転という二つの選択肢があります。そのために水素原子において陽子の周りを回る電子の状態には、右回りと左回りの自転をした二つの電子が入ることができます。三つ目はだめです。
そのために二つの水素原子を近づけると、互いの電子は一緒の状態をとり水素分子として安定な結合状態ができあがります。
同様に、酸素や窒素原子同士も結合してそれぞれ酸素分子や窒素分子が安定になります。
これらの結合では、互いに電子を共有しますから共有結合と呼ばれます。
これは非常に強い結合で、我々が手にする堅い物体の多くは共有結合でできあがっています。
それ以外にも金属結合や水素結合などいくつかの結合が知られています。
我々の手の皮膚を構成する原子は、このような結合によって結ばれ形が保たれています。

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金メッキだけを剥がす方法

アクセサリーの24金メッキを綺麗に剥がしたいのですが、サイズが大きく、複雑な形状なので研磨で剥がすのは大変です。
●24金メッキしてあるものを王水(硝酸1:塩酸3)につけたとして金が溶けるという他に何か危険な反応が起こりますか?(熱とか気体が発生するとか)
●メッキの中身は亜鉛なのですが、中身に王水がつくとどういった反応が起こりますか?金だけうまく剥がす方法はありますか?
●王水を作るため濃硝酸と濃塩酸を混ぜるときに、何か危険な反応が起こりますか?
●これらの作業を自宅でするときの注意点は何かありますか?

王水は非常に酸化力の強い溶液であり、金を溶かすことができることで有名です。
しかし、ご質問のような亜鉛の表面の金メッキ膜だけを溶かすという作業には残念ながら使えません。
その一番の理由は、亜鉛のほうが金より王水に溶けやすいということです。
つまり金膜だけを溶かそうとしても、金めっきが溶けた部分あるいは金膜に開いた細かい穴からも下地の亜鉛が王水によって溶け出してしまうからです。

イオン化傾向という言葉をご存知だと思いますが、亜鉛のほうが金に比べてイオンになりやすい性質をもっています。
つまり亜鉛のほうがイオンになって溶液に溶け出しやすいため、王水とも激しく反応します。
この反応は金と王水との反応より速く起こるため、金を溶かそうとして王水にアクセサリーを入れると亜鉛の本体が部分的に激しく反応して溶け出し、本体が侵されて形が崩れてしまうと予想されます。金膜も一 部は溶け出すかもしれませんが、金膜だけを溶かし出すことはできません。

王水は非常に酸化力が強いため、取り扱いが非常に危険な薬品です。とくに御質問のアクセサリーでは、亜鉛が王水と激しく反応することが予想されます。反応が起こると溶液の温度が上がり、これによりさらに反応が速くなるため有害な二酸化窒素などの気体の発生も激しくなり非常に危険です。
また、王水を作るために用いる硝酸、塩酸も劇物に指定されている試薬です。したがって、王水の調製や取り扱い、廃液の処理などは自宅でできる作業ではありません。
また、高校の理科室でも十分 な設備があるとは思えませんので、王水の取り扱いは困難です。
作業には、相当の化学の知識と経験のある人が付き添う必要があります。絶対に一人では行なわないでください。

化学は大変面白い学問で、いろいろな物質について実験してみたいという興味は大変素晴らしいと思います。
しかしながら化学薬品の中には大変危険なものもあり、そのような薬品については将来十分な知識と経験を積んでから取り扱ってください。

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生物科学?化学?

大学で食品の栄養素など天然高分子の研究をしたいと考えています。大阪大学の理学部では生物科学専攻と化学専攻のどちらの学科がいいのでしょうか。
もし化学科だとしたら、化学科では物理が重要と聞きますが、受験で生物を選択した私でもついていけるのでしょうか。

現在、化学と生物学の境界はかなりぼやけてきており化学者と生物学者の両方が同じ分野を研究することも多くなってきています。
研究したいと考えている食品の栄養素や天然高分子は、まさにそのような境界領域の分野だと思います。
あえて違いを挙げるならば、栄養素や天然高分子そのものの性質や化学変化について調べるのが化学、 栄養素や天然高分子によって人体がどのように応答するかを調べるのが生物だと言え るかも知れません。
ただし栄養素や天然高分子が人体に与える影響を追求していくと、それらの化学的性質をよく理解しておくことが必要でそれには化学の知識が不可欠になります。

化学を習得するには、物理の素養も必要ですが現在化学科に入学してくる学生さん の約1/3は、高校のときに物理を選択していません。
入学後は物理の講義もとる必要がありますが、高校で物理を選択していない学生さん向けの物理の授業を開講していますのでそこで高校で習っていなかった分を補うことができるようなカリキュラムになっています。

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就職が厳しい?

理学部は工学部などに比べて就職が厳しいと聞きましたが、学院まで進んだ場合はどうなのでしょうか?

理学部や理学研究科を卒業・修了した方の就職が難しいということはありません。
大阪大学では、理学部の卒業生の約1割程度が企業や高等学校教諭などに就職し、残りの9割程度が大学院の修士課程に進学しています。
大学院の修士課程の修了者の3分2程度が企業や高等学校教諭や国家公務員などに就職し、3分1程度が大学院の博士課程に進学しています。
博士課程で理学博士の学位を取得した方は、大学教官や研究所の研究員や企業の研究開発スタッフとして活躍しています。

大阪大学理学部および理学研究科では、数学・物理学・化学・生物学について基本をしっかりと学び、そして世界の最先端の基礎研究を行っています。 それを生かした応用研究を進めている研究室もあります。
それぞれの道に進んだ学生は、 基本に裏打ちされた幅広い知識と豊かな経験を生かして様々な分野で活躍しています。
企業では新しい技術や製品の開発や製造、大学・研究所では新しい原理の探求と 高等教育、高等学校では理科教育や数学教育にたずさわっており、毎年たくさんの求人が全国の企業や国の機関や高等学校などから届きます。
企業への就職先については特定の業種に限定することはありませんが、幅広い素養をもつ人材として多方面で期待され活躍しています。

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化学科で製薬・創薬の勉強

理学部化学科の先生から、化学科でも製薬、または創薬の勉強ができるという話を聞きました。
大阪大学理学部でも、そういった勉強ができますか?
また理学部のある大学なら、どの大学でもできますか?やはり薬学部のほうがいいのでしょうか?

製薬や創薬には化学の基礎知識が不可欠です。
その意味では、大阪大学理学部化学科では、製薬に関係する化学を学ぶことができます。
化学の中でも、特に有機化学や 分析化学は有機化合物である薬を合成したり、分析したりするときには必ず必要になります。
また、四年生や大学院生になると研究室に入って化学の実験を行うことになります。
薬そのものを合成する機会は少ないと思いますが、有機化合物の合成に必 要な実験を行う機会も多いので製薬研究に必要な知識や技術を習得することができます。(他大学の理学部化学科でも、同様な科目は学べるはずです。)

理学部と薬学部のどちらが良いかは、中々難しい問題です。現在使われている薬のことならば薬学部の方が詳しく学べるでしょうが、新しい薬を開発するときなどには理学部で学べる化学の基礎が重要になるのではないかと思います。
実際に、大阪大学理学部化学科の卒業生で製薬会社に就職した人も多くいます。

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炎とは?

<物質は何と何でできている>など、この世に存在しているものは<どういう原子でできている>まで分かっているのに、炎はなんだろう?と思いました。
しかしどの資料をみても、炎については温度によって色がちがうということなどしか書かれていません。よろしくお願いします。

炎は、マイケル・ファラデーという19世紀の大科学者が毎年クリスマスに子供たちに向けて行われた科学講演会でも取り上げたテーマなのです。
講演の様子は、翻訳されて本になっているので是非読んでみてください。「ロウソクの科学※」という本です。
タイムマシンがあったらあなたを講演の行われた1860年に連れて行ってあげたいくらいです(本当はファラデーが行った講演会のようなことを僕ら科学者・教師が日本でもするべきなんですが)。
ファラデーは、その講演の中で日本のろうそくを紹介しているんですよ。当時の日本のろうそくは芯に工夫がしてあって、すすが出にくかったのだそうです。
19世紀にも高性能なMade in Japanがあったとはおもしろいですね!

またファラデーは、ベンゼンという石油工業にはなくてはならない物質を初めて発見したほか、電気や磁石についての大発見をしています。
この発見は、現在でも、理という理科の一分野の大変重要な基礎になっていて、テレビ、ケータイ、電子レンジその他あらゆる電化製品はその発見がなければ存在しなかったといってもよいほど大切なものです。
おそらく高校の物理で習うと思います。当時ノーベル賞があったら、3、4回受賞していてもおかしくないほどの偉い科学者ですね。

でもファラデーは14才で製本屋に奉公に出されたために、独学で科学を学んだという人なのです。すごいと思いませんか。
たとえ学校に行かなくても、どんな状況でも勉強はできるし、研究はできるんですよね。
それはあなたが炎が不思議だと思ったのと同じように、何かが不思議だなぁ、そのからくりがわかったらおもしろいなぁ、という気持ちを持ち続けることができさえすればできることなんだということを教えてくれます。
※この本(原題 Chemical History of A Candle)は,三石巌さんの訳が,角川文庫(ISBN: 4043127014)から出ています。
また絶版になっているようですが、矢島祐利さんの訳が岩波文庫(青909-1)から、吉田光邦さんの訳が講談社文庫(ふ 23-1)からも出ています。
図書館か書店で探してみるとよいでしょう。なお,山形浩生さんの訳を以下のURLで読む事ができます(ただし,実験装置の挿絵は載っていません)。「あとがき」が出色です。

http://www.genpaku.org/candle01/candlej0.html

上記サイト「プロジェクト杉田玄白」は、著作権の切れた洋書などの翻訳を無料で公開しています。「ロウソクの科学」以外にも、優れた古典的作品が多数収録されています。

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体積弾性率と化学結合

化学結合が強ければ体積弾性率は小さくなるのでしょうか(つまり固体AよりBの体積弾性率が小さいのでAの構成原子間の結合がBより弱いと言えるか)?
また結合の強さは明白に共有結合>イオン結合>金属結合>ファンデアワールス結合となるのでしょうか?
それともあるイオン結合はある共有結合より強いということが起こりえますか?

固体の力学的性質をミクロな視点から解明して行くことは基礎物性だけでなく応用上も非常に重要な研究分野のひとつです。
しかし、そのような性質をミクロな視点から一概に議論することはそれほど簡単ではありません。

さて、等方的な物体を液体中に置いて静水圧をかけると物体は外形を保ったまま小さくなります。
その際の圧力に対する体積変化率として圧縮率、またその逆数である体積弾性率を測定することができます。
もし、原子間の結合角が全く変化しない物質 を想定して圧縮を議論する場合は、体積弾性率に効いてくるのは距離の変化に対するエネルギーの変化率です。
つまり原子間の平衡距離からの微小変化ΔRに対するポテンシャルエネルギーの変化を [k(ΔR)^2]/2 と近似すると、原子の熱運動を無視すればkの大きさで体積弾性率は決まります。
kは平衡位置でのバネ定数と考えることができます。しかし、原子間の平衡距離は斥力と引力がバランスを取った状態で決まりますので、バネ定数は結合の強さそのものではありません。

たとえばファンデァワールス力で凝集したものとして、アルゴンの固体を例に取ると原子間の結合は非常に弱いにもかかわらず、圧縮率は氷と同程度でそれほど小さくありません。
これは閉殻状態の電子はパウリの原理により他の電子の進入を排除 しますので、力を加えて閉殻電子配置を変形させるにかなり大きなエネルギーを必要とします。
そのため、原子同士が近づくとある距離から急激に斥力が増大します。
これらの様子を再現する関数形としてレナード-ジョーンズポテンシャルが良く用いられます。またイオン結合でできているNaCl 結晶を考えてみると、Na原子は電子 をひとつ失ってNeと同様の閉殻電子配置になります。

一方、Clは電子をひとつ得てAr と同様の閉殻電子配置になります。電荷をもつイオン間の相互作用は長距離力ですので、正負のイオン間の引力だけでなく、正イオン同士、負イオン同士の斥力も考えますが、それだけでは平衡距離は説明できません。
アルゴンと同様に、ある距離より近 づくと閉殻の電子配置のイオン間の斥力が急激に大きくなります。
正負のイオン間は 引力ですので互いに接近していますが、その状態で更に圧力を加えるわけですので、比較的大きな体積弾性率を示します。
このとき引力としてはファンデァワールス力も作用していますが、他の相互作用よりもかなり小さいのでほぼ無視していても良いわけです。
同じイオン結晶でもイオンサイズの小さいLiFではイオン間の距離も小さく、NaClの倍以上の体積弾性率を示します。
一方、代表的な共有結合性の結晶である SiではNaClの数倍の体積弾性率、ダイヤモンドでは数十倍の体積弾性率を示します。

これはシリコンや炭素原子間の共有結合においては、結合距離を変化させるのに非常 に大きな力が必要であることを示しています。
しかし共有結合では結合角も決まっていて、SiやCでは正四面体構造をとります。したがって、これらの物質ではより密 に原子を配置する最密充填構造(例えば六方最密構造や面心立法構造)ではなく、比較的すき間の多いダイヤモンド構造をとるのはそのせいです。

一方、金属結合の代表 的な物質であるアルカリ金属は電子の海の中にアルカリイオンが浮いているというイメージが近いのですが、電子の海を外から圧縮するためその体積弾性率は小さく なり、固体アルゴンと同程度の値になります。
なお、ここでは圧力を加えたときにその構造が変化しない範囲で考えているわけですが、更に高い圧力を加えると一般に 結晶構造も変化します。

これらの典型的な結合様式をもつ物質では、ある程度類型的に比較することができますが、多くの物質はそれほど簡単ではありません。
その理由は色々あります。ひとつ は、例えば半導体結晶として良く用いられる GaAs(閃亜鉛鉱構造 zincblende structure)などの化合物半導体では、共有結合とイオン結合が混在しています。より イオン結合性が強くなると、CdS のようにウルツ鉱構造 wurtzite structure に変化 します。
つまり、単純に何々結合と分類することはできません。遷移金属も同様で、 金属結合と共有結合が混ざっています。
もうひとつの例として、分子性結晶のように分子内は共有結合性が強くても、分子間の結合は非常に小さくて圧力を加えた際の構造的な変形が均一ではありません。
種類の異なる結合が固体中に存在している わけです。さらに、加圧によって結合距離ではなく結合角が変化する場合です。たとえば、C60が並んだ固体を想像してみると良いでしょう。

この他に、力学的性質としては体積弾性率だけでなく変形などの性質も重要で、固体では応力とそれによる変形との関係はテンソルで与えられます。
また金属のように展性や延性をもつのは、原子面の滑りが起こっても同じ結合を再現できるため構造的に壊れにくくなります。
逆に共有結合性が強い半導体やセラミックは原子面の滑りは起こりにくく、限度を超えると壊れてしまいもろくなります。
一般に引っ張り強度も低くなります。また、高分子材料や性質の異なるものを複合したハイブリッド材料もあり、それぞれ特徴があります。

結合の強さについてですが、ファンデァワールス力に相当する成分は常に存在しますが、一般に他の相互作用よりも弱くなっています。
イオン結合は原子サイズが小さくなると顕著になりますが、一般には典型的な共有結合物質よりは弱いと考えられます。
純粋な金属結合はあまり強い結合ではありませんが、多くの金属は金属結合以外 の結合が混成しています。
あまり用語に縛られないで、多様な構造をもつ固体において電子の示す多彩な性質のひとつとして広く考えられると良いでしょう。

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Is glass, in liquid form, a conductor of electricity? (Middle School Teachter)

Is glass, in liquid form, a conductor of electricity? (Middle School Teachter)

"Glass" is a term used to specify, in the widest sense, a thermodynamically non-equilibrium state where any disorder is frozen in. The most familiar example of glass is amorphous (or vitreous) solid as often seen as window-glass. The term "glass" is used for this type of glass in the narrowest sense. This type of glass is usually prepared by quenching liquid (resulting in "glassy liquid"), and consequently, has essentially the same structural features. This is why the window glass is often said to be a kind of liquid. Other types of glass also exist. Glassy liquid-crystal is formed by quenching liquid crystals, where orientational order of molecular arrangement exist while translational one does not. Some glassy crystals are formed by quenching orientationally disordered (but positionally ordered) crystals. Spin glass is also glass where disordered spin arrangement is frozen-in, in contrast to previous examples having frozen-in structural disorder.

According to the above interpretation, the term "glass" is not directly correlated with conducting property of matter: Some glasses are conducting whereas others are not. Amorphous metal is electronic conductor. Most amorphous (inorganic) salt will be insulating because ions are effectively immobile in this frozen-in state, though molten salt is surely conducting (electrolyte or ionic conductor). There are however some examples of amorphous salts showing ion conduction. In such cases, small ion(s) run(s) through free volume formed upon glassification (most glass has larger volume than crystalline states). For non-electrolyte and nonmetallic melt, there is no reason to suspect that their quenched glasses are conducting. If your question intended to ask whether is the "melted" glass (in the narrowest sense) conducting, the answer is "no". The glass is mixture of oxides (main component is SiO2), which are insulating.

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化学学科に物理の知識は必要ですか?

私は化学学科で、環境問題(特に地球温暖化)について学びたいと思っています。
私の学校では、2年進級時に物理・生物の選択を行うのですが、私は生物を選択しました。
けれど大学の授業では物理もカリキュラムに入っているようで、中学までの物理の知識しかない私にはついていくのが難しいでしょうか?(高校2年生)

大学で化学を学ぶには物理の基礎的な知識は必ず必要になります。
それゆえ、高校で物理を履修しておく方が望ましいのは言うまでもありません。
しかし現状では、化学科入学者の1/3程度の学生は生物を選択してきています。
そのため大学の物理の授業について行けず、落ちこぼれる学生がかなり出る問題が生じました。
その対策として、物理未履修者を対象とした授業を最近開講しました。
最終的なゴ ールは同じですので、学習する意欲さえあればきっと大丈夫です。
環境問題に化学からアプローチしたいというあなたの考えは非常に結構だと思います。頑張って下さい。

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A cement compound CaO.Al2O3.10H2O gives certain peaks when using the powder diffraction method. The compound now increases its water of cystallization to become CaO.Al2O3.11H2O. Will the diffraction pattern obtained be basically the same as the former, with only a slight difference which corresponds to a slight increase in the d-spacing? Or will the diffraction pattern be an entirely different pattern?

A cement compound CaO.Al2O3.10H2O gives certain peaks when using the powder diffraction method. The compound now increases its water of cystallization to become CaO.Al2O3.11H2O. Will the diffraction pattern obtained be basically the same as the former, with only a slight difference which corresponds to a slight increase in the d-spacing? Or will the diffraction pattern be an entirely different pattern?

Generally, a chemical formula is insufficient to identify the chemical. For example, C is used for diamond and graphite, and even for buckminsterfullerene (C60), all of which are allotropes of carbon. Their diffraction patterns are, needless to say, entirely different. We must identify the crystal form or phase to discuss the structure and physical properties. There are however some crystalline compounds of which the composition continuously changes. They are called non stoichiometric compounds or berthollides after a French chemist C.L. Berthollet. Many proteins require some water molecules to be involved in crystal, and the content of water can vary depending on the external condition. For non-stoichiometric compounds, the diffraction pattern remains essentially the same in some composition range. As for materials you consider, we find the information only for CaO.Al2O3.10H2O, which was reported by Carlson in J. Res. Natl. Bur. Stand. (U.S.), 59, 107, 1957. You should consult some database by yourself at libraries of your convenience for further search as our search may be incomplete. If you made the experiments on CaO.Al2O3.11H2O, the following should be remembered: The similar powder diffraction pattern to CaO.Al2O3.10H2O is definitely insufficient to claim that CaO.Al2O3.11H2O is non-stoichiometric. The sample showing the composition CaO.Al2O3.11H2O may be mixture.

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化学を学んで、研究者になるにはどのようなことが必要でしょうか。

化学を学んで、研究者になるにはどのようなことが必要でしょうか。

化学に限りませんが、まず大事なのは、「 好奇心」と「 探求心」です。好奇心を持ち理由を明らかにしようとする探求心は研究の大きな原動力です。また、勉強と研究に対する継続的な努力、新しいことに挑戦する勇気、そして、研究は常にうまく行くとは限りませんから、問題解決のためには柔軟性と忍耐力も必要となります。化学の研究では実験が大きなウェイトを占めますので、実験好きの学生さんを歓迎しますが、実験が苦手でも化学をやりたい人は、理論や計算機化学を専門とする研究室に入るといいでしょう。小さなことでも目的を達成するとうれしいもので、それによって自信と新たな興味が生まれ、新しい研究の原動力になります。

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“化学”という名の付いた学科は、大阪大学には理学部以外に工学部、基礎工学部や薬学部にもありますが、いったいどこが違うのでしょうか。

“化学”という名の付いた学科は、大阪大学には理学部以外に工学部、基礎工学部や薬学部にもありますが、いったいどこが違うのでしょうか。

当然疑問に思われる点だと思います。それぞれ特徴を持っていますが、お互いの研究領域が一部重なり合っている部分もあり、はっきりとした境界線を引けない面もあります。しかし、一般的には、理学部では化学の広い分野にわたって主として基礎的・学術的研究を行っているのに対し、他の学部ではそれぞれの目的に添った化学の限られた分野での応用的研究に重点があります。ご存じのように、日本の科学技術はたいへん進んできましたが、基礎科学の分野でももっと世界に貢献することが求められており、理学部の役割もますます大きくなっています。“理学”の基本は“なぜ?”という好奇心です。これに答えるにはしっかりとした基礎学力と柔軟な思考が必要です。実力を充分養った理学部の卒業生は応用力にも優れているので、社会的にたいへん高い評価を受けています。

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環境問題に関心があるのですが化学科で勉強できますか。

環境問題に関心があるのですが化学科で勉強できますか。

環境問題のほとんどが化学に関わっていますし、実際に各分野で環境問題に取り組んでいる卒業生も多くいます。将来その分野で貢献するためには、なるべく広い視野で基礎をしっかり勉強することが必要になります。当化学科には、「 環境」を冠した講義や研究室こそありませんが、カリキュラムの内容は充分それに対応しており、広い意味で環境に関わる研究も多く行われています。

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化学科卒業生の進路、就職状況はどうなんでしょうか。

化学科卒業生の進路、就職状況はどうなんでしょうか。

学部卒業生の約90%の人は大学院に進学し、約10%の人が就職しています。大学院では、多くの人が修士課程修了後に企業に就職していますが、さらにその約4分の1の人が博士課程に進んでいます。博士課程を修了して学位を取ると、主に大学や国立の研究機関に就職し、第一線の化学者として活躍しています。最近では企業の研究所に就職する人も増えています。最近5年間の進路、就職状況を次ページにまとめてありますが、化学科には、毎年平均して400件に及ぶ求人があります。やはり化学系企業への就職が最も多いですが、最近は電気・情報など他の分野への進出も増えており、卒業生は各分野で活躍しています。

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入学前に大学を見学できる機会はありますか。

入学前に大学を見学できる機会はありますか。

もちろん何回かのチャンスがあります。基本的には、春の「いちょう祭」(5月初め)と秋の「まちかね祭」( 11月初め)の時に大学内公開になりますし、8月には大学説明会があります。大学祭中は多くの研究施設などの公開がされており、化学科でもいくつかの研究・教育施設や研究室の紹介や公開をしています。今年の「 いちょう祭」では研究室の紹介ツアーを企画しましたが、高校生も多く参加し好評だったようです。また、「夢化学」というイベントを毎年開催しており、そこで「1日体験入学」が行われています。これにも多くの高校生が参加し、最先端の研究施設の見学や実際にいろいろな実験をすることで大学生活の一端を経験しています。

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生物学について

花の色

お花にはなぜ色がついているのですか ? (小学2年生)

あなたの質問の「なぜ」というのが、「どういうしくみ」でという意味なら、こたえはよく分かっています。
花には、青なら青、赤なら赤、それぞれの色をつくりだす「しきそ」というものがふくまれているからです。
たとえばむらさき色のアサガオの花を水につけて、よくもんでしぼると、その「しきそ」が水に出てきて、水がむらさき色になります。
水にはとけず、あぶらにとける「しきそ」もあって、たとえばヒマワリの黄色は、そういう「しきそ」です。

でも、「なぜ」というのが、「なんのために」という意味だとする と、こたえはむずかしくなります。
人間は花になったことがないので、花がどんなつもりでいるのかは、だれにもわからないからです。

ちょっとヒントはあります。
それは、たとえば人間の目には白一色に見える花も、虫の目と同じように見えるきかいを通して見てみると、もっといろいろなもようをもっていることがわかるのです。 つまり、虫は人間が見るよりもっとずっといろいろな花の色やもようを見ているらしいのです。

さて、虫は花のおくにあるみつを吸いに飛んでくるのですが、そのときおしべの「かふん」を体にたくさんつけます。
その虫が次の花に飛んで行くと、その「かふん」が次の花のめしべにつきます。
こうして花は実をつけることができます。 だから、花は自分の「かふん」を自分と同じしゅるいの別の花に運んでもらうために、 「ほらぼくはスミレだよ、みつをあげるから、代わりにぼくのかふんを別のスミレにはこんでいってね」とか「私はナノハナ、次もナノハナに行ってね」と虫にたのむのです。

たぶん、花の色やもようは、虫に自分はなんの花かをおしえる目じるしになっているのではないか、とおもわれます。
でも、かふんはこびを虫にたのまないで風にたのむ花もあって、 そういう花にもやっぱり色やもようはあるので、もしかしたら、ぜんぜんちがうかもしれません。
あなたが考えて「きっとこうじゃないかな」といういい考えを思いついたら教えてください。

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単細胞生物は死なない?

単細胞生物は一般に無限増殖を繰り返すので、事故がなければいつまでも死なないが、我々ヒトはいつか死にます。
単細胞生物が不死で、ヒトがなぜ不死ではないのかを、アポトーシスの観点から教えてください

難しい質問ですね。実験して答えを出すことができないことなので、「一つの考え方にすぎないが・・・」とお断りしておきます。

「単細胞生物は一般に無限増殖を繰り返す」わけではありません。
池の水の中などに住んでいる単細胞生物、原生動物は、 遺伝子交換=有性生殖(接合)をしないかぎり、有限回で増殖がとまります。
今からちょうど50年前の1954年、米国のソネボーンという研究者がゾウリムシの1匹が分裂して2匹になったら、それぞれ分けて1匹ずつ別の容器に入れ、 その次分裂したらまた分けて、と繰り返して絶対に接合しないようにしてやったところ、 約350回分裂したところでそれ以上分裂しなくなり、 やがて死にました (当時、アポトーシスかネクローシスか、という考え方はありませんでしたが、 今見直すとアポトーシス的です)。

つまり単細胞生物にも寿命はあるのです。
いいかたを変えると1匹のゾウリムシから出発した「姉妹細胞の集団」を一まとまりに考えると、有性生殖をしないかぎり寿命が来て死にます。

さて、次に「多細胞生物である我々ヒトはいつか死ぬ」かどうかを考えてみましょう。
個体としては確かにそうですが、遺伝子からみたらどうでしょう。
ヒトは、生殖細胞(卵か精子)に遺伝子を伝え、 生殖細胞は別の個体由来の生殖細胞と接合できれば受精卵となり、分裂して新しい個体を作ります。
その個体は、その中でまた生殖細胞を作って次代に遺伝子を伝えます。 つまり遺伝子は無限に受け継がれます。遺伝子としては「死んでいない」のです。

この二つの話を並べてみてどう思いますか。 もし「1匹のゾウリムシから増えた姉妹細胞集団」と「多細胞生物であるヒト1個体」とを同じ位置に置くと、 そっくりでしょう。有性生殖をしないかぎり、遺伝子の等質な細胞集団には寿命が来るのです。
しかし、有性生殖がなされれば分裂回数カウンターがリセットされ遺伝子としては寿命はありません。
ただ違うのは、ゾウリムシは姉妹細胞が分かれてそれぞれ勝手に泳いでいるけれど、 ヒトは1個の細胞(受精卵)から増えた姉妹細胞が分かれないで団体行動をしている、というだけの違いです。

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体細胞クローン

1997年に6才の羊から体細胞クローンを作ったWilmutらの成功の秘訣は何ですか?

また、ミトコンドリアDNAと体細胞クローンの関わりとはどんなことですか?

ご質問は、Wilmutらにより書かれたNature, 1997 Feb 27, vol. 385, pp. 810-3の "Viable offspring derived from fetal and adult mammalian cells" という論文に関するものと思います。

この論文は、哺乳類成体の体細胞核移植クローン動物をはじめて作ったことを報告しています。
それまで不可能であった哺乳類の体細胞核移植クローン作成が可能にな った秘訣は実験条件の改良等いろいろあると思いますが、一番の要となる点はまず乳腺の細胞をとりだして培養を行うとき、普通培養に使う栄養を豊富に含んだ培地ではなく、栄養欠如の状態の培地で培養したことで細胞分裂をしばらく停止させ、その細胞の核を移植に用いました。
なぜ細胞分裂を抑えた細胞の核を用いるとうまくいくのか、その理由は未だにはっきりしていないと思いますが確かにこのようにすると成功の確率が上昇することが様々なほ乳類を用いて確認されています。

ミトコンドリアDNAと体細胞クローンの関わりに関しては、核移植によって持ち 込まれるのは核ゲノムのみなので、ミトコンドリアDNAが置き換わることはない、 ということが挙げられます。もともと卵細胞質中にあったミトコンドリアがそのま まクローン動物に受け継がれることになります。

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生物の行動と感情

生物の行動と感情を脳神経の分子のレベルから探ることで解明したい

生物がいかに外界を認識し、判断し行動するか、嬉しい嫌いなどの感情はどのように生まれるのか、について脳神経を分子のレベルから探ることによって解明したいというのが私の夢です。
他大学で在学の場合、大学院で理学研究科に行くことはできますか?それは無理だから理学部の学士入試を受験すべきですか?教えてください。お願いします。

貴兄と同じ夢をみてその実現を目指している研究者を、分子神経生物学者といいます。
分子神経生物学(ないし分子神経科学)は、現代の神経科学で今大きく発展しつつある分野です。

貴兄の挙げた課題は、いずれも神経科学の大課題です。
「生物がいかに外界を認識し」は、入り口の感覚器(光感覚の網膜光受容細胞内の分子過程解明がもっとも進んでおり、 ついで化学感覚、振動感覚、温度感覚に順に解明が進みつつあります)については感覚生理学、脳内処理の過程については認知生理学(現在は視覚についての解析が主で、ついで振動感覚)の課題です。

「判断し行動するか」は、高次機能に属する問題で、これは大脳皮質の神経回路が生み出す機能であり特定の分子が直接行動を生み出しているわけではありません。
したがって、その分子的解明といういい方は少しニュアンスに違和感があるのですが、しかしその回路が作り出されるには、やはり分子的背景があるはずでこれについては神経発生学がその解明に取り組んでいます。
また、回路の中で神経間の情報伝達やその調節の機構については、シナプス生理学がその解明に取り組んでおりすでにかなりのことがわかっています。
2000年度のノーベル医学賞は、そのシナプス調節機構(平たくいうと記憶の機構)の研究に対して授与されました。
記憶をよくすることも悪くすることも、動物実験ではできています。

「うれしい嫌いなどの感情はどのように生まれるのか」は、どちらかというと低次の機能で、上に述べた「判断」などの大脳新皮質による高次機能よりむしろ解明は進んでいます。
気分障害(いわゆる躁鬱病)や統合失調(いわゆる分裂病)、あるいは麻薬中毒、覚醒剤中毒などの臨床例が、豊富なデータを提供してくれるからで、貴兄の挙げた3課題のうちではもっとも分子的解明が進んでいるといえるかもしれません。 今や躁鬱病や分裂病は軽度なら薬で治せます。

上記の課題は、いずれも一人の研究者が一生を賭けるに足る大テーマですので、貴兄がそのうちどこにもっとも興味があるか特定していただければ、阪大内で(あるいは日本国内で)その分野の研究を行っている研究室を紹介することはできます。必ずしも理学研究科がベストな選択とは限りません。

理学研究科は文系出身の方でも受験できますし、実際に法学部出身で現在大腸菌の遺伝子組み替えをバリバリやってる学生さんもいます。
農学出身の方は珍しくありません。しかし、試験は試験ですから一定の物理学・化学・生物学の知識は要求されます。HPの過去問をご覧になればわかりましょう。
その法学部の方も、れなりに理学部や基礎工学部の講義を聴講したり、「細胞の分子生物学」などの教科書で自習もされていたと聞きます。

貴兄が神経科学を知識として勉強したいなら学士入学がいいでしょう。ですが神経科学を研究したいなら、大学院にチャレンジする方が早道だと思います。
しかし、その場合阪大で神経科学研究者がもっとも多く集まっている大学院は、理学研究科より医学研究科と生命機能研究科だと思います。
理学研究科へのご質問に理学研究科以外を宣伝するのは変ですが、それぞれのHPをご覧になることをお奨めします。

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大学の生物学科

高校で生物を選択せずに大学の生物学科に入りたいのですが、大学の勉強にはついていけますか?

阪大生物学科の新入生のうち、約半数は受験科目に生物を選択していません。
その中には、高校で一応習いはしたが受験に使わなかったという人が約半数いますが、 まったく習わなかったという人も約半数(結局全体の約四分の一)います。
そのため、高校で生物を履修しなかった学生向けの「補習」的な集中講義が 1年生の4・5月に用意されています(医・歯・薬学部学生と合同)。
これを受講することで、かなりの程度追いつくことができます。しかし、精力的な自習が不可欠なことも事実です。

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生物科学?化学?

大学で食品の栄養素など天然高分子の研究をしたいと考えています。大阪大学の理学部では生物科学専攻と化学専攻のどちらの学科がいいのでしょうか。
もし化学科だとしたら、化学科では物理が重要と聞きますが、受験で生物を選択した私でもついていけるのでしょうか。

現在、化学と生物学の境界はかなりぼやけてきており化学者と生物学者の両方が同じ分野を研究することも多くなってきています。
研究したいと考えている食品の栄養素や天然高分子は、まさにそのような境界領域の分野だと思います。
あえて違いを挙げるならば、栄養素や天然高分子そのものの性質や化学変化について調べるのが化学、 栄養素や天然高分子によって人体がどのように応答するかを調べるのが生物だと言え るかも知れません。
ただし栄養素や天然高分子が人体に与える影響を追求していくと、それらの化学的性質をよく理解しておくことが必要でそれには化学の知識が不可欠になります。

化学を習得するには、物理の素養も必要ですが現在化学科に入学してくる学生さん の約1/3は、高校のときに物理を選択していません。
入学後は物理の講義もとる必要がありますが、高校で物理を選択していない学生さん向けの物理の授業を開講していますのでそこで高校で習っていなかった分を補うことができるようなカリキュラムになっています。

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理学部と農学部のバイオ

理学部のバイオと農学部のバイオの違いを教えて下さい

研究者の日々の作業は同じです。医学部とも薬学部とも工学部とも同じです。違うのは何を目指してその作業をしているのか、という点です。
ミッションが違うという言い方をしてもいいでしょう。

たとえば、農学部でイネの遺伝子の研究をしている人がいます。
それは、お米の収穫 を上げるためとか、寒い地方で育つイネを作り出すためとか、乾燥に強い品種を作ろうとか、農業生産利用の目的があってやっている場合がほとんどです。
理学部生物にも、イネの遺伝子の研究をしている人がいます。しかし、たぶんその人は生産に役立てようと思っているわけではなく、植物の受精の仕組みを知るためだったり、植物と動物の遺伝子の制御様式の違いを知るためだったりします。
それらを調べるのには、 品種の系統がしっかり記載されているイネは野生のタンポポより好都合だから、イネを実験対象に選んでいるのでしょう。

このように、理学部の生物研究は産業に応用するために行っているのではなく、自然の仕組みを知るため、ちょっと大げさにい うと人類の叡智を増進するため、に行っているのです(結果的に産業に応用できることもありますから、そうなったら一層嬉しいでしょうけれどそれが第一目的ではありません)。

同じように、医学部でネズミの胃酸分泌の研究をしている人は、胃潰瘍の原因解明や治療に役立てようと思って行っているのでしょうが、理学部でネズミの胃酸分泌の研究をしている人は、細胞がH+イオンをどうやって輸送するのか、ひいては細胞はどうやって物質を出し入れするのか、その仕組みの根本を知りたいから行っているのです 。

したがって、研究の具体的内容はほとんど変わりません。
現実に、理学部出身者が医学部の基礎医学部門の先生になることは珍しくない(どころか、ごく普通のこと) ですし、食品会社や薬品会社に就職して農学部出身者や薬学部出身者と机を並べて仕事をしていることも、ごくごく普通のことです。研究成果を発表する学会も共通です。
ただ、上の目的の違いを反映して農学部だと研究材料が食用植物だったり、森林昆虫だったり、養殖魚だったり、家畜だったりすることが比較的多く、医学部だと哺乳動物や、病原微生物だったりすることが比較的多いのに対し、理学部だととくにそのようなことはなく、普段なじみのない生物を相手にしている人も少なくない、といった違いは出てきます。

一度、お近くの大学の学園祭やオープンキャンパスに出かけて、研究室を案内してもらったり、そこで研究している学生や大学院生と話をしてみることをお奨めします。
共通点と相違点を実感できると思います。そしてどちらが自分にフィットするか、感覚がつかめると思います。

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生態系破壊

生態系破壊の現状と対策を学び、職業に活かすには阪大生物学科がよいのでしょうか?

もし最初から、生態系破壊およびそれに対する対策を学ぶご希望でしたら、 工学部や農学部の環境系の学科で勉強なさることをおすすめします。
このような「環境科学」は、生物学、農学、都市工学、微気象学、 ひいては法学や経済学、社会学も含む複合科学です。
「環境科学」全般を大学で学んだあとは、 各分野の専門家のコーディネーターになったり、行政関係の公務員になったりする道が拓けるでしょう。
しかし将来、実際の問題を解決する専門家になりたいとお考えでしたら、 全般を広く学ぶのではなく関係する学問の一つを深く身に付けるというのもやり方だと思います。
そういう意味でなら、阪大の生物学科もよい選択だと思います。 ただ、たとえば京大、神戸大、大阪市立大、などの生物学科に較べると、 阪大は生態学関係の教官や講義が少ないのが現状です。 詳しくは学科のホームページをご覧下さい。

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将来、化粧品会社で研究・開発に携わるにはどのような学科を選べばよいですか?

将来、化粧品会社で研究・開発に携わるにはどのような学科を選べばよいですか?
また、そのような会社に就職している実績はありますか。

化粧品会社で研究・開発というと、かなり広い分野が当てはまります。
材料・分析関係は化学でしょうし、安全性関係は医学・薬学・生物学がメインとなります。
化粧品はイメージで売るところも大きいので色やデザインなどの美術的センスも必要ですし、理系のみで研究開発が行なわれるわけではありません。
とはいえ、人員は化学系の学科の卒業した人が最も多いでしょうから、まずはここかと思います。 当大学の理学部ですと化学科が相当します。

阪大の化学科卒業生が就職している会社はすぐ浮かぶような有名なところでも資生堂、カネボウ、メナード、ノエビア、花王などがあります。
また、生物科学専攻でも、毎年数名が修士修了後に化粧品会社の研究・開発職に就職しています。

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人間は、皮膚呼吸(皮膚による外呼吸)を行っているのでしょうか。

人間は、皮膚呼吸(皮膚による外呼吸)を行っているのでしょうか。

行っているとしたら、どういう方法でガス交換を行い、人間が行う外呼吸全体の何%程度を受け持っているのでしょうか(安静時で・・)。
朝日新聞の数年前の記事で、人は皮膚呼吸はしていないと読んだ記憶がありまして以後そのように思っていたのですが、岩波生物学辞典第4版では人は1%以下行っているとされている様でして、なんかどちらが正しいのかわからなくなってしまいました。
現時点では、どういう扱いになっているのでしょうか。よろしくお願いします。

ヒトでもわずかには皮膚呼吸を行っている(1%程度以下)という理解で よいと思います。表皮の薄いところでは、酸素や二酸化炭素がごくわずか、 体表と表皮下の毛細血管の間で交換されているということでしょう。

ただし、この程度の%ですので実際上は皮膚呼吸はしていないと言っても 差し支えないとは思います。
体中にペンキを塗ると死んでしまうという話がありますが、 皮膚呼吸ができなくなったというよりペンキの毒作用のためやあるいは発汗作用が出来なくなったなどの理由が考えられます。

同じ哺乳類でもコウモリなどは、前肢の薄い皮膜に多くの毛細血管が分布しており、かなりの程度皮膚呼吸を行っているようです。

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環境問題を阪大の理学部生物科で研究できますか?

私は環境問題に興味がありますが(特に地球温暖化や環境ホルモンなど)、阪大の理学部生物科ではそのようなことは学べたり研究できたりするのですか?

環境問題に興味をお持ちの先生は何人かおられますが、 生態学的なことも専門とされる先生はお二人いらっしゃいます。
一人は植物関係、もう一人は動物関係の方です。
お二人ともに純粋に生物学としての生態学を論じられる方で、 特に地球温暖化や環境ホルモンに焦点を当てた研究をされている方々ではないと思います。
しかし学問として、動物・植物に関する生態学的見地の確立あるいは生態学的現状の把握は、 そのような現在逼迫しつつある問題の解決にも必須なことのように思います。

本理学部の生物学科としてはそのようなことの重要性を考え、 その分野の教育・研究を担当できる2人のトップクラスの教授をそろえております。

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微生物について学びたい

微生物について学びたいと思っているのですが、微生物と一口に言っても学部によって内容が異なっているようで、その違いがよくわかりません。
例えば、薬学部について教えてください。
また分子生物学、応用生物学にも興味を持っているのですが、これも学部によって相当開きがあるようでよく分かりません。

もちろんどの理系学部にも、微生物を使って生き物としての全てを純粋の知識欲から知ろうとする研究があると思います。
もし薬学部という特殊性を特に活かした研究があるとすれば、それは対微生物病対策を構築すること、たとえば抗生物質の研 究や薬の開発などがあると思いますし、また微生物を使って抗生物質の製造を研究するということもあると思います。
もちろん、日本人が古くから利用してきた多くの微生物利用の食品製造問題も課題としてはあるでしょうね。

例えば分子生物学のような話もそのひとつですが、応用生物学というようなことになるとちょっと違ってくると思います。
工学部などでの応用生物学などでは、これまでの生物学・分子生物学の成果を応用するために、たぶん植物学などとの連携を意識されていると思います。

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微生物を学んで何をしたいかわからない

顕微鏡を使って小さなミクロの世界を探究したいなと漠然と安易に考えているため、具体的に微生物を学んで、何をどうしたいんだという問いに明確に答えることができません。
他の生徒の目的意識がどのようなものか知りたい。

探究したい考えはそれで大変結構なことだと思いますが、そうやって研究することは必ずしも微生物だけのことではなくて、全ての「生きている」ものの研究には、そのような 「顕微鏡を使って小さなミクロの世界を探究」する部分が含まれています。それがなければ全体像を解きあかすことが出来ないくらい大事なことですので大事にしてただきたい。
その部分で他の方との意識の差がそれ程あるとは思いません。

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生物分野での他大学との特色の違いを教えてください

生物分野における他大学との特色の違い、とくに、京大、神戸との偏差値以外の違いがよくわかりません。
また募集人数が少ないのはどうしてですか?

京大との違いは特にないと思いますが、神戸との差はその規模が少し違うかなというくらいで、研究・教育内容がそれ程違うとは考えにくいと思います。

募集人数は、かってどこの大学も同じような規模でしたが、大学が大きくなる段階で他大学は生物学科を大きくしました。
阪大は必ずしもその潮流には乗らず、少数精鋭で行くと決めたのだと思います。
今でこそ生物を志向する人たちは多いですが、将来ははたしでどうでしょうか。誰にも分からないところです。

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生物科の定員が少ないことによるデメリットを教えてください

生物科の定員が少ないことによるデメリット、例えば窓際的な存在となり、研究費、人材が回ってこないことや、閉鎖的な環境になっていること、があるのかどうか現場の様子が知りたいです。
もちろんメリットも魅力的なので知りたいです。
他大学との比較で気にさわるかもしれませんが、正直に書くと、京大理学部生物専攻、農学部応用生命、阪大理学部生物科の3つの選択肢で迷っています。
仮に、これらすべてが合格圏内として偏差値を抜きにして考えた時の阪大生物科の魅力、つまり京大にはない魅力とは何ですか?

デメリットということを特に想像することは難しいですね。
むしろ、そこにいる人 にはメリットの方が多いと思います。窓際に行く暇がありません。
また情報の伝達を円滑にし、閉鎖的な環境にならないような積極的な運営を心掛けています。

上に述べたように、まず少数精鋭で基礎的な生物学教育を受け(学生一人に先生2人)、その後大学院理学研究科はもちろん、理学研究科と協力関係にあって阪大に付置されている多くの生物学関係の研究所(蛋白質研究所、微生物病研究所、産業科学 研究所など)を含めて将来を展望することが可能である、という点ではないでしょうか。当然、それ以外の医学部、歯学部、薬学部などの大学院研究科にも道は開かれていますので、そちらに向かうことも可能で実際多くの学生の選択肢にもなっています。

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動物の行動学を学びたい

動物の行動学を学びたいと考えていますが(環境問題にも興味があります)、貴校ではそのような研究について学ぶことができるのでしょうか?
他の大学の農学部との間で悩んでおります。

本学生物科学専攻には、残念ながら「動物行動学」を直接の研究対象としている 先生はおられません。
ただし、動物学を広い視野から研究しておられる先生方が おられ、特に「地理生態学」や「系統進化学」に興味をお持ちでそれらを 研究対象としておられます。
動物の生態や進化とそれら動物の生存する地理的環境は 大きく関係していると考えられています。
このような視点からの研究をしておられる 先生方は、当然のように動物行動学にも造詣が深く尊敬に値いたします。
ご質問の「 動物の行動学を学びたい」という点に関しては、 直接の研究対象とできるかどうかには問題がありますが (それはあなた次第かもしれません)、「動物行動学を学ぶことが出来る」と いうのが私の回答です。
なお、その先生方は当然のように植物にも造詣が深く純粋に動物・植物の両面からも学ぶことができます。
どうぞ考える際の材料にしていただければ幸いです。

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進化とはどのような事を言うのでしょうか?

進化について興味があります。
小学校のとき進化について「動物などが生き残っていくために、例えばキリンは、高いところにある餌をとるために首が長くなった。」みたいな事が進化だと習いました。
だけど最近これは変だな。と思うようになりました。
なぜなら、進化とは減数分裂の際に起こる組換えが原因であって、意図的に起こせるものではないからです。
様々な突然変異を起こした個体の中から、最もそのときの環境に適していたものが生き残った結果、それが進化と呼ばれるようになったのではないかと思います。
しかし、別の突然変異を起こした化石がみつかった。というような事を本などで見た事がありません。だとしたら意図的に組換えが起こっているのでは?と、考えが堂堂回りしてしまいます。
進化とはどのような事を言い、どのように起こっているのですか。

あなたは生物学者の卵の卵としてとても重要な疑問に関わり始めていると思います。
ご質問にある、中間形質の化石が発見されないという古生物学上の事実は、 「ミッシングリンク(missing link)」と呼ばれ、進化生物学上の大問題の一つです。
ご質問のお答えとしては、良書を薦めることで代えさせていただきます。
進化論の周辺には、「相対論」同様似非科学が跳梁跋扈しているので、 若い人には本当に良い本だけを選んで読んで欲しいと思っています。

   「はじめての進化論」 河田雅圭、講談社

多分疑問の全てに答を得られることはないと思います。 本を読んでもわからなかったことの答を大学で研究することでご自分で見つけていってください。
生物学のような巨大な科学に立ち向かうときにこそ、総合大学の真価が問われます。
日本の国立大学の中では、大阪大学もがんばっている方だと思います。 大学選びも慎重にされることを願います。

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天然高分子の研究には生物科学専攻と化学専攻のどちらの学科がいいのでしょうか?

大学で食品の栄養素など天然高分子の研究をしたいと考えています。大阪大学の理学部では生物科学専攻と化学専攻のどちらの学科がいいのでしょうか。
もし化学科だとしたら、化学科では物理が重要と聞きますが、受験で生物を選択した私でもついていけるのでしょうか。

現在、化学と生物学の境界はかなりぼやけてきており化学者と生物学者の両方が同じ分野を研究することも多くなってきています。
研究したいと考えている食品の栄養素や天然高分子は、まさにそのような境界領域の分野だと思います。
あえて違いを挙げるならば、栄養素や天然高分子そのものの性質や化学変化について調べるのが化学、 栄養素や天然高分子によって人体がどのように応答するかを調べるのが生物だと言え るかも知れません。
ただし栄養素や天然高分子が人体に与える影響を追求していくと、それらの化学的性質をよく理解しておくことが必要でそれには化学の知識が不可欠になります。

化学を習得するには、物理の素養も必要ですが現在化学科に入学してくる学生さん の約1/3は、高校のときに物理を選択していません。
入学後は物理の講義もとる必要がありますが、高校で物理を選択していない学生さん向けの物理の授業を開講していますのでそこで高校で習っていなかった分を補うことができるようなカリキュラムになっています。

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理学部は工学部などに比べて就職が厳しいと聞きましたが、学院まで進んだ場合はどうなのでしょうか?

理学部は工学部などに比べて就職が厳しいと聞きましたが、学院まで進んだ場合はどうなのでしょうか?

理学部や理学研究科を卒業・修了した方の就職が難しいということはありません。 大阪大学では、理学部の卒業生の約1割程度が企業や高等学校教諭などに就職し、残りの9割程度が大学院の修士課程に進学しています。
大学院の修士課程の修了者の3分2程度が企業や高等学校教諭や国家公務員などに就職し、3分1程度が大学院の博士課程に進学しています。
博士課程で理学博士の学位を取得した方は、大学教官や研究所の研究員や企業の研究開発スタッフとして活躍しています。

大阪大学理学部および理学研究科では、数学・物理学・化学・生物学について基本をしっかりと学び、そして世界の最先端の基礎研究を行っています。 それを生かした応用研究を進めている研究室もあります。
それぞれの道に進んだ学生は、 基本に裏打ちされた幅広い知識と豊かな経験を生かして様々な分野で活躍しています。
企業では新しい技術や製品の開発や製造、大学・研究所では新しい原理の探求と 高等教育、高等学校では理科教育や数学教育にたずさわっており、毎年たくさんの求人が全国の企業や国の機関や高等学校などから届きます。
企業への就職先については特定の業種に限定することはありませんが、幅広い素養をもつ人材として多方面で期待され活躍しています。

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性の発明がなければ現在の地球上の生命はどのようになっているのでしょうか?

地球に生命が誕生してから、約40億年、真核生物のオスとメス(性)が発明されてから9から10億年といわれていますが、もし地球の歴史で性の発明がなければ現在の地球上の生命はどのようになっていると考えられますか、教えてください。

「性のようなもの」を発明していたと思います。
へ理屈のように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。 ゾウリムシは、現実に雄雌ではない「性のようなもの」を使っています。
原核生物にも「性のようなもの」があります。いわゆる雌雄という「性」でなくても、 異なる個体間で遺伝子を交換する方法を発明しさえすれば、それは有効な適応手段となったでしょう。
もしそれを発明できなければ、環境変化に対応できず絶滅したでしょう。 地球は誕生以来何度も劇的に環境変化しています。

例えば、 生命が誕生したころの地球の大気には酸素はなくて、合成した核酸や蛋白質は酸化分解を受ける危険が少なくて、ゆっくり次のことをするヒマがあったのに、 「光合成」なんていうことを始めたバクテリアが出現したために、どんどん酸素が増えてしまって、 当時のバクテリア仲間にとっては大公害、大迷惑だったわけです。
そのうちに、 この酸素を利用すれば今までより大きなエネルギーを取り出せるぞ、 と「呼吸」なんてことを始めたバクテリアが出てくる。
そいつはエネルギーをバカスカ使って高速に増えて、 低効率だけど平和に生きてきたそれまでのバクテリアの居場所を奪う。
そのうちに、 光合成バクテリアと呼吸バクテリアに住居を貸して家賃収入で生きようという、 横着な大家みたいな「植物」なんてやつが出てくる。
また別のバクテリアは、 他人の作った貯蓄エネルギーを盗んで使おうというケシカラン「動物」なんてやつがでてくる。

これを適応とか進化というわけですが、もし個体間の遺伝子の交流がなければ仮にある一個体が突然変異で適応能力を獲得しても、その遺伝子が集団間に広がるのはずっと時間がかかったでしょうし、複数の突然変異が一個体に重なるチャンスは非常に低かったでしょう。
だって一つの変異を起こしたその子孫に、もう一度別の変異が起きるまで待たなくちゃならないけれど、 遺伝子交流の方法があったなら一つの変異を起こした個体と別の変異を起こした個体が出会えば、 その子孫には両変異が伝わるんですから。
変異による有用な遺伝子資源を集団で共有できるってわけです。

もう一度くりかえしますが、遺伝子を交換するには必ずしも「雌雄」である必要はないでしょう。
現実に雌雄でない「性」をもった生物がいます。またかならずしも接合によらなくてもいいかもしれません。
たとえば核外遺伝子の注入という手もあります。プラスミドって、これでしょう。
バクテリアや植物は無性的に増えるが有性生殖もできます。 これは「環境が一定なら無性的に増え、環境が怪しくなったら有性生殖をやる」 という巧妙な両刀遣いですね。
植物の有性生殖は、 おしべの花粉(=精子)とめしべの胚子(=卵)との接合ですが、 これが同個体の中で起きてしまっては有性生殖の意味をなしませんから、 サクラもリンゴも(雌雄同株の植物は)自分の花粉で自分の胚子が受精しちゃうのを禁止する「自家不和合」 という仕組みを発達させています。

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キリンは本当は雑食性なのですか?

私の持ってる図鑑にはキリンは雑食性だと書いて、鳩を食べている写真があったんですけど調べたけど分からないので教えてください。

キリンは基本的にはやはり草食動物です。

第一の証拠は歯です。次のホームページにキリンの頭骨の写真が載っていますから見て下さい。
http://www1.ocn.ne.jp/~ngyzoo/stock/teeth.htm 。 肉食哺乳類には牙(犬歯)があって、それでとらえた動物を引き裂くのですが、 キリンにはそれがありません。
代わりに草食哺乳類には臼歯が発達していますが、 キリンもそうなっています。 (ヒトのような雑食動物には、両方とも中途半端にあります。)
キリンが顎をモゴモゴ横に動かしているシーンを見たことはありませんか。 あれは繊維質の葉っぱを臼歯ですりつぶしているところです。

第二の証拠は胃です。ウシの胃が4つに分かれているという話は聞いたことがあるでしょう。
食べたものを口と第一胃と第二胃との間を往復させて、よくすりつぶし、 よくかき混ぜ、よく発酵させます。
そうやって葉っぱの繊維を栄養に変えているのです。 反芻(はんすう)という習性ですが、これがキリンにもあります。
ウシやキリンを含む偶蹄目(ぐうていもく)哺乳類の特徴です。

第三の証拠は目です。肉食動物は獲物をとらえるために、物を両眼でみて距離を測ります。 立体視といいます。
したがって目が顔の正面についています。 これは立体視には好都合ですが、目に映る範囲(視野)が狭くなるという欠点があります。
草食動物は、エサの植物は動かないので立体視はさほど必要なく、 その代わり自分を襲う外敵を察知するために視野を広く保つ必要があります。
だから、目は顔の側面についています。キリンの目は側面です。

というわけで、キリンは基本的には草食です。
ですが多くの哺乳動物でいえることですが、 自然界で草食、肉食であっても、草以外は食べられない肉以外は食べられないかといえば、 そんなことはなくエサとして与えれば食べます。
身近な話で、イヌやネコは本来肉食ですが「ウチの犬はプリンが好き」とか 「ウチの猫はお味噌汁ご飯が大好き」というケースはいくらでもあります。
肉牛のエサにクズ肉を混ぜることはよくあります (だからこそ狂牛病の原因はエサの肉骨粉だ、と騒がれたわけですね)。
おなかのすいたキリンがいて、運良く目の前にハトの死骸が落ちていれば、食べると思います。 とくにキリンはサバンナの動物で、 サバンナは海浜やジャングルなどのようにエサに恵まれた環境ではありませんから、 雑食性の傾向を他の偶蹄目よりは強くもっているといえます。 (昆虫は哺乳類とちがって、本当に厳密に食性が決まっていることが多い。)

なお、その裏返しの例がジャイアントパンダです。パンダは体の仕組みとしては肉食です。
ですが、住んでいる環境が四川省の山の中で、竹しかないので仕方なく(?) 竹を食べるようになりました。
本来は竹やぶに住んでいる小動物や竹についている昆虫を食べていたのだと思います。 ですから動物園のパンダは肉でも魚でも喜んで食べます。

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In general, it seems trimming a plant will have a stimulating effect on the plant's growth. Why is it so? Will eating of the plant parts by bugs, worms, cattles, etc create the same effect?

In general, it seems trimming a plant will have a stimulating effect on the plant's growth. Why is it so? Will eating of the plant parts by bugs, worms, cattles, etc create the same effect?

Yes. Such an effect is known as "grazing optimization" or "overcompensation" in ecology. One of the discussed mechanisms is release of "apical dominance" which is suppression of budding of a lower part by plant hormone secreted by an apical bud. A recent theoretical study (A. Yamauchi and N. Yamamura, American Naturalist, vol.163, pp.138-153, 2004) on an effect of "nutrient cycling" promoted by herbivory would also give another mechanism. I hope you find the introduction of the paper informative. You may see that studies on the evolutionary process of such effects are still now progressing.

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酸素の含有量を高めた水には細胞を元気にする効果はあるのでしょうか?

酸素の含有量を高めた水が細胞を元気にする効果があるといって販売されていますが、水に含まれた酸素が消化器から吸収されて細胞に運ばれるということがあるんでしょうか。
あるとすれば、そのメカニズムを教えてください。また、摂取量は一般的に呼吸で吸収する酸素の何パーセントぐらいでしょうか。

「酸素の含有量を高めた水が細胞を元気にする」というところはひとまずおくとして、 「水に含まれた酸素が消化器から吸収されて細胞に運ばれる」ということはあります。
一般に気体は細胞膜を容易に通過します。またどんな物質でもそうですが、 物質は濃度の高い方から低い方へ流れます。
消化器の表面とて細胞ですから (上皮といいます)、まず消化器上皮細胞に酸素は取り込まれます。 (専門用語を使えば、末梢臓器の酸素分圧は一般に低いので、高い酸素分圧の水に暴露されれば、 酸素の吸収が起こります。)さらに上皮細胞を通過して血中にも入るでしょう。

しかし、まず「酸素が細胞を元気にする」というところに?がつきます。
筋肉細胞や神経細胞は酸素要求度の高い細胞ですが、消化管からそこまで直接には届きません。 結局血中に入って全身に回って届くので、分け前はほとんどないでしょう。
結局、 酸素水の恩恵を受けられるのは消化器上皮細胞だけと思われますが、 消化器上皮はもともと酸素要求度の低い細胞です。

でも、それもまあよいとしましょう。最大の??は、あなたも感づいているように量です。
体を通過する酸素ガスの体積として比較しましょう。 酸素水は酸素だけを吹き込んであるとします。売っているときは加圧してあるでしょうが、 飲むためにフタをあければ1気圧です。
酸素のブンゼン吸収係数は1気圧20℃で0.032ですから、 ペットボトル1本500ml飲んだとしてその中の酸素は16mlです。
酸素水は1日に何本飲みますか。たぶん1本でしょう。 さて、肺はふつうの呼吸法なら1回の呼吸あたり約400mlの新鮮空気を取り込みます。
1分間に呼吸は15回ほどですから、肺を通過する空気は6000mlです。そのうち20%が酸素として、 肺の上皮は毎分1200mlの酸素に暴露される計算になります。 これは寝ている間も休むことなく1日24時間=1440分続きます。1日に1728000mlです。 肺を通過したすべての酸素が吸収されるわけはありませんが(大体5%です)、 それは飲んだ酸素水とて同じことです (吸収効率の見積りには肺の表面積と消化管の表面積の比較などもしなくてはなりませんが、 胃腸の方が肺より吸収効率がいいとは思えませんし、仮に大マケにマケて肺を5%、 腸を100%としてやっても、864000:16です)。
おわかりでしょう。勝負になりませんね。

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生物学科と医学部では発癌制御の研究の違いはありますか?

生物学科と医学部では発癌制御の研究の違いはありますか?

具体的には同じです。 ですが、発想(あるいは目的意識というか使命というか)が違います。
医学部での研究は、最終的には医療に役立てるためですから、それを意識した問題設定をします。かといって、ヒトや哺乳動物の細胞しか扱わないかというとそんなことはありません。ガンは細胞増殖の異常ですから、すべての生物に共通な「細胞分裂の制御機構」と密接に関連しています。
だから、医学部でカエルの受精卵の分割を研究している人もいますし、酵母菌の分裂の仕組みを研究している人もいます。
もし、細胞分裂のある特定の場面で植物細胞の方が実験に好都合であれば、植物を使っている人がいてもおかしくありません。
そこで得られた発見や知識をヒトのガン細胞に試してみてうまく行けば大成功ですから。

でも、うまく当てはまらないかもしれません。医学の研究だと当てはまらなければ「残念、失敗」です。
でも理学の研究なら失敗ではありません。次の問いが出てきます。なんでこの場面ではヒトと植物と違うんだろう、何が同じでどこが違うんだろう、と。
それを掘り下げれば、一段深い理解ができるかもしれません。それは理学の研究の目的が、必ずしも医学や薬学や産業に役立つことではなく(役に立ったらもちろん嬉しいですが)、自然界の原理を解明して人類の英知に寄与すること(ちょっと大げさかな)だからです。

したがって、日々行っている具体的な実験内容という意味では全く同じですし、現実に理学部の出身者が医学部の基礎医学の研究室(実際に患者さんを診る臨床部門ではなく、解剖学、生理学や病理学などの研究部門)にはたくさんいます。むしろ医学部出身者より多いくらいです。違うのは、その具体的研究の先にある目標です。

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なぜソメイヨシノは短命なのでしょうか?

以下がソメイヨシノでの疑問に思っている内容です。
1.ソメイヨシノが短命なのは、交配種であるという理由だけなのか
2.ソメイヨシノ=短命、ということに関して、すべてのソメイヨシノは1本の木から接木で増やした(要するにすべてクローン)という事実が関係しているのか
3.また、ソメイヨシノは実生できないから弱い、ということを読んだことがあるが、これは事実かどうか。
4.自家不和合性をとるものは、どのようにして子孫を残すのか

日本の桜の約80%がソメイヨシノという事実、そしてソメイヨシノの寿命が100年弱という事実は、近い将来、日本の景観に大きな変化を与えるに違いありません。
ソメイヨシノについてもっと知りたいと思っています。

ソメイヨシノの寿命は約60年、野生種のサクラは100年以上の寿命をもつものが多いので、たしかに短寿命です。
しかし、ソメイヨシノは挿し木または接ぎ木の後、5年くらいで花をつけだし、30年くらいで樹勢のもっとも盛んな時期を迎えます。つまり、野生種のサクラよりかなり早い。
いいかえると、ソメイヨシノは早熟早老の品種なのです。これはサクラに限らず園芸品種に多い性質で、何のことはない園芸種としては植えてなるべく早く花が咲く、早く繁る方が好都合なため、そういう品種を作った(選び出した)からです。
もう一つの短命な理由は、ソメイヨシノは虫害や煙害(大気汚染)に弱く、寿命を全うせずに枯死する例が多い、という点も挙げられます。
葉の出が遅い(だからこそ木全体がピンクに染まってキレイ)ために光合成に不利、という点もハンディキャップかもしれません。
ただしここが植物一般の不思議なところですが、挿し木すれば寿命はリセットされてそこからまた60年くらい生きます。

1.ソメイヨシノが短命なのは、交配種であるという理由だけなのか
ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンとの種間雑種です。
ロバとウマの 種間雑種ラバや、トラとライオンの種間雑種ライガーと同様です。ソメイヨシ ノばかりを植えている場所では種子を付けないのは、雑種の為ではなく自家不和合性のためです。ソメイヨシノは接ぎ木で増やされた為、すべて遺伝子型 が同じ(品種であるというよりは、クローン、自分)であり、自己認識機構に よって種ができないのです。
近くにソメイヨシノ以外のサクラがあればソメイヨシノにも種子ができ、発芽します。
ただし、育ったサクラはもはやソメイヨ シノではありません。(サクラの他の品種の場合は、同じ品種でも自家不和合 性遺伝子の配列が個体毎に違うので、同じ品種同士の受粉で種子を付けます。)
しかし、種間雑種が一般に短命かというとそんなことはありません。個体の寿命はだいたい両親と同程度です。
したがって、ソメイヨシノが短命な理由は「種間雑種だから」ではないと思われます。なんといっても早熟品種を選んだという点に最大の理由があると思います。

2.ソメイヨシノ=短命、ということに関して、すべてのソメイヨシノは1本の木から接木で増やした(要するにすべてクローン)という事実が関係しているのか
絶対にそうでない、とはいえませんが、まず無関係でしょう。
というのは、自然種の樹木を挿し木や接ぎ木で増やしたら、それは短命になるかというとそんなことはないからです(上記)。
しかし話をややこしくするようですが、そうである可能性もゼロとはいえません。それはクローンだと、最初の個体がたまたまもっていた性質を引き継いでしまうからです。
自然種で交配可能であれば、接ぎ木される個体もいろいろバラエティがあるわけでたまたま短命なものもあれば長命なものもある。
平均すれば元の自然種と変わらない。しかし、クローンだと偶然の要素が後までずっと残ってしまいます。まして最初に早熟品種を選び出したのですから。
しかし、もし最初に「早熟だけど寿命も長い」という、いいことずくめ?の個体が選ばれていたならば(そういうのがあったとして)、クローンの子孫はみな「早熟だけど寿命も長い」という性質を引き継いでいたでしょう。残念ながらそうではなかったということです(というより、最初にソメイヨシノを作り出した江戸染井村の植木屋さんには、寿命を見届けようがなかった)。

3.また、ソメイヨシノは実生できないから弱い、ということを読んだことがあるが、これは事実かどうか。
最初に述べたように、たしかにソメイヨシノは虫害や煙害に弱いです。これも上のクローンの「たまたま性」で説明されます。
染井村の植木屋さんは虫害や煙害に強い品種を作り出そうと考えてはいませんでした。江戸末期にはまだ道に自動車は走っていませんから。
クローンだから必ず虫害・煙害に弱いわけではありません。虫害に強い個体を選び出して、それを接ぎ木で増やせば虫害に強いクローンができます。
ソメイヨシノの場合、それをしなかったということだと思います。片親のオオシマザクラは、クマリン(桜餅のいい香の主成分でもある)のために、むしろ虫害に強いので虫害に強い雑種を作ることもできたはずなんですけどね。

4.自家不和合性をとるものは、どのようにして子孫を残すのか
自家不和合とは、自分の精子(花粉)は自分の卵(胚子)を授精できないという性質のことで遺伝的に異なる他個体の花粉で授精します。
風や虫の助けを借りて、隣の木の(結構遠い場所の個体かもしれない)花粉で受粉して種子を作ります。多くの自然界の植物が普通にしている受精法です。
同じ花の中に雄しべと雌しべがあるのだから、自分の花粉で授精しそうに思われますが、実は雌しべが受精可能になるのと、雄しべが花粉を成熟させるのと時期をずらしたりしていて、別個体の花粉を優先するように仕組んでいるのです。
自家不和合性が強く、かつ周囲に他個体がなければ人が挿し木、接ぎ木をするか、落枝によって自然に挿し木状態になるか、ヤマノイモのように腋芽の落下によるか、ジャガイモのように地下茎の発芽によるか。こういう増え方を栄養生殖といい、他にもいろいろあります。

近い将来、日本の景観に大きな変化を与えるに違いないということですが、挿し木接ぎ木で増やせますからクローンだからという理由でソメイヨシノが絶えることはありません。
街路樹などで同じ時に一斉に植えたものは、もしそのままにしておくと一斉に枯死することはありえます。
だから、10年ごとくらいに一部を若い木に入れかえておけばいい。実際にそうしています。むしろ、絶えるとしたら気候が激変してしまう方が心配です。
サクラの花芽形成には冬季の休眠が必要で、サクラは温室に入れたら咲きません。このまま地球温暖化や都市の温暖化が進んで冬がなくなると、サクラは咲かなくなります。
そういう意味では、日本の景観はもう変わっています。10年前くらいまでは、ソメイヨシノは東京では入学式の花「出会いの花」でした。今は卒業式の花「別れの花」になっています(森山直太朗の歌のように)。
また、別の意味では、ソメイヨシノこそが日本の景観を変えたともいえます。クローンで個体ごとに性質の差がないため、気温や日照条件が同じならほぼ同時に咲きます。「サクラ前線北上中」「サクラ全山満開」ということになるのはソメイヨシノがクローンだからです。明治以前のサクラは自然種のヤマザクラやオオシマザクラが主でしたから、個体ごとのバラエティがあって、一地域の全個体が一斉に咲くなんてことはなかったはずです。

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理学部では「再生」と「海洋生物」の研究はできますか?

理学部では「再生」と「海洋生物」の研究はできますか?

現在の阪大生物学科に、「再生」を中心課題に掲げている研究室はありません。
しかし、「再生」は生物学的には「発生」と非常に近い現象で、働いている機構は相当程度共通ですし、「発生のやり直し」とみなせる部分がたくさんあります。
違うのは、「再生」には一度発生を完了してある特定の役目を持ってしまった(専門用語では、分化した、といいます)細胞が、もう一度「まだ何でもない」細胞に戻る(脱分化する、といいます)過程を含んでいるところだけ、といっていいでしょう。
で、「発生」を中心課題に掲げている研究室なら、あります。

あなたのいう「海洋生物の研究」が、一年の大半を観測船に乗って洋上で過ごし、双眼鏡でクジラの群れを追ってその生態を観察する、とか、サンゴ礁の海に潜ってカクレクマノミの親子の行動を記録する、という種類のものであれば、現在の阪大生物学科に、そのような研究を行っている研究室はありません。
それはむしろ農学部や水産学部の研究だと思います。
しかし、海に住む生物を利用して研究をしている先生は何人もいます。上に紹介した発生生物学の研究室の主な材料はホヤで、三陸海岸で採集しています。
また、タコの中に住んでいるニハイチュウという「謎の動物」の系統分類学上の類縁関係を、最新のDNA解析で調べている研究者は、日本中の海でタコを採っています。
イカの目の光受容の分子機構の研究をしている人もいます。
ぜひ一度、生物学科の(あるいは大学院理学研究科生物科学専攻の)ホームページをお訪ねになることをお奨めします。

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希望する研究室への配属は成績がよい人が優先ですか?

4年になると研究室に配属になるわけですが、希望の研究室に入るのに成績がよい人から順に入ると聞いたのですが、本当なのですか。
だいたい、1つの研究室に何人ほどの枠があるのですか。
また、理学研究科の協力講座に当たる産業科学研究所やたんぱく質研究所の研究室には4年の学部生でも入ることは可能ですか。
回答できる範囲でお願いします。(阪大理学部3年生)

生物学科の場合
成績はもちろん重要な要因の一つですが、きっちり成績順というわけではありません。
配属希望の研究室で先生が面接して、本人の志望と適性を考え、「それならぴったり」とか「それは少し違う」とか助言します。
研究室の「枠」は、11研究室に20数名の学生ですから、原則として2-3名ですが、研究の性質によって(測定機器の台数によるような場合)は、すでに在籍している学生数との兼ね合いで、1-2名という場合もあります。
産研や蛋白研は、生物学科では現在のところ卒研配属をしていません。それは、卒研は実習の一種で、学部の教員が責任をもって教育するという位置づけだからです。
研究所の先生方は大学院の教員なので、大学院から進学します。実際、卒研と大学院で研究室を変えるという学生諸君はたくさんいます。
ただ将来、産研蛋白研の教員も学部教育にかかわるという体制になれば卒研配属もありえます。

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将来ペット関連の会社や国の動物関連の研究所で働きたいのですが、理学部が良いでしょうか?

私は動物に興味があり、将来はペット関連の会社(ペットフードやペット商品などを扱った)や国の動物関連の研究所で働きたいと思っています。
このような夢をかなえるのにどこの大学、学部、学科が適しているのか悩んでいるのですが理学部でいいのでしょうか?
できれば大学でも、遺伝子の細かい研究よりは動物の生態などを学びたいです。理学部でこのようなことは学べますか?
農学部や食品系(ペットフード関連?)なども考えています。わからないことだらけなので詳しいことを教えて頂ければうれしいです。

また大学卒、大学院卒の方がそれぞれどのようなところに就職されているか、会社名なども教えて頂きたいです。
どんなことでもかまいませんの宜しくお願いいたします。

理学部の生物学科では、個々の生物の研究よりも、生物種を貫く一般原理を追求する志向があります。
したがって、ネコの研究とかイルカの研究といったタイプの研究は余り多くありません。たとえば神経情報処理の一般原理を知るために、たまたまネコが好都合ならネコを使うかもしれませんが、ネズミの方が好都合ならネズミを使います。

そういう意味では、ペットの研究というのは理学部ではまずないと思います。
むしろ、あなたの興味に合うのは農学部や獣医学部ではないでしょうか。そこでは、ウシなり、イヌ、湖の魚なりの個々の動物・動物群についての研究を行っています。
近畿圏では大阪府大や京大、神戸大に農学部があります。私立では近畿大学の農学部が有名です。

ただし、サルの行動学(生態学は、特定の動物や植物を見つめるというより、それを含んだ環境相互作用を追求する分野なので、あなたが「生態学」と呼んでいるものはたぶん「行動学」のことだろうと思います)については、京大の霊長研という世界にも稀な理学部系の研究機関がありますので、興味があればHPなどを検索してみて下さい。

ただし、これは要らぬ忠告かもしれませんが、学問として扱う対象に過度に感情をこめると失敗や擬人化による誤解を導きやすく、「動物が好きでたまらない」という方は、かえって学としての生物学には戸惑いを覚えるかもしれません。

なお、ご質問にありました、当阪大理学部生物科学専攻の修了者の過去6年間の食品関係会社への就職は以下のとおりです。
ヤマサ醤油、味の素、菊正宗酒造、三栄源、サントリー、タマノイ酢、日清製粉、日 本たばこ産業、ハウス食品、フジッコ、森永乳業、雪印乳業、ロッテ、ビタミン研、 ニチレイ

就職先としては食品関係よりは製薬会社のほうがずっと多数です。

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生物学に進みたいと考えていますが、将来の展望がひらけているのはどういう分野なのでしょうか?

生物学に進みたいと考えていますが、将来の展望がひらけているのはどういう分野なのでしょうか?

「将来の展望」が確実に予測できれば、現在の日本の不景気もなかったし、私も ○ー○○賞がとれていたはずですで、それはわかりません。
変化の早い生物学ではとくにわかりません。DNAの二重らせん構造が提唱されたのが今からちょうど50年前で、 そのとき50年後のバイオ技術の隆盛を予測できた人は、世界中に一人もいなかったと思います。
でもそういったら何もいえなくなってしまうので、以下は「確実にそう なるかどうかわからないが」という但し書き付きでの予想です。外れたらごめんなさい。

まず、産業的な応用面では、バイオ育種がもっと広がるでしょう。今は、遺伝子組 み替え作物に対する漠然とした不安があって、先進国には忌避傾向がありますが、世 界レベルでの人口爆発に対応するには、そんなことはいっておられず、中進国で日常 技術化するでしょう。そして問題ないという証拠が積み上がれば、先進国に逆流して くるでしょう。食べる作物ではなく、砂漠緑化技術の一環としてのバイオ育種もあり えます。地球温暖化を食い止めるため、炭酸ガスの再固定を高める必要があります。 乾燥に強く成長の早い植物の作出に期待がかかります。同時に炭酸ガスの排出を減ら すには、代替エネルギー開発とならんでゴミになったら燃やさなくてはならないプラ スチックに代わる生分解性プラスチック(カニの殻利用とか)の開発も必要でしょ う。クローン牛や豚を作る生殖技術は、すでに実用化可能かどうかの検討段階は終わ り、今は産業化の段階に入っています。

医療面では、テーラーメード医療(患者個人個人の体質に合わせた医療)の基礎と なる遺伝子多型分析技術は、今は病院内技術ですが、いずれ健康産業にアウトソーシ ングされるでしょう。医薬そのものも、今のような有機化合物から抗体とか結合ペプ チドのような、生体により馴染む物質に置き換えられていくでしょうから、そういっ た産業の需要が高まるでしょう。移植医療との関連で、臓器を作り出す発生工学技術 も10年後くらいには産業化のメドがつく可能性があります。

実は、上のような産業上のことは、現在行われている基礎研究がそういう方向を志 向していることから、10-20年先をある程度予測可能です。しかし、基礎研究が10-20 年先何をやっているかは、ほとんど予測不可能です。今から20年くらい前、あるアン ケートで「20年後の基礎生物学研究の主流は」と訊かれて、「ズバリ、宇宙移住のた めの生物学や冬眠の科学」と回答した覚えがあるのですが、正解ではなかったようで す(でも、あと10年したら、やはり正解になるかもしれません)。強いて挙げれば、 長寿化社会を迎えて痴呆予防・治療の基礎となる脳科学。高ストレス社会のせいか環 境毒物のせいか不明ながらじわじわと増加傾向にある精神疾患の科学。新手の感染症 もきっと登場するでしょうから、そういった微生物の科学。ガンの基礎研究(今は少 し下火になっているのですが、病気としてのガンは全然減っていないので、何かの突 破口があれば、ふたたび隆盛を取り戻す可能性あり)。上に書いた生殖工学や発生工 学(基礎研究としては、今よりもう一段深化して)。でも、このあたりは、誰でも挙 げるところでしょうね。誰も予測できないことを予測すると、・・・。できるわけな いじゃないですか。

なお、少し違った見方では、先端技術が市民の常識とは離れてしまうことからくる 社会の不安を埋めるため、生物学に知識と見識のあるジャーナリストの需要が高まる はずです。欧米の先進国ではそうですから、日本もそうなるでしょう。

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人工甘味料はどのようにして甘さを調べているのでしょうか?

人工甘味料はどのようにして甘さを調べているのでしょうか?

甘味料の場合は簡単です。甘味料Xを、たとえば1グラム/リットル、0.5グラム/リットル、・・・と2倍2倍に希釈した溶液シリーズを用意します。
ボランティア10-100人(たいていは開発している会社の社員)に、薄い方からなめてもらってどの濃度で「甘さ」を感じ始めたかを報告してもらいます。
それで、半数が「甘さ」を感じた濃度(半数効果用量;ED50)を決めます。
同じことを、スクロース(ふつうの砂糖のこと)でやって、ED50を比べて「砂糖の何倍甘い」と表現します。
とくに断らないかぎり、モル濃度ではなく重量濃度で比較します。

甘味料は簡単といったのは、苦味料の場合は敏感な人と鈍感な人との2群に別れることがあるからで、この場合ED50をとると敏感組には耐えられない苦味になってしまいます。

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人工甘味料の糖度とはどのように測るのでしょうか?

市民大学で食品添加物について学んでおり人工甘味料について勉強し、人工甘味料の危険性については大変よく分かりました。
そこで果糖やぶどう糖の糖度(スイカなどの糖度)はその屈折率を利用して測るのだと知りましたが、果糖やぶどう糖でない人工甘味料の糖度はどのように測るのか教えて下さい。

多くの果物のように入っている糖がはっきりショ糖と分かっていれば、分光学的な方法で測ることも可能です。
しかし人工甘味料のように分子構造がまるで違う物質に、同じ方法は当てはまりません。
そもそも糖度(=ショ糖濃度)という定義は当てはまりません。甘味料の甘さを測定する方法については、このQ&Aのバックナンバーをごらん下さい。

なお話は変わりますが、人工甘味料を一概に危険(裏返せば自然甘味料は安全)と決めつけるのには、科学を専門とする者として若干の抵抗があります。
確かに人工甘味料アスパルテームにはアミノ酸取り込みの不均衡を招くという危険性があります。
確かにサッカリンには弱いながら変異原性があります。しかし自然甘味料(砂糖、ブドウ糖、果糖など)には肥満や糖尿病をもたらすという危険性があります。
また自然物なら変異原性がない、などということはありません。要はすべての物にはいい面と悪い面とがあって、消費者は性質をよく知った上で目的に合わせて上手に使い分けることだと思います。

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生分解性プラスチックにはどう微生物が関わっているのか教えてください。

生分解性プラスチックにはどう微生物が関わっているのか教えてください。

いろんな種類の生分解性プラスチックがあり、一言ではいえませんが微生物が特別なことをしているわけではありません。
プラスチックの方が微生物に分解されやすいものになっています。

天然のものでは、たとえばエビ・カニの甲羅はキチンという多糖類(砂糖の仲間がたくさんつながった形の分子)でできていますが、これを砕いて特別な方法で成型すると、とても丈夫な容器になります。
しかし土に埋めておくと、やがて土壌中の細菌類の酵素によって加水分解(たくさんつながった分子がバラバラに切れて糖に戻っていく、細菌はそれを食べて栄養とする)されます。セルロースは植物の繊維で、やはり多糖類です。草食動物は紙を食べて栄養にできますが、それは草食動物の腸内で細菌が加水分解して糖にしてくれるからで、動物はその糖を栄養にします。
ケラチンやコラーゲンは動物の皮膚の主成分ですが、これらは蛋白質(アミノ酸がたくさんつながった形の分子)です。
私たちは昔から羊のケラチン繊維を編んで背広やセーターを作って着ていますが、微生物は加水分解してアミノ酸にもどします。
これらも見方を変えると生分解性プラスチックといえます(まあ、紙や毛糸をそう呼ぶ人はあまりいませんが、もう少し不燃性や成形自由度を上げれば、立派なプラスチックです)。

人工のものでも、ポリ乳酸(乳酸は分子の中にOHとCOOHがあるので、たくさんつなげることができます)とかポリグリコール酸(グリコール酸も同様)など、土壌微生物やタンク培養した細菌や真菌類によって加水分解されます。

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園芸書で「水のやりすぎは、根腐れになる」とありますが、原因を教えてください。

よく園芸書で「水のやりすぎは、根腐れになる」といった旨の記述がありますが、あれは水の過剰そのものが原因ではなくて、土壌中で有機物分解が進行して酸素が消費され、その結果、酸欠状態の水で根圏が取り囲まれたことが原因ではありませんか?(いわば赤潮と同じ)

そうでないと、水耕栽培や山野に自生している植物(不耕起であるから、根圏にほとんど空気は無いと思える)の生育の説明がつかないと思うのですが。

水の中では気体分子はなかなか拡散しません。土には隙間がありますが、そこに水が入り込むと空気中から酸素が拡散せず、根も土壌微生物も呼吸をするのですぐに酸欠になります。

一般の森林の土壌には間隙が豊かで、耕さなくても酸欠にはなりません。

水辺の植物や渓畔林の植物には、地上から根へ空気を送る組織(通気組織)が発達しています。
単なる植物体内の空気の拡散だけはなく、マスフローも起こります。

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サクランボの奇形果が生まれるのは気温が原因ですか?

よくサクランボに双子果などの奇形果などが見られますが、それは前年の高い気温やストレスのせいだと聞いたのですが、なぜ気温が高いと奇形果が生まれるのですか?
暑いと遺伝子がおかしくなるのだったら人間も暑いときに産まれた子は奇形児が多くなるのですか?
そもそも植物は何に対してストレスを抱くのでしょうか?植物にも意志があるのですか?

たしかに、サクラの双子果(実が横に2つつながった形の実、商品価値がなく出荷されないので、消費地では見かけない)は、経験上、前年秋-冬の気温が高いと多くなるといわれています。格別高気温でなくても、普段から一定の確率で双子果は生じていますが(ですから、サクラの双子果は「奇形」というほど珍しいものではありません)、なぜかその確率が高気温で上がるらしいのです。

一つの花に2本のめしべができてしまうからですが、なぜ花芽形成期(前年の秋冬)が高温だとめしべが2本になる確率が上がるのか、そのしくみはよくわかりません。(ぜひ生物学科に入って研究して下さい。なお、もっと高温になると花芽形成そのものをしません。
ですから、沖縄ではサクラは植えれば育ちますが、花は咲きません)。普賢象という品種(八重桜で一番普通の品種)は、めしべが2本ある方がむしろ普通ですから(それを象の牙に見立てて、普賢菩薩の乗る象と名づけた)、もともとサクラはめしべの数についてはルーズなのかもしれません。
双子果が遺伝子の変化(変異)かどうかはわかりません。その双子果のなっていた枝についていた他の実もみな双子果でしたか?
そうでなく1個だけだったら、たぶん遺伝子変異ではないでしょう(下述)。

ヒトでは、気温と遺伝子変異とは、サクラよりずっと確実に、無関係といえるでしょう。
なぜなら、ヒトは恒温生物だからです。気温が変わっても体温は変わりません。卵も精子も、薬や放射線ならともかく、気温が原因で変異を起こしたりは、まずしません。

果実にかぎらず、いわゆる「奇形」には、遺伝子が変異したために起こるものと、遺伝子とは関係なく起こるものとがあります。
木でもし遺伝子が変異すると、その変異が芽生え前ならその木全体に変化が現れますし、もっと後なら変異の起きたところから先の部分全体が変化します(枝変わりといい、サクラだとある枝だけ急にしだれになったりします)。
「奇形」が1枚の葉だけとか、1つの花だけとかに現れているなら、それは遺伝子変異ではなく、一種の適応(つまり、あらかじめ「こういう状況になったらこう対応しよう」と用意してあったことの実現)や、何かのまちがいである可能性のほうが大きいです。「何かのまちがい」なんて、いい加減ないい方に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
細胞がある特定の反応をするのは、絶対確実にこうと決まっているのではなく、こっちになりやすいと確率的に決まっていることが多いのです。
ですから、99%はこうなっても、1%はそうならないことがあります。
たとえば、四つ葉のクローバーは、大体いつも同じような確率で起こる「単なるまちがい」です。
生垣や庭園によく植えられているイブキという木は、普通はヒノキのようなウロコ状の葉をしていますが、頻繁に剪定するとスギのような針状の葉を出します。
これは剪定ストレスへの適応です。

いま剪定「ストレス」といいました。
ストレスとは、「生物に適応的変化を求める一切の外部条件または刺激」をいいます。植物なら、その植物にとっての標準状態より強い光、弱い光、多い水、少ない水、高温、低温、枝を切られて光合成が不十分になってしまった、樹皮を傷つけられて材が露出し乾燥しがちになった、病原菌やウィルスに感染した、などなど、みんなストレスです。
ですから、高温はサクラにとって確かにストレスです。
この定義からわかるように、ストレスかどうかは、その生物が意志をもっているかどうかは関係ありません。
ここらへんは、日常会話で使う「ストレス」と、科学で使う「ストレス」の意味が、微妙に食い違っているかもしれません。

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科学・理学部一般について

他学部からの転部

他学部からの転部や理学部の大学院への進学は可能でしょうか?

学務係で、毎年秋に転部試験の出願要項を作成しています。
1年次の11月下旬に出願していただき、各学科ごとに転部試験を実施します。
試験に合格すれば、2年次から理学部に転部する事が認められます。

また大阪大学の他学部を卒業し、理学研究科博士前期課程へ進学する事も可能です。
理学研究科博士前期課程の大学院入試を受験してください。

http://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/admissions/admissions_d/

詳しくは、こちらをご覧ください。

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就職と年齢

文系の大学を卒業して今27歳になります。どうしても一生研究を続けていけるような研究者、技術者になりたいと思い、理学部や工学部の再受験を考えています。来年合格したとして学部卒業が32、修士卒業が34になります。
研究者としての就職口はあるでしょうか?

研究職に就いている人の多くは、程度の差こそあれ、かなり高い年齢になってから「定職」に就いています。
特に最近では「一生研究の出来る定職」に就く前に、「ポスドク」と言われる期限付き雇用期間(武者修行のような期間)を経ることが多くなっています。30歳代半ばで、ようやく「定職」に就く例も珍しくありません。
ですので、年齢に関しては一般企業に比べるとシビアな問題ではないようです。

しかし、修士を修了しただけで「一生研究を続けることの出来る」ポストに就くことは、(年齢に関係なく)まず無理でしょう。博士の学位も必要です。
となると、さらに3年以上かかります。それでも研究能力が高ければ、就職先は必ず見つかるはずです。

要するに年齢よりも能力で判断されます。貴君に「やる気」と「能力」さえあれば、道は開けると思います。
かといって、(貴君に対してだけでなく誰に対しても)「《絶対に》就職口はある」とは断言できません。

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転学部について

転学部について、試験の有無、受験資格、日程、大学受験時の成績のことなど、できるだけ詳しく教えて頂けませんでしょうか?

他学部学生に対する理学部への転部選考試験は、要項を毎年10月に作成し出願者があった場合に試験を実施しています。

受験資格は大阪大学の学部学生である事ですが、願書提出の事前に転部希望先学科の学科長とお話ししていただき、願書に学科長の承認印をいただいてもらっています。

願書の受付は11月下旬、試験は1月中旬~2月下旬にかけて実施されます。(各学科ごとに行われます)
ただし、大学入試センター試験および2次試験の成績によっては出願しても受験できない場合があります。

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他大学からの編入

現在、他大学の一年で理学部物理学科に進んでいますが、3年次に大阪大学へ編入を考えています。
他大学からの編入という人は多いですか?
また、一般に大学受験と3年次編入と大学院試験ではどれが入りづらいのでしょうか?

理学部では高専を含めた他大学からの編入は行っていません。大学院修士課程からの入学をお勧めします。

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就職が厳しい?

理学部は工学部などに比べて就職が厳しいと聞きましたが、学院まで進んだ場合はどうなのでしょうか?

理学部や理学研究科を卒業・修了した方の就職が難しいということはありません。
大阪大学では、理学部の卒業生の約1割程度が企業や高等学校教諭などに就職し、残りの9割程度が大学院の修士課程に進学しています。
大学院の修士課程の修了者の3分2程度が企業や高等学校教諭や国家公務員などに就職し、3分1程度が大学院の博士課程に進学しています。
博士課程で理学博士の学位を取得した方は、大学教官や研究所の研究員や企業の研究開発スタッフとして活躍しています。

大阪大学理学部および理学研究科では、数学・物理学・化学・生物学について基本をしっかりと学び、そして世界の最先端の基礎研究を行っています。 それを生かした応用研究を進めている研究室もあります。
それぞれの道に進んだ学生は、 基本に裏打ちされた幅広い知識と豊かな経験を生かして様々な分野で活躍しています。
企業では新しい技術や製品の開発や製造、大学・研究所では新しい原理の探求と 高等教育、高等学校では理科教育や数学教育にたずさわっており、毎年たくさんの求人が全国の企業や国の機関や高等学校などから届きます。
企業への就職先については特定の業種に限定することはありませんが、幅広い素養をもつ人材として多方面で期待され活躍しています。

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阪大は真面目?

阪大の学生や教授は他大学に比べて真面目だと聞きましたが、本当なのですか?

《学生、特に理学部・理学研究科の学生について》
阪大の学生(学部と大学院があります)は、もちろんとても「真面目」です!
多くの学生は講義や実験やセミナーにきちんと出席しています。4年生になって研究室に配属され、さらに大学院に進学すると最先端の研究に従事しますが、日夜そのための努力を惜しみません。
特に最先端の研究のためには、与えられたことをこなすだけの真面目さではもの足りません。自分から積極的に関わってゆく「真剣さ」がとても大切です。
苦労もありますが、成果が得られたときの充実感や達成感には計り知れないものがあります。
このように高度な専門的知識を得たりその経験をして立派に卒業した後には、それを仕事に生かすことが待っています。
大阪大学を卒業した人たちは、企業や大学などで活躍し指導的立場に立つ方も大勢います。

大切なことは、外部から押しつけられた「真面目」ではなくて、阪大学生自身の内部から自発的に生まれ出てきた「真面目」だという点です。

《教授について》
阪大の教員は真面目か。
確かにそうかもしれません。なぜだか、分析してみましょう。

一つには、理系学部が多いことによります。阪大はもともと医・理・工の三学部で出発した大学です。
現在は法学部も経済学部も文学部もある総合大学ですけれど、学生比率も教員比率もやはり理系に重心がかかっています。
ではなぜ理系が多いと「真面目」か。

理系は論理が柱です。個人の性格の上ではいい加減な教員もいっぱいいますが(かくいう私も、その点では人後に落ちませんが)、仕事の上では論理を貫かなくてはなりません。
1+1は3だといったら、芸術なら独創的とほめられますが、科学ではバカといわれます。
誰がやっても2です。クソマジメでつまらないといわれても、これを崩すわけにはいきません。

また、理系は知識の積み重ねが必要です。個人の才能だけではどうにもならないところがあります。
伝達すべき情報は増える一方なのに、休日は増えるし土曜日は休みだし、授業時間が足りません。いきおい、休講はありえず授業は定刻に始まり、終わりは定刻を超えることも少なくない。これを外からみればキマジメとしかいいようがありません。

さらに、理系教育は実験が重要です。実験・実習には、材料や器具・機械の準備が必要です。ふらっと来て、気ままに実験して飽きたら帰る、なんてことはできません(文系はそうだという意味ではないけれど、教育システムとしては、文系よりはるかにスケジュール重視になります)。
したがって、その点からも休講なんてありえません。同じことともいえますが、理系の研究は紙と鉛筆があれば十分、ということは稀で、技術が必要です。
その技術の伝授には現場指導が不可欠です。だから高学年や大学院では少人数指導になり、そうなると教員は(学生も)連帯感が強まってサボらなく(サボれなく)なります。

もう一つの、意外に大きな理由は立地条件です。盛り場から遠く、誘惑が少ない。
東大なら駒場キャンパスは渋谷の隣だし、本郷キャンパスは池袋にも銀座にも近い。京大、北大は京都、札幌の町の中心にあります。
昔は阪大も大阪都心にあったのですが、今は郊外です。飲みに出ようがない。
それでも豊中キャンパスには阪急石橋駅周辺の商店街があるけれど、吹田キャンパスの隣りは万博公園ですから、夜になったらフクロウとタヌキしかいません。
駅から遠いと車で通勤することになり、飲めない。教員は(学生も)好むと好まざるとにかかわらず、研究に没頭できるわけです。
それで、かどうかわかりませんが、多くの研究室では折りに触れ、ゼミ旅行や新人歓迎お花見や卒業生歓送行事を企画して日頃の飲み足りなさを取り返します。
統計がないのでわかりませんけれど、ゼミ行事率なら阪大はトップクラスではないでしょうか。

というわけで、結論。阪大の教員は、心底真面目かどうかは大いに疑わしいけれど、少なくとも「見かけ上は」確かに真面目です。

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数学というのは既に研究され尽くした学問だと思うのですが。

僕は高校1年生で、高校の数学にとても魅力を感じ楽しく取り組んでいます。
ですからそれを発展させた数学を学べる数学科に行こうと思っています。
しかし数学というのは既に研究され尽くした学問だと最近感じるようになってきました。
そう考えると意欲がそがれる気分になってしまいます。まだ数学には未開の分野はあるのでしょうか?

今から100年近く前に、ポアンカレが次のような講演をしています。
「かつて数学の未来は不幸であるとの予言があった。
これらの予言者は全ての問題は解けてしまって、未来は落ち穂を拾うことしか許されていない、と言った。
しかし、これらの悲観論者はいつも退却せねばならなかった。
今日は、こういう悲観論者はいないと私は信ずる。」

悲観的な見通しをする人は100年以上前から何人もいて、そのたびに否定されてきています。
100年前の悲観論者が20世紀の数学の発展を見れば、自らの不明を恥じ入るでしょう。
しかし、こうした過去がありながら、数学で、あるいはもっと広く文明において「もうやることはないのではないか」といった問いかけが繰り返されています。
「研究し尽くされたのではないか?」という質問には、直接答えることができません。
この質問の答えは、各人の心の中にあり、各人がどのような知的な努力を行うかにかかっています。
数学の研究において知識の集積は必ずしも重要ではなく、創造的な人間の頭から生れるアイデアが重要になります。
それは過去の未解決問題を解くだけでなく、数学をより単純化しまた新しい研究の方向を照らし出すものです。
これによって、たえず数学の研究には長年蓄積された知識の資産がなくとも若くしてすぐれた成果をあげることが可能なのです。
また、数学の研究においては「知られた問題を解くこと」以上に「新たな問題を見出すこと」のほうが重要な意味を持つことが多いのです。
そして有名な未解決問題が解かれると、そこから新たな問題が生まれ新たな分野の発展を促すことも多いのです。
独創的な精神を人類が失う時代があれば、その時が数学の終わる時でしょう。「人間精神の名誉のために」(ヤコビの言葉)、若者が自由な思考を行う限り、数学の研究が尽きることは決してありません。
そして、数学者ほど知的な活動において完全な自由を持っている人間は少ないのです。
「もうやることはないのではないか?」という悲観論を抱く者に対しては、「あなたは自由な精神を本当の意味で持っているのか」という問いで答えたいと思います。
繰り返しますが、自由な精神が人間の名誉をかけてたゆまず思索する限り、いつまでも数学は前に進んで行くでしょう。

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阪大理学部の卒業生は就職に困るのでしょうか?

物理を学びたいと思い物理学科を志望している女子高生ですが、親にものすごく反対されています。
「物理学科で学んで、そのあとどうするの?」と親に聞かれると、言葉につまってしまいます。
私は宇宙などが好きで、もっと知りたいって思っているだけだからです。
親は阪大理学部を志望校にすることさえ許してくれません。どうすればいいですか?

「物理学専攻の男性の教授からの回答」

ご両親はあなたの将来を心配してご意見を言っているのであって、あなたを苦しめよう(ハラスメント)と思っているわけではないことを、まずは忘れないようにしてください。
また「宇宙などが好きで、もっと知りたいって思っているだけ」なのは、理学にとってはきわめて健全な動機です。

理学の進歩は、設定された最終的具体的目標に向かって活動することによるのではなくその都度心に生じる自然な感情(好奇心)に駆動されているからです。

「物理学専攻の女性の教授からの回答」

まず、理系の学部には女子学生が少ない、というのは事実です。阪大理学部の物理で言えば、およそ全学生数の1割程度です。
化学や生物では、もう少し女子学生の割合は多いと思います。

理学部や工学部の学生は、卒業すると男女を問わずほとんど全員大学院に進学します。
修士課程2年間を終えると、3割くらいが博士課程(3年)に進学し、残りは企業などに就職します。この段階で、女性だからといって就職率が悪いということは全くありません。
今は男女雇用均等法がありますし、大企業は皆女性技術者(研究者)を男性と等しく扱ってくれます。
もちろん、結婚や出産を機に退職する女性も多いですが、子供を育てながら研究や仕事を続けている女性も大勢います。

また大学院を修了した後、国立研究所や大学の研究職につく人もある程度の割合おります。
すぐに常勤ポストにつけない場合、非常勤の研究職を何年か勤める人も少なくありません。物理で博士号を取得した人達の就職率の低さは、確かに社会問題になっている、といってもいいかもしれませんが、これは本人がどれくらい柔軟に社会に対応できるかという問題であり、決して本当の意味で就職できないわけではないのです。
まだ、高校生のあなたには、学部4年間プラス大学院5年間の後の生活など、今想像できないでしょうからこの話はここでやめます。

もし、大学4年間の後に企業に就職しようと思うのであれば、物理だろうが文学部だろうが、同じです。
就職率が高いか否かは、その時の世の中の景気次第ですが、物理だから低いということは決してありません。むしろ理系のほうが、「手に職がある」という意味で有利だと思います。
大学院卒業者についても同じです。女性であるから就職できない、などということは決してありません。

もし一生研究を続けたいと希望される場合は、少し状況が違います。
大学の助手ポストを得るのは、男性でもかなりの狭き門だからです。
ここで女性が不利になることがないかと言われれば、正直に「現実は多分目に見えない壁がある」と言わざるをえません。
でもこのような問題も少しづつ解決されていますので、あなたがそのような道の前に立つであろう10年後くらいには、きっと「女性だとむしろ有利だ」という世の中になっているのではないか、と思います。

そもそも、大学で勉強するのは何のためなのか、ということをよく考えてください。
大学は就職するための職業訓練所ではありません。また就職のときに役立つ「ブランド」を手に入れるために大学に入るわけでもありません。
知の欲求を満たすための学問をするところが、大学ではないでしょうか。それならば、卒業した後の人生設計ができていなくても構わないではありませんか。
むしろ卒業後の人生設計が高校生で既にできている方がおかしい、くらいです。

あなたが真剣に物理を勉強したい、と思うなら、ご両親にその思いを伝えてみたらいかがでしょう。
学校の物理の先生にお願いして、ご両親を説得してもらうのも一つの手かもしれません。

もう一度、答えを申し上げます。阪大理学部の卒業生は就職に困るようなことはありません。
女子学生だからといって就職できないこともありません。
大学卒業後の進路については男女を問わず企業に就職する人の割合のほうが多いですが、大学などに残って研究職につく人も多いのは理学部の特色かもしれません。

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大阪大学で「総合理学」や「総合科学」のような学問は学べますか?

私は将来、地球環境対策に役立つ仕事に就きたいと考えています。そのためには、最近よく聞かれる「総合理学」や「総合科学」のような学問が良いのではないかと考えました。大阪大学ではこのような分野は、どの学部・学科で学べるのでしょうか?教えて下さい。

「総合理学」や「総合科学」の定義や意味する範囲が曖昧なのですが、大阪大学の中では《総合的な》理学又は科学を扱っている学部・学科は無いようです。

他の国立大学の中には理学部の中に生物圏環境科学という名称の学科が設置されているところもあります。
しかし、これが「総合理学」や「総合科学」のカテゴリーに入るのかどうかは不明です。地球環境対策に関連する学問を進めているかどうかも不明です。 直接コンタクトしてください。

また、広島大学には総合科学部が設置されており、その中に環境共生科学プログラムがあります。
このプログラムが貴君の希望にもっとも近い気がしますが、確かなことは申し上げられません。

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理学部は就職に関して工学部より劣るのでしょうか?

理学部は就職に関して工学部より劣るのでしょうか?劣るとしたらどのぐらい劣るのでしょうか?
そして大体何パーセントの人が学部と修士あわせて就職できるのでしょうか?
資料などをみるとほとんどの人が修士までとっていて、その就職した企業の一覧とかはでているのですが何パーセントの人がちゃんと就職できているのかわからないのです。
あと博士課程までとってから研究職につける人はどれぐらいいるのですか?聞いたところによるとあまり研究職につける人はいないようなのです。
就いても給料がとても安く、苦労するというらしいと聞きました。
あくまで阪大に関してでかまいませんので教えてください。(高校3年生)

高校3年生と言うことで、将来の選択を色々と思案していることと思います。
就職状況についてですが、今年度の企業等への就職は例年どおりほぼ順調に終了し、今は来年度の卒業生の就職活動が始まっています。
求人は非常に多く、ご心配されるような就職難はありません。比率としては、学部生の9割が修士課程に進学し、修士の3割程度が博士課程に進学します。
博士の学位をとって、大学などの教育研究職に就く方や企業の研究職に就く方も沢山います。
教育研究職については、ポスドクとして武者修行の期間を経てから、パーマネントの職に就くのが最近の主流です。
企業への就職ですが、理学部・理学研究科に特徴的なこととして特定の業種に限定せず、様々な業種に広がっています。
理学系では、物事を原理から理解することを目指しているため、全体を広く理解し把握する人材として期待されています。
つまり特定の応用技術には限定せず、広範囲の応用にも関わることのできる人材として期待され、実際多方面で活躍しています。
また高校の教員を志望する学生も沢山います。

ただし最近はどの大学に入学し卒業したかと言うことよりも、個人の能力と適性で判断される傾向にあります。
また、自由応募と言って大学推薦ではなく、直接企業と接触し就職活動をする人も増えてきました。
また、採用の際は学科や専攻との関係はある程度ありますが、一生同じ仕事をやっている時代ではなくなりました。
いずれ管理職になろうとする場合は、理系の場合でも人とのコミュニケーションや、社会の動きや、経済や国際情勢なども理解している必要があります。
したがって、大学を卒業するまでに勉強したことだけでやって行けるわけではありません。

研究職についても同様です。
研究の能力と適性があれば、どの大学に入り卒業したかということではなく実力で勝負し研究を発展させます。
研究業績は個人名を載せた学術論文を書いて評価を受けます。また、研究で得た経験を学生の教育に生かします。
教育研究職の給料のことを心配されているようですが、特別に高い給料にこだわるようでしたら教育研究職はあまりお勧めできないかも知れません。
ただ能力と適性があれば十分に仕事をこなすことができますから、給料のことを心配する必要はありません。

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将来に選択肢が残るような進路を教えてください。

僕はこの五年間ほどから宇宙論に強く興味を持っており当然ずっと理学部志望でいました。
しかし、実利がほとんど期待できないこの分野では研究をして生計を立てていけるのは、才能の面でも金銭の面でも限られた一握りの人だけで現実はそれほど甘くはないんだと徐々に気づきました。
それに就職を目指したところで、宇宙論にそれほど潰しが利くとは思えません。

それに矛盾した話かもしれないですが、僕には漠然と、「自分で、企業などにとっての実利となるなんらかの『財』的なモノを生み出したい」、「社会にできるだけ直接的に影響し、社会に必要とされていたい」といった憧れのようなものがあります。この希望は自分の興味のある分野の性質と相対することのように自分でも感じるのです。

「ポスドクまで行ったあげく、30歳で挫折してフリーター完成」のような事態は何としてでも避けたいし、周りの人たちの進めもあって工学部への転向を考えています。
しかし工学部という学部は、特定分野の就職に強い反面、大学に入る時点である程度自分の将来専攻すべき分野を決めておくことが求められると僕は聞いています。
あと一年でそれを決めるには、僕には時間と情報が少なすぎます。
苦しんでおりますが一年以内に最初の決定をしなければなりません。
なるべく将来に選択肢が残るような進路を教えていただけるようお願いします。

真剣に将来のことを考えておられる様子、大変感心致しました。
また色々とやりたいことを持っておられることは、将来それがどのような形でご自分に関わってくるのかによらず宝物です。
大切になさって下さい。

工学部や工学研究科等では企業などで応用に役立つ知識を学ぶことができます。
もし、具体的に希望するものがはっきりしているようでしたら、それを選択するのも良いと思います。
しかし、それで人生が決まると考えるのは、早すぎます。世の中には色々な仕事があります。また一生同じ仕事をしてゆくとは限りません。
ひとつの専門に限定されない広い知識も必要です。そのためには、常に研鑽を積むことを怠らないようにすることが大切です。

一方、理学部や理学研究科では基礎的な学問の研究を行っています。
物理系では、物理現象の基本を理解し解明してゆきます。
実験したり、計算したり、新しい理論を考案したりする中で、それまでわからなかったものが見えてきます。
その成果を世界中に発信します。仮に企業等に就職することを考えた場合でも、それらは十分に生かされます。
実際、大阪大学理学部物理学科およびその上にある大学院(物理学専攻と宇宙地球科学専攻)には沢山の求人が来ます。
卒業生は、工学部や工学研究科出身の人たちと共に活躍しています。
強いて言えば、工学系出身の人はその技術的な可能性を経験の中から突き詰めて技術開発や生産を行うのに対して、理学系出身の人は基本から理解して原理に基づく新しい技術の開発や生産を目指そうとします。実際はその両方が必要です。
また最近の傾向としては、特許関係の求人が増えています。高校教諭になる方もおられます。博士課程(後期課程)に進んだ場合でも、能力が認められれば企業に就職するひとも少なくなくあまり狭く考える必要はないと思います。物理学専攻のホームページには、卒業後の進路が掲載されていますのでご覧下さい。

もし研究に強い関心があり、しかもその能力があれば大学等のアカデミックな職につくことは十分可能です。
理学系の研究は必ずしも直接世の中の役に立つことを目指して研究しているわけではありませんが、その研究成果は人類の英知を育む知識の一端を担っています。
宇宙がどうやってできたのか、とか素粒子の根元を解明することは確かに我々の日常生活に直接変化はありません。
しかしそれを知ることによって、人類はより豊かな世界観をもつことができます。

なお、ポスドクという身分は、研究者が独り立ちするための期間と理解して下さい。
研究職に就くと、自分で研究テーマを提案し推進します。ポスドクなどの経験を経ることによって、新しい研究領域を開拓してゆく能力と次の世代を育ててゆく能力が更に身に付きます。
大学の教官は、研究の進展だけでなく若い人たちの教育にもやりがいを感じています。
若い人たちが研究を通じて能力を身につけて企業などに就職し活躍することは、教官が直接生産には関わりませんが社会的に非常に有意義なことだと思います。
もちろん、物理学には宇宙論に限らず色々な学問があります。興味があったら是非入学を志して下さい。
たとえば、固体結晶が示す性質や機能の探求はそれ自体に尽くせない興味があるだけでなく、その基本原理は応用のための指針としても重要です。
また理学部では物理以外にも様々な基礎学問を研究している研究室があります。宇宙論でなければ工学部という発想はあてはまらないと思います。

ところで、何かひとつの仕事を成し遂げられる能力を持ったひとは他の仕事でもその能力は発揮できるものです。
現時点では、将来の選択肢について情報が十分ではないかも知れませんが、逆に「今、何かを選択したら将来が決まり、安泰」と期待するのも安易な考え方だと思いませんか。
大切なことは何事にも真剣に向かっていることです。
いつかチャンスがやってきたときにそれをものにします。いつも成長していること、それが大切です。
ちなみに「未熟」とは熟す過程にあることを意味します。それには上限はありません。年をとっても上を目指す「未熟者」でいたいものです。
ご健闘を祈ります。

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理学部に行く目的ってなんですか?

就職者53名(民間就職50名、公務員3名)

これが理学部の修士課程終了した人の就職実績ですが、はっきりいってかなり悪いと思います。
確かに大学というのは就職するための予備校ではなく、勉強をするというところですから就職だけにこだわって考えるのはよくないことかもしれません。
しかし就職活動という言葉が存在しますし、大学を出たら自分で働いてお金を稼がなければならないので 、必然的に就職ということは重要視されるのは当たり前だと思います。
理学部の場合、中学高校の教師になる人が結構いますがそれは大学で勉強したことは全然いかされないでしょう。
生かすとしたらならどこかの企業の研究所に入るか、博士まで行って教授になって大学で研究するかのどちらかだと思います。

ただ企業の研究所に入って研究させてもらえるのも大学の教授になれるのも一握りの人です。また、
企業の研究所にも研究する範囲があるので素粒子などはまったく企業から相手にされません。
ポスドクもアカポスもものすごい倍率で落ちる人がかなりの人のはずです。ましてやノーベル賞なんて夢のまた夢です。
理学部物理学科に行って素粒子の研究職につくのがこんなに実現不可能に近いとは思ってませんでした。
理学部に行く目的がわからなくなりました。就職も他の学部に比べてきつい。研究者にもなるのが難しい。しかも素粒子なんかは教授以外に道が無い。
理学部に行く目的ってなんですか?教えてください。(高校生)

就職が「良い」「悪い」という場合に、様々な基準があると思われます。
どのような基準に照らして「悪い」とおっしゃられているのか不明ですが、一般的見地からは、本研究科の就職実績は全国的水準をはるかに上回っているものと考えられます。
しかし、「良い就職とは何か」といった問題は、1元的な価値基準で定まるものではないので就職実績だけから判断するのは大きな誤りです。
人生は長く高校時代に考えることとは全く別のことに興味を見いだし、大学・大学院で専攻を変えたり就職時さらには就職後にも職種を変えることはごくごく一般的です。
もしかすると貴君は10年後には素粒子物理学とは全く異なる分野の仕事をされているかも知れません。
しかし、もしも素粒子物理学研究よりも、よりあなたの適性に沿う専門領域があるとしたらそれを見いだしてもらうこと、それこそが大学・大学院教育の主目的なのです。

個人的経験に照らしても周囲の人々の話を総合しても、高校時代に考えることは極めて限定された知識のもとでの狭い狭い将来像でしかないことが多いです。
私も高校時代は物理学には素粒子理論と宇宙論しかないと思っていましたが、それは全くの誤りでした。物理学はもっともっと巨大な学問です。
物理学に興味をお持ちなら、是非大阪大学理学部物理学科に入学して、その広大な研究の地平を見渡す冒険に参加してみてください。
細かい個々の専門分野のおもしろさは講義やゼミを通じてお教えします。研究者の道を選ぶかどうか、企業に就職するか大学で研究するかどうかなどは、そのような冒険をしていく中で意志が固まっていくことでしょう。
そして大阪大学は、そのような適切な進路指導を行うことができる体制が整えられています。
大学院から別の研究科、場合によっては別の大学の大学院に進学することも推奨されています。
あらゆる専門領域のトップレベルの研究者・教授の「品揃え」により、適切な進路指導が可能であることが、総合研究大学院大学たる大阪大学の強みです。

高校生の段階から、いろいろな情報を集め、分析し、ここにも投稿されるというあなたの行動力には本当に感心させられます。
是非とも大阪大学に来て欲しいと思います。しかし、あまり高校生の段階から、その時の状況・情報だけから判断して将来について狭く考えることをしないでください。
ダイナミックに進路を切り開いていくこと、それがこれからの若い人々に期待される人生像ですし、それが可能になったのは日本でも本当に最近のことです。
それは新たに獲得された権利なのです。是非存分に行使していって頂きたいと思います。

このような多様な価値観が渦巻く社会の中で、理学部とその出身者が果たすことのできる役割とは何かを考えてみますと物事を根本的・抽象的・大局的な観点から系統的に捉えることにより問題の解決を行う、ということが挙げられると思われます。
具体的な理学の知識が直接問題の解決につながることはもちろんのこと、それ以上により広い範囲の理学を越えたあらゆる分野において、理学的な発想・視点が重要な役割を果たす場合が少なくないのです。
理学部出身で現在理学に直接関わる職種についていない人でも、そのような方々のお話でよく聞くのは「理学部出身でよかった」ということです。

前の教育審議会の主要メンバーである某小説家は、「私の人生において方程式など何の役にも立たなかった。方程式など知らなくても生きてこれた」といった趣旨の発言をされていましたが、これは教育に関わる公人の発言としては全く見識に欠けるものと言わざるを得ません。
むしろ常に世界のどこかで続いている戦争・紛争、もしくは、カルト宗教や、インチキ商法などの跳梁跋扈を見てもわかるように、政府、市民の合理的な判断力が大幅に低下している昨今にあっては理学的な発想を持つことは、今後人類が合理的に振る舞うための最後の砦と言っても過言ではないでしょう。

「方程式が人生に役に立たない」という発言は、物事を根本的につきつめて考えるという姿勢に対する、有史以来の「人間が陥りやすい安易なイデオロギー」からの攻撃を象徴しています。
ガリレオの宗教裁判の話はご存知かと思いますが、理学はずっとずっとそのような闘いを勝ち抜いてきました。
その強さが、その発想・思想・方法の正当性を雄弁に物語っています。もしも貴君が小中高校の夏休みの自由研究などを通じて、「何かに興味を持って、調べて、新しいことを発見する」ことにすでに喜びを見いだした経験があり「研究っておもしろそうだなぁ」と思っておられるならば、研究者として最も大切な適性の大半をすでに持っていることになります。
最近の風潮では、すぐにビジネスに結びつく近視眼的な応用研究のみがもてはやされて理学部に対する不当な風当たりも強いのですが、理学に興味をもたれた貴君のような貴重な同志には是非この長い長い研究の歴史に新たなものを付け加えていく活動に参入して欲しいと願っています。

最後に、上記の小説家の発言に対しては、同じ小説家である村上春樹氏の「ノルウェイの森」の中の一節を引用して答えとしたいと思います。
おそらく村上氏は理学の専門教育を受けたことはないかと思われますが、理学的視点・発想の重要性を直感的に理解されているのだと思います。

「ねぇワタナベ君、英語の仮定法現在と仮定法過去の違いをきちんと説明できる?」 と突然僕に質問した。
「できると思うよ」
と僕は言った。
「ちょっと訊きたいんだけれど、そういうのが日常生活の中で何かの役に立ってる?」
「日常生活の中で何かの役に立つということはあまりないね」
と僕は言った。
「でも具体的に何かの役に立つというよりは、 そういうのは物事をより系統的に捉えるための訓練になるんだと僕は思ってるけれど」

貴君の今後のご健闘とご発展をお祈りします。

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理学部で哺乳類生物に関する学部はありますか?

わたしは将来海洋生物(イルカ、シャチ、クジラ)などなど哺乳類に関することを勉強したいと思ってるのですがなかなか学部、学科が見つからないんです。
この理学部ではそういう哺乳類生物に関する学部があったり勉強ができたりするのでしょうか?

残念ながら、阪大生物学科には海洋哺乳類の研究を行っている研究者はおりません。

理学的な生物学研究では、個々の特定の生物種について調べるというより、異なる生物種を貫く一般原理をつきとめようという指向があります。
そこでは実際にどのような生物種を研究対象とするかは、それが好都合かどうかで決まります。
たとえば神経回路の情報処理過程を知ろう、あるいは細胞内でのタンパク質の輸送過程を知ろうと考えたとき、クジラがそれにもっとも好都合な実験材料ならクジラを使うでしょうが、マウスが好都合ならマウスを使うでしょうし、ミミズが好都合ならミミズを使います。

個々の動物種、植物種を対象とした生物学は、むしろ医学部や農学部、水産学部で行われます。
なぜなら、仮に一般原則がわかっても、たまたまヒトは例外だったりウシは例外だったりしたら医療上や畜産上は何にもならないわけで、どうしてもヒト、(あるいはヒトにつながるモデル動物)あるいはウシを研究対象にせざるをえないからです。

あなたの場合、「海洋哺乳類」と興味の対象を限定しているのなら、農学部の海洋、生物学科や水産学部、あるいは海洋学部、海洋研究所を付設している大学を調べてみるのがいいでしょう。

しかし、よけいなお節介かもしれませんが「イルカ、大大大好き」という方に生物学としてのイルカ研究は必ずしも向きません。
研究対象に過度に感情移入したり擬人化を行うと、自然科学になりませんから。

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理科の中学校の教員になるための進学を教えてください

僕は将来、理科の中学校の教員になろうと決めています。この気持ちは人一倍強いと自負しています。
僕が思うに、教員に求められるものは、教員になるまでにどれだけどんな経験を積み、教える教科を誰よりも深く知り、何より生徒を愛することだと思っています。
そこで、非常に興味のある貴校の理学部や工学部で学問や研究に没頭するか、教員養成系の学部に進学するか悩んでいます。

また中学校の教員になると決めている以上、教員養成系に進むのが教員になるための近道であり適しているのではないか、とも悩んでいます。
さらに、理学部に進むのならまだしも、工学部に進んでも大丈夫かな・・・、なんてわけのわからないことを考えたりもしています。
これらの悩みに対する「完璧な答え」はないと思われますが、何か手がかりが欲しいと切望しています。できるだけ詳しい回答をお願いします。

(生物科学専攻の先生から)
小学校の教員免許は全教科担当になるので、教員養成学部(教育大学や学芸大学)に入学しないと実質的に取得不可能ですが、中学・高校の教員免許は専科担当になるので、理学部に在籍していても取得できます。現実に理学部のかなりの数の学生諸君が在学中に免許をとります(数学科の諸君は数学の、物理・化学・生物学科の諸君は理科の教員免許がとれます)。ただし、理学部の講義をとる以外にいくつかの教職科目を余計にとらなくてはならないので、忙しいのは事実ですが。

回答者の私見になりますが、中学・高校の先生でも教職のために理科の教育方法を教わった「教育のプロ」の先生より、自分の専門研究分野を持っている(あるいは専門の研究の経験がある)先生の方が、魅力的なように思います。
少なくとも私が中学生・高校生のときは、そう思いました。ある理科の先生は学生時代理学部で地質学を専攻しておられたのですが、授業が終わると理科室の隣の理科準備室をご自分で改造した研究室にこもって、熱心に化石を割り出していました。私が何かの用事でそこを訪ねていくと、理科の授業中とは全く違った顔で楽しそうにご自分の研究を話してくださる、それを聴きながら私もよくわからないけれど一緒に興奮し、最初の用事が何だったか忘れてしまう。
そんな経験が、今私が研究者をやっている原因の一つになっているような気がします。

(事務部教務掛から)
大阪大学理学部を卒業して中学校の免許を取得する為には、教育実習等を含めた「教職に関する科目」合計31単位、養護学校、社会福祉施設等で実施する7日以上の「介護等の体験」(実習)を卒業要件単位とは別に修得する必要があります。

教員養成系の大学との大きな違いは,【卒業要件単位とは別に】単位を修得する必要がある事だと思います。

なお、大阪大学では、工学部、基礎工学部、理学部で中学校理科一種免許を修得することが可能です。

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どうすればお医者さんになれるのかを娘に説明したい

現在地元の小学校に通う2年生の娘が〔お医者さんになりたい〕と言い続けています。
最初はこちらも〔ふーん〕と軽く聞き流していたのですが最近〔どうすればお医者さんになれるのか〕と質問されます。〔うんと勉強してがんばってなるんやで〕と言っても〔どんな勉強?どんなことしたらええん?〕と詳しく聞いてくるので返答に行き詰まり困っています。
小2が理解しやすい説明を教えて頂きたいのですが、よろしくお願いします。

小学生の段階で医師になるための勉強というのはありません。私は医師ではありませんが、たくさんの医師の知人をもっていえることは、三つあります。

一つ目。医学は自然科学です。おまじないではないので、自然科学者としての目を育ててほしいと思います。
小学生にわかるようないい方をすれば「理科大好き」になってほしいということです。それには、本でお勉強するのはほどほどにして、それ以上に自然に触れたくさんの不思議を体験してください。春夏秋冬季節が巡るのを不思議に思い、星を見てどうして光るのか不思議に思い、卵からオタマジャクシが出てきてやがてカエルになるのを不思議に思うことです。
ご両親としては、その不思議に本で読んですぐに解答を与えてしまうのではなく、いっしょに考えてやってください。
正解は出なくてもかまわない、不思議のままでもかまわないのです。自分で考えて答えを見つける喜び(たとえ本当はそれが間違いであっても)こそ自然科学の原動力ですから。

二つ目。医療は一種の接客業です。病気と向き合うだけでなく、患者さんと向き合って患者さんの苦しみを分かってあげることが出発点です。
ですからお勉強部屋に閉じこもって成績を上げるより、たくさんの人と出会っていろんなお友達をもち、「こういう人もいるんだ」「こういう考えをする人もいるんだ」という体験を積んでほしいと思います。

三つ目。医術は重労働です。外科医は6時間くらい立ちっぱなしで神経を張り詰めて作業することは珍しくありません。内科医は自分の体調が悪かろうと疲れていようと、急患の連絡を受ければ往診に出向かなければなりません。
ですから、体力が基本です。「スポーツ大好き」、できたらアウトドアスポーツ大好きになってください。

ということは結局、外で自然に触れながら友達と元気に遊んでください、ということに尽きます。

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下宿をするかどうか迷っています。

阪大を受けることになれば、通学におよそ2時間かかることが分かり下宿をするかどうか迷っています。
他の生徒の平均通学時間と下宿する関係が知りたいです。

これについての正式なデータがあるのかどうか、ちょっと分かりません。
しかし、 奈良あるいは和歌山の方からもちろん京都の北の方からも通っている人が少なからずいることは事実です。
でも、一番良いのは下宿することでしょうね。

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理学部では大学院に進学する人が多いようですがどうしてでしょうか。

理学部では大学院に進学する人が多いようですがどうしてでしょうか。

確かにかなり多いといえるでしょう。これには主に2つの理由が考えられます。まず、一般的に理学部の学生はもともと学究心・研究心に富む人が多く、学部での学究的雰囲気の中で研究を始めるようになると、研究に興味を覚え、大学院に進学してさらに深く学び、経験を積みたいと希望するようになります。次はもっと現実的ですが、企業の研究部門では、研究経験を積んだ修士や博士の人を求める傾向にあり、それを考慮して進学する人もいます。いずれにしても、多くの人が大学院生の間に研究者として大きな成長を遂げます。

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資格取得について

理学部数学科からでは中学校の数学教師になるのは大変でしょうか?

僕は高校2年生で将来中学校の数学の教師になろうと考えています。
教員養成学部以外での免許の取得が難しくなったそうですが、理学部の数学科からでは教師になるのは大変になるのでしょうか?
いろいろ進路の事で真面目に悩んでいるのでよろしくお願いします。

大阪大学理学部の数学科に入学したとして、卒業時に中学校一種免許(数学)を取得する事ができます。
ただし、数学科に配当されている一般教養科目・専門教育科目の他に、「教職に関する科目」と呼ばれる科目を、理学部数学科の卒業要件単位とは別に31単位取得する必要があります。その中に出身の中学校や高校で実施する「教育実習」も含まれます。(学部4年次に実施)

また、中学教諭免許を取得する際は、社会福祉施設や養護学校での「介護等の体験」が必要になります。(学部3年次に実施)

大阪大学理学部では、数学科、物理学科、化学科、生物学科の4学科がありますが、数学科以外の学科に入学し、「中学校一種(数学)」の免許を取得する事は不可能ではありませんが、カリキュラム的に難しいです。

大阪大学理学部数学科の学生さんは、少なくとも1/3位の人は卒業までに教員免許をとるようです。
ですから、教員免許をとるのがそんなに大変だと言うわけではありません。

また大阪大学では、数学について言えば教員養成大学よりはるかに視野の広いバランスのとれた教育を行っているという自負があります。
ティーチング=スタッフも研究の最前線で活躍している人が殆どで充実しています。

これからは、公立高校でも中学から6年一貫教育の学校が増えることが予想されます。
他方、私学で教師になる人も多いので教員免許をとられる場合は、大阪大学在学中に、中学、高校両方の教員免許をとられることを薦めています。(大阪大学では多くの学生が頑張って両方とるようにしています。)

大問題、高校で教員として採用してくれるかどうかということで少子化の現在、教員のニーズについてはかなり狭き門となっているようです。

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教員免状の取得

在学時、教職課程の単位を取りましたが、教育実習をせずに免状はとりませんでした。理学部卒業、工学研究科修了に高校理科の教員の免状を取得できるでしょうか?

大阪大学の科目等履修生として「教育実習」を修得することができます。
ただし教育実習を履修するために事前に修得しておかなければいけない科目が多数あり、 それらをすべて修得していることが条件です。

また、教育実習を履修する年の前年に 大阪大学から実習校宛に「教育実習受け入れ内諾依頼」を行い、 その年の内に実習校から内諾を受けておく必要があります。
その上で、科目等履修生に出願しなければなりません。

詳しくは、06-6850-5282大阪大学理学部学務係あてお問い合わせください。

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理学部に進学してから、医学部の大学院に進学することはできますか?

理学部に進学してから、医学部の大学院に進学することはできますか?

また、そうするためにはどういうルートで進学していくことになりますか?

生物学科の先生からの回答

医師になれないが、医学博士を取得し医学研究者に為るということであれば可能 です。
生物学科からは以下のような事例が多数あります。多分、化学系からでもOK でしょう。

理学部卒業→医学研究科・医学修士課程→医学研究科・医学博士課程→医学博士
理学部卒業→理学研究科・理学修士課程→医学研究科・医学博士課程→医学博士

これ以外に、

理学部卒業→理学研究科・理学修士課程→理学研究科・理学博士課程→理学博士
のルートを辿った後に、医学部で研究を行っている方も多数いらっしゃいます。

大学への進学の段階では、理解が難しいかも知れませんが、基礎医学と化学・生物学 の境界線はかなり曖昧な部分もあります。
大学院の段階では、 どの研究科というよりはどの先生の研究室に進むかの方が重要なことになると思います。

事務官からの回答

医学部の大学院に進学するルートについてのルールのようなものは、特にありません。

1.理学部卒業後→修士課程(医学系研究科)への入学は可能です。 (もちろん入学試験を受けて合格しなければならないのですが)
2.医学部とあるのは、どういう意味なのか?

・もし医者になるために医学部に進むことを考えている場合
理学部→医科学修士を修了するだけでは医者にはなれません。
医者になるのならどのみち医学部に入らなくてはならないのですが、医学部にはじめから入学しないでこのルート(理学部→医科学修士)でいくのなら、医科学修士から医学部にそのまま入るというルートはありませんので,次の二つのように医学部に進むことになります。

(医科学修士修了後)入試センター試験→2次試験→合格→入学(医学部)
(医科学修士修了後)学士入学の制度を利用して、試験を受け医学部の3年生に入学

・理学部→修士課程(医学系研究科)→博士課程への進学を考えている場合
特別の措置はなく、博士課程の試験を受けて入学。ということになります。
またこのルートでも(医学部をでてないので)医者にはなれません。
また、医学部のほうで「MDPHDコース」というコースが最近できたようで、修士課程修了の学生が(学部、修士は医学部、医学研究科でなくてどこの学部でも可)MDPHDコースに進めば、医学部の3年次に編入学して医者になることも可能のようです。
これは博士課程に進学することを前提での方法のようです。上で説明した学士入学の制度とはまた別のようです。
これらの進学方法についての詳細は、もし必要ならば医学部の事務にお問い合わせください。

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大学院に入学後、教育実習など教員免許を取得するのに必要な科目を、学部に受講しに行くことはできるのでしょうか。

大学院に入学後、教育実習など教員免許を取得するのに必要な科目を、学部に受講しに行くことはできるのでしょうか。

現在、他大学に在籍していて大阪大学大学院への進学を考えています。今教職課程をとっているのですが学部中に全ての単位を取得できそうにありません。
大学院に入学後、教育実習など教員免許を取得するのに必要な科目を学部に受講しに行くことはできるのでしょうか。(大学3年生)

大阪大学理学部・大学院理学研究科では、数学・理科の科目について、中学校1種・ 専修、高校一種・専修の免許を申請する為の単位を修得することが出来ます。
大学院に入学後、学部科目を聴講し修得する事は可能です。

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朝鮮大学校の卒業生が、大阪大学大学院理学研究科の受験資格を得るには特別な審査が必要になってくるのでしょうか?

僕は朝鮮大学校の理工学部で物理を専攻しています。
卒業後、大阪大学大学院理学研究科・博士前期過程の入試を受けようと思ってるんですが、現在の時点で朝鮮大学校は各種学校として認定されています。
朝鮮大学校の卒業生が受験資格を得るには特別な審査が必要になってくるのでしょうか?
それとも、一般の大学の卒業生と同じように受験資格が与えられるのでしょうか?

個別の入学資格審査を受けていただき、審査の結果、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められ、平成17年3月31日で満22歳に達している方が出願できます。

また、平成17年4月入学の大学院前期課程試験の入学資格の審査に必要な書類は、平成16年7月7日(水)までに理学部大学院掛へ提出していただくことになっております。

募集要項の請求方法は、返信用となる角2封筒(送付先記載、200円切手を貼ったもの。)を同封の上、「理学研究科博士前期課程学生募集要項請求」と朱書きのうえ、下記まで送付願います。専攻のパンフレットもご希望される場合には、返信の切手を390円にしていただき、「理学研究科博士前期課程学生募集要項(○○専攻)請求」とご記入ください。

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大阪大学理学部物理学科の三回生ですが、今から数学の教員免許を取ることは可能でしょうか?

大阪大学理学部物理学科の三回生ですが、今から数学の教員免許を取ることは可能でしょうか?

大学院には進もうと思っているので、大学院を卒業するまでに取ったりすることは可能でしょうか?
厳しいならば、どれぐらい厳しいかも具体的に教えていただきたいです。

大阪大学理学部・大学院理学研究科では、数学・理科の科目について、中学校1種・専修、高校1種・専修の免許を申請する為の単位を修得することが出来ます。
大学院に入学後、学部科目を聴講し修得する事は可能です。
しかし、二つの点で理解していなくてはならないことがあります。
ひとつは、単位取得は不可能ではないと言っても、物理学科および大学院(物理学専攻・宇宙地球科学専攻)での本来の勉強がありますので、その合間をぬって単位を取得しなくてはなりませんからそれなりの覚悟が必要です。
一般的な話としては、大学院の修士課程を2年間で修了できない場合も起こりえます。したがって、学部の時になるべく多くの単位を取得しておくことは良いことだと思います。
もうひとつは、高校からの求人が非常に少ないことです。
最近は中高一貫教育を目指している学校が増えていますので、高校の免許だけでなく中学の教員免許も取得することが推奨されています。
中学の教員免許を申請するためには社会福祉施設や養護学校での「介護等の体験」も必要になります(通常学部3年次に実施)。

また、高校免許を取得するために必要な教育実習は3単位ですが、中学校免許を取得するためには5単位必要ですので、その場合、教育実習をもう一度修得していただく必要があります。一般的には、数学科以外の学科に入学し、「中学校一種(数学)」の免許を取得する事は不可能ではありませんが、カリキュラム的に難しいという状況です。

したがって高校理科以外の教員免許を取得することは不可能ではありませんが、かなりの努力と工夫が必要だと思いますし、取得したからと言って採用されるとも限りません。中学校の資格も取っておく方が有利です。なお、もう少し経つと退職者が増えてきて、新規採用が若干増えてくる可能性がありますが、その予測資料が手元にありませんので、はっきりとしたことはわかりません。なお、採用する側からの意見としては、単に資格を取得することにばかり関心を注ぐのではなく、教育への熱意と関心を高めて行くことも大切であるということがあります。

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