最新記事

中国災害

深セン土砂崩れの裏に緑威公司と地方政府の利権構造

2015年12月22日(火)15時44分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

目を疑う惨事 天津の爆発事故同様、今回も人災の疑いが強い REUTERS

 20日に起きた広東省深セン市の土砂崩れ事故の背景に、案の定、企業と深セン人民政府や中国共産党深セン市委員会との間の癒着が浮かび上がった。次期国家主席の有力候補と見られている広東省書記・胡春華のへの影響は?

緑威公司と深セン人民政府や党委員会との癒着

 今月20日に広東省深セン市の工業団地で起きた大規模土砂崩れで、33棟の団地が一瞬で地面に埋まってしまう惨事が起きた。現時点で1人の遺体が見つかっているが、なお89人が行方不明のままだ。土砂崩れによって38万平方メートルの土地が深さ10メートルの土砂で埋まった。このとき天然ガスパイプラインも破損して爆発が起き、惨状を加速させている。

 中国政府は今のところ、土砂崩れの原因は、高さ100メートルまで積み上げられた土砂置き場の土砂で、土砂置き場として臨時に利用されていた石切り場が、工業団地の方向を向いていたことが惨事を生んだとしている。この土砂は、工場や工業団地を建築する際に生じたもので、土砂にはコンクリ―のかけらや建築廃材なども含まれており、それが不安定さを増し、崩壊の主要原因になっていたとのこと。

 そして中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球網」(環球時報のウェブサイト)は21日朝、土砂を積み上げた業者として、「深セン市緑威物業管理有限公司」(以下、緑威公司と略称する)の名前を挙げた

 緑威公司は2001年に1001万元(現在のレートで約2兆円)の資本金で張菊如と張金華が設立した会社だ。張菊如はまた、「深セン市緑威投資発展有限公司」という会社を同じく資本金1001万元で2010年12月に設立している。

 環球網の情報源は中国の「毎日経済新聞」の記者によるが、2013年10月から今日に至るまで、緑威公司は何度も深セン市宝安区政府購入センターの落札対象となってきたという。直訳なので、もう少し表現を変えて書くと、政府の仕入れ係の窓口が推進するプロジェクトに複数の企業が入札したとき、毎回、必ず緑威公司が独占的に落札してきたということだ。

 これは中国全土のいたるところに充満している現象で、水面下で(いや、堂々と?)、企業と政府役人が癒着し賄賂を渡して特定の会社に落札させる。同時に、その管理に関しても余計な経費を掛けず、すべて「目こぼし」をしてくれるという仕組みが全国的に出来上がっている。今回も例外ではなく、天津の爆発事故同様、「人災」であることは明らかだ。

ニュース速報

ワールド

深セン大規模土砂崩れ、発生から60時間超経過で男性

ビジネス

米個人消費支出、11月は0.3%増 予定より早く発

ビジネス

アングル:新日本監査法人に初の課徴金、監査法人は淘

ビジネス

米国株式市場は続伸、原油上昇とGDP確報値を好感

MAGAZINE

特集:ISSUES 2016

2015-12・29号(12/22発売)

過激化する米大統領選、対ISIS戦争、不確実性を増す中国──。「恐怖の政治」の台頭で混沌が深まる2016年の世界を読み解く

MOOK

ニューズウィーク日本版SPECIAL EDITION

STAR WARS

『フォースの覚醒』を導いた
スター・ウォーズの伝説

12.9 ON SALE!
購入者特典:表紙ポスタープレゼント

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    部活指導に時間を食われる日本の教師は「何でも屋」?

    教員が授業に専念できない、日本の教育現場の過酷…

  2. 2

    世界一「チャレンジしない」日本の20代

    意識調査によるクリエーティブ志向・冒険志向の比…

  3. 3

    米利上げはなぜ世界にとって大きな問題なのか

    中国の景気と合わせ、為替相場や輸出入、原油価格…

  4. 4

    米軍に解放されたISの人質が味わった地獄

    イエスと言えば処刑され、ノーと言えばイエスと言…

  5. 5

    生涯未婚率は職業によってこんなに違う

    男女差が最大の医師では、女性の未婚率が男性の1…

  6. 6

    【マニラ発】中国主導のAIIBと日本主導のADBを比べてわかること

    アジア開発銀行(ADB)の歴史から考える、アジ…

  7. 7

    台湾ではもう「反中か親中か」は意味がない

    「台湾市民は対中接近を嫌う」という思い込みを覆…

  8. 8

    やがて中国が直面する「国際的代償」、南シナ海の紛争に国際裁判所が手続き

    裁判自体を否定する中国だが、不利益な裁定が出れ…

  9. 9

    一隻の米イージス艦の出現で進退極まった中国

    米海軍の活動を黙認すればメンツを失うが、排除し…

  10. 10

    それでも中国はノーベル賞受賞を喜ばない

    100年前に魯迅は拒否し、今年は医学生理学賞の…

  1. 1

    現実味を帯びてきた、大統領選「ヒラリー対トランプ」の最悪シナリオ

    共和党に2カ月遅れて、民主党もようやく今週1…

  2. 2

    レイプ写真を綿々とシェアするデジタル・ネイティブ世代の闇

    ここ最近、読んでいるだけで、腹の底から怒りと…

  3. 3

    嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月…

  4. 4

    「現代のパトロン」クラウド・ファンディングの落とし穴

    アメリカではすっかり定着した感のあるクラウド…

  5. 5

    「イスラム国」を支える影の存在

    パリ同時多発テロの後、国連の安全保障理事会は過激…

  6. 6

    間違い電話でわかった借金大国の悲しい現実

    ニューヨークに住み始めた僕は、まず携帯電話を手…

  7. 7

    マイナンバー歴44年の僕から一言

    あなたのマイナンバーは届いたかな? 実は僕…

  8. 8

    パリ同時多発テロを戦争へと誘導する未確認情報の不気味

    パリ事件の前日のベイルート連続自爆テロ フラン…

  9. 9

    vol.4 東北大学原子分子材料科学高等研究機構准教授 一杉太郎さん高性能次世代電池「全固体電池で変わる」、次世代モビリティの未来とは

    現在、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハ…

  10. 10

    乱射事件、「イスラム教徒の容疑者」に苦悩するアメリカ

    今週2日、ロサンゼルス近郊のサンベルナルディ…

  1. 1

    中国外貨準備、11月末は3.44兆ドル 13年2月以来の低水準

    中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月…

  2. 2

    アングル:不正見抜けなかった東芝の監査法人、業務停止の可能性も

    東芝の不正会計問題で、証券取引等監視委員会が…

  3. 3

    北京市、大気汚染悪化で初の「赤色警報」

    中国・北京市政府は7日、深刻な大気汚染が続く…

  4. 4

    仏与党、3区で地方選第2回投票進出を断念 極右議員の当選阻止へ

    フランス与党社会党は7日、地域圏議会選挙の第…

  5. 5

    アングル:来年のドル/円、強気派と弱気派が綱引き

    11月米雇用統計を受け12月米利上げは確定的…

  6. 6

    利上げ時期来た、資産バブルの可能性には注視必要=米連銀総裁

    米セントルイス地区連銀のブラード総裁は4日、…

  7. 7

    ロンドン地下鉄駅で3人刺される、警察当局「テロとして捜査」

    ロンドン東部レイトンストーンの地下鉄駅構内で…

  8. 8

    物価2%とGDP600兆円、何としても達成したい=菅官房長官

    菅義偉官房長官は5日都内で講演し、全国の都道…

  9. 9

    米銃乱射事件を「テロ行為」として捜査、イスラム国に忠誠

    米連邦捜査局(FBI)幹部は4日、カリフォル…

  10. 10

    トルコ、ロシアとの関係緊張で90億ドルの損害も=副首相

    トルコのシムシェク副首相は7日、ロシアとの「…

定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

シッパイがイッパイ、アメリカの中近東政策

辣椒(ラージャオ、王立銘)

「毒ガス」をまき散らす病める巨龍

STORIES ARCHIVE

  • 2015年12月
  • 2015年11月
  • 2015年10月
  • 2015年9月
  • 2015年8月
  • 2015年7月