新国立、隈氏デザインの勝因は?ザハ案白紙撤回につなげた大野氏が分析
隈研吾氏らが手掛けたA案に決まった新国立競技場。ザハ・ハディド氏が設計した整備計画案の問題点を指摘し白紙撤回へつなげた建築家・槙文彦氏(86)のグループで中心的な役割を担った建築家の大野秀敏氏(66)が22日、スポーツ報知の取材に応じ、今回の選定を独自の視点で解説した。
【A案への評価】
A・B両案は工期、コスト、環境との共生といったテーマが酷似していた。大野氏はどちらを評価していたのか。
「個人的にはA案の方がいいと思っていました。B案の方がシンプルかつ明快なプランですが、A案の方が減築しやすい。これからの建築は増やすことより減らすことを考えて設計されなければならない。五輪が終わった後、不要になった施設は壊す、ということをしやすいのは足し算的な構造を持つA案だと思います」
【工期】
審査結果の項目の中で「工期短縮」がA案がB案に全カテゴリーのうち最大の27点差をつけ、合計点で8点上回る要因になった。同じ「2019年11月末」という工期を設定し、プラン自体が似通っている両案にもかかわらず、なぜ評価は分かれたのか。
「耐震設計についてB案はザハ案と同じ免震構造を、A案は制震構造を採用している。(ゴム積層を基礎に埋め込む)免震の方が効果は大きいのですが、工程がひとつ増える。ゴムは経年劣化するので、メンテナンスでの負担が大きくなる点もある。それに、B案は屋根の構造が複雑。天井が波打っているつくりになっていることが工期の面で(審査員の)印象形成につながったのかもしれません」
【審査方法】
今回の審査はポイント方式で評価した。そもそも、通常の建築コンペは点数によって評価されるものなのか。
「得点を集計したりするケースは少ないと思います。ポイントはあんまり役に立つものではない。それよりもディスカッションすることが大事なんです。全員が全員、全ジャンルに精通した専門家というわけではないですから。専門性の高い人と議論していく中で評価していくもの。今回のポイントは、議論した結果なのかどうなのかは分かりません」
【隈氏】
隈氏は、大野氏にとって東大の5年後輩にあたる。どのような個性を持った建築家なのか。
「構造そのものがどう、ということではなく、人間で言えば衣服の部分をつくるのが巧みな建築家ですね。肌感覚のようなものが非常に優れた、新時代を画する建築家です。しゃれたシティーボーイという雰囲気の人で、変にギラギラせず、肩の力を抜いてプロジェクトに取り組むタイプだと思います」
◆槙グループと新国立競技場問題 2012年11月にザハ案が採用された直後から、槙文彦氏は景観やコストの面からデザイン変更を提言。ザハ氏は規模を縮小し、修正案を13年11月に公表した。さらに槙氏は大野氏らとグループをつくってゼロベースの見直しを訴え、15年6月には独自の代替案を発表。五輪組織委員会や文科省など関係機関との意見交換も行った結果、7月に政府方針で白紙撤回が決定した。
◆大野 秀敏(おおの・ひでとし)1949年12月16日、岐阜市生まれ。66歳。75年、東京大学大学院工学系研究科修了。76年に槙総合計画事務所に入所。現在は、株式会社アプルデザインワークショップ代表取締役所長。元東大大学院教授。主な設計建築物にKAAT神奈川芸術劇場など。