2015年12月23日

◆ 新国立競技場は A案に

 新国立競技場は A案に決定した。これをどう評価するか? 「八百長だ」というのが私の評価だ。

 ──

 新国立競技場は A案に決定した。これをどう評価するか? 
 私がこれまで個人的に簡単に評価した考えは、こうだ。
 「 A案の方が、観客席がフィールドに近い。その分、A案の方が優れている」
 このように「A案の方がちょっといい」というものだった。デザインとしては、B案の方がちょっとカッコいいように思えるが、それは横に置いておいて、機能性だけを見て、A案の方が少し良いように思えた。
 ただし、素直に A案を支持するわけではない。条件が付く。
 「 A案も B案も、どちらも観客席がフィールドから遠い。ゆえに、オリンピック終了後は、観客席を改築して、全体をサッカー専用球場に改築するべきだ。そもそも、サブ・グラウンドがオリンピックのときだけの仮設のものなので、オリンピックのとき終了後は、サブ・グラウンドがなくなる。そうなると、世界レベルの国際競技は開けない。日本の主要大会も開けない。陸上競技場と指定は、調布の味の素スタジアムを使うことになる。だったら、代々木の新国立競技場は、サッカー専用球場に改築するしかない」
 以上が、私の認識だった。

 ──

 ところが、今回、新たに調べてみたところ、「 A案に決定」というのは、とんだ八百長であることがわかった。
 《 A案に決定 工期短縮に確実性 B案と8点差 》
 採点は7人で980点満点となり、A案が 610点、B案が602点と8点差。得点の比重の大きかった工期短縮でA案が高い評価を集めたことが勝因となった。
( → 毎日新聞 2015-12-23

 「A案が 610点、B案が602点」というふうに僅差であったことになる。ほとんど差はないとも言える。
 ただし、その内訳を見ると、意外なことに気づく。
最も明暗を分けたのは「工期短縮」で、A案は177点、B案は150点と27点差がついた。
( → 毎日新聞 2015-12-23

 これはつまり、建築としては B案の方が大幅に優れているが、建設会社の担当する工期の部分で A案の方が圧倒的に過ぎれていたから、最終的には A案に決まった、ということだ。建築物としての良し悪しよりも、建設会社による工期の点で A案で決まった、ということだ。かなり、うさんくさい。

 これには反論が来るだろう。
 「だとしても工期も重要なんだから、工事も含めた全体としては A案の方がいいのだ」と。
 しかし、である。こんなに工期の比率が高いというのは、普通ではあり得ない。仮に、こんなに切羽詰まった日程でなく、元と同じように2年ぐらい前の時点でプランの決定がなされていたら、工期の点は問題とならないので、B案に決定していたはずだ。普通の決定方が取られていたならば、B案に決定していたはずなのだ。

 次の反論も来そうだ。
 「だとしても現実には日程が切羽詰まっているのだから、仕方ないだろ」と。
 ま、それはそうだ。しかし、問題点は別にある。
 「A案の方が工期の点で優れている、という事実はない」

 詳細を見よう。A案は B案よりも工期の点で優れているということだが、どれほど早く完成するのか? 実は、まったく同時期である! 
  ・ A 案 …… 工期 36カ月(16年12月着工、19年11月末完成) 
  ・ B 案 …… 工期 34カ月(17年 2月着工、19年11月末完成) 

 ( → 毎日新聞 2015-12-23[画像])

 つまり、どちらも 19年11月末に完成だから、工期の点ではまったく同じなのである! この点では、双方に同等の点数を与えるのが妥当だ。にもかかわらず、A案に大幅な高得点を与えた。これは、八百長である! つまり、こうだ。
 「建物そのものでは B 案の方が上。工期の点では、どちらもまったく同じ。しかし、点数だけは、A案が圧倒的に多い」
 これはまあ、東京五輪エンブレムの場合と同様で、建設会社として上である会社が、何らかの工作をして、自社になるように、選考委員に圧力をかけて、数字を操作した、と見なすのが妥当だろう。
 かくて、今回の選考への評価は、こうなる。
 「 B案の方が優れていたのに、裏工作による八百長で、A案に決まった」

 八百長による出来レース、というのが、エンブレムでも、建築設計でも、なされたことなのだ。



 【 補説 】
 上の結論だけでは物足りないかもしれない。情報量が少なすぎる感じだからだ。そこで、細部について調査をすると、驚くべきこととが判明した。
 A案とB案を比較したところ、両者は「ほぼ同等」というよりは、「 B案の方が圧倒的に優れている」ようだ。りう右派二つある。

 第1に、スタンドの位置だ。私としては、「A案の方がスタンドはフィールドに近い」と見なしたが、そういうわけでもないようだ。
B案: 移動が容易なシンプルな2層スタンド
( → 毎日新聞 2015-12-23 [画像])

 ということなので、この2層スタンドは、移動が可能なものとなっているらしい。つまり、サッカー観戦時には、スタンドがフィールドに近い位置に移動されるらしい。(1階部分だけか、2階部分も含めるかは、不明だが。)
 ともあれ、こういう構造があるのであれば、B案の方が圧倒的に優れていることになる。この点だけで、500点ぐらい上積みされるべきだからだ。
 どうも、この点を理解できていないのが審査委であるようだ。

 第2に、工期の点では、B案が圧倒的に優れているらしい。詳細は、下記の記事に詳しい。(建築エコノミスト 森山のブログ)
  → 新・新国立競技場計画でB案押しの理由
  → 新・新国立競技場計画でB案押しの理由A
  → 新・新国立競技場計画でB案押しの理由B
 要するに、B案では、建設の前の土木工事に十分な時間をかけている。というのは、この地域にはいろいろなものが埋もれている可能性が高く、土木工事の調査に時間がかかるからだ。その点を考慮している。かくて、土木工事には十分な時間をかけて、一方では、工期そのものは工夫によって2カ月間も短縮している。
 A案はどうかというと、土木工事の調査に時間がかかる、という点をまったく理解していない。何も考えずに、「たぶん出来ますよ」と楽観しているだけだ。つまり、先にある問題に気づいていない。また、工法の点でも、古臭い従来通りの工法を使うだけである。一方、B案の方は、工期短縮をするために、新たなアイデアの新たな公報を提出して、工期を短縮する。
 以上の点を見ると、A案は、問題の所在を理解せず、楽観している。この分だと、「19年11月末完成」という予想は実現困難で、かなり完成が遅れそうだ。早くても 20年2月ごろの完成になりそうだ。 

 まとめて言うと、こうだ。
 「 細部をいろいろと調べてみると、A案は B案よりも大幅に劣る。ほぼ同等なのに八百長で A案に決まったのではない。A案は大幅に劣るのに、八百長で A案に決まったのだ」

 こういう結果になったのは、裏工作があったせいか、審査委が無知すぎたせいかは、はっきりとしない。とはいえ、これは、エンブレムと同等というより、エンブレムよりもはるかにひどい八百長だと言えるだろう。(1400億円もかかるレースだから、八百長も必然かもね。)
 


 [ 付記1 ]
 以上を書いたあとで気づいたのだが、工期の点では、減点法で採点して、B案には問題点が多かった、という報道もある。
 審査委は両案に満点の210点近くを与えた後、実現可能性を考慮し、減点法で採点。その結果、A案は177点、B案は150点で27点差がつき、採用の決め手となった。
 村上委員長は「350項目以上を点検したところ、B案は新技術の採用や資材置き場の用地確保など不安要素がA案より多かった」と説明した。B案は準備工事の着工が16年6月と早く、行政手続きが間に合わない懸念もあった。
( → 朝日新聞 2015-12-23

 先の「建築エコノミスト 森山のブログ」とは正反対の評価となっている。
 採否を決める肝心の点で、評価が大きく異なっているようだ。それでいて、その部分の説明が十分でない。
 「新技術の採用や資材置き場の用地確保など」
 というが、これもおかしい。
 新技術の採用がいけないなんて、話が滅茶苦茶だ。特別に難しい技術でもなく、単にちょっと新しいだけというぐらいの技術で、「新しいのがいけない」なんて言い出したら、まともな建設工事はできなくなる。ほとんど、こじつけ。(仮に、新技術で何か問題があるとしても、そのときは従来技術に切り替えればいいだけだから、これは減点の理由とはならないはずだ。馬鹿馬鹿しい。こじつけだね。)
 資材置き場の用地確保なんて、言語道断だろう。こんな枝葉末節のことが決定を左右するなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。資材置き場の用地確保なんて、何とでも出来るはずだ。(隣にサブグラウンド用の場所もあるのだし。また、現在のラグビー場も取り壊して、その場所もあくのだし。場所はいっぱいある。そもそも、資材置き場は、周辺のどこかにあればいいのであって、近辺にある必要はない。)
 こんな馬鹿げたことを、決定を左右する点に掲げるとなると、この決定は、ますます八百長である疑いが強まったと言える。

 [ 付記2 ]
 朝日の記事には、次の解説もある。
 大会後の競技場の形は白紙だ。
 国内外の陸上の主要大会を開くには、近くに練習用トラックがないと「不適格」になる。五輪では仮設で整備するが、常設の練習用トラックを造る土地がないなら、球技専用スタジアムにする案が浮上する。
( → (時時刻刻):朝日新聞 2015-12-23

 この見解は、本項の冒頭で述べたことと合致する。「球技専用スタジアムにする」というのは、可能なのだろうか? よく検討してもらいたいものだ。
 なお、それが可能ならば、オリンピックのときのスタンドは仮設スタンドにするべきだ、となる。A案のスタンドが仮設スタンドで建設されるのならば、それが一応、ベスト(というよりはベター)かもしれない。
 


 【 関連サイト 】

 五輪エンブレムの問題で、「癒着があった」という告発みたいな声明がなされた。
  → 【速報】五輪エンブレム審査委員の平野敬子さんが佐野研二郎と関係者の癒着疑惑を大暴露
  → HIRANO KEIKO’S OFFICIAL BLOG
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posted by 管理人 at 08:14 | Comment(2) |  東京五輪 このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
森元総理がB案と口に出した途端に
私はA案になると確信した
審査員がマスコミや国民を恐れたと思う
森が何も言わなければB案に決まっていたと
思うがどうなんでしょ
Posted by ??? at 2015年12月23日 09:13
 最後に 【 関連サイト 】 を加筆しました。
 五輪エンブレムの癒着の問題。
Posted by 管理人 at 2015年12月23日 11:41
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