A案の新国立競技場のイメージ図=日本スポーツ振興センター提供・共同
2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備計画で、大成建設などのグループによる「A案」が選ばれた。デザインを手掛けたのは建築家の隈研吾氏。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が設置した有識者による審査委員会の評価で、竹中工務店・清水建設・大林組の共同企業体による「B案」をわずかに上回った。詳細な設計を今後進めたうえで、2016年12月に着工、19年11月に完成する段取りだ。
■木材と鉄骨のハイブリッド
大成建設などの案では、新競技場の総整備費は1489億円。観客席は3層構造で五輪時は約6万8千席となる。
新国立、僅差でA案に選定 大成建設「光栄の至り」(12月22日)
隈研吾氏が手掛けたA案のデザインの特徴となっているのが、外側に張り出す「軒ひさし」。法隆寺の五重塔の垂木(たるき)を連想させ、ひさしの上部に置くプランターには日本の野草を植える。
競技場の屋根は骨組みに木材を多用した「木と鉄のハイブリッド」構造で、木のぬくもりに包まれるような観客席をめざすという。
A案の新国立競技場のイメージ図=日本スポーツ振興センター提供・共同
新国立、「工期短縮」の体制決め手 僅差で決着(12月22日)
■3層の観客席、臨場感が長所
B案は観客席を2層としたが、A案は勾配を急にした3層にしてフィールドとの距離を近くした。「臨場感が全然違う。球技場として使うなら3層の方がありがたい」と日本サッカー協会関係者は話す。
A案の競技場内部のイメージ=日本スポーツ振興センター提供・共同
新国立、「工期短縮」の体制決め手 僅差で決着(12月22日)
■工期短縮の実現性を重視?
日本スポーツ振興センターの審査委員会の審査結果は980点満点中、A案が610点、B案が602点という僅差の決着となった。
審査の項目は「業務の実施方針」「事業費の縮減」「日本らしさ」など9項目。多くの項目が数点差で、うち5項目はB案が上回ったものの、「工期短縮」でA案が177点だったのに対してB案は150点にとどまり差がついた。
新国立、「工期短縮」の体制決め手 僅差で決着(12月22日)
新国立競技場の設計・施工業者の選定に向けて開かれた審査委員会(19日、東京都港区)=共同
更地となった国立競技場の跡地。新国立の工事は2016年12月に始まる予定だ(7月、東京都新宿区)=共同
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僅差で採用されなかったB案のイメージ図=日本スポーツ振興センター提供・共同
■資材価格・人件費など気がかりも
今回決まった「A案」の整備費は1489億円。関連の経費を含め、半分を国が負担し、4分の1ずつを東京都とスポーツ振興くじ(toto)の収益金でまかなう予定だ。ただ、建設資材の価格や工事関連の人件費の動向など不透明な要因も少なくない。「整備費が高すぎる」「情報公開が不十分」といった批判を浴び、「旧計画」撤回に追い込まれた騒動から5カ月。その教訓をJSCがどう生かすかにも注目だ。