「24年まで」日本参加延長に日米が正式合意
2020年で運用期限を迎える国際宇宙ステーション(ISS)について、日米両政府は22日、24年までの運用延長に日本側が参加することに正式合意した。共同文書では、日米の共同研究の推進のほか、ISSにある日本の実験棟「きぼう」について、アジア諸国など新興国に利用機会を拡大することなどを盛り込んだ。
キャロライン・ケネディ駐日米大使と、岸田文雄外相や馳浩文部科学相、島尻安伊子・宇宙政策担当相の3閣僚が同日、共同文書に署名した。文書は(1)「きぼう」での日米共同研究を促進する(2)日米の宇宙飛行士が協力して、アジアなど新興国の科学実験や、小型衛星の放出を実施する−−など6項目で構成。日本は、日米の宇宙飛行士のISS滞在枠を新興国に譲ることを提案したが、米国が反対したため見送った。
署名を終えたケネディ大使は「日本はISSにとって必要不可欠な存在。運用延長は、日米両国が連携して宇宙探査に当たるという、強力なメッセージを若者世代に発信することになる」と強調。岸田外相も「外交的にも重要な合意。日本として、今後もISS計画に貢献する」と述べた。
ISSは20年までの運用で参加15カ国が合意していたが、米国は昨年、24年までの延長を呼び掛け、カナダが賛同、ロシアも参加する方針を表明した。ISS参加をめぐっては、日本政府が年400億円を負担していることに対して費用対効果を疑問視する声が国内で根強いため、政府はISSで実施している従来の科学実験に加え、延長参加のための新しい意味づけを検討していた。【斎藤広子】
「長期的な視野で、日本独自の戦略が必要」
国際宇宙ステーション(ISS)をアジアの新興国支援に利用していくことなどで日米が合意し、日本は2024年までの運用延長に参加することになった。だが、ISS後を含めた有人宇宙探査の長期戦略は描けていない。17年には閣僚級で宇宙探査の将来像を話し合う国際会議の日本開催が決まっており、これに向けて議論を急ぐ必要がある。
米国はISSで宇宙長期滞在の知見を蓄積して将来の火星や小惑星の有人探査に生かす方針で、延長を参加各国に呼びかけた。ロシアは月面基地構想を提唱し、中国は独自の宇宙ステーション建設に着手して他国に参加を呼びかけるなど、各国で検討が進む。
だが、日本政府は宇宙基本計画で宇宙の安全保障や産業利用を重視する方針を打ち出す一方、ISSを含めた有人宇宙活動の議論は低調だ。
今回の日米合意に、内閣府宇宙戦略室の小宮義則室長は「ISSが広義の日米協力の中に位置づけられ、外務省も参加して議論したことは転換点になる」と胸を張る。
宇宙政策に詳しい角南(すなみ)篤・政策研究大学院大教授は「中国やインドが宇宙大国として台頭する中、日本としてISS後にどのような有人宇宙探査を進めていくのか。日米関係だけに引っ張られることなく、長期的な視野で日本独自の戦略を持つ必要がある」と指摘する。【斎藤広子】