「北京の韓国大使館など中国国内の在外公館勤務を志願する若い外交官が減っており心配だ。必要人数が何とか埋まる程度だ」
韓国外交部(省に相当)幹部が最近、内部で広がる「中国忌避」現象について話すのを聞いて少し驚いた。5-6年前までは中国の在外公館がワシントン、国連に劣らぬ人気だと話題になっていたからだ。
当時は「これから外交官として大きく成長するには中国を知らなくてはならない」というムードが大勢だった。米国と世界の覇権を争うほど成長した中国の国際的地位と韓国外交に与える影響力の拡大を考えれば自然な現象だった。米国業務を担当していた外交官も次々と中国勤務に手を挙げた。特に2011年の福島原発事故で日本勤務の人気が低下し、中国の在外公館の競争率が高まった。
そんなブームが数年後に敬遠へと変わったのは、中国の悪名高い大気汚染が原因だという。北京の空気が悪いのは別に最近の話ではない。しかし、改善の兆しどころか「殺人スモッグ」と呼ばれるほど環境が悪化し、「北京に3年勤務してがんになった人がいる」といったうわさも悪評に輪をかけた。特に子どもがまだ小さい外交官は次々と中国に背を向けている。
30代前半の外交官は「自分の経歴だけ考えれば、中国勤務をためらう理由はない。それでも妻子があんな環境で暮らさなければならないとすれば、話は違ってくる。かと言って、単身赴任も嫌だ」と話した。
十分に理解できる話だ。既に米国など主要国が北京勤務者に「スモッグ危険手当」を支給していることからも、問題が韓国の外交官だけにとどまらないことが分かる。
しかし、問題は外交官の「中国忌避」による後遺症が他国よりも大きいことだ。韓半島(朝鮮半島)の統一や北朝鮮の核問題、経済面など韓国の未来を左右する重要課題で中国は米国に劣らぬ決定的な変数となり得ることに疑問の余地はない。対中外交能力強化は国家の運命レベルの課題だ。中国のエリートとの人脈を広げ、彼らの意中を把握できる中国通を育成しなければならないが、「スモッグのせい」という弁明はあまりに寂しい。
とはいえ、「公職者としての使命感や根性が足りない」と若い外交官を責めるべき問題でもない。対中外交ですきが生じないように政府も先手の対応が求められる。中国が環境問題をいつかは解決するだろうと漠然と期待することもできない。当面代案がなければ、諸外国のように金銭的手当や次の勤務地で優遇するなどのインセンティブの導入も検討可能だ。今は若い優秀な外交官が中国勤務を希望しても足りない状況だ。