2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備計画で、政府は22日、設計・施工の公募に応じた2陣営の「A案」「B案」のうち、大成建設などのグループの「A案」が選定されたことを明らかにした。デザインは建築家の隈研吾氏が手掛けた。旧計画の白紙撤回から約5カ月を経て、宙に浮いていた競技場建設が再び動き出す。
事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の大東和美理事長が審査委員会の審査結果などを踏まえて優先交渉権者とする陣営を決定し、同日の政府の関係閣僚会議(議長・遠藤利明五輪相)で了承を得た。
安倍晋三首相は会議で「基本理念、工期やコストなどを満たす素晴らしい案だ。次世代に誇れるレガシー(遺産)にする」と表明。遠藤五輪相はその後の記者会見で「アスリート第一、世界最高のユニバーサルデザイン、日本らしさなどで素晴らしい案が選ばれた」と述べ、審査委の評価は980点満点中、A案が610点、B案が602点だったと明らかにした。
A案内部=日本スポーツ振興センター提供・共同
JSCは14日、公募に応じた大成建設などの案を「A案」、竹中工務店、清水建設、大林組の3社による共同企業体(JV)の案を「B案」とし、それぞれの提案内容をホームページで公表していた。
大成建設などの案では、新競技場の総整備費は1489億円。観客席は3層構造で五輪時は約6万8千席となる。デザインは隈氏が担当。「木と緑のスタジアム」をテーマに、木材と鉄骨を組み合わせた屋根や張り出した「軒ひさし」で日本らしさを表現した。
16年1月の契約締結後、設計に着手。同年12月に着工し、19年11月末の完成を予定している。
大成建設は22日、「極めて重要な国家プロジェクトの優先交渉権者に選定されたことは光栄の至りです。その責任の重さを十分認識し、国民の皆様に喜んでいただけるスタジアム建設に精一杯取り組みます」とのコメントを出した。
JSCは19日、建築や設計などの専門家7人による「技術提案等審査委員会」(委員長・村上周三東大名誉教授)の最終審査を非公開で行い、各委員が140点満点で両案を採点。大東理事長がアスリートや国民から寄せられた意見も踏まえて結論を出した。
新国立競技場を巡って、JSCは12年11月、国際コンペで英国の建築家、ザハ・ハディド氏のデザインを選定した。しかし、巨大な2本のアーチなどの斬新なデザインに加え、資材費・人件費の高騰もあって整備費が膨張。政府は今年7月、整備費を2651億円とする整備計画をいったん了承したが、国民の批判を受けて撤回した。
政府は8月に整備費の上限を1550億円とする新たな整備計画を公表し、2陣営が設計・施工業者の公募に参加していた。
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