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 日本の企業で、かつて盛んに開かれていたものの、廃れていた「社内運動会」を復活させる動きが広がっている。「社員同士の絆を深められる」「一体感を生む」といった点が脚光を浴びている。今年で69回目、家族を含めて約3万人が参加したというトヨタ自動車の駅伝大会で、その「効用」について聞いてみた。

 12月6日朝、愛知県豊田市保見町のトヨタスポーツセンターにトヨタ自動車の社員とその家族が集まった。恒例の職場対抗駅伝大会で、豊田章男社長ら役員も勢ぞろいした。

 各部署と海外も含む計508チーム、社員ら約4千人が30キロと22キロに分かれて、たすきをつないだ。スタンドや沿道では、同僚や家族ら約2万7千人が声援を送った。

 30キロを8人でつなぐロングコースでは、工場設備の資財などを調達する生産管理部が優勝した。約500人の所属社員は本社工場のほか、みよし市などの12の工場に分散している。だが当日は半数近くが集まった。監督兼選手の粥川(かいがわ)隆弘さん(33)は「駅伝がなかったら、同じ部署なのに顔を何年も見ることがない人がいただろう」と話す。練習にも多くの社員が顔を出したことで親交が深まったという。

 粥川さんの上司で資材管理課長の西薗一彦さん(55)は「部内はもちろん他部との風通しも格段に良くなる。社内の人間関係を築く上で最も効果的なイベントだと思う」と話した。

 大会を運営する人事部によると、駅伝が始まったのは戦後間もない1947年。50年代に1回中止しただけで今年で69回目を迎えた。上司と部下の垣根を越えて共通の目標を掲げ、支え合いながらゴールを目指す駅伝は社是に通じるといい、これまでに廃止論議は一度もなかったという。人事部企画室の田中正道コミュニケーション推進グループ長は「新入社員は駅伝を通じて顔を覚えられ、初めて『社員になれた』と実感する。社員は仕事の次に駅伝を大事にしている」と言い切る。