大規模修繕工事の前に知っておきたい20のポイント
先日スタートした大規模修繕の施工会社紹介サービスである「修繕サポートセンター」はスーモジャーナルやgooニュースなど多くのメディアで紹介いただくことが出来ました。
そこで今回のブログでは、今まで当サイトで紹介してきた大規模修繕工事で知っておきたいポイント20個を5つの項目に分けて紹介します。
マンションの管理組合にとっマンションの大規模修繕工事は最重要課題の一つです。大規模修繕工事に向けての参考になれば幸いです。
修繕工事3つの方式
大規模修繕工事には責任施工方式、設計管理方式、CM方式の3つの進め方があります。
1責任施工方式
責任施工方式とは管理会社や施工会社に修繕工事の全てを委ねる方法です。大規模修繕工事では業者選定に多くの時間を割くことになります。その中で選んだ一社に全てを託すことになるので、発注者にとって最も楽な方式と言えます。
比較的戸数の小さなマンションでは、後述するコンサルを入れる方式ではなく、この方式で行われることが少なくはないと思います。
2設計管理方式
工事業者を監理するために設計管理会社(コンサル)を雇う方式が設計監理方式です。コンサルが第三者として加わるためにチェック機能が厳しく働く方式です。
しかし「設計管理会社と親密な関係にある施工会社を選びがちになる」というデメリットも存在するため、せっかくのチェック機能が正常に機能しない可能性もあります。
「コンサルに頼んだから安心」ではなく、任せきりにしないことが必要です。
3CM方式
設計管理方式と同じようにコンサルを入れることになりますが、大規模修繕における各工事を塗装はA社、外壁はB社、 配管はC社といった形でそれぞれ別の業者が行う方法です。
それぞれの工事において業者を選べるため、最も適した業者を選べるかもしれませんが、各工事ごとに業者が変わるために、細かな調整が必要になりコンサルの力量が非常に問われます。
なお、修繕工事をCM方式で行ったという話はあまり聞いたことがありません。
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マンションの修繕工事3つの方式 マンションを適切に維持、管理していくためのには修繕工事が必要不可欠です。適切な修繕工事が行われ...
施工業者選定6つのポイント
大規模修繕工事の業者選びは管理組合にとっても最も重要なポイントです。工事内容や修繕積立金の金額とともに慎重に進めなければなりません。そこで施工業者を選ぶ上での6つのポイントを紹介します。
1建築した業者にこだわらない
大規模修繕で行う工事の工法は確立されており、特定の会社でないとできない工事というものは存在しません。
そのため、『建築した会社やそのグループに大規模修繕も任せなければならない』ということはありません。
心理的な安心はあるかもしれませんが、枠に捉われず、管理組合自らの手で選ぶことが必要です。
2区分所有者や理事と関係にある業者は避ける
理事長が紹介してくれた会社だからと言って良い工事をするとは限らず、逆にリベートなどを受け取っているのではないかと勘繰られたりするケースもあります。
また工事中に何か問題が起きた場合、業者選定で理事長と反対の立場の人がいた場合、根虚のない噂など言われてしまうケースもあります。
管理会社推薦枠、管理組合推薦枠、という形であればよいですが、特定の個人の推薦はあまり良い結果にならないことが多いため、第三者などを利用して中立の立場から選定することが必要です。
3業者の規模や直近の施工実績を知る
マンションの大規模修繕はその名が示す通り、工期も長く大掛かりな修繕工事です。
そのため慣れがある業者の方がベターでしょう。また業者の規模が大きいほど、中間マージンが増え高くなりますが、ある程度は安心代と考えることもできます。なお、工事は高いが管理会社に修繕を依頼するという組合の方は安心料を支払っていると考えることもできます。
また直近の施工実績についても確認したいところです。大規模修繕は「入居しながら」の工事になるため、ある程度慣れがないと、トラブルが起きやすくなります。
4プレゼンで社風を知る
価格だけで決定できないのが大規模修繕の難しいところではないでしょうか?
入札のように価格ありきではなく、かならずプレゼンを行いどのような会社なのか、その社風や修繕工事に対するスタンスを知ることが重要です。
自社の社員が現場を回るような会社なのか?人だけを出している会社なのか?
それを知るだけでも選定に大きく役立ちます。
5現場監督予定者の人となりを知る
プレゼンには営業担当だけではなく、工事の現場責任者にも同席してもらうようにしましょう。
大規模修繕はコミュニケーションが重要です。それは、住民だけでなく、現場の職人や管理会社も含めてです。
営業担当だけと話して決めるのではなく、工事責任者もプレゼンでしっかりと見極め工事業者を決定することが重要です。
「多少高くてもこの人に任せたい」そういって施工会社が選ばれるケースもあります。
6アフターサービスを知る
大規模修繕工事は工事が終わったら終了ではありません。
1年点検、2年点検、5年点検と点検保証がついてきます。保証アフターサービスの内容は、工事後の維持管理コストを考える上で非常に重要です。
工事見積もりだけではなく、どのような保証がついてくるのか、それもしっかり確認しましょう。
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区分所有者の意思集約の3つポイント
大規模修繕の工事を決定するのは理事会ではなく、管理組合の総会です。この総会で工事の議案を上程するまでの道のりは長く、全てが満場一致で進むことはありません。
マンションの区分所有者の意思をまとめ、修繕工事までこぎつけるための3つのポイントを紹介します。
1結論を急がないこと
マンションの大規模修繕は非常にお金がかかる工事です。理事会や総会で様々な意見がでるのは当然であり、結論に慎重になることも当然のことです。
ある50戸のマンションの事例ですが、建物のどこが悪いのか劣化診断を実施してから、修繕工事が実施されるまで4年の年月がかかったケースもあります。
急を要する工事はないので時間をかけてじっくり進める、ということも非常に重要なことです。
2反対意見にも耳を傾ける
大規模修繕の業者選定や工事内容の仕様確定で議論が紛糾して前に進まなくなるというケースもあります。今やるべきか、今はやらないべきか、
これはどちらが正しいとは一概には言えません。
異論を排除するような流れになると、意見を排除された方はその工事に対して不満を持つでしょう。議論が泥沼化しなければいいのですが、そうなってしまうケースもあります。
多額の費用が掛かる工事ですので、相手の意見に耳を傾けながら進めることが必要です。
3泥沼化したら一旦リセットする
議論が迷路に入り、二進も三進もならないということもあるでしょう。その場合は、振り出しに戻す勇気も必要かもしれません。
理事会の体制を変更する、修繕委員のメンバーを入れ替える、第三者に相談するなどして、新体制で仕切り直すことが遠回りに見えて、もっとも近道ということもあります。
大規模修繕工事~区分所有者の意思の集約
区分所有者の意思の集約 マンションの大規模修繕工事を決定するのは、言うまでもなく管理組合の総会です。そこに上程される大規模修繕...
資金調達で考慮したい3つのポイント
マンションの大規模修繕工事に理事会を悩ませるのは資金不足の問題です。
修繕積立金に余裕があれば別ですが、そのようなマンションばかりではないのが現実です。
「もっと早くから管理費を削減するなどして手を打つべきではなかったのか?」と過去の理事の方を責めるケースもあります。
確かにそうかもしれません。しかし、資金を集める工事金額を削減するなどして、目の前の修繕不足の問題を解決しなければなりません。
資金を調達するとなった場合に、考慮してほしい3点を紹介します。
1将来の資金計画も考慮する
現時点で足りないということは、次の大規模修繕工事でも資金不足は発生してしまうでしょう。
工事費を抑え少しでも借り入れを少なくして目の前の問題を乗り切る、
それも非常に重要なことですが、このタイミングで修繕積立金の調達計画をしっかりと見直すことも重要です。
2管理コストを削減する
修繕積立金のことだけではなく、毎月の管理費の削減も同時に検討をしましょう。
電力の自由化で共有部の電気代は削減できるようになるでしょう。LEDを導入する、保険の契約期間を見直す、管理会社をリプレイスして管理依託費を下げる、など様々な手があります。
次期の修繕に向けて少しでも資金繰りを改善する対策を実施しましょう。
3助成金の情報を集める
マンションはコミュニテイとしての機能も有しています。そのため、マンションの共有部に対する修繕工事に対して、市や地方自治体から助成金が出る場合があります。
行政の動向に目を配ることも重要ですが、管理会社や施工会社に相談するもの手です。ある程度の施工会社であれば、こういった情報はデータとして持っているはずです。
大規模修繕工事~資金調達
乗り越えなければならない壁、資金調達 マンションの大規模修繕工事をするにあたって管理組合の理事さんたちの頭を最も悩ませるのは、...
大規模修繕でよくある5大トラブル
次期の修繕に向けてとなりますが、大規模修繕は工事を決定するまで一苦労ですが、残念ながら工事が始まってからもトラブルが発生してしまうケースがあります。最後に大規模修繕でよくあるトラブルを5つ紹介します。
1騒音、臭い、ホコリ、振動の問題
最近では臭いの少ない塗料や、低騒音型の機材などが出てきてはいますが、全くのゼロというわけではありません。
そしてこれらのトラブルの原因の多くは「工事のお知らせ不足」に起因しています。
いつ始まっていつ終わるのか?それがわかっているだけで多くのクレームは防げます。入居者に我慢を強いる工事は、しっかりと期間や時間をアナウンスすることが重要です。
2プライバシーの問題
大規模修繕工事でマンションの外壁に対してメンテナンスを実施します。そのため、組み上げた足場などから、室内が見えるというのは避けようがありません。
カーテンを閉めておくようにとのアナウンスを実施していても実践されず、トラブルになってしまうこともあります。
こちらも騒音同様、丁寧なアナウンスが必要です。
3空き巣の問題
大規模修繕で足場を組み上げて工事をする場合、その足場を利用して進入盗(空き巣)が入るが可能性あります。
センサータイプのサーチライトをつける、 場合のよっては警備カメラを設定してもよいでしょう。大規模修繕専用に警備カメラを扱っている業者もあります。
4施工できないケースが存在する
バルコニーは共有部であり、防水などは修繕工事で対応すべきものです。
しかしバルコニーに私物やタイルなどが貼ってある場合、修繕工事ができません。
法廷共有部のため「修繕工事をやらない」というわけにはいかず、放っておくと下階への水漏れやマンション劣化につながってしまいます。
5近隣からのクレーム
マンションが隣あっているようなケースでは、近隣住民への配慮が必要です。
修繕工事が必要なのはお互い様なのですが、こちらの修繕でホコリがまって選択ができない、音がうるさいなどの問題が発生する場合があります。
近隣住民への対応も必要な場合があるのです。
大規模修繕工事~5大トラブル
大規模修繕工事でよくある5大トラブル 大規模修繕を決定するまでには、山あり谷あり、紆余曲折があるのが普通です。工事内容、資金調...
まとめ
業者の選定、工事の仕様確定、資金の調達、区分所有者の意見集約など、理事会・修繕委員会の仕事は多岐にわたります。そして、大規模修繕を行わないマンションは存在せず、どのマンションも大規模修繕は行わなければなりません。
大規模修繕知っておきたい20のポイントを紹介させていただきましたが、無関心になりがちなマンション管理。意識することが、一番大事なことかもしれませんね。