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 中央自動車道の笹子トンネル(山梨県)で2012年12月、天井板が崩落して9人が死亡した事故で、遺族が中日本高速道路(本社・名古屋市)と子会社に総額約9億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、横浜地裁であった。市村弘裁判長は、計4億4千万円余りを支払うよう会社側に命じた。

 判決は、天井板を固定するボルトが劣化したことなどが、崩落の原因と認定。建設から35年が経過しており、「打音や触診といった適切な点検をしなければ、不具合を見過ごし、事故が起きると予見できた」と指摘した。さらに、こうした点検をしていれば事故は防げたと述べ、中日本高速と子会社に道路管理上の過失があったと結論づけた。

 原告は、東京都内のシェアハウスに住んでいた20代の5人の遺族ら12人。ワゴン車で山梨県に観光に出かけ、帰り道で事故に遭った。遺族側は事故原因の究明を求めて提訴していた。

 裁判で遺族側は、トンネルは老朽化しており、事故は予見できたと主張。事故の3カ月前の12年9月、子会社が天井板を固定する部品を点検した際に、打音検査や、近接して目視をしていれば事故は回避できたと訴えた。

 これに対し中日本高速側は「天井板は通常、備えるべき安全性を欠いていた」と一定の損害賠償に応じる考えを示す一方で、維持管理に過失はなかったと主張していた。

 この事故をめぐっては遺族らが三つの訴訟を起こしており、判決は初めて。賠償請求額は最も大きい。残る二つの訴訟はいずれも、来年2月16日に横浜地裁で判決が予定されている。