筒井竜平
2015年12月22日08時58分
亡き妻を何度も搬送してくれたお礼です――。兵庫県西宮市南郷町の伊藤渡(わたる)さん(95)が、市に救急車を寄付した。「家内が世話になったように、多くの人の助けになれば」と思いを託した。
伊藤さんは1920(大正9)年、大阪市北区に生まれた。旧制中学校を卒業後、父親が創業した同市中央区の作業服メーカーに就職。2代目の社長を経て、いまは会長を務めている。
妻の美知子さんとの出会いは27歳のころ。終戦直後のお見合い結婚だった。
55年ごろ、西宮市に移住。2人の子どもを育てた。ここ30年ほどは夫婦2人暮らし。「家内は植木をいじるのが好きでね。庭の手入れをようしてくれた」
高齢になった美知子さんは、庭でよく転んだ。「こけると、すぐ骨折しますねん。3回、救急車のお世話になりました」
昨年7月、美知子さんが90歳で亡くなった。「2人で仲良う子どもを育てて、いつも一緒にごはんを食べてたからね」と伊藤さん。ふとした時に美知子さんを思い出す日々が続いた。
半年ほどして気持ちが落ち着き、救急車の寄付を思い立ったという。
車両のナンバーは伊藤さんの誕生日にちなんだ。オゾン消毒器や人工呼吸器などを積み込み、あらゆる救急業務に対応できる「高規格救急車」として来年2月、自宅に近い北夙川消防分署に配置される。
購入額は1800万円ほど。「市民のために活躍してくれたら、言うことないですわ」(筒井竜平)
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朝日新聞社会部
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