みなさんこんにちは!研究開発部 泉田です。
世の中の有名デジタル施策を勝手に技術解説するこのコーナー、「あれどうやってるの?」。 連載第5回目の今回はいつもと趣向を変えまして、年末特別編としてお送りさせていただきます!
さてみなさん、年末ですよ!年末!2015年もあと少し。今年もいろいろとありましたね。 あんな広告事例やこんなテクノロジー。IoTなんて言葉も徐々に一般的になってきまして、技術の幅も多様になってきた1年だったかと思います。
そこで今回は、今年 2015年に私泉田が気になった広告施策やテクノロジーなどをまとめて紹介していきたいと思います! いろいろと絞ろうとは思ったのですが、なかなかどれも甲乙つけ難く...。気づいたら20事例ほどになってしまいました...。
【広告】、【アート】、【プロダクト】、【研究】の4つのカテゴリーに分けまして、それぞれご紹介していきたいと思います!
【広告】
Toyota - A Sirious safety message
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TOYOTA のラジオ広告@スウェーデン。エージェンシーは Saatchi & Saatchi。 運転中の事故を防ぐため、スマートフォンをフライトモードに入れましょうというキャンペーン。 ラジオから突然「Hey! Siri!」「Please turn air plane mode on.」と流れ、ユーザの iPhone 内の Siri に勝手にフライトモードへ入れさせてしまう施策。
ワンポイント感想
Siri を巧みに使った広告に目からウロコでした!映画館上映前なども同じアイディアが使えるかもしれません。
Desfile nas Alturas - Black Friday Colombo
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ブラジルのファッションメーカー Camisaria Colombo の広告。エージェンシーは Salles Chemistr。 ブラックフライデー(殆どの人が休暇を取る日)にもかかわらずオフィスで仕事をしているエグゼクティブに向けたファッション広告。 Camisaria Colombo の服を着たマネキンを吊り下げたドローンがオフィスビル街を飛び交い、仕事中のビジネスワーカーにセールを知らせる。
ワンポイント感想
ドローンなどの新技術はインパクトが大きい反面、効果的に広告メッセージに組み込むのが難しいのですが、こちらの施策はビシっとはまっていて素敵ですね!
Charity Arcade
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スウェーデン空港とスウェーデン赤十字の共同施策。エージェンシーは Åkestam Holst。 空港内に設置されたアーケードゲーム筐体。コインを入れると「パックマン」などの往年の名作ゲームをプレイすることができる。 投入されたコインは筐体下部の透明なボックスの中に蓄えられ、貯まった金額がスウェーデン赤十字に寄付される仕組みとなっている。
ワンポイント感想
ゲームが楽しめて、更に募金にもなる。関わる全員が幸せになる素敵な施策です!
【アート】
WARDE
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イスラエルを拠点に活動する建築ファーム HQ Architects の屋外インスタレーション。 広場に設置された巨大な花。この花は人が近づくことで大きく花を開かせる。 開かれた花が日傘や照明の役割を果すことで、単なる通路をコミュニティ空間に変えるインスタレーション。
ワンポイント感想
空気圧制御で花の開閉を行うことで、巨大な構造物を安価に安全にアクチュエーションしているのが素晴らしいですね。
toki
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メディアアーティスト後藤映則氏の作品。 人が歩くイラストをアニメーションさせた軌跡を 3Dプリンタで造形。 その造形物にスリット状に光を当てることで、非離散的なゾートロープを創りだした作品。
ワンポイント感想
3Dプリンタの活用方法として非常にユニークなアイディアで脱帽しました!
SUAVECICLO
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ブラジル・サンパウロを拠点に活動するアートデュオ VJSUAVE のアートパフォーマンス。 移動式プロジェクションシステムにまたがり、街中のいたるところに出没。 壁や道路にドローイングやアニメーションを投影することにより、プロジェクションを通じてストリートでのコミュニケーションを行う。
ワンポイント感想
「プロジェクションマッピング」というキャッチーな言葉がある種バズワードのように一人歩きしてしまっている昨今。プロジェクションをただのコミュニケーションの「道具」として再構築する姿勢に新しさを感じました。
3D Printing Fashion
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ファッションデザイナー Danit Peleg 氏による 3Dプリンティングファッション。 3D プリンタを使って出力された、構造化された衣服。 バネのような複雑な構造で構成されており、通常の布とは異なる独特のはためきやシルエットを与える。
ワンポイント感想
物質自体ではなく、構造を変えることによって物体の特性を変化させる。この3Dプリンティングならではの発想がファッション的な欲求にうまく結びついている素晴らしい事例です。
【プロダクト】
EveryStamp
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EverySense が開発したセンサーIoTキット。 各種センサの組み換えが可能な汎用環境センサーデバイスで、温度、湿度、気圧など様々なセンサを自由に組み合わせることが可能。 また、取得したデータを集計して企業に販売することができる独自のプラットフォーム EverSense も提供されている。
ワンポイント感想
まだまだ IoT といってもネットに繋がる"だけ"のデバイスが多い中、データを取得した後にそれをビジネス活用するプラットフォームごと提案しているところが面白いですね。
AMINO
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Amino Lab が製作する生物学習キット。 子供が自宅で簡単に生物学の学習ができるキット。 バクテリアの培養や DNA の操作などが簡単に行えて、本格的な生物学の実験を行うことが可能。
ワンポイント感想
バイオ分野はいま注目が大きいですが、その反面学習の敷居が高い...。それを解決してくれるキットだと思います。
Ferrolic
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オランダのインダストリアルデザイナー Zelf Koelman氏が作成した磁性流体時計。 磁性流体がまるで生き物かのように板状を蠢く。 やがてそれらが集まることで数字を描き、時刻を表す時計として機能する。
ワンポイント感想
なにはともあれまずはこの磁性流体の動き!尺取り虫のような生物を想起させる動きがとてもエモいです!
GravityLight
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重力の力で点灯する照明、GravityLight。 未だ世界の人口の 15% の人が電気を使えない地域に住んでおり、そういった人たちのために開発された照明。 約9kg の重りを吊り下げることにより、重力に引かれる力を利用して発電し明かりをつけることができる。
ワンポイント感想
途上国向けの照明はいろいろとありますが、重りをぶら下げるだけという非常にシンプルな解決方法は秀逸ですね!
MX3D BRIDGE
{y:pZNTzkAR1Ho}
オランダの 3Dプリンティングアーム企業 MX3D による、橋を 3Dプリントするプロジェクト。 溶接により自在に金属を形成することができるロボットアームを使い自動で橋を 3Dプリントする。 従来の建築手法上の制約を受けずに橋を組み立てる事ができるため、自由な形状且つ低コストで橋を作ることが可能。
ワンポイント感想
3Dプリントによって従来では実現不可能な構造で橋を作ることができる。強度などもさることながら、単純に美しいなと思いました。
ONTENA
{y:NfIaycdBdc4}
未踏2014 にも採択されたことでも有名な、音を光と振動に変換するアクセサリONTENA。 ろう者のためのユーザーインターフェースを目指し、音を光と振動に変換して装着者に伝えるためのデバイス。 音の特徴を解析しその特徴によって光や振動を変化させることで、どんな音がなっているかを使用者に伝えることが可能。
ワンポイント感想
安価で小型、身につけられるデバイスが増えていくことで、人間の感覚を拡張できる可能性が感じることができて素晴らしいと思いました。
【研究】
Reality Editor
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MIT Media Lab 発の AR物理インターフェース。 設置されたスイッチや照明などをスマートフォンで撮影し認識。 認識されたもの同士をスマートフォン上で関連付けたり操作したりすることで、現実世界の物体を操作することが可能になるアプリ。
ワンポイント感想
その昔「ユビキタス」という言葉が流行ったことがありましたが、その時思い描かれていた世界がようやく実現したかのようで胸熱です!
EMSense
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Disney Research の研究成果。ユーザが何を触ったかを解析できるスマートウォッチ。 スマートウォッチに仕込まれたセンサーから、人間の腕を通して触れた金属が発する電気的ノイズをキャッチ。 その特性を解析することによってユーザがなにに触れているのかを特定できる。
ワンポイント感想
Disney Research の電気特性の解析の研究は以前より目を見張るものがありましたが、ついにウェアラブル端末を通じた解析が可能になっているようです!素晴らしい!
uniMorph
{v:140531125}
MIT によるフィルム状のアクチュエータ。 熱膨張率の異なるフィルムと銅箔を貼りあわせ、曲げたい方向に合わせて銅箔をパターン状に整形する。 銅箔部分に電圧を加えることによりデザイン通りにフィルムが曲がる。
ワンポイント感想
モータに変わる「やわらかい」アクチュエーションの手段として非常に有用だと思います。
HYPERCELL
{v:139426419}
イギリスAAスクールのデザインリサーチラボによるユニット建築システムおよびロボット。 自律動作可能なユニットロボットが自己同士を結合させながら立体建造物を自己構築していく。 柔らかな外骨格を持ったユニットロボット自体や、それらを動作させる建築システム全体の研究。
ワンポイント感想
ロボットの小型化や自律協調動作などこれからのロボットの形が見える素敵な研究です!また、ユニット構造による建築も非常に魅力的です!
WaterReaction
{y:iW_IyExkydI}
イギリス RCA 在学中のプロダクトデザイナー CHAO CHEN による、吸水により動く素材。 松ぼっくりの笠など、水分を吸水することにより形状を変える自然素材に着目。 それらの特性を利用することで雨天時に自動で閉じる窓など、水分に対するインタラクションを実現。
ワンポイント感想
インタラクションというと「電気」を使うことを思い浮かべがちですが、それ以外にも手法があるということを気づかせてくれる研究です。
Animating Virtual Characters using Physics-Based Simulation
{v:79098420}
オランダ ユトレヒト大学の Thomas Geijtenbeek 氏による物理歩行シミュレーション。 様々な形状のキャラクターを定義し、それらの骨格情報を設定。 骨格情報を元に遺伝的アルゴリズムを用いて歩行を学習させ、各キャラクターの効率的な歩行動作を骨格情報から導き出す。
ワンポイント感想
アニメや CG などで非実在のキャラクターなどを描く際、物理学的に理にかなった動きを想定できるのは素敵だなと思います。
eMotionSpheres
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ドイツのファクトリーオートメーション企業 FEST の技術研究のために作られた風船型ドローン。 風船状の球の側面にプロペラを装着し、プロペラの回転制御により3次元的に移動する。 Ars Electronica では複数台によるパフォーマンスを披露した。
ワンポイント感想
各プロペラは非常に簡単な作りでありながら、バルーンと組み合わせることにより自在な移動ができる発想に脱帽です!
さて、いかがでしたでしょうか?
有象無象の20選となりましたが、最近はテクノロジーのくくりも曖昧になってきて個人でもいろいろな分野に手を出すことができるようになってきました。 その分、どんなテクノロジーを選んでどういったものを作り上げていくか、そのプロセスが重要になってきているような気がしています。
それでは、皆様良いお年を!
来年もご贔屓によろしくお願いします!