メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「林業成り立たぬ」…森林除染せず

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で、生活圏から離れた大部分の森林を対象としない方針を国が表明したことに、福島県の森林組合や帰還を目指す住民から批判や不安の声が上がった。【土江洋範、岡田英】

    放射性物質流出も懸念

     全域避難が続く飯舘村の森林組合は、避難指示解除後に営林を再開しようと国に除染を要求してきた。村の面積の8割は森林。佐藤長平組合長(64)は「放射線量が高くて作業員が入れない場所もある。除染しなければ事故前のように林業に従事することはできない」と肩を落とす。

     一方で国の方針は、平均空間放射線量率が被ばく線量管理を行う必要がない毎時2.5マイクロシーベルト以下の場所であれば、間伐などの森林整備を行うことを林業者らに求める。森林内の下草などが育てば、放射性物質を含んだ土砂が生活圏に流出するのを防ぐ効果が期待されるためだ。

     管理する大半の森林が避難指示区域内にある双葉地方森林組合の秋元公夫組合長(68)は「被ばくへの不安から作業員が集まらないのでは。作業員の健康に何かあったら責任を取るのは組合。現場任せにされては困る」と指摘する。

     阿武隈高地の山間部にある葛尾村は来春の避難指示解除を目指す。解除後に村で野菜栽培をしようと考えている女性(77)は「安心して暮らすため本当は除染してほしいが、金も時間もかかるなら仕方がない。その分、生活拠点をしっかり整備してほしい」と話す。

     国は、放射性物質を含んだ土砂の流出によって生活圏に影響が出る恐れがある場合には、防止柵などを設置するとしている。同村の下葛尾地区で行政区長を務める遠藤英徳さん(73)は「完全に土砂の流出を防げるのか。山は広く、限界がある」と不安を口にした。

    あわせて読みたい

    制限なく記事をお読みいただく方法はこちら

    毎日新聞のアカウント

    のマークについて

    話題の記事