滅びし平家の恨み、忘れたわけではあるまいな…
先日、Webのニュースでこんなものを見つけた。
なんと、ナムコの往年のゲーム達がYahooゲームにて配信されるというのだ。とはいえ、勿論当時の姿そのままではなく、現代風にアレンジされた形で蘇るらしい。
自分は、源平討魔伝が大好きである。
小学生の頃に初めて出会い、中学生の時に地元のゲームコーナー(田舎だから「センター」はなかった)に入荷した時は、それは猿のようにやりまくった。PCエンジンを友達から買った時は真っ先にHuカードを買いに行ったし、ナムコミュージアムのVol.4は永久保存版として今でも大事にとってある。
ちなみに、時々書いている「レトロゲーム回顧録」でも源平討魔伝は第2回目で取り上げている。本当に好き好きなのだ。
正直いって、ナムコが今更このゲームの事をどうにかするなどとは夢にも思わなかった。過去にもNAMCO x CAPCOMで景清が出てきたり、太鼓の達人でBGMがアレンジされるくらいで、後は特にこのゲームの財産を活かそうとしているようには思えなかったからだ。
だから、冒頭のニュースの「見出し」を見た時は素直に驚いた。ナムコ、源平の事覚えてたのか!と、期待を膨らませて記事を見に行った。
そこで、見てはならないものを見てしまったのだ。
ぱずるろまんす… いけめん…
まず、なんで今回こういう企画が持ち上がったかというと、バンダイナムコの統合10周年記念企画として「カタログIPオープンプロジェクト」というものが始まっていたらしい。
ウェブサイトの説明によれば…
バンダイナムコエンターテインメントでは、現在『パックマン』『マッピー』『ゼビウス』など往年の人気17タイトルのIPを日本国内のクリエイターに開放し、2次創作を許可する「カタログIPオープン化プロジェクト」を展開しています。
この「往年の人気17タイトル」の中に源平討魔伝が含まれていたのだ。これは驚いた。
今回Yahooゲームで提供されるタイトルは以下の5タイトル。
<新規タイトル>
・『とびだせ! パックマンラン』
・『源平恋愛組絵伝』
・『ナムナム』
・『ひっぱりマッピー大作戦』
・『ワルキューレを守れ!』
ん?
『源平恋愛組絵伝』
(;゚Д゚)
(゚Д゚;)
(;つД⊂)ゴシゴシ
(゚Д゚)え?
落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ。
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97…
ふう、じゃあ、ゲームの説明を見ていこうか。
1986年発売『源平討魔伝』のIPを利用したオリジナルタイトルです。豪華声優出演!本格パズルロマンス!源平討魔伝のキャラがイケメンになって登場!
なんじゃぁこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!
待ってくれ俺ぁ…
俺ぁ死にたくねえよぉ…
ナムコぉ… ちょっと待ってくれよ…
なあ、どうして逃げちゃうんだよ…
じつはさめがめでした。
もう素数を数えようにも計算が出来ないので、現実を直視するしか無い。
ゲームをスタートすると、ストーリーの説明が始まる。
主人公の名前は清(きよ)。彼女には幼いころの記憶がない。討魔士として育てられた清は、女であることから都で要職を任されることはなく、「景清」と言う影の名を与えられ、男として生きることになった…
お、おう。まだ許容範囲内。
どうやらルールはマッチ3パズルのようだ。2マッチでも消えるが、スコアにするためには3つ以上消す必要がある。
対戦相手を3人のキャラから選ぶ。とりあえず源義経を選択。キャラの説明は…
天真爛漫な野生児。
戦闘に天武の才あり。そこいら武士に勝る。
幼少時に寺に預けられ、父の顔も母の温もりも知らない。
まだだ、まだ慌てるような時間じゃない。
唐突に衝突し、床ドン状態になっている主人公と義経。そして、パズルが始まる。
ゲームが始まると、パズドラの様な画面が出てきた。だが、オブジェクトは動かせない。クリックしてみると接触している同じ柄のオブジェクトが消え、そこに上から別のオブジェクトが落ちてきて敷き詰められた。
あ、これマッチ3パズルというか、むしろ「さめがめ」だった。要は、2つ以上接触しているオブジェクトを消すことができ、一度に多くのオブジェクトを消すと高スコアが獲得できる、かなり古典的なゲームだ。
その後、義経が勝手に景清を「兄貴」と慕って仲間になる。 そして、景清は自らの「女である」という秘密を守りながら、日夜戦いに明け暮れるのであった。
ちなみに、恋愛要素はどこにあるかというと、対戦した相手との親密度が上がっていく仕組みになっているようで、親密度が上がれば色々なイベントが発生するらしい。
神様は死んだ。悪魔は去った。
どうやらこの「さめがめ型」のパズルゲームは、過去にもYahooゲームで配信されたことがあるらしい。まあ元々メジャーなゲームだから、フォロワーがいてもおかしくない。
にしても…
源平討魔伝である必要があるんだろうか…
源平討魔伝はちょっと変わったゲームだった。
見た目のインパクトが強烈なのは間違いないのだが、実は一番変わっているのはそのエンディングだ。
悪の化身である源頼朝を倒し、主人公である平景清も成仏するかのように消滅する。そして、無数の花びらが舞う中にある一文が流れる。
神様は死んだ
悪魔は去った
太古より巣喰いし
狂える地虫の嬌声も
今は、はるか
郷愁の彼向へ消去り
盛衰の於母影を
ただ君の
切々たる胸中深くに
残すのみ、、、、、、、、、、、、、、、、
神も悪魔も
降立たぬ荒野に
我々はいる
故深谷正一氏に ささぐ。
深谷正一氏とは、ナムコにかつて在籍していた天才プログラマだ。
「ゼビウス」の遠藤雅伸氏に言わせると「天上界クラスのプログラマ」である。だが、彼は1985年に肝臓破裂により31歳の若さで急逝した。
このエンディングの「神様は死んだ」は、深谷正一氏の事を表している。ちなみに「悪魔」の方は「リブルラブル」などで知られる黒須一雄氏である。黒須氏はこの時期にはすでにナムコを退社している。この文章は、深谷氏が亡くなり、黒須氏がナムコを去った事に対する、スタッフからの敬意を込めたメッセージであり、レクイエムでもあるのだ。
だからこそ、軽々しい気持ちでアレンジを許可してほしくなかった。
初期のナムコを支え、そして去っていった2人の天才。彼らを失ったナムコのスタッフは、その未来を憂いでエンディングにこのメッセージを込めたのだ。
神も悪魔も降立たぬ荒野に我々はいる。
それは、まさに今なんじゃないだろうか。
なあ、ナムコぉ…