LIXILグループは21日、藤森義明社長兼最高経営責任者(CEO、64)が2016年6月に退任し、工具通販大手のMonotaRO(モノタロウ)の瀬戸欣哉会長(55)が社長に就く人事を発表した。藤森氏は米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身の「プロ経営者」として注目された人材で、11年に就任した。だが、買収した海外企業との統合作業は道半ばで、十分に結果を出したとは言いがたい中での退任となった。
21日に東京都内で開いた記者会見は、社長交代会見としては異例だった。後継者の瀬戸氏は出席せず、藤森氏1人で記者に対応し続けたのだ。瀬戸氏は海外にいるとみられ、急ごしらえの印象は強い。会見でも「退任は唐突すぎるのでは」といった質問が飛んだが、藤森氏は「会社を大きくしてきた自負がある。5年を1つの区切りで考えていた」とかねて退任を検討していたと話した。
4月に子会社化した独グローエ傘下のジョウユウの不正会計問題について、進退とは「全く関係ない」と断言した。
藤森氏はLIXILの前身の一つ、トステム創業家の潮田洋一郎氏に請われて、11年8月に社長に就任した。5社が合併してLIXILが誕生した4カ月後のことだ。さっそくGE流のグローバル化や事業の取捨選択で手腕を発揮する。米衛生陶器のアメリカンスタンダードや独水栓金具のグローエなど、企業買収で就任時3%にすぎなかった海外売上高比率を3分の1近くまで拡大した。
重複した事業を「水回り」など4部門に再編。GEなどから人材を集めた。事業会社LIXILの取締役10人のうち、今や9人が外部からだ。
だが、今年4月に発覚したジョウユウの不正会計により、14年3月期~16年3月期に約660億円の特別損失を計上した。プロ経営者を集めたからといって、グローバル事業がいつも成功するとは限らない。藤森氏は「(中国子会社での不正は)不可抗力だ」と強調してきたが、今年11月には突然、役員報酬の一部返上を発表。責任は避けられないとの判断に傾いていたとみられる。
後任の瀬戸氏は住友商事で米資材流通大手グレンジャーとの共同出資でモノタロウを立ち上げ、上場させた。専門店や商社から買うのが当たり前だった工具や補修用品などの間接材をネットで注文できるようにし、町工場にとってなくてはならない存在に育てた。藤森氏は瀬戸氏について「今後10年を築くのに必要なグローバルとデジタルというキーワードを兼ね備えている」という。ネットで旧来型の物流を変革し、米社との合弁を成功させた手腕が、世界中で多様な住宅資材を扱うLIXILのグローバル戦略に生きるとみている。
サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長など、プロ経営者への注目が日本でも高まっている。結果がすべてという厳しい周囲の要求にどう応えていけるか。瀬戸氏のかじ取りに注目が集まる。
瀬戸 欣哉氏(せと・きんや)83年(昭58年)東大経卒、住友商事入社。00年モノタロウ取締役、01年社長、12年会長。東京都出身。55歳
(2016年6月就任。藤森義明社長は相談役に)
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